久しぶりの登場。都の東北をうろつく野良猫・ムルと、その腰巾着で華氏宅の居候・トマシーナ（通称トマ）の会話でございます。（こいつら何だ？と気になる方は、エントリ末尾をご参照のほど）
トマ：ねえ兄貴、人間て「まぞひすと」なのかなぁ？
ムル：な、何だよ、いきなり。おまえ、マゾヒストなんて言葉の意味、わかってんのかよ。
トマ：だってさあ、これ見てよ（と言いながら、前足でしわくちゃになった新聞の切り抜きを広げる）。毎日新聞のさ、世論調査ってやつ。
ムル：ふ～ん。都知事選の世論調査か。なになに、現職の石原優勢……。
【（投票で最も重視する基準で）「公約やマニフェスト」を挙げた人が最も支持するのは、政策の数値目標や達成期限を示している浅野氏だった。これに対し石原氏は、「指導力」を重視する層から７割の支持を集め、依然として「強いリーダーシップ」が評価されている。「経歴や実績」「人柄やイメージ」「改革への意欲」を重視する人からも高い支持を得た。一方、新知事に最も取り組んでほしい課題は、福祉政策が４４％でトップ、教育問題３０％、雇用・景気対策１７％と続いた。浅野氏は厚生官僚の経験から「福祉は私の本籍地」と訴えるが、福祉政策を望む人たちが最も支持するのは石原氏。教育問題に取り組んでほしい層では、学校式典での「日の丸・君が代」徹底を進める石原氏が６割弱の支持を集めた。】（毎日新聞記事より）
トマ：今の都知事を支持する人は、強いリーダーシップを評価してる、っていうけどさあ。……いや、リーダーシップっての、よくわかんないけどね。僕なんか、単に「えらそーな人」っていう印象しか持てないんだけどさ。
ムル：そっ。マッチョの典型だよな。てめぇら、文句あるか～！って人を怒鳴りつけるしか能が無い。自分の息子を「余人をもって代え難い」と言ったそうだけど、実のとこ、自分のことをそう思ってるんだろうなって気がするよな。「うるさい、黙れ」ってブチ切れたりしてさ。まっ、おいら達猫族から見れば、最も理解しがたい存在だよな。
トマ：何かもう、僕なんか素朴に疑問なんだよね。「ごちゃごちゃ言うな、オレの言うこと聞いてりゃいいんだ！」ってこわもてで押し通されて、それを「いいじゃ～ん」と思うなんてさ、やっぱりマゾヒストなんじゃない？
ムル：へっ。マゾヒストか何か知らねぇけどさ、そういうとこ、あるのかも知んねぇなあ。厚かましいほどの大きな声とデカイ態度を示されると、その自信たっぷり具合に思わず「はいはい」と言っちゃう。あ、コイツについてったらとりあえず食いっぱぐれないかも、と思っちゃう。おいら達猫族には信じられないけど、群れ動物にはそういうところがあるのかも知んねぇ。
トマ：人間て、群れ動物なの？
ムル：知んねぇや、そんなこと。おいら達にはどうでもいいことで、勝手にやってろてなもんだしさ。たださぁ、群れ動物じゃないおいら達だって、そういうとこがあるかも知んねぇ。よくわかんないけど自信たっぷりなボス猫が現れてさ、「オレの言うこと聞いてりゃ、エサに困ることねぇぞ」っと喚けばさ、つい「あ、ちょいとついてってみよーかな」と思うだろ？ おいらも何度もそういうこと経験したさ（恥）。ま、究極的にはなーんも信じてないご意見無用動物だから、とことん引きずり込まれることはないにしてもよ。つい、ふらふらっとしたりさぁ。
トマ：えらそーに言われるとコロッとなびくって、すっごく悲しい……。
ムル：ふン。おまえも人間と一緒に暮らしてるうちに、妙にセンチメンタリストになりやがったなぁ。
トマ：福祉政策を望む人が石原支持、ってのも、僕はどうしてもわかんないんだよね。ほかの誰を支持するかってのは別として、少なくても現都知事は支持しないんじゃない？ と思うんだけどなあ……。
ムル：だからさぁ、「福祉政策だから現都知事」っていうんじゃあねえんだってば。都知事にどんな政策を望むかってのと、誰を都知事に望むかってのは、別の問題なんだよ。世論調査ってのは項目ごとにぶつ切りに聞くし、聞かれた方も慌てて適当に答える面があるから、あんまり信用しちゃいけねぇぜ。設問によって、いくらでも誘導が可能だしよ。その辺のことは、前に華氏も何度か言ってたんじゃなかったっけ（「世論調査の陥穽ということ」、「世論調査のいかがわしさ」など）。ただ、それをきちっと考えた上でなら、世論調査からもいろんなことが見えてくるとおいらは思う。たとえばさあ、おまえが言ってるその新聞の世論調査で言えば、政策として何を重視するか何てのは付け足しなんだよなーとか。
トマ：付け足し？
