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書籍紹介「ロベルト・デュラン "石の拳" 一代記」(3)

2014年09月18日 | ボクシング
533ページもあり、試合の多くが臨場感をもって再現される「ロベルト・デュラン "石の拳" 一代記」

ロベルトが少年時代にチャフランというボヘミアンに懐いてた話も心温まります。
ブレーメンよろしく子供と連れ立って稼ぎ、小銭を手渡し
貧しい子供の面倒を見る男だった・・・と。

胡散臭い目で見る大人もいたが、「そんな事はなかった」と言うデュランは
米国の試合にチャフランを招待してたりするんだよな・・・。

逞しく成長したデュランは、(西城正三が王者だった頃の)フェザー級で
世界ランクに登場。
Jライトの元王者・小林弘をKOし、いよいよ次期世界王者候補となり
ケン・ブキャナンをボディブローで倒してライト級王座を奪取。
※ローブローの疑いあったが・・・



そして連続KO防衛。ノンタイトル戦も精力的にこなし、宿敵となる
エステバン・デ・ヘススにこそ1敗するが1年後の防衛戦で歴史的な
大激戦の末に雪辱。
※ただし、即再戦させずにキャリアを積ませたのは当時の側近である
 カルロス・エレタやレイ・アーセルの懸命さと慎重さが窺い知れる。
 近い階級の絶対王者アントニオ・セルバンテスと対戦させなかったし。
 やったらデュランが勝つ公算もあったというのに・・・。

とにかく、ライト級時代のデュランは最も野生的で魅力的な
ファイターだったですよ・・・。

※逃げ回る相手を追いかけて最後は残虐に倒し、
 アンフェアなレフェリーがダメージ深い相手をロングカウントで
 助けようものならば「こいつがどうなっても知らないぜ!」と
 ばかり、とんでもないパンチをブチ込んで失神させたりもした。

暴言も吐いた。
相手を病院送りにした試合で「俺が好調だったら死体置き場行きだった」と
平気でのたまった。
1勝1敗だった宿敵エステバン・デ・ヘススとのライト級統一戦では
計量時に乱闘騒ぎを起している。

対戦モードに入るとリング外でも敵意を露にした。
※アルゲリョが紳士的に歩み寄ったら「来るんじゃない!」と威嚇したとか。
 しかし、体重差が顕著になって対戦がなくなったら親愛の情を示して
 きたなんてデュランらしいエピソードもありましたな。
 本書には載ってなかったけど。



一方、仲間の病院費を持ったり、故郷の貧しい人に金を配ったりする優しい面もあった。
デュランが稼ぎ出した大金は、引退すると殆ど無くなっていたらしいが、
自身の放蕩癖に加え、妻フェリシダッドのギャンブル狂いのせい・・・なんて意外な話も。
※事業の失敗もあったとか。良妻賢母のイメージあったけど意外だねぇ。
 でもデュランは
「ロベルト・デュランの妻として45年い続けるだけでも凄いことだ」と
 コメント。そりゃそうだ。破産寸前になって旦那を見捨てる嫁も多いからねぇ。

引退後ドラッグに手を染め、殺人容疑で終身刑となりったヘススとも、
感動の再会を果たしている。
ドラッグ摂取に使用した注射針が原因で獄中でエイズを発症し、死を
間近にしたデ・へススを見舞ったデュランは、戦友の変わり果てた姿に
涙を流し、病床のヘススに駆け寄ってを抱きしめたそうだ。
エイズに対する知識が乏しく、偏見も多かった時期、医療関係者以外は
ヘススに近付かなかったというのに・・・だ。



その行為が紹介されるや、
自国のファイターの数々を打ちのめしてきたデュランを嫌う者が多かった
プエルトリコで、一気にデュランは愛される人物になったのだとか。
※なお。へススに関しては他にも興味深い記述あり。
 Jウェルター級王者アントニオ・セルバンテスに挑んだ試合で敗れる際
 TV観戦してた関係者が「相手に動かれると弱い」なんていう欠点を
 呟いてるんですな・・・。

人種的にもメキシカンの血が流れ、パナマで育ち、中年米を代表して
対外選手を薙ぎ倒すデュランはパナマだけのヒーローではなくなっていた。

ヒスパニック同士が戦うと熱い血ゆえに熾烈なモノになる。しかし
彼がスペイン語を話さない相手と戦う場合、ヒスパニック圏の観客は
全面的に中南米選手を応援する・・・そういう意味のコメントを
ホセ・トーレスは残しているが
まさにデュランはその象徴的な存在だった。 


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