安曇野ジャズファンの雑記帳

信州に暮らすジャズファンが、聴いたCDやLPの感想、ジャズ喫茶、登山、旅行などについて綴っています。

ローズマリー・クルーニー SWINGS SOFTLY

2008-07-12 17:55:32 | ヴォーカル(L~R)

先日、前田マリさんの書いた本「猫はジャズが好き」(晶文社刊)を読んだところ、「おしゃれは女性シンガーのファッションから」という章に「ハンモックに揺られたローズマリー・クルーニーのブルーのストライプのシャツもすてきだし、・・・・」と記されていました。細やかな観察ですが、全くそのとおりのさわやかで夏向きなジャケットです。内容も気にいっているので、さっそくとりだして聴いてみました。

ROSEMARY CLOONEY (ローズマリー・クルーニー)
SWINGS SOFTLY (MGM 1960年ころ録音)

 Rosemaryclooneyswingssoftly

ジャケットが印象的なローズマリー・クルーニーのアルバムです。クルーニーにしては珍しいMGMへの録音であることと、収録曲が比較的地味なのであまり話題に上ることはないかもしれませんが、ほっておくにはとてももったいない一枚です。

1970年代後半以降にコンコード・レーベルに多数の録音があり、ジャズ色を強めましたが、50年代は「カモナ・マイハウス」などのヒット曲を多数持つポップス歌手でもありました。このアルバムでも、そういう面がうかがわれてストレートに歌っています。編曲に面白いものがありますが、残念ながら、誰だかわかりません。

曲目は、スタンダードが「For You」、「Looking for A Boy」の2曲。ブロードウェイミュージカルから「Love Eyes」、「Sorry For Myself」、「Keep It Simple」の3曲。出自がよくらからない「Always Together」、「I Wonder」、「Grieving for You」、「With you and Me」などで全12曲。伴奏はビックバンドですが、曲によりストリングスが入ります。

「For You」はラテン・リズムで華やかに歌われ、これが白眉。「Looking for A Boy」、「Keep It Simple」もミディアム・リズムに乗ってスインギーに歌われます。有名曲ではありませんがメロディーの美しいバラードが収録されています。「Alway's Together」、「I Wonder」、「Grieving for You」ですが、いずれも過度な節回しは避けて、べとつかずに雰囲気を大事にしてたいへん好感がもてます。

それにしてもこのジャケット、涼しげです。ファッションもそうですし、クルーニー自身もスマートですね。


ホレス・パーラン ON THE SPUR OF THE MOMENT

2008-07-08 22:30:47 | ピアノ

職場の書道部に入部をしました。僕の場合、習字の域を出ることはありませんが、たまには静かな時間を持ちたいということが始めた理由です。先週、初めて練習に参加したら、墨を磨る必要がなく墨汁を使っていたので、ちょっとびっくりしました。新入部員(私ともう一名で計2名)も入ったので、先生も含めて暑気払いをやろうという話が瞬く間に決まりました。こういう話は大歓迎です。墨汁が黒々としているところから、本日はこのアルバムです。

HORACE PARLAN (ホレス・パーラン)
ON THE SPUR OF THE MOMENT (Blue Note 1961年録音)

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個性的なピアノのホレス・パーランに加えて、タレンタイン兄弟が参加した作品なので、聴く前から出てくる音が想像できそうです。パーランは、小児麻痺により右手の2本の指が使えないのですが、演奏はそのハンディを感じさせない優れたものです。同一フレーズの繰り返しをうまく使いながら緊張度を高めていくなどの特徴がみられます。

メンバーですが、パーラン(ピアノ)、トミー・タレンタイン(トランペット)、スタンレー・タレンタイン(テナー・サックス)、ジョージ・タッカー(ベース)、アル・ヘアウッド(ドラムス)とブルーノート・レーベルのカタログ4000番代を代表するメンバーです。

曲目は、パーランやブッカー・アーヴィンなどの手になるジャズ・オリジナルです。「On The Spur of The Moment」、「Skoo Chee」、「And That I Am So In Love」、「Al's Tune」、「Ray C」、「Pyramid」という6曲。パーランのピアノ・プレイを聴くには表題曲や「Al's Tune」がいいですが、S・タレンタインのブルージーかつちょっとドスの効いたテナー・サックスを楽しむには「And That I am So in Love」や「Ray C」というミディアム・ナンバーがよいです。

ベースのジョージ・タッカーもムード設定に大事な役割を果たしており、個性的な役者が揃った録音の一つに挙げられます。大きめの音で聴くと一層味わい深いです。

ホームページにレッド・ガーランド(ピアノ)を掲載しました。時間があればご覧ください。モダンジャズやヴォーカルを聴こう レッド・ガーランド


ジェーン・パウエル CAN'T WE BE FRIENDS?

2008-07-04 22:49:42 | ヴォーカル(E~K)

いよいよ暑くなり夏本番です。ここ長野でも朝はいくらかしのぎやすいものの、日中はどうにもなりません。夜に入っても冷房を効かせてレコードを聴いています。暑い夜に相応しいヴォーカル盤といえば、ジューン・クリスティ「Something Cool」がすぐに浮かびますが、今夜は、夏の出来事をつづった「The Things We Did Last Summer」(過ぎし夏の想い出)の入っている清楚なソプラノによるアルバムです。

JANE POWELL (ジェーン・パウエル)
CAN'T WE BE FRIENDS? (Verve 1956年録音)

 Cant_we_be_friends

1944年から58年まで、MGMの映画に20本もでているミュージカル女優ジェーン・パウエルのアルバムです。代表作としては、「掠奪された7人の花嫁」、「恋愛準決勝戦」などがあり、歌ばかりでなく踊りも素晴らしい女優さんです。

歌声は、音域としてはソプラノで、声に潤いがありキュートで清楚な歌いぶりです。編曲、伴奏も豪華で、バディ・グレブマンが担当しています。ミュージカルの歌の感じは残りますが、スイングもしたヴォーカル盤です。また、伴奏のビッグ・バンドは腕っこきがそろっているようで、迫力のある音を出しています。

曲目は、「My Baby just Cares for Me」、「Imagination」、「Hooray for Love」、「I Got It Bad and That Ain't Good」、「Let's Face The Music and Dance」、「In Love in Vain」、「Can't We Be Friends」、「The Things We Did Last Summer」など12曲です。スイングしたものでは「My Baby just Cares for Me」、バラードでは「In Love in Vain」も印象に残ります。

サミー・カーン詞、ジュール・スタイン曲によるバラード「The Things We Did Last Summer」は1946年の作品。過ぎ去った夏の想い出を、冬の間懐かしく思い出すという大意で、その想い出が、「二人で乗ったボート」、「湖を照らす月明かり」、「二人でしたダンスや口ずさんだ歌」といったものです。ジェーンは、ヴァースから美しく、情感を込めて歌います。夏の情景と失恋をして冬になってからの気持ちが浮き出てくるかのようです。