徒然なるまままに

展覧会の感想や旅先のことを書いてます。

ティツィアーノ「ヴィーナスとオルガン奏者」が3月に来日

2006-01-04 | 美術
 あけましておめでとうございます。

 今年の展覧会の予定が次々明らかになりつつありますが、その中で期待は、プラド美術館からやってくるティツィアーノTiziano VECELLIO(1488/1489~1576)の「ヴィーナスとオルガン奏者」(画像はwww.wga.huのリンクを引用しています。画像をクリックすればwww.wga.huに)。

 最近読んだ「ピカソ」の中で、「ヨーロッパにおける画家の完成は、ティツィアーノ=ルーベンス=ルノワール=シャガールの型にある」と美術評論家の瀬木慎一氏は書いていた。ルノワールとシャガールは日本でもその作品を鑑賞できるし、ルーベンスといえば、アントワープの大聖堂の祭壇画があることが小公子で有名だ。しかし、ティツィアーノとなると西洋美術史を勉強しないと、その名前すらなかなか日本では知られていないのではないだろうか。
 ティツィアーノのパトロンは、ヴェネツィア、カール5世やフェリペ2世など、当時の支配者ばかりで、当然現在のヨーロッパの各国の国立美術館のコレクションに作品が納まってしまい、日本では作品を鑑賞できないだから仕方がないか。

 私自身は、浅学で昨年ニューヨークのフリック・コレクションで、ティツィアーノの二点の肖像画が、選り抜きの作品としてメインとなる広間に飾れていたことでこの大作家の西洋美術史における地位を漸く理解したところ。(そのときのBLOGとティツィアーノの作品リストはこちら)肖像画については、さらに、9月にアルテ・ピナコテークでも、皇帝カール5世の肖像画を鑑賞した。
 女性を描いた作品も多く、たとえば、昨年鑑賞したのは、ドレスデン美術館展「白いドレスの女性の肖像」記録はこちら)とルーブル美術館で見たWoman with a Mirror「美のチチェローネ」では、ティツィアーノの女性の肖像画についてこう評している。「これらはどの程度の肖像画として、どの程度純粋に芸術的衝動から描かれたのか」
 ティツィアーノについて、西洋美術史の書籍を読むと肖像画のほかに、裸婦像として有名な作品が多い。その中でも、よく紹介されるのが、プラド美術館の「ヴィーナスとオルガン奏者」「ダナエ」、ローマのボルゲーゼ美術館の「聖愛と俗愛」、ウフィッツィ美術館の「ウルビーノのヴィーナス」。さらにルーブル美術館にある、ジョルジョーネの作品と言われていたが最近はティッツアーノ作品といわれる「田園の奏楽」(下記参照。先月鑑賞する機会を得たが、主題が音楽かとも言われる不思議な作品。)。このうちの「ヴィーナスとオルガン奏者」がやってくるというのだから嬉しい。
 たまたま先日、昨年6月の前国立西洋美術館館長の樺山紘一氏の「絵画に見る西洋の心-裸身と着衣をめぐって-」の講演記録を読んだ。樺山氏は、その中でティツィアーノの作品について何点かを紹介している。マネは、「草上の昼食」は「田園の奏楽」を、「オランピア」は「ウルビーノのヴィーナス」を念頭に描いている。裸身の女性が聖なる姿で、着衣が俗なる姿を表している、とのこと。このような多くの解説が、プラド美術館を機会にテレビや雑誌などされるだろうから、ティツィアーノをさらに理解できるようになれると期待したい。



ルーブル美術館のティツィアーノ(ルーブル美術館のサイトからの引用とリンクです)(モナリザの後ろに展示してありました。)


The Pastoral Concert 田園の奏楽, c. 1509, ルーブルの解説はこちら

The strangeness of the meeting of these two dressed men and two nude female figures suggests a complex meaning. It seems Titian wanted two worlds to confront one another here: Venetian aristocracy on the one hand, and nymphs and shepherds on the other. No one speaks: they communicate through music.The theme of music in a serene landscape might evoke an allegory of Poetry - a poem or a legend. Titian gives great weight to the landscape; it is not used as simple decor, but as a reflection of a certain state of mind. The search for balance is shown through the integration of these figures in a setting where man and nature must coexist in perfect harmony. This thought evokes the myth of Arcadia recounted in Virgil's Bucolics and reinterpreted by the Neapolitan poet Jacopo Sannazzaro. The myth tells of the happy life of the shepherds of Arcadia, whose existence is centered around music and song.

Woman with a Mirror, c.1512-15
ルーブルの解説はこちら











Man with a Glove, Shortly before 1520
ルーブルの解説はこちら













The Entombment of Christ, キリストの埋葬, c.1520, ルーブルの解説はこちら

ヴェネツィアという名前が絵画において色彩の勝利を想起させるとするなら、それはティツィアーノに負うところが大きい。ジョルジョーネに影響された初期(「田園交響楽」、ルーヴル美術館蔵)の後、色彩の錬金術を古典的様式に取り入れた絵画をつぎつぎと制作して、絶頂期を迎える。マントヴァのゴンザーグ家のために描かれたこの作品では、ラファエロの構図を借りながらも、ティツィアーノは薄暗い光によって劇的な効果を出している。周囲の人々の身体の色合いは暖かいトーンで描かれているのに比べ、キリストの青ざめた骸は大部分が影にかくれている。
コメント
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