面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

師走

2007年12月30日 | Weblog
 今日は1日、東京を東から西へと飛び歩いた。まるで、僕の必死の奮闘を嘲笑うかのように晴れたり雨が降ったり、午後には氷雨かと思うほどの冷たい雨まで降り、風に吹かれて身体の芯まで冷え切った。様々な人間模様が目の前に現れる。不誠実な人の電話を待てば、思いがけない人からの電話。抗えない流れもある。明日一日、全力で生きてみよう。

 明日は、大掃除の終わった稽古場で、劇団員たちと年越しそばを食べ、笑って新年を迎えたい。まだ、24時間残っている。

片山ゲリオン

2007年12月29日 | Weblog
 来年で在団10年目の片山竜太郎くんは、俳優としてより、片山ゲリオンとして世界的に有名なのだそうだ。苦節、というより飄々と貧乏生活をおくっている彼に、日頃から感心していたが、何と、新年早々、テレビのレギュラー番組を持つことになった。先ずは目出度いことだ。映像作家の小和田明、マルチクリエーターの麻草郁という強烈な仲間がいて、いつも、くだらない抱腹絶倒の映像を見せられていたのだが、遊びも凝りに凝ると芸術の域に達する見本が片山ゲリオンであろうか。兎に角馬鹿馬鹿しいほど笑えて、彼らの真剣に遊ぶ様が目に浮かび、褒めてやりたくなる。

 僕にしても、たかがアトリエ公演の脚本を七転八倒して書いているのだから、50歩100歩ではある。なかなか貧乏を脱しきれない僕より、彼らのほうが案外早く世界に打って出ることになるかもしれない。負けてはいられない。目の覚めるような戯曲を書いて驚かせてやろう、と、意気込みだけは若者並みだ。

 さて、今年も残すは2日、朝倉薫演劇団を応援下さいまして、眞に有り難う御座いました。来年も変わらぬご支援のほど、どうか宜しくお願い申し上げます。20周年に向かってひたすら励んでまいります。

充実の最終週

2007年12月27日 | Weblog
 23日の後援会イベントから5日間、稽古場の休み時間に仮眠をとる状態で5日が過ぎた。しっかり眠れるのは、多分一日、元旦の夜になるだろう。これは充実の1週間と呼ぶに相応しい。依頼された特別レッスンと1月公演の稽古、そして3月新人公演の脚本書きに年末仕事が重なっているからだが、12月とは誰もがそういう慌ただしさのなかにいるはずだ。師走とはよくも考えたものだ。

 そんな中で東京ドームのコンサートに行ったり、テレビ番組の収録に付き合ったり、今日は旧知の友人と、二人で忘年会をやったりして、何だか、勝手に寝る時間を削っているような気もする。残念ながら今年は、朝倉薫救済年末ライブをやり損ねた。勿論、有馬記念の一攫千金も夢と消え、例年のごとく、米びつは底をついている。落語の世界なら、笑って除夜の鐘を聞けるが、現実はそうは行かない。アメリカが風邪をひけば日本が入院する、の例えは大袈裟だが、貧乏劇団を信頼して仕事を手伝って下さる方々もおられる。何としても、その方々には良い正月を迎えていただきたい。と、粉骨砕身31日まで仕事に励みます。

女優は創られるものなのか?

2007年12月27日 | Weblog
 14歳から17歳の少女の特別レッスンが3日続いた。残すは2日。5日間で少なくとも女優の卵と呼べるレベルにはする覚悟で始めた。立ち振る舞いは地方から出て来た女のこそのものだった。挨拶する声はか細く不安げで、目線も定まらず、稽古場に立つ姿は痛々しかった。3日目が過ぎて、少女たちの声には張りがでて、笑顔も自然に見えるようになった。何よりも、自分のいる位置が理解出来たようで、後2日のレッスンが楽しみである。女優の品格など、語ってもまだ解かるまい。ただひたすら稽古に励むことを教えている。厳しいレッスンに耐えたものだけが味合える喜びを知れば、その輝きは本物になる。女優を創るのは彼女たち自身なのだ。本当になりたいのなら、出来る。それは、簡単なことなのか、苦難の道なのか、彼女たち自身にしか、わからない。懸命に期待に応えようと励む彼女たちの、前途に幸せあれと心で祈っている。

LUNA SEAー東京ドーム観戦記

2007年12月25日 | Weblog
 この夏から秋にかけての妙な経緯で、東京ドームのルナシー復活コンサートを観てきた。ルナシーファンを公言している劇団女優N嬢に、数分で売りきれた7年振りのコンサートチケットを何とか、と、頼まれ、久々に業界的手腕を使い関係者席を取ったら、彼女は友人からアリーナ席を譲られて、関係者に頼んだ手前僕が行くことになったと言う訳だ。

