華氏451度

我々は自らの感性と思想の砦である言葉を権力に奪われ続けている。言葉を奪い返そう!! コメント・TB大歓迎。

「不適格」という脅し――教育3法成立(1)

2007-06-20 23:54:40 | ムルのコーナー

 自分でも何が何だかよくわからないほど忙しい。私はどちらかといえば寒さより暑さに弱い人間で、この時期になると本当は冬眠ならぬ夏眠に入りたいぐらいなのだが……。朝早く出て深夜に戻り、移動中に寝ているようなせわしない出張だのが続き、インターネットに繋いだのも数日ぶり。ついでに?自分のブログを開いて、更新していないとTBがわずかしか来ないことにやっと気付いた。考えてみれば、そりゃそうだ。TBというのは、こんな記事を書いたのでよかった覗いてくださいネ、というメッセージ。開店休業状態となれば「誰も立ち寄らない所に送ったってムダじゃん」的な気分になるだろう(そんななかで、律儀に送って下さるとむ丸さん、ありがとう。感謝でございます)。

 何もせずにTB下されと言っているのも、何かもの欲しげでヤなので……たまには簡単なメモでも。まとまってモノ考える気分的余裕はないんで、野良猫・ムルと、弟分のトマに喋らせることにしようか……。

◇◇◇◇◇

トマ「ねぇ兄貴、教育改革関連3法っていうのが成立したんだってね」

ムル「ああ、またしても強引に通しやがったみたいだな」

トマ「今の与党って、すごいよねえ。誰が反対しようと数の論理でどんどん通すんだもん。野党なんていちおう民主主義国家ですう、というアリバイのために置いてるというか、ものを言わせるだけじゃん、という気がしちゃう」

ムル「へへ。素朴な感想ってやつかい。でも今の国会見てたら、確かに野党の存在なんて所詮はアリバイじゃんという気分にもなるよなぁ。与党にあれだけの議席を与えた選挙民、つうの? 要するに日本人がツケを払わされ続けてるんだよな」

トマ「安倍内閣は、教育3法をこの国会の最重要課題だとか言ってたそうだね」

ムル「ある意味、そうなんだろうなあ。あの法律はさあ、教育と直接関わりのない国民はそんなに関心ないみたいなとこがあるけど、すっげー怖い法律なんだぜ。安倍内閣の体質がもろに出てる」

トマ「安倍内閣の体質?」

ムル「自民党の体質と言ったほうがいいかな。いや、それよりもっと端的に、時計の針を戻そうとしている連中の体質、と言うのかな」

トマ「どんなところが?」

ムル「うーん、どんなところがと言われても……怖さが山盛り、っていう感じなんだけどさ。ひとつふたつ例を挙げてみようか。たとえばさ、改正教員免許法で、教育委員会が『指導の不適切な教員の、認定や研修をおこなう』ってことになったろ? これって怖いことだと思わねぇかい」

トマ「うん」

ムル「今度、教員免許状の有効期間が10年、てことになったろ?」

トマ「うふふ、有効期間があるなんて、なんか運転免許みたいだねー」

ムル「免許の更新っていうのは、それ自体は悪いとは言い切れないさ。有効期間があったって別にかまわないとおいらは思う。たださぁ、その更新に、なんで国が介入してくるんだよ?という話さ。不適切だと認定された教師は免許状更新講習を受けられず、免許状が更新されないってことが起こり得る」

トマ「確かに『不適切』な教師っているかも知れないけど、上の方がそれを判断するのって怖いよね」

ムル「そうそう。不適切の基準がはなはだ曖昧だっていうのは、前々から言われてるけどさ。そりゃそうだよ。曖昧にしといた方が、いくらでも範囲を広げられてオカミには都合がいいもんな。そりゃ最初のうちはよ、誰が見ても『どうかと思うぜ』みたいな教師が槍玉に挙げられると思うよ。で、『普通の、真面目な教師には関係ないのね~』と思わせる。為政者がいつも使う手だな。共謀罪と同じさ」

トマ「で、そのうち上の方にとって都合の悪い教師に『不適切』の烙印が押されるっていうわけだね」

ムル「そんな乱暴なことが起きるはずがないっ、ていう意見もあるかも知れないけどよ。それは甘いと思うぜ。つい半世紀ちょっと前に日本でどんなことが起きてたか考えたら、ゾ~~ッとするじゃん。少なくとも『解釈次第でどうにでもなる可能性がある』というだけでも、大変なことだとおいらは思うな。為政者に『解釈権』なんか与えちゃあいけないんだ。為政者の権限なんてものはさ、出来るだけ小さくして、みんなで『監視』しとかなきゃ」

トマ「あは。国に監視されるなんて、話が逆だよねー」

ムル「人を見たら泥棒と思えなんてくだらねぇコトワザがあるけど、それを真似て言うなら、『為政者を見たらろくでもないことする奴だと思え』だな」

トマ「兄貴って性悪説のヒト、じゃない、ネコだね~」

ムル「人間含めて生き物については性善説、ただし権力握った連中については性悪説って言ってくれよな。権力は腐敗するなんていう言葉があるけど、確かにそうなんだよな~」

トマ「それにしても、解釈によってどうにでもなるっていうのは気持ち悪いよね」

ムル「そう。何が対象になるかわからなきゃわからないほど、萎縮するからな。朱元璋っていうオッサンがいてさ」

トマ「え? え? 誰それ。兄貴の友達イ?」

ムル「ばーか。600年以上も前の、明ていう国の皇帝。このオッサンが粛清に『文字の獄』を使ったんだ。文字の獄ってのは、いろいろな文書のなかにさりげなく体制批判が隠されているということで書き手を処罰する方法でさ。そういうのは何処の国でもあったし、特に中国は漢字の国だから昔よくあったそうだけど、このオッサンのは特にすさまじかったらしい。天に道あり、って文書を、道は盗と同じ音だから皇帝を盗賊扱いしたものだとか難癖つけたりしてさ」

トマ「ふ~ん。兄貴、ネコのくせにガッコ行って東洋史でもやったの~」

ムル「隠居ネコからの聞きかじりに決まってるじゃんか。だから詳しいことは知んねぇけどさ。ともかく何でもこじつけられちゃうというか、何が引っかかるかわかんないから、その頃の役人とかは完璧に萎縮しちゃったそうだ」

トマ「わかったわかった、知ったかぶりでむつかしいこと言わなくたっていいよ、兄貴。よーするに、オカミに解釈権持たせとくと、何がよくて何がいけないかわからないから、みんなおとなしーく上の顔色見るようになるんだって言いたいんだろ?」

ムル「やな奴だな、おまえ。何かどんどん華氏に似てきやがる。 ま、いいや。そーゆーこと」 

トマ「国はガッコの先生を、ハイハイということきく羊ちゃんにしたいんだねえ」

ムル「おいらは国民じゃねぇけど、他人事ながらだんだん不安がつのってくるぜ。……ちょっとその辺でメシあさってくるから、続きはその後で、な」

――続く

◇◇◇◇◇◇

 戸倉多香子さんを応援しています。

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コメント (1)
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