面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

孤独な魂たちよ

2008年01月31日 | Weblog
 若い友人から悲痛な電話をもらった。鬱が悪化して身動きが取れないという。昨年も、160センチそこそこの体躯で190センチの不良外人と無茶な喧嘩をしたらしく、傷だらけで現れたことがあった。才能は有り余るほどある。発揮できる場所さえあれば、ひとかどの芸術家として名を成せる。まだ30代の半ばである。何もしてやれないが昼に待ち合わせをした。

 幾人の孤独な魂たちと惜別しただろう。20歳で逝った音楽の魂、36歳で逝った映画の魂、思い出せば涙が止まらない。

 50歳で高校野球の監督を目指し、5年間の通信教育で教員免許を取得し、社会科教師として教壇に立ちながら甲子園制覇を目指した故高畠導宏先生(門田隆将著・甲子園への遺言)の「才能とは最後まであきらめないこと」が、ことさら辛くひびく。

 孤独な魂たちには光り輝く才能があった。無力を痛感する。自分のことさえ侭ならない僕は、せめてアトリエ公演で若い才能の開花を期待するばかりである。

今年中に

2008年01月30日 | Weblog
 三月、新人公演「花衣」。七月、「ミッドナイトフラワートレイン」10月、樋口昇平、片山竜太郎十周年記念公演「裸足探偵」。の三本は決定しているが、他にやりたい作品が多過ぎて選択に迷う。新作では「幕末英語塾」「絆」「ガイス」が候補、再演物では「スタント」「月光の不安」「ウッデンドール」何といっても「マケイヌバー」は絶対やりたいし、「ラヴミードール」「恋する悪魔」もやりたい。年間最多で7本公演した年もあるが、年間5本が僕にはしっくりくる。

 再演、新作含めて見てみたい作品がありましたら是非コメント下さいませ。参考にさせていただきます。

 さて、今回の新春公演、舞台の隅にバスタブが一台。繰り広げられるのはドタバタコメディ。好き嫌いのはっきりする作品かも知れない。「あのひと変だよ」と、言っている本人が一番可笑しいひとに見える、そして、笑って見ているあなたも、きっと変なのだと自覚出来るバカバカしいコメディです。バカバカしさを目的に作る舞台、決して疎かには出来ない。それこそ、間合いのひとつで芝居がかわってしまい、笑えなくなる恐ろしさを、舞台で演じる俳優は肌で感じる。懸命に見える芝居より、へらへら見える芝居により神経をすり減らしている俳優たちに、僕は心で拍手を贈っている。

 

束の間の贅沢なひととき

2008年01月30日 | Weblog
 幽かに庭の木々からしたたる雨の音を聞きながら、これからリン・カーターの「ヴァーモンドの森で見出された謎の文書」を読む。稽古中から読み継いできた「ラヴクラフトの世界」と題するアンソロジーの最終章の短編小説である。気がかりな懸案が午前中に片付き、5日目のアトリエ公演にも沢山の方にお越しいただき、音響、照明の小島、淺川両君と「四国や」で最高に美味しいうどんを食し、霧雨の中を帰宅。シャワーを浴びてコーヒーで一服。解決出来ていない懸案は山積したままだが、その中のひとつでも前進したことは大きな力になる。泥濘に嵌まった車輪が微かにでも動いたのだ。必ず脱出してみせる、と、何の根拠もないが、気力は充実している。

 アトリエ公演も今年で四年目、14回を数える。何度も出演してくれる人、一度出ただけで毎回見に来てくれるひと、沢山のゲストが舞台を彩ってくれた。お越し下さるお客様も含めて、誰もかれもがアトリエに「足跡」を残してくれています。本当に僕は幸せ者だと、今日はあらためて感じました。明日はもっと素敵な芝居をお見せ出来る様、ひたすら稽古に励みます。

 この贅沢なひとときが、僕を素直にさせてくれる。それにしても、やりたい芝居が多過ぎる。残り時間との競争か、いや、束の間でもこんな時間が過ごせているのだ。感謝しよう。

元気が出るブログ?

