尾久から町屋のあたりをぶらついて、都電で王子にたどり着いた頃には真っ暗になっていた。
北区王子1、さくら新道の飲食街
Photo 2006.12.3
王子駅と飛鳥山公園の間にはさくら新道の飲み屋街がある。日曜の夜、お店は一軒もやっていなかった。住人が若干おり、数件の家には灯りが点るが、あたりはひっそりとしている。JR京浜東北線ホームのすぐそばなので、ときおり電車が到着する音が響き、アナウンスと発車の音楽が聞こえてくるが、ひとたび電車が出て行ってしまうと、再び静けさがあたりを支配する。言い方は悪いが死んだように静かだと言ってもいい。
建物は、2階部分が道路側と線路側に張り出している。木製の斜材で張り出し部分を支え、庇を作るように覆い被さる様がなかなかかっこいい。また側面から見ると、2階の上にも小さな窓があり、どうやら屋根裏部屋もあるようだ。更に、広告掲示用だろうか、屋根上には垂直のパネルが付けられている。2階が1階より大きくやや不安定に見えるのと、屋根上のこのパネルが、長屋建物の印象を独特のものにしている。
Photo 2006.12.3
さくら新道の飲食街は、JRと飛鳥山公園下の道の間に、2階建ての長屋が3棟並んでできている。道の片側だけにお店が並ぶいわゆる片側町。道の反対側は公園で、夜は真っ暗なので、飲食街としてはちょっと寂しい。
Photo 2006.12.3
写真を撮りながらぼんやりしていると、暗闇の向こうから、ジョギングをする人や自転車が、落ち葉を踏みしめながら急に現れるのでドキッとする。しかし彼等は無言のまま小路を走り抜けていく。
詳しくは知らないが、やはり戦後の闇市、露店に端を発するのだろうか。駅の北側周辺が次第に整理されていく中で、線路と丘の間の隙間空間には手がつかず、ずっとそのまま残されてきた。使い道が少々難しいこのような空間はしばしば開発から取り残されて、昔の空間の有り様を伝えていることが多い。高田馬場周辺や、渋谷の宮下公園そばなど、駅の近くなのに奇妙な空間が残り続けているケースは、考えてみればいくつもある。
戦後の雰囲気を今に残し、必ずしも豊かな生活の場とは言い切れない、どちらかというと昔の貧しさの記憶がつきまとってしまうような空間だが、なぜか奇妙に惹かれる場所だ。
#失われた建物 北区 #古い建物 北区 #夕景・夜景 #商業系
駅前飲屋街調査、本当に面白そうですね。私の指導教授も、そういう研究をやりたがっておられたのですが、いつも気勢を上げて、飲み歩いて終わってしまうと仰っておられました。私の場合、全くの下戸なので、一人で潜入調査をするというのは不得手です。こういう場所には惹かれるのですが・・・。
残念です・・・
王子 さくら新道 「音路」
http://kachinet.jp/blog/blog.php?key=22715#blog_comment
燃えてしまうとやはり再建はかなり難しいのでしょうね。残念です。