華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

息苦しい国――ビラ配り有罪判決

2007-12-24 23:57:27 | 雑感(貧しけれども思索の道程)

 

 もう2週間ほど前の話だが……「政党ビラ配り事件有罪判決」。そう、マンションで政党ビラを配った荒川さんという人が住居侵入罪で逮捕され、一審は無罪だったが二審でひっくり返り、有罪になった事件である。

 この事件については、むろん、既に大勢のブロガーが書いておられる。だからあらためて書くのもナンだよな、という気もしないではないが……このところ気になっている問題の一つなので、やっぱり書き留めておくことにしよう。 

 私自身の復習のために簡単に振り返っておくと、被告の荒川さんは2004年12月に、東京都荒川区のマンションで各戸のポストにビラ(共産党の区議団だよりなど)を投函しているところを、住民に通報されて逮捕されたのだそうだ。被告側は「ビラ配布目的での立ち入りを処罰することは、表現の自由を保障した憲法に違反する」として無罪を主張。だが、東京高裁の池田裁判長は「表現の自由は絶対的に保障されるものではない。思想を外部に発表する手段であっても、他人の財産権を侵害することは許されない」とし、この主張を退けたという。

◇◇◇◇◇

 さて……このニュースに接した時に真っ先に浮かんだ感想は、「ヤレヤレ、何とまぁ」である。腐りかけた牛乳をうっかり飲んでしまったような、イヤ~な感覚が神経のどこかを走った。

 この判決について、「共産党の活動、あるいは現政権に異議をとなえる運動に対する弾圧である」という見方がある。基本的には、私もその通りであろうと思う。以前、東京都立川市の自衛隊宿舎における「イラク派兵反対」のビラ配り活動も、住居侵入罪で起訴された。国家権力は、目障りな対象を封じ込め、反社会的というレッテルを貼るためには、なりふりかまわない。

◇◇◇◇◇

 ……ということを前提に置いた上で、私はいま、少し違うことを考えている。「公共の福祉とは何だろう」。自由を制限するとき、公共の福祉という言葉があたかも葵の印籠のように振りかざされる。

◇◇◇◇◇

 いったん今回の事件に帰ってみると、私は「各戸のポストにビラを投函する」という行為が迷惑であるとか、ましてや財産権の侵害になるなどという理屈がどうしても納得できないのである。私自身もいわゆるマンション住まいであるけれども、共有廊下を誰が通ろうと、プライバシーや財産権が侵害されたなどとはつゆも思わない。ビラを投函されただけで侵害されるプライバシーや財産権とは、何と脆弱なものであることか。あほらしくてヘソが茶を沸かす。

 1階に全戸分まとめてズラリと並んだ郵便受けはむろんのこと、各戸の郵便受け(これは主に新聞受けなのだが)にも、毎日山のようなチラシ、ビラの類が入る。何日か出張していると、戻ったときには溢れて下に落ちていたりするほどだ。ウォシュレット取り付け工事、マンション分譲、○○ビデオ販売、ピザや弁当の宅配、学習塾……。霊園案内、なんてのも入っていたことがあって、これはさすがに驚いた。

 我が家のすぐ近くに自民党と共産党の区議が住んでいるせいか、両方の「区議会だより」も始終投函されている。もうひとつ常時入っているのが、近くの教会の……布教ビラというのだろうか、キリスト教について書いたB5版ほどのパンフレット。つい先日もクリスマス礼拝のお誘いが入った。(宗教関係といえば、ほかに時々、立正佼正会だったかのビラも入る)

 私は、すべてOKである。自民党区議団のビラだって入れていただいてかまわないし、無神論者だけれども教会の布教ビラも拒否はしない。興味があれば読む(自民党のビラも、読めばおもしろい――なるほど、こんなふうに言うのかという意味で――のである)。学習塾の案内やマンション分譲その他、ほとんど読まずに捨てるものが多く、そんな時には「資源の無駄やなぁ」とふと思ったりもするけれども、投函する自由を規制しようとはさらさら思わない。

 ビラの投函が迷惑だなんて、そりゃ嘘八百でしょ。と言って悪ければ、勘違いと言おうか。共有廊下に入ってきて扉の外でマイクで大声を上げられたら、そりゃまあ迷惑かも知れない。少なくとも迷惑に感じる人はいるだろう。私自身、徹夜明けで寝ているところだったとすれば、飛び出して「やかましいッ」と怒鳴るに違いない。でもビラが迷惑だなどと感じたことは、長い?人生でたった一度もありませぬ。

