あるBOX(改)

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思い出のKO:中村正彦vs西岡利晃

2002年02月04日 | ボクシング
中村正彦vs西岡利晃

1995年2月4日 後楽園ホール 

奇しくも この日メインエベンターだった葛西裕一氏が、今は西岡のトレーナー。

メインエベントの葛西裕一vs権煕充のOPBF戦が目当てで後楽園ホールへ赴いた私。
6時の前座開始にも間に合い、ご機嫌で観戦席へ。

無名の4回戦選手の全力ファイトも生観戦の醍醐味だ。
明日のスターのグリーンボーイ時代を記憶に留める事だってあるかも知れないじゃないか。

さぁ、第1試合が始まる。
前の客席が色めきだった。彼等の知り合いがリング登場らしい。

良くある光景だが、今回は関西弁の応援だ。
4回戦選手を わざわざホールまで応援とは珍しい。

つ~か彼等の会話を盗み聞くに、相当スジの良い少年らしい。アマキャリアもあるとか。

第1R。
デビュー戦を1RKOで飾っている少年はサウスポー。
センスを感じさせる動きだが、
お手並み拝見の気分で見ていた私は、「まぁ、そこそこ上手げな選手はゴロゴロいるかんね」と
半信半疑。

速い左ストレートにザワめく場内。
対戦相手は不器用そうな青年(でも老け顔)、ガードを固めながら前へ。

いかにも「オレって天才」な仕草を見せ始める少年。
ガードを下げて顔を突き出し相手を挑発したり。

4回戦での こう云う仕草が嫌いな私(←かなり石頭)、即おっさん顔の選手を応援するに決定!

ホールには同じような人間がいるのか、「そう云うヤツは意外とモロイぞ!掻き回してやれ!」
「ガチャガチャ行け!」と野次が飛ぶ。
つ~か私もヤジった(笑)。

おっさん顔も離れたら相手の方が上手いと感じたのか、プレッシャーを強め始めた。
結構このおっさん顔、手足が長いので右が伸びる。

自称天才が正面に立ったりすると、いきなりの右が当たったりする。

第2R序盤は海外ボクサー風の動きで翻弄してた天才少年だが、
おっさん顔が思いきりのイイ踏込みでペースを奪いにかかる。

少年に余裕が無くなってきた。
おっさんは体力ある。打たれても堪えない。

中に入り込まれ左右フックを浴びる少年に最初のカウントが入った。

「ホントに脆いんでやんの!」「4回戦は一生懸命やれ!」の厳しいヤジ。
一部はワタクシ。

前列の関西ファンが振り返る。しらんぷりする私。最低の観客だ(笑)。

第3R押される少年に「どうした天才、頑張れ!」の声援が飛ぶ。
後楽園ホールには負けてる方を応援するファンがいる。
私も少年がこのまま倒されるのもナンだと逆に応援。

「基本だけでイイんだよ!」
「サウスポーは何をすればイイ?右突いて右回りだろう!?」
後楽園ホール名物のキツイ野次。
ド素人がイヤらしい技術ヤジ。
一部は私(笑)。

セコンドから指示されたか、少年はガードを上げてフットワークからの右ジャブを出し始める。

右を引っ掛けての左も当たった。
おっさん顔が打ち返したらサイドステップ。
やれば出来るじゃん!

再びペースが変わった。

第4R最終ラウンド、少年は好調。
しかしダウンの失点も大きい。

逆転KOを狙えば相手ペースの打ち合いになるから攻勢も掛け辛い。
アウトボクシングからチャンスを掴むしかない。

少年はよくやっている。
左ストレートも良くヒット、完全にボクシングしている。

「ここから踏込んでワンツーが当たったら逆転もあるぞ」と場内も沸いた所で、少年の
左アッパーがヒット!

相手の動きが「ビタッ」と止まった!
効いた!
前列の関西ファンが色めいた、少年の肉体も同様だ。
次のフォローを打ち込もうと身体を沈めたその時に!

反発心旺盛な相手が逆に踏込んで打ち込んだ右ストレートを したたかに食らっていた。

少年は大の字にダウン。

レフェリーはカウントも取らずに試合終了を宣した。

「あの少年はリングに戻って来ないかもな・・・」そう思わせるほど強烈なKO負けだった。
少年は担架で運ばれた。
前列の関西ファンは消沈していた。

後年、関西にバンタム級の好選手台頭が伝えられた。「どんな選手なんだろうねぇ」と知人に
言ったら、呆れたような顔で「なに言ってんだよ、あの時の選手だよ!」と言われて驚いた。

よく あのKO負けから立ち直ったものだ。 
言うまでもなく その少年とは西岡利晃のことだ。