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写真とコメントで紹介する旭川の郷土史エピソード集

戦後間もない頃の旭川

2018-04-27 21:00:00 | 郷土史エピソード



前回の更新からかなり間が空いてしまいました。
今回は、珍しくはっきりと撮影の時期が特定できた旭川のなつかしい絵葉書についてご紹介します。




                   **********



それがこちら。
「新版 旭川名勝」というタイトルが付けられた絵葉書のセットの中の1枚です。



絵葉書①=商工会議所

ロータリー脇の商工会議所です。
ビルに建て替わっていますが、今も同じ場所にありますよね。
右下に少し見えているのが、ロータリーの中心の草地部分です。
で、目ざとい方はもう気付かれているのではないでしょうか。
正面入り口の脇に丸い看板のようなものがあります。




絵葉書①アップその1

このブログでも何度か触れていますが、かつての商工会議所には「三階小劇場」という名の映画館がありました。
これはその上映作品を示す看板でしょうか。
よく見ると「乙女の星」と書いてあります。
この映画、調べると、フランス映画で、日本での公開は1949(昭和24)年4月5日であることが分かりました。

もう一枚、入口の反対側の脇にも映画の看板があります。




絵葉書①アップその2

こちらはかなり見にくいのですが、どうやら作品名は「濁流」。
こちらもフランス映画で、1949(昭和24)年5月に公開されていました。
「乙女の星」だけでしたら、日本での公開とは別の時期に上映された可能性もありますが、2つ合わせるとやはり撮影時期はこの年の4月~5月(おそらくは4月)と考えてよいではないでしょうか。
絵葉書の場合、なかなか撮影時期を特定するのが難しいケースが多いのですが、これは珍しく撮影時期をかなり絞ることが出来た1枚と言えそうです。




絵葉書①アップその3

さて、撮影時期がほぼ特定できたところで、もう少しこの絵葉書のディティールを見ていきましょう。
こちら、男の子2人が覗き込んでいるのは、映画のスチール写真でしょうか。
ポスターらしいものも確認できます。
手前の女の子は歩いているので少しかすれて写ってしまっていますね。




絵葉書①アップその4

玄関のところには、もう一人の子どもが。
横にいる和服の女性は母親でしょうか。
玄関の中に「・・・劇場入口」と書いてあるのが見えます。




絵葉書①アップその5

映画館は、建物の常磐公園側の棟の3階にありました。
外壁に大きな表示がありますが、この写真で、もう一か所、「三階小劇場」の看板があるのを見つけました。




絵葉書①アップその6

建物の最上部ですね。
縦に五文字の看板が設けられています。




絵葉書①アップその7

この時期の会議所には、映画館のほかにダンスホールもありました。
こちらがその入り口。
「キャバレーロータリー」と書かれた看板が掛けられています。




絵葉書②


せっかくですので、同時期の他の絵葉書も紹介しましょう。
こちらはご存じ常磐公園。
手前は千鳥ヶ池です。




絵葉書②アップその1

ボートの向こう側に写っているのは、1950(昭和25)年、常磐公園を会場に、「北海道開発大博覧会」が開かれた際に作られた気象館=プラネタリウムです。




絵葉書②アップその2

その右にあるのは、同じく博覧会の際に設置された池中塔と、その連絡橋。
池中塔はかなり長く千鳥ヶ池に置かれましたが、気象館や連絡橋は、博覧会の閉幕後、わりと早い時期に撤去されました。
なので、この写真は1950(昭和25)年の博覧会の閉幕直後と思われます(博覧会は7月~8月の40日間開催)。




絵葉書②アップその3

築山にある天文台も、博覧会に合わせて設置された施設の一つです。
今も同じ場所にありますが、まわりに置かれた多数の石(岩)は今は撤去されています。




絵葉書③

続いては、同時期の駅前です。
まだ高いビルがない分、広々とした印象です。




絵葉書③アップその1

明治時代からあった宮越屋、三浦屋の2大旅館のうち、三浦屋のみが残っています。
1階は、喫茶&食堂として営業しているようです。




絵葉書③アップその2

画面、右側に写っているこの変わったもの(富士銀行の名前入り)は、旭川市街軌道の電車の停留所です。
戦後すぐの旭川駅前を写した動画フィルムに、このプラットフォームに電車が到着するシーンが残されています。



絵葉書③アップその3

通りには、戦前からの名物だったスズラン街灯がズラリ。
ボンネットバスやリヤカーにも時代を感じます。




絵葉書④

最後は1条平和通、丸井今井デパート周辺の様子です。
この時期の丸井は7丁目側にありました。
3階建てですが、まもなく5階建てに増築されます。




絵葉書④アップその1

写りこんでいる人の姿を見るのも興味深いところですよね。
日傘をさしているので夏の撮影と思われます。
2階の窓から裸のマネキンが見えています。




絵葉書④アップその2

丸井の奥に見えている3階建てのビルは、サカエヤデパートです。
丸井とサカエヤの間にあるのは、マルカツです。
さらに奥に目を移しますと、このブログではおなじみの旭ビルディングが写っているのが確認できます。

車道には、駅前と同じくリヤカーやボンネットバスのほか、自転車や歩行者の姿もあります。
戦後になったとはいえ、まだまだのんびりとした時間が流れていたようですね。
そんな時代の空気感も楽しめるのが、レトロな写真(絵葉書)の良い所です。