徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展

2006-07-25 | 美術
特別展 プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展
東京国立博物館
2006年7月4日~8月27日

漸く表記を鑑賞してきました。展示替えは殆どないとのことなので安心していましたが、招待券の期限が来てしまうので慌てていってきました。

1.正統派絵画
2.京の画家
3.エキセントリック
4.江戸の画家
5.江戸琳派
の構成になっていますが、最後の第4室は、「光と絵画の表情」のコーナーでは、舞台に使われるような照明装置を使い、「自然光のように変化し、作品に表情を与える陰影ある光」を実現しています。この件は、最後に触れますが、このコーナを見に行くだけで、(たとえ若冲に興味がなくても)この展覧会は見に行く価値があると断言します。

目に付いた作品を展示順に。

2.京の画家
  • 山水図 池観了筆(1753-1830) 2幅 江戸時代・18~19世紀; 積み上げられた山の表現、丸みをもった輪郭線。池大雅の弟子とのこと。「播磨ゆかりの江戸絵画 大倉集古館」で 1861年に来日し、長崎派の文人画に影響を与えた徐(雨亭 1824-67~)筆の「蜀山図」を拝見したが、同じような感覚をもった覚えが。
  • 幽霊図 長沢芦雪筆(1754-1799) 1幅 江戸時代・18世紀; 髪を掻き揚げる仕草、表情。恐ろしさ満点の傑作です。
  • 美人に犬図 山口素絢筆(1759-1818) 1幅 江戸時代・18~19世紀; 一寸ふくよかな顔、流れるような着物、赤い襦袢。まとわり付く仔犬。
  • 梅花猿猴図 森狙仙筆(1747-1821) 1幅 江戸時代・19世紀; 「狙仙の猿」と評判を得たそうです。細かな毛並みがふわふわしています。

    3.エキセントリック
  • 花鳥人物図屏風 伊藤若冲筆 6曲1双 江戸時代・18世紀; 鳥、花、魚、人物を描いた水墨画。軽妙な表現と軽やかな筆の動き。傑作。「鶴図屏風」は一寸構図に凝りすぎて、筆の運びが遅いが、こちらは、鳥、花を趣くままに描いた、筆の軽やかさが素晴らしい。
  • 猛虎図 伊藤若冲筆 1幅 江戸時代・宝暦5年(1755);画家毛益の作品を模して描いたとある40歳4月のときの作品。弟に家督を譲り絵画制作に没頭したときの作品。ユーモラス。
  • 鷲図 伊藤若冲筆 1幅 江戸時代・寛政10年(1798); 背景に薄墨を引いた鷲図。波は模様化し、若冲様式の到達点だそうだ。

  • 唐人物図 伝曽我蕭白筆 2幅 江戸時代・18世紀; 漢建国の功臣韓信の股くぐりの故事による図。曽我蕭白ではないそうだ。しかし、あまりに迫力ある人物は、印象的。
  • 寒山拾得図 曽我蕭白筆 2幅 江戸時代・18世紀; 寒山の表現はおどけている。縄衣文殊図と関係が指摘される面白い衣装の拾得図。

    4.江戸の画家
  • 二美人図 勝川春章筆 1幅 江戸時代・18世紀; のどかな春の日の後朝。文を書く座った遊女、立ち居姿の遊女を描く。精緻な着物の文様が見事。
  • 桜花花魁図扇面 歌川国貞筆 1本 江戸時代・19世紀; あまりに豪奢な扇。桜花、花魁の着物は見事。

    5.江戸琳派
  • 四季草花図・三十六歌仙図色紙貼交屏風 酒井抱一筆 6曲1双 江戸時代・19世紀; 細い筆で和歌が書かれており、優雅のひとこと。
  • 飴売り図 鈴木其一筆・酒井抱一賛 1幅 江戸時代・19世紀; 西洋人を思わせる風貌。世間胸算用の「大晦日は一日千金」をふまえた酒井抱一賛がある。
  • 月下波上千鳥図 鈴木其一筆 1幅 江戸時代・19世紀; 水墨画、静寂な風景。
  • 青桐・楓図 鈴木其一筆 2幅 江戸時代・19世紀;「国宝 関屋・澪標図屏風と琳派の美 静嘉堂文庫美術館」で拝見した「鈴木其一「雨中桜花楓葉図」 二幅」の方が、薄墨で雨を画面に斜めに描いた表現がよかったかと。
  • 漁樵図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 江戸時代・19世紀 ; 右隻は桜に樵、左隻は紅葉に漁夫。漁夫の姿は太公望と重なる。春秋のを対比するが、黄緑や明るい茶をベースにした明るい色彩。紅葉には、たらし込みの技法。松の黒が映える。色彩豊かな中国絵画の世界。理知的な構図。傑作です。

    光と絵画の表情
    「自然光のように変化し、作品に表情を与える陰影ある光」を実現したコーナ。
  • 佐野渡図屏風 酒井抱一筆 2曲1隻 江戸時代・19世紀 ; 金地着色の屏風
  • 柳に白鷺図屏風 鈴木其一筆 2曲1隻 江戸時代・19世紀 ; 光線によって変わる白鷺の胡粉。緑の柳の変化も面白い。
  • 群鶴図屏風 鈴木其一筆 6曲1双 江戸時代・19世紀
  • 十二か月花鳥図 酒井抱一筆 12幅 江戸時代・19世紀

  • 春日若宮御祭図屏風 狩野柳雪筆 6曲1双 江戸時代・17~18世紀
  • 白象黒牛図屏風 長沢芦雪筆 6曲1双 江戸時代・18世紀;淡い光の中で見るとなんともいえずユーモラスです。多分明るい光で見ると冴えないでしょう。
  • 紅白梅図屏風 6曲1双 江戸時代・17世紀 ;浮き出るような紅白の梅。
  • 簗図屏風 6曲1双 江戸時代・17世紀 ; 簀(す)には落鮎と蟹。金地の屏風だが、光の加減で 簀が光り、落鮎と蟹がはねて見える。一寸暗くなると波が煌く。後で読めば、図録の解説で前九州国立博物館副館長の宮島新一氏がまず挙げている傑作。

  • 猿猴狙蜂図 森狙仙筆 1幅 江戸時代・19世紀; こちらの猿は、「封侯」と「蜂猿」の音が通じることから立身出世の願いをこめた吉祥図案
  • 雪中松に兎・梅に鴉図屏風 葛蛇玉(かつじゃぎょく1735-80)筆 6曲1双 江戸時代・安永3年(1774);薄明かりで見るこの屏風は、幻想的な雪景色。明るいところで見たら、きっとつまらない作品。現在知られている葛蛇玉の作品は、プライスコレクションにある「蘭石鸚哥図」を含め4点のみだそうだ。
  • 乙御前扇面図 酒井鶯蒲筆 1幅 江戸時代・19世紀;藍色が美しい。

  • 懸崖飛泉図屏風 円山応挙筆 8曲1隻・4曲1隻 江戸時代・寛政元年(1789);薄明かりで眺めれば、霧の中に崖と鹿が見える。光が差してくれば、鹿の様子がはっきりと見え、まるで霧が晴れて日が差し込んできたよう。
  • コメント (5)
    • X
    • Facebookでシェアする
    • はてなブックマークに追加する
    • LINEでシェアする