あるBOX(改)

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思い出の好ファイト:飯泉健二vs佐野勝治

2002年05月31日 | ボクシング
1987年08月27日
A級ボクサー賞金トーナメント準決勝
「フェザー級・飯泉健二vs佐野勝治」

盛り上がっていた初期のA級トーナメント。
メイン格は「飯泉vs佐野」だが、
「大山vs鈴木(新人王)」、「関藤vs尾崎」も思い出深い・・・。



~で、飯泉vs佐野ですよ。

前年、杉谷との壮絶な強打戦に敗れたサウスポーのファイター飯泉(草加有沢)。
再浮上を賭けてのA級トーナメント再出場(前年度優勝)。

一方の佐野(笹崎)は、ブランクを経ての再起後は好調。
元日本王者チバ・アルレドンド(仙台)に10回判定勝ちの殊勲~
佐久間政勝(極東)に6回判定勝ちでトーナメント初戦を飾っていた。

とは言え。
28歳のベテラン、23勝5KO9敗4分けの佐野に勝機は薄いと思われた。

両者入場。
花道の佐野を見て まず驚いた。
笑顔なのだ。
これから剛打の飯泉と同じリングに上がると言うのに、実に落ちついた
爽やかな笑みを浮かべている。
決して相手をナメた笑いではない。虚勢を張っての笑顔でもない。

本心から活きのイイ若者との戦いを望み、その為にヤルべき事は全てやった、
そんな笑顔なのだ。

実に「イイ顔」だ。
「これは飯泉苦戦する!」・・・私は横の知人に そう言った。

まず その予感は当たった。
第1R、開始ゴングと同じに佐野が いきなり右を打ち込んだのだ!
凄い音がした。
みるみる腫れ上がる飯泉の左目。
ロープまで後退した相手に攻勢をかける佐野。会場もビックリの先制攻撃だ。

しかし、戦局はアッサリと一変する。佐野の攻勢をカバリングで
しのいだ飯泉の右フック一閃で佐野四つん這いダウン!
立ち上がった佐野に間髪入れず右フックで2度目のダウン!

おいおいおいおい私の予想大外れかい!?

しかし佐野は、やはりこの試合に賭けているのか、その後猛烈な粘りを発揮。

何度もグラつかされながら3ダウンを拒否。
2Rも飯泉の攻勢を受けながら打ち返し、3Rから追い上げる。
4Rにもイキナリの右を炸裂させ、反撃する飯泉と激しく応戦。

ファイターながら身体の堅い飯泉は、背中が伸びて良く打たれる。
タフが売り物だが左目の腫れが苦戦を物語る。
ズングリ体型の佐野もタフだ。
身体がほぐれ、パンチに慣れたのか飯泉の強打に耐えている。
素晴らしい闘志だ。あの飯泉とここまで打ち合える選手が居たのかと驚愕。

A級トーナメントは決勝以外は6回戦。普段10R戦うA級ボクサーが
短縮したラウンドで戦えば密度の濃い好試合になると言う、このイベントの
意義を充分に証明する打撃戦。

後半は むしろ佐野のペース。
打ち合いの中でもキャリアを見せ、相手のパンチを殺して自分のパンチを
効果的にヒット。右アッパーも有効だ。

最終回も佐野の右ストレートがヒット。
一瞬身体が揺らいだ飯泉だが、旺盛な闘志で反撃。

凄まじい打ち合いのまま終了ゴングとなった。

試合は予想外の判定に。
2人が1ポイント差、1人が2ポイント差で飯泉の辛勝だった。

試合前と同じ笑顔でサバサバと勝者を祝福する佐野。
卵大に左目を腫らした飯泉も悪びれずに健闘を称えた。

――その後
飯泉は決勝で荻原昇(金子)を圧倒的KOに降し連覇に成功、杉谷との再戦に
向けてスタートを切った。

佐野は この激戦で燃え尽きたのか、キャリアにピリオドを打った。

「イイ顔をしたベテランはホープを苦しめ抜く」私のジンクスは確信に変わった。