 瞬時に5万人を売りきるバンドへの興味もあり、同業者として関係者席にふんぞり返る輩を日頃から快く思わぬ者として、僕は9千5百円也を支払い、孤独に席に着いた。2時間かけても五万人は席に着けず、1時間遅れてコンサートは始まった。ファンの方には失礼だが、こんなに上手いバンドだったかしら、と、先ず思った。7年の歳月は、ブランクではなく、彼らにとっては武者修業だったようだ。ボーカルの艶も、ドラムの切れも、さらに輝きを増していた。何よりも5万人の観客の喜びが、肌に伝わる。5曲、10曲と、すでに若者とは呼べぬ齢を重ねた5人のロック戦士は、砂漠に降る慈恵の雨を浴びるがごとく、ステージを駆け巡る。2時間が過ぎ、メンバー紹介が終わる頃、僕は溢れだす涙を止めることが出来なかった。5万の無垢な魂は5人の凛々しいロック戦士の熱く激しく純真なステージに癒され、戦士たちは5万の魂によって更なる高みへと昇華し合っているのだ。何よりも、戦士たちは清潔そのものだった。飛び散る汗は正に月の海の真珠だった。

ラストソングが終わっても涙は零れて止まなかった。音楽を始めた頃の懸命な時代が脳裏に浮かぶ。普遍なのだ。芸術の神は、命を奉げた者に微笑む。弛まぬ研鑚の果てにこそ真の喜びは存在する。

 朝からレッスンした少女たちも素直で、清潔感あふれ、4時間のレッスンが少しも疲れを残さなかった。東京ドームを後にする頃、僕はすっかり現実を手元に手繰り寄せていた。しかし、十代に聞いたビートルズでも鳥肌は立てたが、泣きはしなかった。イーグルス、マイケル・ジャクソン、ローリングストーンズ、東京ドームのアーティストに感動はしたが、泣きはしなかった。満月の夜と、5万人を動員する秘密を知った感動だったのだろうか。いや、もっと純粋な僕の忘れかけていたものを知らされた、僕の魂が洗われた、その感動だったと思う。人は一人ではない。多くの人に助けられ生かされている。当たり前のことを、真っ直ぐ語ることこそ、僕らの仕事なのだ。今日も朝からレッスンは続く。

これから5日間

2007年12月24日 | Weblog
 今日から5日間、10時から14時半まで、連続のワークショップ。某プロダクションの新人たちを鍛えます。では、行って来ます。太陽が眩しい。現実を引き寄せなくては。

遠い現実

2007年12月23日 | Weblog
 手触りのない1日を過ごした。朝、クリーニング屋にシャツを取りに行き、何故か稽古場に向かった。漠然と、13時から始まる東京アナウンス学院の説明会に持参する資料のことを思ったからだ。暫くすると稽古場に劇団員の後藤が来た。彼は東アナの出身者で、今日千葉と共に同行する予定だったことを思い出した。二人で、隣のドトールでコーヒーとクロックムッシュのブランチを摂った。それから、歩いて方南通りの東アナに行った。玄関で千葉と合流、13時半から16時半まで、卒業生と面談した。終わって外は雨、稽古場にもどるという後藤とタクシーで坂上に。そこから地下鉄で銀座へ。明日のイベントの料理を注文して、再び坂上に向かう。途中、北原嬢にプレゼントする手帳を伊東屋で買い忘れたことに気付いたが、すでに四谷を過ぎていたので諦める。
19時から高倉と小島に会場設置を依頼して、意識が途切れた。遠い現実で電話のベルが何度か聞こえた。

 何時帰って、何時着替えたのか、気付いたらパジャマでベッドにスポーツ新聞が顔にかかっていた。有馬記念の文字が見える。遠い現実、中山ではなく東京競馬場の特別観覧席、オグリキャップが最強と賞されたジャパンカップのレースがよみがえる。負けるはずの無い最強馬は、しかし、外国の牝馬に鼻差破れた。

今年も、最強と賞される3歳牝馬が2頭出走する。メイショウサムソンはねじ伏せる事が出来るのか、引退を勝利と10億円突破の賞金で飾りたいダイワメジャーは先頭切ってゴールに飛びこめるのか、ペリエは、キネーンは、ルメールら外国からの刺客は期待に応えられるのか、有馬記念は大衆小説だ。酒場で、風呂屋で、誰もが筋書きを語れる。

 今だ掲示板にすら乗ったことのない16番の大外枠のウォッカの運命は?ライバルダイワスカーレットは最高の7番枠で、ポップロックとロックドウカンブに挟まれて、その花を散らすのか、それとも咲かせるのか、などと思いをめぐらせていたら、もう夜中だ。

 頚椎が、そろそろ危ないようだ。冬の雨にこうも脆いとは。ごめんね、まだ先には逝けない。男子の意地というやつさ。三才牝馬に負けるな、古豪!まあ、大衆小説なら、二枚目が最後は持って行くが、やっぱり、武豊が一番人気か。勝たせたいのはコスモバルグ、11ー4-16の3連単、一点でどうかね。