ムル：だからさぁ、おまえも言ったじゃん。福祉が一番大切だと思うなら、今の都知事殿がベストだなんて誰が思うかよ？ まじィ？ うっそー、てなもんだよな。共産主義革命を志向するから安倍総理支持します、っていうぐらい、ムチャクチャけったいな話さ。政策の上で何を重視するんなんて、どーでもいいんだよ、ほんとは。
トマ：あ、兄貴もなんか滅茶苦茶になってる……。
ムル：いいじゃんか、猫だもん。都民でもないし国民でもないもん。要するにおいらが言いたいのはだよな、政策とかマニフェストとかはほんとはそんな大事じゃなくて、「強いアナタ」にすがりたいかどうかってことなんだよな。
トマ：だからさぁ、僕は人間てマゾヒストじゃないかって疑ってるわけなの……。
ムル：サディストかマゾヒストか、そんなこたぁ知らねえ。おいらにゃあ、どうでもいいさ。ぶん殴られてコケにされて、それでも「あなたについて行きます～」「捨てないで～」と言いたきゃ、お好きにどうぞってなもんさ。たださあ……そう言っちゃう、てか、言わされちゃう構図って、見るに見かねるよなあ、やっぱし。
トマ：なんでそんなことになるんだろうね、兄貴？
ムル：話してるとむっちゃ長くなりそうだな……。おいら眠くなったから、続きはまたにしようぜ。ともかくこれだけは言っとくけどよ。おまえんちの華氏だって、えらそーなことほざいてるけど、おいらから言わせりゃ完璧なアホだぜ。これだけは譲れないんだってことを、もっとシャキッと自分の中で確認しなきゃ負けるぜ。一生アホやってる気か、って言っとけよな。
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ムルとトマシーナに関わるエントリ（一部）
「世の中、露骨になってきた……」、 「小泉から安倍へ」、 「あなたに守ってもらわない決意」、 「牡猫ムルの人生相談・１――総理大臣の巻」（人生相談は今のところ勝手に５まで続けています）などなど。そのほとんどは（時々間違えてるところもあるかもですが）「ムルのコーナー」に収録。
えらそーな＝リーダーシップ？、という疑問に共感します。
もしかしたら関連するかもしれない記事がブログ「日常茶飯事 絶滅寸前哺乳類の記録」さんありましたのでご紹介します。
http://d.hatena.ne.jp/chazuke/20070406
"石原慎太郎を支持する女性層、ってのが男性の方には理解しがたいらしいんだけど、
これって多分ある種の女性の「、、と見られたい」嗜好とかかわりがあるんじゃないかな。
「守られたい」女性ってのはかなりの数存在するわけで、それから「守られてる自分」に酔いたい女性、
（男性は自分が「守ってる！」幻想がお好きなように見えるんですが）こういう人が石原慎太郎みたいなのに
弱いんじゃないか。この人って「東京都を守る」とか「日本を守る」とか、一体ナニから守ってくれるの？
からす？みたいなことよく言うよね。"
ちなみに共産党員です。
私から見ると独裁者という印象の石原さんは、支持する方からすれば指導力ということになるのでしょうか。
指導力があるのはけっこうなことでしょうけど、石原さんに対する支持は、強い人に引っぱってもらいたいという思いがあるのかなぁと感じています。
私は知事というのは住民の意思の基に行動すべきだと思っているので、強い指導力でリードしてもらいたいというのには違和感をおぼえます。
それに、どういう方向に指導力を発揮するかの方が大きな問題だと思うのです。
ヒットラーがユダヤ人虐殺に指導力を発揮するような、そういうのでは大問題ですから。
とくらBlogに書き込んだ当時、石原的な政治を変える方向で候補者が統一できたらいいなと思っていましたが、浅野・吉田と分かれたままで投票日を迎えてしまったことは本当に残念です。
本来なら候補者が多く出ることは有権者の選択肢が広がるので歓迎すべきことなのでしょうけど、私もやはり石原さんにだけはやめてほしいと思っているし、今回だけは…という思いがありました。
私自身は吉田支持派です。
石原さんをやめさせることよりも、広い意味で石原的・新自由主義的・自民党的な政治を変えることが優先だと考えているからです。
宮城で見ていて残念ながら浅野さんは自民党的な政治を推進してきたと思っています。
石原さんが初当選した１９９９年の統一地方選挙で、私は宮城県議選で共産党を応援していました。
仙台港・石巻港に船の来るあてのない巨大なコンテナを作るくらいなら、福祉とか教育とかもっと県民の暮らしに関わることにお金を使ってほしいよねと友達に呼びかけたりしてました（←書きながら驚くほど共産党っぽい一文だと思った）。