2008年01月29日 | Weblog
 アトリエ公演にお越し下さったSさんから、僕のブログを読むと元気が出る、と、アンケートに伝言頂いた。実に不思議な気分である。芝居ならいざ知らず、僕のブログの何処に、Sさんを元気づける効用があるのだろう。夢の話はダークで、私生活はグダグダしていて、社会人としては殆ど失格で、不規則で、我が侭で、欠点を連ねたら限がないブログなのに。Sさんは、心根の優しい方だ。

 今日は昼頃雪が降るらしい。朝から出かける用事があるのだが、傘を用意して行くかどうか直前まで迷う。雨でも降っていれば別だが、天気予報はあくまで予報なので、要らぬ荷物になる事が多々ある。帰宅する頃にはほとんど、何処かに置き忘れている。

 開場前のアトリエで、出演者、裏方揃って、「憧れに向かって」を歌い踊っている。今まで全員でやっていたのは気合い入れくらいで、これは新しい試みだ。身体は温まり、連帯意識も増してくる。程よい疲労感で開場となり、笑顔も自然に湧きあがる。ただ、サビパートの詞「地図のない旅だよ、お金もないけど、夢ならいっぱいあげるほどあるよ!」は、全員が切実すぎて力みがはいる。しかも振り付けが、親指と人差し指でマルを作って頭の上で振る動作なのだ。自分で作詞しておいて、笑えない。

 今日はアトリエ公演5日目です。

身辺雑記

2008年01月28日 | Weblog
 夢の話が少ないとお叱りを頂いた。確かに、2年前のブログに比べて身辺雑記が多い。悪夢の話を書きたくて始めたのに、いつのまにか雑記になってしまった。と、云っても、露悪趣味になりそうな悪夢が多いし、難しい問題だ。だが、読んで下さる方の反応があると、嬉しくなる。張り合いにもなる。感性とか趣味とか、似た者同士であったり、全く反対だったりの人間が語り合えるのがブログの真髄なのだろう。決して、はけ口や憂さ晴らしにならぬよう、気をつけたい。

 今日から1週間、芝居浸けです。是非、坂上までお越し下さいませ。

惚れるということ

2008年01月28日 | Weblog
 色恋沙汰に限らず、仕事や人物に惚れこむと周囲が見えなくなることがある。忠告も聞かず突っ走って悲惨な結果に終わり、立ち直るのに時間を要することが幾度もあった。最近は、要する時間に余裕がないので、惚れこむことにブレーキをかけている自分がいることに気付いて唖然とすることがある。つまり、若い頃無視出来た「結果」に対して慎重になっているということだ。

 これが悪循環の原因ではないかと、ふと思った。確かに、制限時間で立ち直れなかったらゲームオーバー、即「あの世」行きのチケットが待っている。その恐怖に怯えていては成功するものも失敗に終わるのだろう。芝居に惚れこんで劇団を立ち上げ、16年目を迎えた。これは紛れもない事実だ。つまり、16年も周囲が見えなくなっている訳だ。「結果」など微塵も考えてはいなかった。今も変わらない。

 これではいけない。芝居に対しても少し冷静に見つめる目を持とう、と、今日の舞台を見ながら考えた。例えば、公演のご案内、DMではなく、僕がお客様にお便りを書くべきではないか。朝倉はどんな芝居を求められているのか、自分のやりたい芝居を勝手にやるだけではなく、もっと耳を傾けるべきではないか等など、反省すべき点が多々見えてきた。どこまで改善できるか、新春に心を新たにして頑張ってみよう、と思った。

 惚れるということは厄介なことだが、惚れてしまったのだから仕方がない。「あの世」に行くまで芝居とは縁が切れないのだから、二人三脚で歩調を合わせよう。

夢の交差点(続編)

