面白草紙朝倉薫VS安達龍真

夢と現実のはざまで

人は好きに考えて良いのだ

2007年09月30日 | Weblog
 舞台「男たちの日記」が今日で千穐楽となる。先日、面白い感想を戴いた。「主人公の正光はアメリカによって去勢された戦後の日本で、対立する刑事の俊也はもちろんアメリカ。俊也が拳銃を振り回すのは銃社会の象徴で、「そんなもの部屋に置いてきて」という正光の言葉はまさしく非核三原則だそうだ。朝倉は戦後60年の総括を子供達の戦争ごっこに置き換えて見事に舞台化した!と、絶賛された。断崖絶壁に立った5人のおとこ達は世界を動かす5大国で、これから世界は何処へ向かうのか、日本はアメリカと心中するのか、それとも、茂という日本帝国主義の亡霊と運命を共にするのか?実に深い幕切れであった」と。

 なるほど、観る人の教養や主義で色んな感想が出てくるものだ。そうなのだ、書いた僕がどうであれ、演じた俳優がどうであれ、舞台は鑑賞する観客のものなのだ。是非、また、面白い感想を聞かせて下さい。では、中野坂上で。

千穐楽は嬉しくてやがて哀しく…

2007年09月30日 | Weblog
 「男たちの日記」も10日間の公演をこなし、30日の昼公演を以って千穐楽となる。毎回のことだが、無事に乗り切った嬉しさと終わりを迎える淋しさで胸が切なくなる。僕が打ち上げの料理当番にまわるのも、出演者や舞台撤収のスタッフと離れ、ひとり気を紛らす為かも知れない。いや、そんな感傷に浸ってはいない。心は11月の国立劇場、そして、中野区と初共催する野方区民ホールの「クリスマスファンタジー」ですでに満杯だ。

 今、打ち上げ用の食材を仕入れて来た。少し休んで仕込みに入ろう。15年間欠かしたことのない打ち上げのメインは、自称「ハワイおにぎり」。そのむかしハワイのゴルフ場で食した「スパムおむすび」を、ボロニアソーセージにブラックペッパーや、ピリ辛香辛料をまぶして一晩冷蔵庫に寝かせてからフライパンでカラッと揚げる。今回の米は幻の仁多米、皆がびっくりする旨さだ。炊き立てを荒塩で握って、大き目の寿司状にネタのソーセージを乗せ細海苔で帯をし、それをサランラップでくるみ熱さを逃がさないようにして時間を置かずに食する。この絶妙な味は文章では表せないので、是非、一度作ってみて下さい。僕の掌は真っ赤になるが、打ち上げで幸せそうに頬張る皆の顔をみると肩の荷が下り、僕の千穐楽となる。

 

収穫

2007年09月29日 | Weblog
 アトリエ公演「男たちの日記」も土曜日、日曜日と残り2日間となった。舞台を続けていると予期せぬ収穫がある。それは俳優の急激な成長であったり、予期せぬ方の観劇であったり、突発的なアクシデントを乗り越えた連帯感だったりする。僅か10日間の公演だが、必ず劇団内外でオーディションをして出演者を決定する。アトリエ公演といえど、演劇を甘く見ないよう稽古の時から徹底する。集中力は心地良い緊張から生まれることを全員が肌で感じてくれば、稽古場の空気は演劇一色に染まり、さらに心地良くなる。この演劇空間が出来あがることも収穫のひとつだろう。

 本番に入っても俳優、スタッフの苦闘は続く。昨日より今日、今日より明日と、貪欲に高みを目指せば当然のことだ。多分、俳優の肉体的、精神的疲労は極限状態かも知れない。それは、幕が下りたそのあとから、明日の為のダメ出し、小返しを毎日繰り返しているからだ。劇団外からの参加者にも有無を云わせない。芝居が終わったあと一緒に食事の約束をされた方など延々待たされることになる。申し訳ないと思うが、明日の為には心を鬼にするしかないのだ。

