◎「お国の為なら命もいらぬ」戦時イロハ標語より
先日、古書店で、村田亨『模範隣組と常会のやり方』(清水書店、一九四一年一月)という本を入手した。六〇ページ余の貧弱な本だが、戦時体制の末端に位置した隣組とその「常会」のことがイメージできる興味深い資料と言える。
特に注目したのは、最終ページから奥付にかけて、細筆でビッシリと書き込みがおこなわれていたことである。
これは、当時の「標語」をイロハ順にメモしたものらしい(書き込んだ本人の「自作」も含まれるか)。細かい上に、相当のクセ字なので、きわめて読みにくかったが、何とか判読できた。ただ、「ゑ」の句だけは、一部の字が読めず、全体の意味もつかめなかった。
い 家は十軒心は一つ
ろ 論より和楽実行第一
は 励みて働き増産計画
に 日本精神忠勇義烈
ほ 誉は高し皇軍将兵
へ 平和の光り世界を照らせ
と 東西の建設国民一心
ち 貯金は身の為国の為
り 隣保の扶助は相互の真心〈マゴコロ〉
ぬ 脱いで働け体は熱い
る 流言〈ルゲン〉迷はすスパイに注意
を 教へよ知らずは知りたら行へ
わ 笑つて相談誓つて実行
か 下意を進めて上意を活かせ
よ 翼賛の第一線は隣組
た 大政翼賛の基礎は常会
れ 玲瓏〈レイロウ〉富士の根我等の姿
そ 増産計画生活改善
つ 強き体が興亜の基〈モトイ〉
ね 熱あれ血あれ力あれ
な 何事もお国の為を思へ
ら 労働美と健康美
む 無窮の皇国扶翼の誠心
う 産めよ殖せよ健康国民
ゐ 維持せよ我等の良風美俗
の 納税成績優良組合
お お国の為なり命もいらぬ
く 工夫凝らして物資を殖やせ
や 日本魂〈ヤマトダマシイ〉世界に示せ
ま 真心こめて銃後の工夫
け 敬神崇祖は皇道精神
ふ 部落常会翼賛運動
こ 心を結べ手を繋げ
え 営養保健に国力増進
て 手近の奉公隣組
あ 悪条件は協力克服
さ 捧げよ忠節御国〈ミクニ〉の為に
き 義務だいざ買へ事変の国債
ゆ 融和の会合滅私の相談
め 滅私の道場融和の道場
み 身をささげ家を忘れて御奉公
し 新体制の実践本部だ隣組
ゑ ゑみて■■て誓つて実行
ひ 火の用心は資源の愛護
も 求めよ国債銃後の力
せ 節約自粛公益優先
す すは敵来るぞ用意はよいか