教団「二次元愛」

リアルワールドに見切りをつけ、二次元に生きる男の生き様 (ニコニコでは「てとろでP」)

【レビュー】火取虫(web小説)

2017-04-15 23:03:31 | オタネタ全般

http://ncode.syosetu.com/n0981dw/



我輩、本はかなり買っているが、最近あまり小説を買って読んでいない。
かつてはむさぼるようにラノベを読んでいたこともあるし、本棚に収納しきれない富士見ファンタジア文庫の本が床にうず高く積み上げられ、定期的に雪崩をおこしていたこともある。

しかし今はそうではない。

なぜか?

「これ、どうせそのうちアニメ化するんでしょ?」

これが理由のほとんどだ。

しかし!

それは誤りであると気がついた。
いまや本屋に行かなくても、商業誌とは全く異なる文化で活動している小説家の作品をタダで読める時代である。

かつて、富士見ファンタジアが偉大だったころ、我輩はよく新人賞作家の作品を好んで買って読んでいた。
ときに海千山千かと諦観し、ときに重鎮の絶対書けない新鮮な切れ味にシビれた、あの感動が、今やネットの上にあったのだ。

本記事はその中の1つ、我輩の短編小説(※1)をのせてもらったRoot1.4さんのC91合同誌「頬につたふ」(※2)の看板作家、 大渡星(おっとせい)さんの作品を紹介したい。






氏の最新作、『火取虫』という。
作者自身によるでは紹介文では

> 小説家を夢見る青年・沢野は、通いつけの喫茶店で働く響子に恋をした。 「作品が完成したら彼女に見せる」という約束を果たすため、沢野は小説を書くことに。絵描きの早乙女との出会いも経て、次第に自らの夢と向き合い始める沢野。やがて三人は心を通わせていくが……。――夢を抱く若者の、ほろ苦い一夏を描く中編小説。

とある。

ここで作者自身が物語の核心を書くわけにはいかないので、これだけではどうしてもおもしろさは伝わらない。

では何なのか?

ハッピーエンドの存在しない世界でどうにか折り合いをつけていく人々の話なのだ。

Root1.4さんのC91合同誌「頬につたふ」を手に入れた少数の人たちも、氏の作品「やがて祝福という名の雨」(※3)を読んで途中で気がついたろう。
web小説を読んだ人たちも、「艦これ史実シリーズ」(※4)を読んで途中で気がついたろう。

ハッピーエンドの存在しない世界で、実現不可能なハッピーエンドを目指して破滅へ突き進むでもなく、多くのアニメのように綺麗ごとを貫いていればなぜかハッピーエンドになってしまうわけでもなく、かといってハムレットのように心中することで世界から脱走して無理やり終わらせるでもない。
冷徹に現実を見て先に進む、ただそれだけのことで、どれだけ重たい足を上げなければならないのかということを描くのが氏の人生を賭けたテーマなのだろう。



世間にはハッピーエンド至上主義者というのも一定数いる。
「君の名は。」でも「ハッピーエンドになったから良い点数をつけました」などというレビューを書く人たちのことだ。

まあこいつらの気持ちも全くわからなないというほどではない。
これは我輩も使ったことがあるのでドヤ顔で言うことではないが、カンタンにお涙ちょうだいを作る最もてっとりばやい方法は、物語の中心人物をいいところで悲劇的にブチ殺せばいい。

このテンプレパターン、ハムレットの時代には既に完成しており、以後ひたすら利用されてきた。
現代でも、野球部のエースでパーフェクト超人だった弟が事故死したから三角関係が解消したという有名な作品があるのを皆様ごぞんじのことだろう。
そしていまや「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」といって写真を出した登場人物は「あっ、こいつ死んだwww」などとテンプレを使いまわされすぎて逆に笑いがとれるくらいになっている。

だが違う。
ハッピーエンドにしなかったホンモノの作品はそうではない。

ではどうするのか?

ここでは書かない。
氏の作品を読んでみて意味を理解してほしい。






(※1)我輩の短編小説

輪廻の果てまで
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7920001



(※2)Root1.4さんのC91合同誌「頬につたふ」

―頬につたふ―特設ページ
https://sway.com/MErADSAujCOunWbq



(※3)「やがて祝福という名の雨」

やがて祝福という名の雨
http://www.pixiv.net/novel/show.php?id=7520764



(※4)「艦これ史実シリーズ」

大渡星(おっとせい)のシリーズ「艦これ史実シリーズ」
http://www.pixiv.net/series.php?id=758595