見ないフリ

一時的な対応策にしかならない現実逃避をずっとするブログ

レ・ミゼラブル

2020-03-30 | 本と漫画と映画とテレビ
Save your breath and save your tears.
(呼吸と涙を節約しろ≒これ以上しゃべったり泣いても無駄だ)
ーミュージカル『レ・ミゼラブル』劇中歌「Fantine's Arrest」より


レミゼ(というかレミゼのフラッシュモブ)大好きっこなので、
YouTubeのかっこよい予告編に反応して映画館へ。

新型コロナウイルスが世界的に大流行中の今、
映画館へ出向くことに若干の躊躇いはあるものの
(映画『アウトブレイク』では、映画館で咳をした人から爆発的に感染が広がっていたじゃないですか…)

満開の桜と三連休の陽気と
興行場法に基づいて作られている映画館は
感染症対策のための換気がバッチリなうえに、基本しゃべることもないので
ヘタにレストランで会合するよりは俄然安全だよ説に後押しされて
冬眠明けのクマのようにノコノコとノソノソおでかけ。
(これで2週間後に発症してたらどうしようもない阿呆だ…)



『レ・ミゼラブル』(2019年 仏)
監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ ほか

19世紀の文豪ヴィクトル・ユゴーの小説『レ・ミゼラブル』で知られ、現在は犯罪多発地区の一部となっているパリ郊外のモンフェルメイユ。この街を舞台に、現代のフランスが抱えている格差や多民族社会の問題をリアルに描いた作品。


つまりは、2020年版のレ・ミゼラブル(悲惨な人々)。
「あれから160年近く経ちましたが、こちらは相変わらずです、ユゴーさん」
というお話だった。

現代版レミゼといっても、
大枠として小説『レ・ミゼラブル』を掲げているだけであって、
登場人物の誰がジャン・バルジャンで誰がジャベールで~とか
そういった細かい部分なんかを踏襲している訳ではない。

なんつうか世界的に流行っている?貧富の差や移民問題の物語。
『パラサイト 半地下の家族』『万引き家族』『ジョーカー』『フロリダ・プロジェクト』『わたしは、ダニエル・ブレイク』などなど。
こういう系列の作品、これのフランス版という感じ…?

ただ冒頭で、2018年のサッカーW杯優勝に沸くフランスの人々が
凱旋門をバックにどーん!と映し出されるところは、
これぞ本場のレミゼ!ってな趣で思わず「おお…」と声が出ます。



なんなら、このシーンのBGMにミュージカル版レミゼの
『民衆の歌(Do you hear the people sing?)』が流れてもぜんぜん違和感がない。
(思いっきり英語だから、当のフランス人たちは嫌がるのだろうけれど…)

ちなみにモンフェルメイユは、
ユゴーの小説の設定でいうと、テナルディエ夫妻が営む宿屋がある街で、
その宿屋で働かされている幼いコゼットをジャン・バルジャンが連れ出すのですな。
(下図参照)



そして、
小説のクライマックス、6月暴動の起こる1832年当時のパリはコレラが大流行。
2020年現在はコロナが猛威をふるっております。
時代は螺旋階段のように、太陽系の惑星たちのように、
進みながらもぐるぐる回っているということ…?
怖い…怖いよう…。

話を戻して・・・

この映画の主人公は警察官で、
彼がモンフェルメイユの街に新しく赴任してくるところから物語が始まるため
リュック・ベッソンの『TAXI』感も味わえたりします。
(内容はいたって真面目。誰もコンニションハーとか言わない)
映像も『ヤマカシ』ばりにスタイリッシュ。

ついでに、黒人の警察官がイケメンで目にも優しい。

乱暴に終わるラストは、
「彼らはここに残るからこの先は各々で考えて!」という監督からのメッセージなのかな…?

善悪はその人の視点や立場によって変わるものだから、
ある程度の衝突は仕方がないのかもしれないけれど、
登場人物それぞれが、ちょっとずつ何かに怒っているというのもあって
すぐにイザコザが起きる。

過去には貧困地区で暮らす人々の「怒り」が爆発して、
大規模な暴動(2005年パリ郊外暴動事件)が起きたりもしたけれど、
そんなことしても怒りの根本は解決しなくて…。

途中、ムスリムのレストラン店主が
「正しい怒りはどうすればええねん!」みたいなことを主人公に言っていて、
ホントそれよねー。と思う。

この怒りはただひたすらじっと我慢するしかないの?
深呼吸して笑顔でいればいいの?
知識や知恵で乗り越えるの?

主人公が同僚に言ってたように、
個々がすべきことをするのが一番いいと思う。

まさに「Do the Right Thing」というやつ。

政府は国民から集めたお金を放出すればいいし、
少年は盗みを止めたらいいし、
警官は少年に謝ればいいし、
なんなら法できちんと裁かれればいい。
仕事は覚悟をもってすればいいし、
責任はとるべき人がとればいい。

Do you hear the people sing?

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