2008年01月26日 | Weblog
 昼夜2回公演を終え、只今帰宅。早速、夢の続きを。

 笹塚駅から甲州街道に出ると、中野通りとの交差点がある。人がひとりもいないなんて絶対に変だ。大声で叫んでみたが、何かに吸い取られたように、声が掻き消えた。恐怖は更に倍増した。この夢から引き返さないと大変な事になる、と、夢の中の僕は意外に冷静だった。ひとまずアパートへ戻った。すると、北沢5丁目の辺りは渋谷区本町3丁目に変わっていて、38年前に棲んでいた信濃荘があった。ようやく人の姿を見つけてホッと一息吐く間もなく、それは懐かしい友人の剥製だった。浅黒い肌は生きているようだったが、瞳はガラス玉で、彼の見つめる先は何もない空間だった。僕は泣きたい気持ちを押さえて、剥製の友人をダンボールに詰め、松本引っ越しセンターのラベルに、彼の実家の住所を書いた。信濃荘の階段下にある公衆電話は料金未払いで止まっていた。絶望が、こぼしたインクの様に、胸に広がった。泣けよ、泣けよ、と、剥製の友人がダンボールの中からテレパシーを送って来た。もう一度北沢5丁目に帰れたら、全てをやり直せるのにと思ったが、それが手遅れである事も事実として認識していた。突然、僕は全てのからくりに気付いてダンボールを引き裂き、剥製を引っ張り出した。転がり出た剥製は、僕とそっくり、いや、僕意外の何者でもなかった。

 明日も昼夜2回公演です。是非、中野坂上までお越し下さいませ。

夢の交差点

2008年01月26日 | Weblog
 目覚めると、36年前に暮らしていた北沢5丁目のアパートにいた。自分の部屋ではなく、これから入居する他人の部屋で寝ていた。真昼の陽光が眩しく射し込む部屋に僕ひとり、静まり返ったアパートに人の気配はなかった。それどころか、外にも車や人影もなく、一切が静寂のなかに閉じ込められていた。僕は知人を捜して走った。いや、人間なら誰でも良かった。犬や猫、鳥でも良かった。街は風景画だった。少しずつ恐怖が染み出して来て、更に走った。笹塚の交差点にでた。と、そろそろ公演の準備が。続きは夜に。

 では、行ってまいります。14時半開演です。夜はいつも通り19時半開演です。是非、お越し下さいませ。

初日御礼

2008年01月26日 | Weblog
 14回目のアトリエ公演「ホテル満開苑」無事に初日の幕があがりました。お越し下さいました皆様に厚く御礼申し上げます。明日は昼夜2回公演です。今回も前説と、第二部の司会を担当しています。

 今日11時の打ち合わせで名刺を交換したT氏は何と誕生日が僕と同日、同行されていたS氏が深く頷かれたのに皆納得、まさに10年前の僕を見るようだった。良い仕事につながる事を願ってわかれた。

 映画の保坂延彦監督が初日に見えられ、アトリエ公演としては今回が最高だと褒めていただいた。作品、出演者共に絶賛だったので、却って気を引き締める事が出来た。勿論、お世辞の上手い方ではないので、それもまた、複雑である。

 芝居は難しい。1ヶ月間血を吐くような稽古をしても、激しい演出で数キロ痩せ様とも、幕を開けたら不評の作品もあり、今回の様に、正月を挟んでまったりした稽古で初日を迎えた芝居でも絶賛される事がある。音響、照明、装置、小道具に至るまで完璧に準備しても本番で失敗する事もある。

 稽古場の板の上で生まれ幕が閉まるとやがて消えてゆく儚い舞台芸術。人生を去り難いことよりなお、僕は舞台から今だ去り難い。明日もよろしく。

「お風呂、ピっカピカだじょ!」

2008年01月25日 | Weblog
 2008年1月25日金曜日、第14回アトリエ公演初日。何かが始まる記念すべき日となる予感がする。山積している問題は何一つ解決してはいない。しかし、例え徳俵に片足でも、まだ勝負は終わってはいない。正月返上で稽古に付き合ってくれた今回のカンパニーの仲間と10日間の舞台が始まる。

 思いがけない人が訪ねてくれる予感もする。断念しかけていた企画が復活する予感もする。15年振りくらいの胸の高鳴り。我慢して待っていてくれた人に恩返しが出来る様、僕は無心でこの波に挑戦する。「いい夢見ろよ!」の捨て台詞はまだ早い、むしろ、「お風呂、ピっカピカだじょ!」BY印旛沼桜子。そうだ、鈴木俊夫は靴を磨き、桜子はセッセとバスタブを磨くのである。無心でね。