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写真とコメントで紹介する旭川の郷土史エピソード集

個性豊かな旭川の郷土史本

2017-09-29 21:00:00 | 郷土史エピソード

旭川の歴史について学ぶ上で欠かせないのが、市史をはじめとするさまざまな書籍です。
中でも旭川を深く愛した先達による著作=数々の郷土史関連本は、かつての郷土やそこに生きた人々について詳しく知る貴重な手がかりとなっています。
きょうはそうした個性豊かな旭川の歴史本についてご紹介します。


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村上久吉著「旭川市史小話」豊談クラブ


まずは昭和39年に刊行された「旭川市史小話」です。
郷土史家で旭川市史の編纂も手掛けた村上久吉(むらかみ・きゅうきち)氏が、当時の市の広報誌「旭川市民」に連載したものを1冊にまとめたものです。
旭川開拓の創生期から、出版当時までの歴史のエピソードが、150話にわたって紹介されています。
ざっとタイトルだけ拾ってみますと、「最初の和人定住者」「中央道路を開く」「上川鉄道開通」「道庁を旭川へ」「旭川のテレビ」などなど。
市史などが幾分堅苦しい著述になっているのに対し、この本はあくまで肩の凝らない読み物風の記述で通されています。
なお本の装丁は、刊行の前の年に初当選し、37歳という当時全国で最も若い市長だった五十嵐広三(いがらし・こうぞう)氏が、また題字は高齢のため引退して五十嵐氏にバトンタッチした元市長の前野与三吉(まえの・よさきち)氏が、それぞれ手掛けています。



渡辺義雄編「旭川市街の今昔 まちは生きている 上巻」総北海


同 下巻



続いても郷土史家による著作、旭川歴史本の中でもピカイチの労作と言えるでしょう、「旭川市街の今昔 まちは生きている」(上下巻)です。
「旭川市史小話」と違って、こちらは写真や地図がメイン。
貴重な画像が大量に掲載されていて、街の移り変わりが目に見える形で示されています。
著者は営林署などに勤めながら郷土史家として長年活動した渡辺義雄(わたなべ・よしお)氏です。
巻末には、面談して話を聴いたり、写真などの資料を提供してもらったりした人や会社のリストが載っていますが、その数なんと200。
どれだけの時間と労力をかけて本が制作されたか、想像するだけで本当に頭が下がります。
中でも我々後進の郷土史家にとって貴重なのは、昭和6~7年頃の旭川中心部の戸別地図(全3枚・渡辺氏手作り!)が付録に付いていることです。



付録の戸別地図(部分・駅前)


同上(商工会議所の右にある「秋山」という家が、母の実家です)



しかもこの地図、その場所にあるお店などがどのように変遷して来たかも分かるようになっています。
ちなみに、数年前に旭川市内で「なつかしの平和通展」という企画展を開いた際、版元の総北海さんの許可をいただいて、この戸別地図を大きく引き伸ばして掲示したことがあります。
その時は、大勢の方が訪れて食い入るようにこの地図を見つめていました(実は、私もかつてこの地図の中に、母親が生まれ育った常盤町の祖父宅を見つけて感激した思い出があります)。



木野工著「旭川今昔ばなし」総北海出版


同(続)



続いて紹介するのは、旭川ゆかりの文学者2人が書いた郷土史本です。
まずは新聞記者として活動しながら直木賞の候補にもなった木野工(きの・たくみ)氏の著書、「旭川今昔ばなし」と「旭川今昔ばなし(続)」です。
この本の特徴は、地域や業界別に、かつての旭川の人やお店の様子が、著者の記憶をもとにいきいきと描かれていることです。
その主人公は、飲食店の店主などあくまで町場の庶民です。
そこには、ジャーナリストであり、作家でもあった著者の温かい目線を感じることが出来でき、読み物としてもよくできた本と言えます。



佐藤喜一著「旭川夜話 その裏面史」総北海


旭川ゆかりの詩人、小熊秀雄の研究者としても知られる佐藤喜一(さとう・きいち)氏も、木野氏と同じような郷土史本を出しています。
著者がさまざまな雑誌などに寄稿した文章から、旭川の歴史に関するものを集めた「旭川夜話 その裏面史」です。
旭川でかつてあった事件についての文章が多いので、このようないいかめしいタイトルとなっていますが、深刻なものではありません。
「へー、旭川でこんなことがあったんだ」と興味がそそられる内容になっています。
会社に抗議する男が工場の煙突に登った「煙突男事件」、右翼と左翼が今のロータリー付近で衝突した「常盤橋乱闘事件」など、私がこの本で初めて知った史実も少なくありません。



NHK旭川放送局編著「知らなかった、こんな旭川」中西出版


これは手前味噌なのですが、2013年に私が中心になって作ったNHK旭川放送局編著の「知らなかった、こんな旭川」です。
この本は、「まちは生きている」とその他の本の中間を目指したと言いますか、双方の良いとこ取りをねらった本です。
つまりは、写真はたくさん使いつつ、読み物としても楽しめるようにと工夫した旭川郷土史のエピソード集です。
街の移り変わりも実感してほしいと思い、かつての街並みの写真と、同じ場所の現在の写真を並べたページも作りました。
この本を制作するに当たっては、きょう紹介した4氏の著作を参考にさせていただきました。
先達の優れた仕事がなかったら、郷土史を語り継ぐ作業はもっと困難になっていたことは間違いありません。
私が手掛けているこのブログなどの作業も、今後現れてくれるであろう後進の方の仕事の一助となればうれしい限りです。



旭川市市史編集事務局編「開基100年記念誌 目で見る旭川の歴史」


北海タイムス社編「郷土の歴史に生きる 旭川九十年の百人」北海タイムス社



最後に、旭川の郷土史を学びたいという方のために、箇条書きですが、このほかの歴史本を紹介しておきます。


 ▼旭川市史(全7巻)
 ▼新旭川市史(全7巻)
  ・ともに郷土史研究の基本中の基本。
 ▼旭川市市史編集事務局編「開基100年記念誌 目で見る旭川の歴史」
  ・写真、地図、図版多し。目で見る市史。
 ▼旭川回顧録
  ・大正12年発行。年鑑的な編集。
 ▼旭川市史稿
  ・昭和6年刊行。市史のもととなった記録集。
 ▼旭川功労者伝
  ・昭和35年刊行。旭川の開発に尽力した人々の記録。
 ▼旭川の人びと
  ・旭川叢書の一つ。人もの。
 ▼郷土の歴史に生きる 旭川九十年の百人
  ・北海タイムス社が昭和55年に刊行。これも人もの。