待つこと

2007年12月22日 | Weblog
 映画企画の進行、頼んだチケット、その他諸々、返事を待っている。急きたてても出来ないものもあるだろう、と、いつからか静かに待つ事を覚えた。こちらが急かされる場合もある。脚本の仕上げ、企画書、その他諸々、怠けている訳ではないので急かされると辛い。

 俳優の仕事はじっと待つ事だと、高倉健さんが言っていたと聞いたことがある。待たされるのも待つのも、辛い時間だ。しかし、その時間で考えることが出来る。人の気持ちが見えてくることもある。健さんは待つ間きっと身体を鍛えているのだろう。僕は思索で脳の退化を防ごうか。

 遠い昔、3歳の息子を母に預けて、一夏欧羅巴を旅したことがあった。異国の絵葉書で便りを書いた。帰国して迎えに行ったとき、母が言った。「この子は一言も淋しさを口にしなかった」と。「夏が過ぎたら迎えにくるんだ」と、自分に言い聞かせていたと。
僕は彼に、3歳の誕生日から日記を書かせ、1日一本映画を見る事を命じた。共に暮らしたことはそれ以来一度もない。子育てから逃げながら、権限だけは行使し続けた。

 母はすでにこの世を去り、父も今、遠く離れた九州の地で静かに旅立とうとしている。僕は今、何を待っているのだろう。しんしんと凍てつく冬の夜明け前、机上の原稿用紙を濡らすのは、自責と後悔の他に何も無い。部屋に明かりはあるが、心は暗く無明の闇に閉ざされてゆく。心に問うてみる、僕は今、何を待っているのだ。

稽古の楽しさ

2007年12月21日 | Weblog
 新春アトリエ公演「桜吹雪のバスルーム」で、大女優大原恵子を演じる塩山みさこ嬢がまた一歩、ルシール・ポールに近づいた。演出助手も兼ねる真一涼が大原の付き人習志野みどりを、西本早希とダブルキャストで演じるが、相乗効果で一皮剥けそうな気配がしてワクワクする。初舞台の新人安達野乃がついて行けたら、この芝居はとんでもなく面白いものに仕上がる。

 昨日、今日と稽古の興奮冷め遣らず、制作のS君と深夜喫茶で話込んでしまった。今年中に3月の新人公演脚本を書き上げる予定なので、もう寝ている時間はない。生き残った15期生、司亮、千葉真澄、三田裕子の3人は、劇団員も絶賛する優秀な新人なので、脚本にも力が入る。昨年の「ラブミードール」に負けない作品を書いてあげよう。

 それにしても、千本桜は懐かしい。「桜吹雪」も「桃のプリンセス」も、千本桜ホールが初演だった。きっと、面白い舞台が出来る予感がする。

 そうそう、入団希望の諸君、稽古場見学大歓迎です。ほぼ毎日18時から稽古しています。どうぞ遠慮無く稽古場の扉を叩いて下さい。

新春公演のコメディエンヌ

2007年12月18日 | Weblog
 新春公演「桜吹雪のバスルーム」について、延々4時間も映像作家小和田明くんらと語り合った。坂上の喫茶店「ドエル」はコーヒー一杯で盛りあがる僕らに迷惑だろうな、と、ふと思った。某中新の喫茶店で明かに迷惑そうな顔をされた事を思い出してしまったのだ。ただ、20年も通っているドエルのママは人格者なので、いつもと変わらぬ優しいお顔なのが救いである。

 一月25日が初日なので、年末年始は稽古の真っ最中である。この作品の初演は’93年3月、千本桜ホールであった。主演は櫻井智、彼女のコメディエンヌの才能を垣間見た舞台だったが、その後声優アイドル路線を突っ走ることになり、僕が目指させたかったルシール・ポール張りのコメディエンヌは夢に終わった。

 日本で一流のコメディエンヌになれる可能性があるのは沢口靖子か、櫻井智くらいだろうと思っている僕は、美人でないからと笑いに走るのは感心しない。超美人が、少し頭のあやしい、ハラハラする役を演じるからコメディなのである。市原悦子や泉ピン子はシリアスな演技の方が絶対視聴率を取れるのは明白だ。宮沢りえ嬢も知恵遅れのストリッパーを演じたら絶品かも知れない。などと、好き勝手な思いを書き連ねたが、今回オーディションで大抜擢した新人も素顔はすました美形だが、度胸はありそうなので楽しみだ。

 配役決定は週末になるが、明日から読み合わせに入る。木曜日には塩山嬢も姿を見せるという情報が届いて、新春公演の成功を確信した。塩山みさこのコメディエンヌも、僕は一級品に仕上がると確信している。