 それでも、芸に上限はないので、稽古は延々続く。ゴールの見えないマラソン大会に出場してしまったら走り続けるしかないような職業が俳優であり、演出家であり作家なのだ。嫌ならリタイヤすればいいのだが、それは職業としての「死」に他ならない。死にたくないから走り続けるのではなく、走るのが好きなだけさ。そう云えれば、一番幸せだ。さあ、今日も突っ走ろう!虎!観に来なきゃだめだろう!!(雨だれニ発にしておく)

交差点でマジックアワー

2007年09月27日 | Weblog
 「男たちの日記」4日目の舞台を観劇に来てくれた映画監督の保坂延彦氏と若きプロデユーサーM氏、K氏の4人で例によって「軍司」へ。6年前に撮影2日目にして中止となった朝倉薫原作脚本、保坂延彦監督作品の話で盛りあがる。保坂監督はその後、雪村いずみ主演「そうかもしれない」が無事に公開され絶賛されたのでよかったが、僕の方はその後映画に関してはことごとく進展がない。それはそれとして、保坂監督は毎回アトリエ公演に来てくれるし、仲良くつきあってくれているので、無理に仕事をすることもないと思っている。餅は餅屋という言葉もある。

 楽しく飲んで別れ、稽古場に戻ると、珍しく新人の司亮が残って稽古をしていた。今回初主演の安達竹彦、それに樋口昇平も付き合っていたので、僕も「朝まで稽古」に付き合うことにした。4時過ぎ、さすがに喉が乾いてきたので皆で駅前の深夜レストランに行きお茶を飲んだ。眠気も限界を通り越すと、締まりがなくなりニタニタ笑いの顔がお互いに遠くなったり近くなったりする。横浜に住む司亮が始発で帰る予定だったので6時前、駅まで送った。中野坂上の交差点で信号待ちしていると、竹彦が樋口主演で短編映画を撮った話をし始めた。影を失くした男の話らしい。「こんな時間ですよ、朝と夕方のほんの僅かな、光源のない時間、足元を見てください」言われて、ぼうっと立った4人の足元を見ると、影がない!徹夜明けの早朝街をふらつくこともあるが、大方空を見上げる。こんな時間をハリウッドの映画用語でマジックアワーと呼ぶらしいが、確かに不思議な気分になる。おぼつかない足取りは確かにゾンビ映画を思わせる。皆と別れゾンビのまま家路を辿れば、やがて朝日が昇る気配がして、僕は自分の影を取り戻し、ほっとした。

人恋しさに揺れる月

2007年09月26日 | Weblog
 昨夜が中秋の名月とは知らなかった。芝居がはねて観劇に来てくれたテレビプロデユーサーK氏とI,Tの4人で「軍治」へ。先客の質屋社長から「おや先生、昨日もお会いしましたね」と声をかけられる。そうゆう社長は連夜のご出勤なのだが。強面の容姿が一般市民には程遠いので初対面の人はけっこう驚く。いちいち素性を説明するのが面倒なので昨夜も今夜も同行者には紹介もしなかった。

 芝居の話で大いに盛りあがって終電前に解散。演助の三田嬢から差し入れのケーキを残してあるので、と、伝言があったので、稽古場に戻り、僕の為に劇団員が残しておいてくれた差し入れのケーキをおいしくいただく。この優しさが僕にはとても重要なことだと劇団員たちはよく理解してくれている。

