見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

希望のかなた

2018-10-12 | 本と漫画と映画とテレビ
今回はちょっと自慢気な原稿になるかもしれない。なぜなら、この作品(『マッチ工場の少女』)の監督であるアキ・カウリスマキの映画を私は前に1本見たことがあるからだ。こんなことは、このページを1年以上もやってきて初めてだ。驚いたろう。私も驚いた。だからカウリスマキの、こう呼び捨てにするといかにも知っているって感じがするなあ。
だからカウリスマキが(話を戻してみた)「映画を母とし、フィンランドを父として誕生した愛と自由の作家」「イタリアの太陽と自由の香水が好き」というイカシたキャッチフレーズを持ってることも前から知ってた。

― ナンシー関『:でたとこ映画:マッチ工場の少女』より


ウェス・アンダーソン監督の『犬ヶ島』を目当てに早稲田松竹へ行ったら、
同時上映に組まれていた『希望のかなた』が非常におもしろくて。



『希望のかなた』(2017年・フィンランド)

監督・脚本・製作:アキ・カウリスマキ
出演:シェルワン・ハジ、サカリ・クオスマネン ほか

難民としてフィンランドの首都・ヘルシンキに流れ着いた青年と、彼に手をさしのべる?市井の人々を描いた「難民3部作」の第2弾。
2017年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞作品。


不寛容な世界と小さな善意。
決して他人ごとではない難民問題。
現実としっかり向き合わなければいけないのだけれど。

そんなことより、犬がかわいい。
犬の役柄というか扱いがとてもいい。(出番は少ないけどね!)
この監督は相当な犬好きとみた!!

なんでも、アキ・カウリスマキは自身の愛犬を映画に登場させることで有名らしく、
今回登場するコイスティネン(本名:ヴァルプ)も、もちろん監督の飼い犬。

(新旧コイスティネンの共演。右の青年は山田孝之に似ていると思う)


ざっと調べてみたところ、
1992年の監督作品『ラヴィ・ド・ボエーム』に出ている犬の子供が『白い花びら』(1999年)に出演していて、その子供は『過去のない男』(2002年)にハンニバルという役名(なんちゅう名前!)で登場。そして、ハンニバルの子供は『街のあかり』(2007年)にちょこっと出てきて、そのまた子供のライカは、2011年の『ル・アーヴルの靴みがき』に主人公の飼い犬役で名演を披露しているのだとか。

おまけに、ハンニバル(本名:タハティ)はカンヌ国際映画祭でパルムドッグを受賞し、ライカは審査員特別賞をもらっているらしい。

(左がタハティで、右がライカ。祖母と孫の関係)



犬好きといえば、
映画『ドミノ』(監督:トニー・スコット)の中で、脚本上では銃撃戦で撃たれて死ぬ設定だった犬のシーンが、監督が犬好きだからという理由で、犬が銃撃から上手く逃げるシーンに差し替わった、なんていう裏話を聞いたことがあって。

(トニー・スコット監督は、作中にチラッと登場する犬猫の行方を割ときっちり描いてくれる。気がする。)

なので、
「犬好き監督」=「トニー・スコット」だと勝手に思いこんでいたけれど、
アキ・カウリスマキもなかなかなかなか……。


大画面に映し出される犬がかわいくって、無性に犬が飼いたくなるものの
中盤で主人公の友人が発した「今の自分は誰ひとりと幸せにできない」
という言葉を思い出して冷静になる。

ああ、そうそう。
今の私の甲斐性じゃ、誰も(犬ですら)幸せにできないや、つって。

あとね、
頻繁に差し込まれる音楽が印象的で、
序盤のバンドシーン、左手はスティック、右手にはマラカスを握って
ドラムセットを叩いていたのがかっこよかった。

ただ、登場人物たちは携帯電話を持ってはいるものの、
車や家具、固定電話の型が異様に古めかしくて、時代設定が謎だった。
(それが監督の持ち味なのかも?)


それでもなにより、
『希望のかなた』と『犬ヶ島』の組み合わせが最高。

共通点が多くてステキな2作。
ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞、かわいい犬、こだわりの寿司、
動きが固い登場人物、どっちにも出ている(?)山田孝之、とか。

そして、小津安二郎な『希望のかなた』に対して、
黒澤明リスペクトの『犬ヶ島』っていう。

ホント上等な2本立てだったのよー。満腹。


もちろん、お目当ての『犬ヶ島』も抜群におもしろかった。
ひたすらかわいい。
ずっとかわいい。



この映画を作ったウェス・アンダーソン監督は頭がおかしい。(良い意味で)

情報量が多すぎて消化できなかったので、日本語吹き替えでもう1回観たいと思う。
いや、1回どころか何度も繰り返し観たい。
DVDが欲しい。
(ブルーレイしか特典映像が付いていないってのは、ヤクザじゃない?)

あと、主人公・アタリ少年の声がすごくいい。
『火垂るの墓』の節子ちゃん級のよさ。
ちょっと滑舌が悪い感じもすごくいい。
犬を触るときにまずグーを差し出すところもいい。
何度か流れる『I Won't Hurt You』という曲もたまらなくいい。

初めてイヤホンを付けて小声で会話するシーンもいい。
「もしもし、ボディーガード・ドッグ、聞こえる?」っていう。
あれ泣いちゃう。



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