 よく考えてみたら誰も迷惑だと思わないことを、「迷惑だ」=「公共の福祉に反する」と決めつけ、規制するのはいったい誰だ。そのような規制によって守られるのは、いったい何ものだ。

 権力を握る者は、「やっちゃいけないこと」を増やすことによって人を支配する。国家でも学校でも家庭でも。その「やっちゃいけないこと」をされることで即、権力が脅かされるかどうかは、実は二の次である。何が一番の目的かといえば――

(1)「やっちゃいけないと言われたことはやりません」という素直な人々と、「なぜいけないのさ」と唇尖らせる人々を峻別できる。(2)「やっちゃいけないこと」を増やせば、総体で違反者も増える。「悪い奴」を創出して彼らに石を投げさせるのは、格好のガス抜きになる。

 息苦しい。

 規則は破られるためにあり、すべての規則は「人々の権利を守るため」にある。え? 財産権も権利だって? そりゃそうかも知れませんが(私は財産なんつうものは無いから大きなことは言えませんけど)、権利にも優勢順位があると私は思う。いかなる差別も受けずに生存し、自由にものを考え、ものを言い、得体の知れないバカデカイもの(国家というのがその代表だ)に振りまわされない権利というのが、至上のものではありませんかね?

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6 コメント

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住職さんのつかまった事件によせて (ぶっさん@高知)
2007-12-25 11:48:28
こんにちは。
志布志事件、というのが今年九州では大きなニュースだったそうでテレビの回顧番組(多分九州ローカル)で鳥越俊太郎が報告していました。
「九州では大きなニュース」と言いましたが僕が知らなかっただけであって意味合いから言うと全国的なニュースです。
選挙違反(買収・供応)のでっちあげだそうで犯人とされた人たちは全員無罪となったものの、まだ首謀者の意図など不明な部分が多いそうです(「推測にすぎないが買収・供応の摘発は単なる違法ビラより手柄になる、それが警察の一部幹部の意図だったのではないか」と鳥越氏は言っていました)。
平均取調べ時間は一人220時間ほど、最長拘留期間は340日余り、自殺未遂3名(20人余りの小集落で!)という深刻な事態を生みました。
なんとまあ。

「火のない所に煙は立たぬ」と多くの人は思ってしまう・・・というのが警察やらお偉いさんやらの付け目なんじゃないでしょうか。
自民党の区議会便りも共産党の区議会便りもひっくるめて姿を消すことになりかねないぞ。だから共産党とその支持者だけの問題じゃぜんぜんなく自民党とその支持者にとっても深刻な問題を今回の住職さんのつかまった事件ははらんでいる。

乱文・長文お許し下さい。
おじゃまですが (あくつ)
2007-12-25 14:13:46
「公共の福祉」という言葉を拡大解釈して、市民(これを使うと左翼?)の行動を規制して、なんかいいことあるのでしょうか。
はっきり言って、あのお節介集団にはウンザリなんです。

要するに、「華氏451」の世界ですよね。
壁テレビの前で暇している人々。悪者探し。
自分で自分の首を絞めていることが分らんのです、彼らは。

権力者対市民 ではなく、市民対市民 でしょうね。
だから、、、、息苦しい。
快不快が最優先か? (なめぴょん)
2007-12-26 01:36:39
「迷惑」というのは主観的な概念です。
誰かの主観で、他者を裁けるのか?一対一での関係なら、それもありでしょう。しかし国家や権力がそれをやってはならない。それが、立憲主義というものです。
有罪判決を支持する人のコメントをみてると、どうも、その人の個人的な快不快によって断罪するというのか、それがすべての基準になってて、「オレがイヤなものは抹殺してもよい」というような感覚が蔓延してるような気がします。
自分の感覚を確立するのは重要なことです。それがないと他者を他者として認識することもできない。自分自身の考えがないから、「大きなもの」の振る旗にとびつくのかもしれません。
貴方の言うことは何一つ同意できないが、貴方がそれを言う権利は尊重する、っていうのが民主主義の前提のはず。
人は、その人にとって不快な表現が書かれたビラが静かに投函されているという程度の不自由さの中で生きている。一方でビラを破り捨てる自由も持っている。
これぐらいは認めなければ、やがて「快不快」も、お上が決定する世の中がやってくる。
私達みんなが反省すべきでは。? (布引洋)
2007-12-26 14:31:23
このニュース何処の国の話なんでしょうか。?日本の現代のはなしとも思えませんね。
公安警察(政治警察)が左翼政党を狙い撃ちとは。いやはや。