 遠い遠いむかし、僕が駆け出しの週刊誌記者だった頃、売れっ子のアイドル歌手の連載を担当していた時のエピソードを、僕は思い出した様に劇団員に語ることがあるのだ。

 早朝、出版社さしまわしの車で彼を自宅まで迎えに行く。超多忙なので移動の車中で打ち合わせや取材をするのだ。彼が玄関を出て車に乗りこむ僅かな時間にも「追っかけ」の少女たちからプレゼントが手渡される。’70年代アイドル全盛の頃のこと、彼は後部座席の僕の隣に軽やかに乗りこむ。連載が始まって2ヶ月、僕らは何となくウマが合わない事を感じあっていた。アイドルはプレゼントの中からガムを見つけ、1枚を剥いて口にほうり込むと残りを紙袋に投げ込んだ。その時僕は徹夜開けで喉がカラカラだったので、彼が「どうぞ」というのを期待していた。17歳のアイドルに「1枚くれよ」とも云えず、僕は唾を呑みこんだ。その一月後、連載は彼のライバルのアイドルに替わった。そのアイドルがまた良い奴で、17歳には思えない気配りをしてくれるので僕のペンも進み、巻頭の豪華写真小説まで書いた。1974年の冬のことだ。

 たかがガム1枚で大人気無いと思うかも知れないが、たかがガム1枚「どうぞ」とすすめるだけで良いのだ。と、劇団員には昔話をする。

 深夜の稽古場を出て家に着くと、マンションの鍵がない。古い建物でオートロックどころか、鍵が3箇所も必要なのだ。思い出した!Tが昼間シャワーを貸してくれと言って持って行った侭だった。Tに連絡をとったが電話にも出ない。仕方がないので留守電に「稽古場で待つ」と入れて、稽古場に戻り、舞台のソファーに横になって待つことにした。

 こんな夜は人恋しさが身体中を駆け巡る。「君に会いたい」を小さな声で歌いながら夜道を歩いた。そういえばこの歌の本家ジャガーズの岡本信はげんきでいるだろうか、最近連絡も取っていない。明日、電話してみよう、と思った。

変わらない関係

2007年09月25日 | Weblog
 出会いは僕が27歳Kが19歳だった。以来32年間僕らの奇妙な関係は変わらず続いている。それはKの生き方が上手だからに他ならない。大学時代は僕のレコードプロデユースアシスタント、しっかり大学を卒業して就職しながら、取材の手伝い、遊びの付き合いをこなし、5人の子供を育てている。

 そのKが21歳になる長男を連れて観劇に来てくれた。かなり前にブログで、夢実験で髪の毛が白くなった青年の話しを書いたことがあるが、あのKである。もちろん52歳となった今は白髪が良く似合っている。

 彼の息子は「男たちの日記」を見て、父親と僕の関係を納得してくれたようで、嬉しかった。芝居がはねて、「軍治」でTを加えて4人で飲んだ。僕らの冒険談は一晩で語り尽くせない。Kは息子にあまり語らないらしいので、後日僕が聴かせる事にして別れた。

 今日は3日目です。話のネタに中野坂上までお越し下さいませ。

洗濯三昧

2007年09月24日 | Weblog
 マンションの屋上に金網で囲まれた洗濯物干し場があるが、越して来て3年、まだ一度も使ったことがない。伴侶がいた遥かむかしに使っていた乾燥機が便利で手放せないでいることと、なにしろ不規則な生活なので夜中に屋上に干しに行くのも憚られるからだが、一度は使ってみたいと思っている。

 今日は休演日で時間があったので、たまった下着やシャツ、ジーンズに靴下、日舞の稽古着に足袋、バスタオルにバスローブ、洗濯機に放りこんでは乾燥機にと、事務所の雑事と往復しながら、3回も繰り返し、ようやく最後の乾燥が終わったのは24時前だった。

 綿シャツはクリーニングに出さなくても済むが、アイロンかけが面倒だ。いつぞやゴルフ帽子を乾燥機に放りこんだらボロボロになってしまった。ジーンズや綿シャツも痛みが早いような気がする。確かにガラガラ廻しながら乾燥するので生地が痛むのは仕方がないだろう。

 バスタオルは、ゴルフ場の浴室にたくさん重ねて置いてあるのが気に入って以来、僕も洗面所の棚に20枚は常時置いている。しかし、使うのは上から5,6枚なのであまり意味がない。友人が泊まったときなど、好きなだけタオルを使えというが、せいぜい3,4枚しかつかっていない。なのに何故か気に入ったバスタオルがあるとすぐ購入してしまうので増える一方だ。