浅野さんは開発は進めるけど、福祉は大事にしなかった。
それなのに無党派というクリーンなイメージで大きな支持を受けていました。
私はそういうのが大っ嫌いで、どうせ同じことをやるならイメージでごまかせない本籍自民党の知事の方がましだと思っていました。
県議会では実際には自民党も与党でしたけど。
「とにかく浅野をやめさせることが優先だから、誰でもいいから勝てる候補者を」と言われれば、共産党で候補者を推している私としては頭にはくるけど、共感はしただろうなと思います。
浅野さん以上に最悪の人物である石原さんを前にしたら、東京の皆さんの思いは完全に共感はできないまでも、半分は理解できるつもりです。
それでも、必死になってがんばった結果が浅野東京都知事だとしたら、あまりにむなしいなと思います。
宮城での１２年間、無駄な開発と福祉の切り捨てという実績はいったい何だったのかな、借金だけを増やされて残された私たちはいったい何なんだというのが正直なところです。
投票日にこんな愚痴を華氏４５１度さんのブログで書いたところで何も生産的ではないとは思いつつ、どうしても黙っていられず書き込んでしまいます。
でも一方で、日の丸君が代の問題だけ考えて、せめて処分を受けた教職員や、処分されないまでも自分の心を押し殺してがまんしている人たちが、その点だけでも救われるのなら、まだ浅野さんでもいいのかなと思う自分もいます。
大きな枠では浅野さんは石原さんと同じ枠だと思いますが、よりましではあると思っているのです。
今回の選挙、誰が当選したとしても、世の中がそれで決着つくわけではないので、これからも私も生き方として色々なアプローチをしていくし、華氏４５１度さんにもがんばっていただきたいなぁと思います。
たくじさん、とくらさんの所のやりとりはよく覚えています。貴君の言われていることはよくわかる……いや、安易に「わかる」などという言葉を使ってはいけないでしょう。わかる気がする。私のなかに、重い問題が残っています。
石原都政の「国旗国歌強制」のもとで、（いま、数は正確に覚えていないのですが）多数の教職員が処分されました。私の友人知人にも何人か教員がいて、管理抑圧体制の日々の中でうつ状態に落ち込んだ人もいます。ともかくとりあえずの姑息な道であるとしても、ひとまず、そういう教員に一息ついて欲しかった（もっともだからといって彼らが浅野支持とは限らないわけで、その意味で大きなお世話であったかも知れない）。
でもまだ、都民は引導を渡されたわけではない（と思いたい）。これからも……東京都、いや、この国のゆくえにささやかであっても責任を持ち続けたいと思います。
――石原三選が確定し、やけ酒を止められない夜中に――
彼個人の人格がどうというより、何故彼がこれまでの選挙で生き残ることが出来たか、反石原氏の層はそれが明確に掴めていない。
8年も時間があったのですから…掴めていれば石原氏の3選を阻止する対策は立てられたはずです。
正確に言えば、彼の強さの理由は分かっているけれど分かりたくない、と言ったところでしょうか…。
パブリックな場での氏の粗暴な発言の殆どは、メディアを通して大衆をコントロールするために計算し尽くされたもので、彼（とそのブレーン）は大衆をコントロールする優れたテクニックを持っていると私は考えています。
私は彼を激しく嫌悪しますが、戦略面においては彼を評価します。
彼の言動に振り回され、怒り、糾弾しても徒労に終わるでしょう。
反石原陣営の過去のアクションは、全て「見切られて」おります。
今後、第2第3の彼が行政を司ることを阻止するには、彼を上回るテクニックとそれを使いこなせる人物が必要です。
であれば、3期目の石原氏を謙虚な態度で徹底的に分析し、盗めるものは全て盗み、彼から学ぶことです。
負けるのは、敵を肚の中で舐めているからです。
学びの機会を与えてくれた石原氏に、感謝しましょう。
ただ…「何で皆は、あんな傲岸不遜なバカの言葉にコロコロ乗せられるのだろう」と言外に匂わせるブロガー様って多いと思うのです。
私は「じゃあ、バカだと思ってるなら何でそのバカより巧くやれないの？ だってバカでもできることなんでしょ。利口者ならもっと巧くやれるはずじゃない…」と思うのです。
利口者が寄り集まって神輿に担いだ人が、その「バカ」よりもさらに目も当てられない迷走の挙句に勝手に自滅したのを見ていると、なおのこと憂鬱になるのです。