あるとき、なんだか知らないが、やたらスパムが飛んでくるようになっていた。
もちろん見たことのないメールアドレスで、かつ誰に対してでも通用する定型文的なヤツという、テンプレなスパムである。
逐一消しているから内容はうる憶えなのだが、
「私です。メアド変えました」
「ねえ届いてたら返事して」
みたいなやつだ。
ほんとうにこれだけ、常に情報量は20バイトくらいだった。
でだ。
一見これとは無関係のように見える出来事がおきた。
めずらしく非通知で電話がかかってきたのだ。
俺「もしもし」
女「私です」
俺「どちらさまでしょう」
女「私です」
俺「すいません、どちらさまでしょうか」
女「私です」
俺「ちょっとすいません、わからないのですが」
女「私です」
for(ここ10回くらいループ){
俺「どちらさまです?」
女「私です」
}
俺「ひょっとして、おかけ間違いではありませんか?」
女「***-****-**** 〇〇〇〇さん」
俺「あってますね」
女「私です」
俺「わかりません」
for(ここ10回くらいループ){
女「私です」
俺「わかりません。あんただれですか」
}
女「私です」
俺「私はあと何回わかりませんて言えばいいですかね?」
女「いえ、決して怪しいものではなくて……」
俺「はっはっは。ものすごく怪しいですよ」
for(ここ10回くらいループ){
女「私です」
俺「わかりません」
}
女「だから私です!」
俺「わかりません」
女「だから私ですって!」
俺「わかりません」
女「わかるでしょ!」
俺「わかりません」
俺「あなた本当に〇〇〇〇さん?」
俺「だからあってますよ」
女「ねえホントにわからないの!?」
俺「わかりません」
女「ねえホントに!?」
俺「あなた、私が意地悪でこんなこと言ってるとでも言いたいんですか」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です 私です 私です 私です 私です 私です 私です」
俺「……」
女「ねえ、どうしてわかってくれないのーーー!!!」
俺「ちっ。だいたい電話してきといて所属も名前も名乗れないとかどうなってんですか。じゃあもう二度と連絡してこないでもらえませんかね」
女「わかった……」
あとにして思えば、この電話以来、スパムの量が激減した。
誰だか知らんが、どうやら冒頭のスパムはスパムだったわけではなく、ミス私ですさんが個人的に我輩に出していたのであろうと思われる。
なんなのだこいつは?
どうもこいつは、
電話番号も我輩に教えられないほど疎遠だが、私ですと言えば我輩がわからなければいけないほど親密であり、
電話をしたりメールを打ったりする程度には知能があるようだが、誰ですかと聞かれて私ですと何十回も答え続ければいつかわかってもらえると思っているほど知能が足りないし、
オレオレ詐欺にしては我輩という特定の人物にあまりに固執しすぎていて、金銭目的犯罪としても成り立たないだろうと思われるほど稚拙である。
恐らくカタギの人間ではないのだろうと推測されるが、我輩の知り合いで思い当たる者はいない。
大変気味が悪い。
もちろん見たことのないメールアドレスで、かつ誰に対してでも通用する定型文的なヤツという、テンプレなスパムである。
逐一消しているから内容はうる憶えなのだが、
「私です。メアド変えました」
「ねえ届いてたら返事して」
みたいなやつだ。
ほんとうにこれだけ、常に情報量は20バイトくらいだった。
でだ。
一見これとは無関係のように見える出来事がおきた。
めずらしく非通知で電話がかかってきたのだ。
俺「もしもし」
女「私です」
俺「どちらさまでしょう」
女「私です」
俺「すいません、どちらさまでしょうか」
女「私です」
俺「ちょっとすいません、わからないのですが」
女「私です」
for(ここ10回くらいループ){
俺「どちらさまです?」
女「私です」
}
俺「ひょっとして、おかけ間違いではありませんか?」
女「***-****-**** 〇〇〇〇さん」
俺「あってますね」
女「私です」
俺「わかりません」
for(ここ10回くらいループ){
女「私です」
俺「わかりません。あんただれですか」
}
女「私です」
俺「私はあと何回わかりませんて言えばいいですかね?」
女「いえ、決して怪しいものではなくて……」
俺「はっはっは。ものすごく怪しいですよ」
for(ここ10回くらいループ){
女「私です」
俺「わかりません」
}
女「だから私です!」
俺「わかりません」
女「だから私ですって!」
俺「わかりません」
女「わかるでしょ!」
俺「わかりません」
俺「あなた本当に〇〇〇〇さん?」
俺「だからあってますよ」
女「ねえホントにわからないの!?」
俺「わかりません」
女「ねえホントに!?」
俺「あなた、私が意地悪でこんなこと言ってるとでも言いたいんですか」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です」
俺「わかりません」
女「私です 私です 私です 私です 私です 私です 私です」
俺「……」
女「ねえ、どうしてわかってくれないのーーー!!!」
俺「ちっ。だいたい電話してきといて所属も名前も名乗れないとかどうなってんですか。じゃあもう二度と連絡してこないでもらえませんかね」
女「わかった……」
あとにして思えば、この電話以来、スパムの量が激減した。
誰だか知らんが、どうやら冒頭のスパムはスパムだったわけではなく、ミス私ですさんが個人的に我輩に出していたのであろうと思われる。
なんなのだこいつは?
どうもこいつは、
電話番号も我輩に教えられないほど疎遠だが、私ですと言えば我輩がわからなければいけないほど親密であり、
電話をしたりメールを打ったりする程度には知能があるようだが、誰ですかと聞かれて私ですと何十回も答え続ければいつかわかってもらえると思っているほど知能が足りないし、
オレオレ詐欺にしては我輩という特定の人物にあまりに固執しすぎていて、金銭目的犯罪としても成り立たないだろうと思われるほど稚拙である。
恐らくカタギの人間ではないのだろうと推測されるが、我輩の知り合いで思い当たる者はいない。
大変気味が悪い。