 夕暮れ時、急に肌寒さが増した。そろそろ衣替えの時期だ。出しておきながら一度も袖を通さなかったジャケットもある。思いでの強い服は可哀想だ。何年も洋服ダンスで眠ったまま、あるじが着てくれるのを待っている。捨てきれないあるじが何を思っているのか…服には何の罪もない。

御礼

2007年09月23日 | Weblog
 9月22日、無事に初日の幕を下ろすことが出来ました。ご来場下さいました皆様に深く御礼申し上げます。アトリエ公演と言えど真剣勝負、肝の住まいの小さい僕は緊張で内臓がキリキリ痛みます。特に今回は、狭い舞台での殴り合いシーンが何度もあり、稽古で歯が折れた睦くんだけでなく、殺陣になると本当にハラハラします。

 今回は僕の前説も舞台に組みこんでみたのですが、新しい試みで余計に緊張します。23日は休演、24日から30日まで連続公演です。空調も快適になりましたので、7月公演のような暑い客席にはなりません。是非、お越し下さいませ。

 恥ずかしながら、17歳の夏に考えた生きる事の意味を、40数年過ぎた今も見つけられずに生きています。「男たちの日記」この作品は45歳の夏に書いた物語です。あれから14年、僕は今年も、何も見つけられないまま夏を見送りました。

 ひとつだけ云えるのは、生を断ち切っていたら安達竹彦のとんでもない演技を見る事が出来なかったと云う事。死はいつかあっけなく訪れるだろうが、生きている限りは永遠なのだから、喜びも哀しみもしっかり受け止め、芝居を作り続けましょう。

「男たちの日記」初日

2007年09月22日 | Weblog
 いつまでも稽古をしているわけにはいかない。必ず初日はやってくる。慌ただしいゲネプロの前、11月29日から12月2日まで会場をお借りする野方区民ホールのH所長が契約に見えられた。15周年記念公演クリスマスフアンタジーと題してミュージカル風レビューをやる予定だ。ゲストも呼んで華やかなショーにしたいが、今ゲストの出演交渉中なので、まとまったら劇団HPで発表します。

 19時にゲネプロを開始、21時に終わって、再び小返しに入った。照明、音響も再度チェックを始め、まるでこれから初日の幕が上がるようなテンションだった。

 只今25時過ぎ、これから遅い夕食を摂り、風呂に入って明日のパンフレットチェックをしたいが、きっとベッドに倒れこんでしまいそうなので、先にブログを書いている。このブログを読んで下さっているあなた、是非、中野坂上までお越し下さい。今日から30日までアトリエ公演「男たちの日記」でお待ちしています。ニューヨークからでも12時間で着きます。初日は14時開場です。

極上のBGM

2007年09月21日 | Weblog
 男と女がそれぞれ、ひとつの物語をまったく違う演出で表現する。この挑戦を受けて立った5人の男優と5人の女優が最高の演技を見せるために限界と闘っている。作曲家神津裕之はGENUINEである。超多忙の中で、男と女それぞれにまったく違う音楽を書き上げてくれた。舞台稽古でそのBGMに乗って演技をした俳優達が感動で打ち震えた。照明のマッキーは鳥肌立ち、音響の永尾は感涙し、演助の三田は瞬きを忘れた。

 これが僕の最強のパートナー神津裕之だ。たかがアトリエ公演の音楽でも、僕の決意が伝わればいつでも本気になってくれる。初日まで今日のゲネプロを残すのみだが、全力で音楽を越える演技をつけよう。

 朝から11月国立劇場の鬘合わせ(づらあわせ)に行ってくる。僕も「風流陣」の風の神はちがね付きは初めて被るので、どうなるか楽しみである。

 18時からゲネプロ。明日土曜日、14時に初日を迎えます。是非、神津裕之の深い深いBGMをその耳でお確かめ下さい。朝倉なんぞまだまだヒヨッ子です。頑張ります。