ルシファー・エフェクト―ふつうの人が悪魔に変わるとき
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784903212463
みなさん、
「アメリカかどっかの心理学の先生が、大学生をあつめて囚人役と看守役にわけ刑務所ゴッコをはじめたところ、想像のはるか上をいくとんでもないことになって途中で中止せざるをえなくなった…」
なんて話、どっかで聞いたことないだろうか?
「そんな話があるらしいのを小耳にはさんだことはある」
くらいの人は大勢いるのではなかろうか?
ではそのウワサ話の出どころはというと…?
それが本書である。
そしてその実験を仕切った張本人により執筆された初の書籍が本書である。
本書は読む人を選ぶかもしれない。
たしかに百科事典級の殺人的な分厚さの本に立ち向かって平然としていられる読書家でないと読破できないというのもあるが、本質はそこではない。
「そんなことが起きるんだー、まーなんと怖いのかしら…」
なんてくらいにしか思わない人にとっては、日常があれよこれよという間に非日常になるような、あまたある昼ドラの凡作と同レベルにしか見えないかもしれない。
しかし!
我輩にとっては、この本はめっちゃおもしろい!!
どこが?
それはだな。
我輩の経験からいって
「あれと同じじゃないかwww 俺が見た現象まんまそのままwww」
なんてのがすごくたくさん起きているからだ。
たびたび当blogで書いていること、我輩の出身中学の教員。
こいつらは人さまの子供を預かっておいて家畜を扱うような目でこちらを見ていたわけだが、それと全く現象がそこには書いてあった。
こいつらは実験で登場する看守役のヘルマンそのまんまだった。
ある日、わたしの父が中学校前を通りがかったとき、アタマがいかれているので有名な某教員と立ち話する機会があった。
そのときの父の感想は
「○○先生と話してみたけど、いたってふつうだったよ?」
である。
わたしは
「そりゃー父さんがヤツの権力のおよぶ範囲外の人間だからふつうに見えるんだよ。中の者からしたらいたってふつうという感想はありえんから誤解しないでほしいんだけど」
ととっさに答えた。
この現象もこの本に出てくる。
実験を観察しにきた部外者が上記ヘルマン氏がいたってふつうに見えたのに、看守役をはじめたとたんに囚人役をいじめはじめた、その現象そのまんまだ。
校長にしてもそうだった。
直射日光の刺さる炎天下の屋外で児童に直立不動の姿勢を強制させ何時間も独演会をしていられるほど無神経なタフガイで、毎回かかさずバタバタとぶっ倒れて保健室送りにしてもにこやかな笑顔をしていられるほど狂気のやどった冷酷な人でなければ校長になれなかった。
なぜか?
それはこの本の分析で全て明らかになる。
ここでちょろっと解説しても陳腐な伝わりかたしかしないのが悔やまれるが、かいつまんでいうと、本書でいう間化と責任転嫁による精神保護のプロセスが校長に働いたからである。
あるとき新卒の教員が入ってきた。
そのときはまだ、白のワンピースの似合うきれいなお姉さんで、ゲームの話で盛り上がれるほど気さくでもあった。
しかし、あっという間に”教員”になった。
ものの数か月で”お姉さん”には見えなくなった。
わたしはその過程をリアルタイムに観察した結果、将来は絶対に教員にはならないという誓いをより強く胸に抱いたものだ。
この現象は、人へ役割を演じさせようとする場の支配力みたいな形で全編を通して解説される主要テーマである。
そう。
わたしはこの本を読んで
「俺が見た現象まんまそのままwww」
と思わざるを得ない場面に数多く遭遇した。
この本はできればそういう人にぜひ読んでほしいところだ。
しかし、願わくばすべての人がそのように思う経験をしない世の中であることを。
追伸:
本書のスタンフォード監獄実験、イラクで捕虜を虐待したアブグレイブ刑務所、わたしの出身中学、このような醜行に積極的に加担し惨事の張本人となりやすい人間はどういう連中か?
そういう連中はどこから分析してもふつうの人間という答えしか得られなかったが、唯一わかったのはFスケールの高い人間がそうなりやすかったと書かれている。
Fスケールとは何か?
いまググったところ、権威主義的パーソナリティというもののようで、どんだけ権威に従順で、どんだけファシスト(全体主義者)になりやすいかを示す性格診断尺度だとか。
ちなみに中学校時代に権威(教員)に対して手の施しようのないほどめちゃくちゃ反発していた我輩が↓このweb診断をやってみたところ、
アドルノF尺度
http://cloudy9.fc2web.com/fscale.html
びっくりするくらい低い値(=権威に対立しやすく権威に加担しにくいという性格診断)がでやがった。
ああやっぱりねと思う次第である。
(たしか当blog読者の某氏にもそんなこと言われたことがあるような…)