礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

入営期は一年二回とするを可する

2018-10-02 03:06:42 | コラムと名言

◎入営期は一年二回とするを可する
 
 松下芳男の『軍政改革論』(「民衆政治講座」第二二巻、青雲閣書房、一九二八)から、同書の第五章「兵役法の改正」の第四節「兵役法改正の要旨」を紹介している。昨日は、その(ハ)「一年在営制の実施」を紹介した。本日は、それに続く(ニ)を紹介する。

   (ニ) 徴集者に対する同情
 兵役法第二十条において、在営中本人に依るにあらざれば家族(戸主を含み、本人と世帯を同じくする者に限る)が、生活を為すこと能【あた】はざるに到りたるときは、現役を免除すと規定したるは適当である。
 又第四十五条に家族(戸主を含み本人と世帯を同じうする者に限る)二人以上同時に徴集さるる際、生計の関係上、本人の願出【ねがひいで】があれば第一番に入営せる者の除隊さるるを待ちて、逐次第二番以下の者を入営せしむる旨の規定あるは之れ亦適当なる政策である。
 而して斯様な同情を更に、予後備役の勤務召集者にも及ぼさねばならぬと信ずる。
 又兵役法には、入営期に関しては何等改正されなかつたが、之れは一年二回とするを可する。加之【しかのみならず】、一年兵役の実現となれば一時は全部の除隊入営となることなくなるので、軍隊の教育上、又勤務上も便利であるべきは自明の理である。
 尚ほ兵役法ではないが、之れが附属規定として徴集者の職業に関して、或る程度の保障を与ふべきである。之れをなさざる限り、徴兵忌避の事実は断じて消滅しない。即ち或は徴兵に応ずるために官吏が失職するが如きことをなからしむるとか、或は更に進めてその服役年限はそのまま之れを勤続年限に加算するのみならず、特に優遇して同階級中の最上位に置くとか、或は民間の諸会社の被傭人【ひやうにん】の如きも特に優遇するやう、夫々適当なる方法を講ぜしめるが如きである。併し近来此強制を俟つことなく、幾分実行してゐる会社もあることを聞くは喜ばしい。即ち服役者を解傭【かいやう】しないのみならず、給料も半分とか三分の一とかを給するが如きである。即ち兵役につくは特に利益でないまでも、特に損害を受くることはない程度にしなければならぬ。併し此事は更に後述する給料と家族手当の増額に俟たねばならぬのである。

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