浅井久仁臣 グラフィティ         TOP>>http://www.asaikuniomi.com

日々の出来事から国際情勢まで一刀両断、鋭く斬っていきます。コメントは承認制です。但し、返事は致しませんのでご了承下さい。

私の視点 学習塾の裏側

2005-12-13 11:11:35 | Weblog
 京都府宇治市の学習塾「京進宇治神明校」で、アルバイト講師が自分の生徒の小学6年生の少女を刺殺した事件は、教育関係者のみならず、子を持つ親に大きな波紋を投げかけた。ただこの事件は悲惨さだけを記憶に留めて幕を閉じさせてはならない。多くの問題提起をしているからだ。
 中でも、目を向けなければならないのは、塾の実態だ。学習塾はここ30年、他のビジネスに比べ、資格も要らず、初期投資も少なくて済むからと、脱サラ組や他業種からの参入も多く、その数を増やし続けてきた。ところが、子供の数は減り続ける実態はいかんともしがたく、新規参入組も老舗も苦しい台所事情の塾が多い。需要の掘り起こしは、生徒の低年齢化を促し、今や小学校高学年生の塾通いは普通になり、低学年生から幼稚園児にと広がっている。
 苦しい台所事情に置かれると、塾の経営者は、教育よりも経営にと重点を置きがちだ。「成績を上げるのがビジネス」と割り切る(割り切らざるを得ない?)彼らは、たとえ「子供の“心”を壊してでも結果を出させる」という結果至上主義に陥りがちになる。教育においては、「子供の顔色」を見るのも教師の重要な役割の一つだが、それとて怠る(と言うか、できない)教師が少なくない。
 もちろん全ての塾がそうだとは言わぬが、少なくない数の塾経営者は、善良な教育者の顔を装いながら、“背に腹は代えられぬ”と騙しのテクニックに走る。「授業料の複雑な積算システム」や「教師の経歴詐称」などが代表例だ。
 「授業料の積算システム」は、表向きには安い授業料を謳っておき、“網にかかった獲物”には、授業料や教材費を様々な手を使って積み上げていき、1銭でも多く取り、たとえ退会しても返金しないやり方だ。余りのあくどい手口に訴えが相次ぎ、消費者生活センターにも苦情が殺到、「特定商取引法」の指定サーヴィスに名前を挙げられた6業種に学習塾や家庭教師派遣も英会話(11月2日付の「英会話学校の裏側」を参照)やエステと共に入れられている。
 そして、「教師の経歴詐称」も一般的に多くの塾で行なわれている手法だ。安上がりな講師を採用するのだが、“商品”とも言える講師の質を低下させたとあっては、経営に大きく影響するのは当たり前だから、そこに「騙しのテクニック」を取り入れる。以前ここでも紹介したことがあるが、多くの進学塾が教育学を専攻した訳でもない学生をまともな訓練もしないで講師として教室に送り込んでいる実態がある。しかも、悪質なことに、親たちや子供たちにはその点をひた隠しにして、スーツ姿に身を包ませて「大卒」「プロの先生」と偽らせるのだ。最近聞いたひどい例では、高校を出たばかりの“ピッカピッカの(大学)1年生”に25歳と言わせている。商品で言えば、明らかな不当表示に当たるはずだ(ところが、ある消費者生活センターの相談員は、「東大卒でもないのに東大卒と偽れば問題になるかもしれませんが…」との“ピンボケ”見解)。
 誤解を招くことのないよう説明しておくが、私は大学生を塾の講師にするなと言っているのではない。大学生でも、中には、特異稀なる才覚を持っていて、プロの教師顔負けの者もいるし、勉強の教え方が下手でも、その人間性で、子供たちを魅了する若者もいる。だから、もちろん教授法を教え込むことが前提条件だが、正直にその身分を明らかにして子供たちの前に自信を持って出せばいいのだ。
 子供たちの多くは、我々大人にない鋭い感性の持ち主である。殊更、「大人の嘘」に敏感な年代(小学校高学年生から中学生)の子供たちは、嘘をつく大人たちに、時に異常とも思える嫌悪感で敵対する。逆に、この時期に、「良い大人たちやステキなおにいさん(おねえさん)」に接することは、子供たちの精神的な成長に多大な影響を与える。
 そんな観点からも、学習塾経営者も子を持つ親たちも、今回の事件を教訓に、「塾のあり方」「子育て」についてとことん話し合い、考えていただきたい。全国随一の塾タウンと言われる南浦和に居を置く者からの考察でした。


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんな記事がありました (力休)
2005-12-15 18:13:35
京都新聞が『緊急報告・講師に何が 宇治女児殺害事件』という上中下からなる特集記事をヤフーのニュース欄に載せましたね。危惧していた点が明かされています。

 
返信する