「老人タイムス」私説

昭和の一ケタ世代も高齢になりました。この世代が現在の世相をどう見て、考えているかーそのひとり言。

            防火訓練 防空演習

2010-06-07 05:16:28 | Weblog
昨日、近所の中学校の校庭で区主催の「小型消防ポンプ操法演技発表会」があり、
町内の御婦人がこれに参加するので、老妻と応援にでかけた。僕らの住む東京の
住宅街では、消防団員の成り手がなく、町内会の御婦人が自発的に消防団を結成、
毎年一回、この演技発表会に参加している。

町内会の三人の御婦人は、りりしくダイダイ色の制服に身を固め、ホースの筒先を
持って放水した。これを見学しながら、僕は遠い昔、戦争中の防空演習のことを想い
起こした。母親や近所のおばさんたちがもんぺ姿に防空頭巾をかぶり警防団長の号
令でバケツ・リレーで防火訓練をしていた、あの風景だ。結局、こんな訓練は実際の
空襲では役にたたなかったのだが。

昭和19年暮から東京への空襲は激化し、わが家にも5月24日深夜の空襲で焼夷弾
の破片が落ち、両親と一緒に火たたきに水をつけて消火した。破片だからこれで済ん
だが、焼夷弾が雨あられと落下した現場では、逃げるのがせい一杯でとてもバケツ・
リレーどころではなかったようだ。

東京への空襲は5月の山手空襲が事実上最後で、6月には10日、16日、21日、23日
と4回空襲警報は出ているが、被害はほとんど出ていない。敵の戦術は地方の都市
へと移り、やがて敗戦を迎えた。あれから65年、幸い東京では大きな人災も自然災害
も起きていない。”災害は忘れた頃にやってくる”とは、確か寺田寅彦先生の言葉だっ
たと思うが、その意味でもこういった防火訓練も必要である。