燃える想いは永遠に続いても、身体無くしては伝えることが出来ない。ここまで生きたら、自分の身体があとどれほど酷使に耐えられるか、おおよその見当はつく。目的地に着く前に燃料切れになるのは耐えられない。かといって目的地を変更するのはもっと耐えられない。父や恩師、数多の老人をみて学ぶことは多い。行けるところまで行って、あとはたのんだよ、と、笑って死ねたら悔いはない。
今、死に際の老人二役に挑戦している。あまりに難し過ぎて、思わず髭を剃ってしまい、演出家にダメを出された。俳優は自分の外見を勝手に変えてはいけないことさえ忘れていた。初日まで三週間あるので伸びるだろうが…。旅の腹話術師福笑井正一は愛用の人形を残して、街の猿回師犬山太郎は相方猿の次郎を残して、共に笑って死んで逝くのだが…。過ぎ去った昔が懐かしいのは未来があるからだ。別れたひとに逢えるかもしれないと思えるのも未来があるからだ。この夜半、人生の幕が閉じるとき、どうやって笑えばいいのだろう。あと三週間で答えが出たら、僕の初日だ。いや、燃える想いも表現出来なければ、ただの燻りになってしまうなあ。作家としてならすぐ解かるのに、この身体が…。
今、死に際の老人二役に挑戦している。あまりに難し過ぎて、思わず髭を剃ってしまい、演出家にダメを出された。俳優は自分の外見を勝手に変えてはいけないことさえ忘れていた。初日まで三週間あるので伸びるだろうが…。旅の腹話術師福笑井正一は愛用の人形を残して、街の猿回師犬山太郎は相方猿の次郎を残して、共に笑って死んで逝くのだが…。過ぎ去った昔が懐かしいのは未来があるからだ。別れたひとに逢えるかもしれないと思えるのも未来があるからだ。この夜半、人生の幕が閉じるとき、どうやって笑えばいいのだろう。あと三週間で答えが出たら、僕の初日だ。いや、燃える想いも表現出来なければ、ただの燻りになってしまうなあ。作家としてならすぐ解かるのに、この身体が…。