華氏451度

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ムル&トマの「国家あるいは集団」(1)――愛国心は趣味の範疇

2008-03-03 23:42:16 | ムルのコーナー

  

トマ:兄貴、おっひさしぶり~。

ムル:おんやぁ、トマじゃねぇか。おまえ、生きてたのかよ。

トマ:やなこと、言わないでよ~。華氏が出張とか続いてさ、しばらく、よそんちに居候してただけだよーだ。

ムル:ふ~ん。そっちの方が居心地よかったんじゃねぇの?

トマ:それは言える……でもさ、やっぱしヒトサマの家だからさ、少しは遠慮があるじゃん(笑)。

ムル:汚くても待遇悪くても我が家が一番、てか(笑)。

トマ:ご無沙汰してる間に、おもしろいことあった?

ムル:おもしろいことも、ヤなことも、日々いっぱいあらーな。それはそれとして、おいら最近、ちょいと考え込んでることがあるんだよな。

トマ:何を考えてんのさ? まさか、ナントカの考え休むに似たりってやつじゃーないよね?

ムル:おまえもロクでもない奴と一緒に住んでるせいで、ほんと、だんだん性格悪くなる一方だな……。

トマ:兄貴の影響も受けてるよ。

ムル:むむっ……。ま、いいや。トマ、おまえ「日本」でも「アメリカ」でも「中国」でも、「東京」でも「大阪」でもいいけどさ、好きか?

トマ:わっ、何か、いきなり本題って感じ。えへへ、兄貴が言いたいこと、わかる気がするな~。

ムル:この野郎、ガキの癖に生意気言うんじゃねーや。さっさと答えろって。

トマ:うーん。好きかか嫌いかとか聞かれると、マジで困っちまうんだよね。え? 何それ? って感じ。

ムル:そうそう、その感覚なんだよな。

トマ:兄貴はどうなのさ。

ムル:おいらも「好きでも嫌いでもない」ってやつさ。好きとか嫌いとかいう対象じゃあないんだよな。

トマ:日本もアメリカも中国も?

ムル:もっと言ってもいいぜ。フランスもフィンランドも韓国も北朝鮮もビルマもスリランカもコスタリカも……えーっと、それから……。

トマ:もういいよ、兄貴。夜が明けちゃうから。要するに兄貴は、「国家」というものはどんな国家でも、好きだとか嫌いだとかいう感情の対象じゃないって言いたいんでしょ? でも兄貴は、「国家は嫌い」なんじゃぁなかったっけ?

ムル:うん。強いて言うなら、国家なんていう必要悪的な装置は「嫌い」な範疇に入るけどさ。具体的に日本だのアメリカだのって姿をとって現れると、そうも言ってられないんだよな。で、その場合にどうなのかって考えたわけさ。

トマ:えへへ。兄貴はいつも、「ネコに国境はなーい」なんて豪語してるくせに、ね?

ムル:うっせー!! 国境なんて人間が勝手に自分達の都合で作ったもんだけどさぁ、何せ人間は地球上で一番パワフルな生きものじゃんか。おいら達も、ちょっとは振りまわされちまうわけだからよぉ。考えざるを得ないっつーとこかなぁ。

トマ:で、「好きでも嫌いでもない」っていう結論を出したわけ?

ムル:そう。ヘンッという感じで無視したり、おいらが生きていく上で、別にナンボのもんでもねぇよとちょいと冷たい眼で見る対象。いや、むろん「好きだ!」という人間がいてもいいよ。でも、それは「趣味」みたいなものさ。あくまでも趣味だから、他人に押しつけたりしちゃあいけない。っつーか、眼を吊り上げてぎゃあすか言ったり、他人に押しつけたりするのはヤボだよな。

トマ:愛国心は趣味……ってわけだね。ま、世間サマがちょいと眉ひそめるような変な趣味だって、別にハタが非難する筋合いはないもんね。必要悪に対しては、そういうスタンスでいた方がいいよってことだね?

ムル:必要悪で思い出したけどさ、華氏の好きな山田風太郎が、小説の中で「不必要善」という言葉を使っていたことがある。これって、すごくおもしろい言葉だよな。国家は必要悪だから、「存在していてスミマセン」と肩身狭くしておいて欲しい。それが大きな顔して不必要善をやりまくるってのが一番問題なんじゃねぇかと、おいらは最近思ったりするんだ。

(続く)

◇◇◇◇◇

蛇足:ムル=都の東北を縄張りとするご意見無用の野良猫。トマ(本名・トマシーナ)=華氏宅の居候猫で、ムルの弟分。このコンビのしょーもない掛け合いは「ムルのコーナー」にまとめて置いておりまする。

 

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