面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

風と花の物語

2008年05月24日 | Weblog
 遠い昔僕は風だったのかも知れない、という書き出しの歌を作ったことがある。ラジオドラマの主題歌で、花の名前を羅列した歌を書いたこともあるが、とりわけ、僕は風の中に沢山の物語を見る。同人誌に、風に吹かれて空に舞いあがる女の子の話を書いたことがあるが、今でも、強い風が吹くと空に舞い上がりたくなる。

 朝から今にも降り出しそうな空模様が続いている。強い風が吹いているので、まだ大丈夫だが、この風が静かになると雨が降り出す。心を澄ませていると、風が木々を鳴らして雨が来るのを知らせてくれているようにも思える。若しくは、風は雨の露払い、さあさあ雨様がやってきますよ、と、ファンファーレかも知れない。まだ、15時過ぎたばかりだというのに、夕暮れ時のようだ。僕は、例によって気圧の変化による拷問の最中だ。滲み出す髄液は、脳に千本の釘を打ち込む。ドラクロア伯爵の拷問を想像して耐えている。

 トランシルバニアのトラジシ城に吹く風は、今でも血の匂いがすると言うが、30年前、「吸血鬼伝説」というアルバムを共に作った作曲家のM氏が消息を絶ってから10年になる。一緒にルーマニアへ旅をする約束は果たされぬまま、彼の作曲した音楽だけが残っている。風は僕に何かを知らせたいように強く吹いている。今の僕には風の言葉が聞き取れない。