しかし、それにしても広告ビラ。多すぎると思いませんか。?
新聞本体の倍ぐらいあるんですよ。
こんなに広告しても、全部読んでいる人が居るとも思えないし。ゴミ箱に直行するだけ。
無駄も無駄。地球に優しくない。

名案を考えたんで聞いてください。
ビラの裏側は必ず白紙とする。ついでに鳩目の穴もあけて置く。
バインダーに閉じれば即メモ用紙の出来上がり。
ビラは捨てられず長く消費者の手元に残り、広告主も大喜び、配ってもらった方も少しは喜ぶ。ゴミも減る。


冗談は此れくらいにして主題です。
共産党や私達護憲派はこの問題で、何も反省すべき失敗は無かったのか。?
よく思い出して欲しい。
マンションの共用部分に入ったオウム信者を住居不法侵入で逮捕したり、道で拝んでいる信者を道路交通法で逮捕。裁判ではもちろん有罪で、短期だが懲役刑になっていた。
あの時、相手がオウムだからと私達は見てみぬふりをしなかったか。?
今回も、『共産党だから』と、見てみぬふりをすれば、必ずいつか同じ災難が、自分自身に降りかかってきます。
見ぬふりを批判した人もいる (組合員A)
2007-12-30 13:34:45
布引洋さん
オウムの時は駐車場の敷地内に入っただけで逮捕・有罪それも実刑などというムチャクチャが罷り通ってしましたね。
ネットが今のように普及していない時代、私は新聞や雑誌に強烈に批判した投稿をいくつかしました。新聞には掲載されませんでしたが、雑誌には載りましたよ。

見て見ぬふりというか、この暴虐な弾圧がたいした批判も世間に広まらなかったのは、マスコミがオウム叩きの偏向報道を続けたためです。
違法行為の枠がオウムならどれだけ広げても良いと煽ったのはワイドショーをはじめとする下劣なマスコミです。警察・検察は権力でして、権力は自分の権限拡大に有利なことは必ず利用します(最近の体感治安などという根拠レスなものもそう)。
批判精神のないマスコミをまず糾弾すべきでしょう。

しかし今オウム事件のようなものがあったら、ネットで無責任で卑劣な書き捨て言論を垂れ流す卑怯者どもがどれだけ暴れることか。まったくゾッとしますね。
それこそ信者の家族すら晒しかねない。本来ならそれは許されないことですが、狂乱するマスコミと、それに乗じて権限を強めようとする警察・検察には美味しい事態としかうつらないでしょうから。
組合員Aさんへ (布引洋)
2008-01-20 14:08:26
将来起きるかも知れない出来事が、正確に予測できる人と、
現実に事件が発生して初めて理解する人と、
世の中は二種類の人がいるそうです。(それ以外の変種として、数十年後に事件は無かったと信じ込む人も)
問題は、予測(判断)できる人が常に極少数だということでしょう。
危険を正確に予測して警告するが、少数過ぎて『変なことを言う奴だ』程度に思われ、誰からも信じてもらえ無く馬鹿にされる始末。
何やらトロイア戦争時のラオコオンかカッサンドラの悲劇のような話ですが、正確な情勢判断のできる人物は何時の時代でも極少数派です。
しかし、正しい判断のできる人は、たとえ喜ばれなくとも知らない人に対して警告する責務があるでしょう。(不幸な予言は嫌われる)辛いところですね。

今オウム事件を大きくし、よく似た事件に9・11と北朝鮮がある。
方やアメリカ人から正気を失わせ、方や日本人から判断力を奪った。
98年のテポドンをアメリカ始めとする世界各国は人工衛星の失敗と捉えるが、日本だけが強引にミサイル説を主張し各国に認めさせる。
訪朝時に拉致被害者の話を小泉は初めて聞いたと嘘発表。森前首相はサミットでドイツ首相に第三国での発見を吹聴していた。
イラク開戦前にブッシュがフセインに取った手法を、日本政府が北朝鮮に対してとっている。

9・11事件はアメリカ政府公式報告書の信用度は地に落ち今世信じている人は極少数。
(ブッシュ政権崩後数年以内には新しい動きが出る。10年以内には政権幹部の何人かは弾劾されるでしょう)
ひょっとしたら正気に返るのは日本人よりアメリカ人の方が早いかもしれない。

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