◎東京市回覧板の雛形と隣組三則
昨日のコラムに対して、意外にアクセスが多かったので、本日もその続きとする。
村田亨『模範隣組と常会のやり方』(清水書店、一九四一年一月)の五一ページ以降に、東京市の「回覧板」について言及されている。それによれば、すでにこの時点で、東京市一四〇万世帯七〇〇万市民を対象に、回覧板が活用されているという。
また五二~五三ページには、「東京市回覧板の雛形」なるものが紹介されている。
その形状は、一枚の横長の板であり(素材については書いていないが、薄板か厚紙であろう)、その上部の左右に、書類を挟むバネがついている。また、同じく上部中央に、ふたつの穴があって紐がつけられている。
表面には、隣組についての「注意書」、裏面には「隣組回覧順番」がある。
以下に、表面の「注意書」を紹介しよう(改行は原文のママ)。
隣組は近所つきあひの親睦団体であります
組員は挙つて〈コゾッテ〉常会に出席しお互によく
識り合ひ親しい交際を致しませう。
組員の慶びや哀しみは組全体の喜憂〈キユウ〉と
してお互いに温かいお世話を致しませう。
隣組は町会の実践団体であります
通知は一刻も速く全員に徹底底するよう
仕事は正確に迅速に実行致しませう。
いろいろな申合せや行事は当番を定め
てとゞこほりなく実行いたしませう。
隣組は第一線の自衛団体であります
組員はお互いに気をつけ合つて火事、盗
難、疫病等の災厄防止に努めませう。
非常災害に際して直ちに出動出来るや
う各戸に担当者を定めて不断の準備を
して置きませう。