書店で雑誌コーナーを見ていたら、「サライ」に猫の特集と並んで「レコードを愉しむ」という特集記事が載っていたので買ってみました。レコードをかけてクラシックやジャズを聴かせてくれる喫茶店の紹介や、井上道義(指揮者)さんや後藤雅洋(ジャズ喫茶店主)さんが愛聴盤(レコード)を挙げている記事などが載っていて面白く読みました。できればレコードで聴きたいアルバムです。
BENNY GREEN (ベニー・グリーン)
THESE ARE SOULFUL DAYS (BLUE NOTE 1999年録音)
ベニー・グリーン(ピアノ、1963年生まれ)は、コンスタントにアルバムを発表し、来日も重ねています。前回の来日時には、仕事と重なってしまい行くことができず、まだ実演に接したことがないので、是非ライブで聴いてみたいピアニストです。ハードバップをベースに、ファンキー色もあって、好きなピアニストの一人です。これは、ブルーノートレーベルの60周年記念作品で、それにふさわしい選曲がされています。
ピアノトリオの編成ですが、ドラムレスで、ベニー・グリーン(p)、ラッセル・マローン(g)、クリスチャン・マクブライト(b)というメンバーです。現代のメインストリームを代表するミュージシャン3人が揃いました。オスカー・ピーターソン・トリオ(ピーターソン、レイ・ブラウン、ハーブ・エリス)が、ベニー・グリーンの念頭にあってこの編成にしたようです。
曲は、過去のブルーノートレーベルのアルバムで演奏されたものから8曲が選ばれています。ホレス・シルヴァー作「Virgo」、エルモ・ホープ作「Bellarosa」、ボビー・ハッチャーソン作「Summer Nights」、ジョー・ヘンダーソン作「Punjab」、カルヴィン・マッセイ作「These Are Soulful Days」、デクスター・ゴードン作「Ernie's Tune」、リー・モーガン作「Hocus-Pocus」、ホレス・シルヴァー作「Come On Home」の全8曲。
それぞれの曲のオリジナルが、どのアルバムに入っていたかを参考に記しておきます。曲名、演奏者、タイトルの順に掲げます。
1 Virgo-Horace Silver 「6 Pieces of Silver」
2 BellarosaーLou Donaldson・Clifford Brown 「New Faces New Sound」
3 Summer NightsーBobby Hutcherson 「Stick Up」
4 PunjabーJoe Henderson 「In 'N Out」
5 These are Soulful DaysーLee Morgan 「Lee Way」
6 Ernie's TuneーDexter Gordon 「Dexter Calling」
7 Hocus-PocusーLee Morgan 「The Sidewinder」
8 Come on HomeーHorace Silver 「Finger Poppin'」
ベニー・グリーンはじめ三者のプレイがご機嫌なアルバム。最初の「Virgo」では、グリーン(p)のこれでもかのスイングぶりが披露されて、胸のすくような快演が聴けます。そういったスピード感のあるプレイばかりでなく、「Summer Nights」や「Ernie's Tune」はバラードで、グリーンとマローン(g)の協調した繊細なプレイも見事なものです。「These are Soulful Days」は、リー・モーガンの「Lee Way」中のファンキーな曲で大好きですが、ここでは、グリーン、マローン、マクブライト(b)とドライブのかかった熱いソロが続きます。
【サライ2017年3月号(小学館)】
【この際聴いてみたレコード(日本盤ですが)】
リー・モーガン(tp)の「Lee-Way」(BLUE NOTE) A面1曲目が「These are Soulful Days」です。モーガン(tp)、マクリーン(as)、ティモンズ(p)と役者が揃っています。
デクスター・ゴードン(ts)の「Dexter Calling」(BLUE NOTE) B面3曲目が「Ernie's Tune」です。スタンダードの「 End of A Love Affair」や「Smile」、ゴスペルタッチの「Soul Sister」が収録されています。
ベニー・グリーンがデビューしたてのころは「ピアノの」と紹介されていましたが、今は逆に「トロンボーンの」と書かれるほど有名になりました。世代によってはトロンボーンのベニー・グリーンは知らないのでしょう。
このアルバムは選曲といいメンバー構成といい企画が面白いですね。あまり有名ではないジャズマンのオリジナル曲ですが、それぞれ練られております。オリジナルが収められているタイトルだけでブルーノートの凄さがわかります。
ベニー・グリーンの探してきた曲は、それほど知られていないものが多いですが、それぞれブルーノートオリジナルとでも名付けたいような佳曲が揃っています。「These are Soulful Days」を収録してくれたのは、感涙ものでした。
ベニー・グリーンは、dukeさんがおっしゃるように、トロンボーンよりも、ピアノの方がいまや知られるようになったかもしれません。サックスのビル・エヴァンスもいましたが、さすがにピアニストのビル・エヴァンスを凌駕することはないかと思います。