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写真とコメントで紹介する旭川の郷土史エピソード集

舞台は常磐公園!?

2014-05-12 22:18:25 | 郷土史エピソード
大正5年に開園し、まもなく100年の歴史を刻む常磐公園。
今も市民の憩いの場として親しまれていますが、
園内にはさまざまな施設が設けられ、文化・スポーツ活動の拠点としても活用されてきました。

そうした中、
公園そのものを舞台にしたユニークな演劇の公演が過去何度か行われていることを御存じでしょうか。

今回は、そんな常磐公園で行われた野外演劇について紹介したいと思います
(あくまでワタクシが把握できたものですが)。

まずはこちら。


写真①唐十郎作「鐡仮面」(劇団「河」公演・昭和48年9月、常磐公園)

かつて旭川で活躍した劇団「河」による野外公演を撮影した貴重な写真です。

場所は千鳥ヶ池に浮かぶ亀ヶ島。頓宮さんの島の脇にある一回り小さな島ですね。
たいこ橋と呼ばれるアーチ型の橋が架かっているところです。

で、具体的にどこを舞台にしたかというと、こちら。
当時のパンフレットが残っていました。




写真②劇団「河」予告チラシ(昭和48年・下は拡大)

当時、演出を担当していた(主演も)星野由美子さんに伺ったところ、
地図のように島の半分を舞台として使い、観客はそのまわりにゴザを敷いて観劇したそうです。

また場面によっては池の中から役者がはいあがってくるといった
当時の小劇場演劇(アングラ演劇とも呼ばれた)ならではの演出もあったそうです。


写真③常磐公園の亀ヶ島

劇団「河」は、昭和33年に結成された旭川のアマチュア劇団です。
当初はオーソドックスな舞台表現を追求していましたが、
70年代に入ると東京の小劇場運動に高まりに刺激を受け、
唐十郎や清水邦夫らの戯曲を次々と上演、その舞台は、在京の演劇人からも高く評価されました。

その「河」が自らの拠点として昭和49年にオープンしたのが、
常磐公園脇の7条通4丁目にあった「河原館」です。

ここでは「河」による芝居の上演のほか、
コンサートや映画の上映、詩の朗読などさまざまなイベントが行われ、旭川の文化発信に大きな貢献を果たしました。


写真④かつての「河原館」

手元にある上演記録を見ますと、劇団「河」が野外劇に挑戦したのは
昭和48年に1回(「鐡仮面」)と、昭和49年に2回(唐十郎作「二都物語」)の3回、
いずれも「河原館」開設前後の時期です。

で、もうひとつの野外劇、「二都物語」も舞台写真が残っていましたので紹介します。
ただこの作品は、屋内で上演した時と野外で上演した時があり、
写真からはどちらか判別することができません(おそらく屋内かと)。


写真⑤唐十郎作「二都物語」(劇団「河」公演・昭和48年)


写真⑥同上

「二都物語」は戒厳令下の韓国ソウルを取材して執筆し、
昭和47年に初演された赤テント=状況劇場の代表作のひとつで、わたしも好きな作品です。

「河」による野外公演では、クライマックスで、
星野さん演じる主人公リーランが、男性俳優らが掲げた戸板に乗って池の中を進む
(俳優たちは当然池の中です)というシーンがありました。

なおこの時の公演では、亀ヶ島で稽古をしていたところ、
役者同士の激しい台詞のやり取りを喧嘩と勘違いした住民が110番通報し、
警察官が駆けつけるという騒ぎがあったそうです。
「おまわりさんがなかなか芝居だと理解してくれず、
結局、実際に1シーンを演じて見せて、やっと納得してくれたのよ」と星野さんは苦笑していました。


写真⑦同上(手前は主人公リーランを演じる星野由美子)


写真⑧「二都物語」のチケット(「野天劇場」としてある)


写真⑨「二都物語」のチラシ(昭和59年の再演の際のもの)

一方、劇団「河」では、
在京の劇団の地方公演に協力することが多かったため、数多くの劇団が旭川に訪れています。

そんな劇団の中でももっとも多く旭川で公演をしたのが、
「演劇センター 68/71」通称「黒テント」(現在は「劇団黒テント」)です。

わたしが確認しただけで、昭和50年から58年にかけて10回ほど旭川に来ていて、
いずれも常磐公園にテントを張って公演をしています。

このうち50年の公演のチラシがこれです。


写真⑩黒テント公演「キネマと怪人」旭川公演チラシ(表)


写真⑪同上(裏)

「キネマと怪人」は、黒テントの座付き作者であり、
演出家でもあった佐藤信の代表作、「喜劇昭和の世界」の第2作です。
実はワタクシ、このときの旭川公演をこの目で見ています。

まだ高校生でしたが、看板俳優だった清水�囗治や斉藤晴彦、新井純らの演技と、
テント空間であることを巧みに使った斬新な演出に目を奪われたことを昨日のことのように覚えています。


写真⑫「喜劇昭和の世界」第3作「ブランキ殺し 上海の春」旭川公演チラシ(昭和54年・表)


写真⑬同上(裏)

野外劇やテント芝居のだいご味は、目の前の劇空間が、演出によって周りの実際の空間と混ざり合う瞬間です
(こう書くと分かりにくいのですが、
実際に経験してもらうと、鳥肌もののカタルシスであることをご理解いただけると思います!)。

「キネマと怪人」では、
突然、客席脇のテントが大きくめくり上げられ、
外でサーカスのライオン(そういう役)が実際に火の輪くぐりをするという演出があり、
客をやんやと沸かせるシーンがありました!

いつの日にかまた
常磐公園で野外劇やテント芝居を楽しむことができたらと願わずにいられません。


写真⑭常磐公園千鳥ヶ池







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