見ないフリ

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アシスタント

2023-09-24 | 本と漫画と映画とテレビ
今のこの状況って、広告代理店風に言うと「能動視聴者数が多く強いインプレッションが期待出来る状況」ってやつなの。…殆どの客層は叩くべきか擁護すべきか悩んでる『無言の人々(サイレントマジョリティ)』。つまり「答えを求めてるユーザー」が多い。そこに『共感性の高い意見(コンテンツ)』を提供すれば多くの人がそれが正義と思い込む市場(マーケット)になっている。これだけ注目されている中だもん。世の中の意見まるっと上書き出来ちゃうかもね

ー漫画『推しの子』より




『アシスタント』(2020年 米)
監督:キティ・グリーン
出演:ジュリア・ガーナー、マシュー・マクファディン ほか

名門大学を卒業した主人公は、憧れの映画業界でジュニア・アシスタントとして働き始めるが……会社での彼女の一日を描くことで、業界・職場が抱えるハラスメントや搾取の構造、女性蔑視や抑圧などさまざまな問題を浮き彫りにする作品。

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観賞後は、終業後の主人公と同じくらいズーン……と気が重くなる。

朝の6時から夜9時頃まで続く仕事は、お茶汲みやコピー、電話対応、迎えの手配などの雑用ばかり。
ちょっとでも会長の気に障ることをすれば、反省文をメールで送って、
会長が気に入ったかわいい女の子もホテルまで送って。
ついでに、顔採用された女の子に仕事を教えて。

この映画は、2017年に性的虐待で告発されたアメリカの映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインのあれこれと、それをきっかけに巻き起こった#Me Too運動を下地に、現代の職場におけるハラスメント問題をフィクション形式で描いた作品なんだとか。
なので、主人公が働く会社は、ハーヴェイ・ワインスタインが設立したミラマックス社で、会長はハーヴェイ・ワインスタインがモデルってことなのかな?

(ハーヴェイ・ワインスタインの事件については、アマプラで観た『SHE SAID/シー・セッド その名を暴け』という映画が面白かった)

映画業界、エンタメ企業が舞台の物語ではあるけれど、
さまざまな分野で働く人々の数百にも及ぶリサーチやインタビューを元に作られているらしく、どの職種や職業にでも当てはまる普遍的な内容。


同僚に教えてもらいながら、会長宛に反省文をメールに打ち込む主人公を観ていると、こんなキモい会社さっさと辞めればいいのに…!と思ってしまう。

しかし、主人公の夢は映画プロデューサーになることであり、今の名企業にしがみついてキャリアを積んで夢を叶えようと努力している。

途中、会長のハラスメント行為を確信した主人公は
人事部長のところへ報告に行くのだけれど、まぁ、この人事部長がクソ。
「はて?どこが問題なのか?」というすっとぼけた態度に心底腹が立つ。
おまけに「君は会長のタイプじゃないから心配いらない」みたいなことも言う。

こんなにもクソな人事部長だけれど、彼の語りを聞いて「確かにそうだな…」と納得してしまう自分もいる。

というか、主人公は会長から直接性加害を受けたわけじゃないのに、人事部長に報告する意味はあるの?
双方(会長とお気に入りの女の子)はきっとウィンウィンでやってるんだから、大人しく自分の仕事をこなせばよいのに、、

などという感想を持つ。

ここまで思って、あれ?この考えがもしかしたら前時代的なのか?
と自分の認識の古さに驚愕する。ヤバいヤバいヤバい。ズレてるズレてる。こわっ。
私みたいな考えの人間がいるから、会長の悪行は長い間隠匿されて肥大化していったのでしょう。

世の中の価値観と己の意識のズレをチューニングするためにも、
一度観ておいた方がいいかもしれない。
(人事部長サイドの人は特に)


なんて、6月に観た映画の話を今更しているのは、
ジャニーズの騒動と非常によく似たものを感じたから。

創設者が悪であることは間違い無いけれど、
それを容認・見ないふりしていた周囲の人間、組織や業界全体の問題でもありますよね。という内容がめちゃくちゃリンクしている。

トップが悪いことをしててごめんね!では済まされなくて、
みんな、各々が意識を変えないとまた似たような事件は起きると思う。

だから、今は意識改革をするチャンスというか。

ほんの80年くらい前までは女性に参政権なんてなかったけれど、今じゃ当然の権利になっているように、どこかで意識的に方向転換の舵を切らないと、権力者とその周りの人間が下々の者の生き血をゴクゴク飲んでニッコリ。という構図はこのままずっと変わらない気がする。

まぁなんでもかんでも欧米の価値観が正しい訳じゃ無いんだろうけれど、
(鯨もイルカも食べたきゃ食べればいいし、緊急時以外は大相撲の土俵に女性は入らなくていいと思う)
ことハラスメントに関しては、ぴったりの日本語がないことからも本来日本になかった概念なわけで、そこの意識は見習った方がいいのかなと思ったり…

日本には「衆道」という言葉があるくらいだから、茶道、花道的な日本文化、武士道のひとつなのかも知れないけれど、
いつまでもご恩と奉公、任侠、仁義ってイキっている場合じゃあない。
show must go on はトンチンカン過ぎる。

相手次第ではセクハラ、パワハラ、児童虐待だよ、っていう。
恩も感じているとか言っている被害者は、いわゆるストックホルム症候群なのでは。


しかし、ジャニーさんのあれこれは口裂け女や人面犬級の都市伝説で、1990年代に田舎で小学生をしていた私の耳にも届いていたけれど、都市伝説じゃなかったんだね。

KinKi Kidsの剛くんが「YOU〜しちゃいなよ!」とネタにしているのをテレビで観て、おやおや?タブーな感じの人ではなかったのか??と意識を改めたり、でもやっぱり2000年くらいに裁判でこっそり負けたりしていて、よくわかんねーな。と思っていたけれどよもやよもやでしたな。
北朝鮮が日本人を拉致していたというニュースくらい嘘みたいな本当の話。やっぱ、やっとったんかーい!っていう。ハーヴェイ・ワインスタインのように、生きてる時にきちんと裁かれてほしかったものです。

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