このところ、作家、佐々木譲さんの小説が気に入って、いろいろと読んでいます。読了した2冊について、感想などを書きます。
(最新刊「警官の酒場」掲載の著者略歴)
佐々木譲(ささき・じょう)
1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞受賞。90年「エトロフ 発緊急電」で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞長編部門を受賞。2002年「武揚伝」で新田次郎文学賞を、10年「廃墟に乞う」で直木賞を受賞。16年日本ミステリー文学大賞を受賞する。著書に「道警」シリーズをはじめ、「ベルリン飛行指令」「警官の血」「沈黙法廷」「抵抗都市」「図書館の子」「降るがいい」「帝国の弔砲」「裂けた明日」「闇の聖域」『時を追う者』など多数。
【夜にその名を呼べば(ハヤカワ文庫)】
表紙
(あらすじ)
(感想など)
本書は、1992年3月に早川書房より単行本として刊行された著者の比較的早い時期の作品です。警察小説や歴史小説、冒険小説など幅広い作風の著者ですが、この手のハードボイルドサスペンスタッチの小説が僕は好みということもあり、一気に読了しました。
内容は、ココム違反事件で濡れ衣をきせられ、最愛の家族まで失った主人公、神崎の復讐劇です。物語は、ベルリンの壁崩壊前と崩壊後にまたがって続き、舞台は、ベルリン、東京、小樽です。結末部分に違和感を覚える人もいるかもしれませんが、哀惜感や詩情が漂っている点も、素晴らしい。
【北帰行(角川文庫)】
表紙
(あらすじ)
(感想など)
本書は、2010年1月にKADOKAWAより単行本として刊行され、文庫化されたもの。本作は、ハードボイルドタッチが強く、拳銃での撃ち合い場面も何カ所か登場します。本作も展開が早く、アクション映画を見ているようでもありました。
暴力団に妹を殺され、その復讐にロシアからきたターニャと、旅行業者の関口卓也が、ロシアンマフィアや暴力団と戦う小説です。近年、インバウンドで来日したり、普通に日本で働いている外国の方も多く、裏社会の話ではありますが、リアリティが感じられ、面白く読みました。
番外編、「北帰行」と言えば、反射的にこの歌を想い出します。
【小林旭が歌う「北帰行」】
歌詞は、原歌とは、異なっていますが、
『窓は夜露に濡れて 都すでに遠のく 北へ帰る旅人ひとり 涙流れてやまず』と、
歌詞とともに哀愁漂うメロディーが、当時の人々の琴線に触れたのでしょう。
(注)原歌は、旧制旅順高等学校の愛唱歌(寮歌)。1961年(昭和36年)に、小林旭が取り上げ、歌謡曲としてヒット。歌のヒットにより、小林旭が主演する映画 『渡り鳥シリーズ』(日活)の主題歌となった。