タイトルだけ見たら、津田梅子と関係があるのかな?と思った。
見つけたのは、図書館ではなく、わが家の書棚。
昔われわれ夫婦が若かりし時代に買ってもらった書棚があるのだが、ここ20年余りしばらく立ち入れなかった部屋に置いてあった。
その部屋は、息子の部屋だったのであり、足の踏み場もない、恐ろしくモノであふれた部屋になっていたのだった。
息子が家を出ていって、ようやくこの部屋の片付けも済んで、書棚から本を取り出すこともできるようになった。
その中に納まっていた1冊が、この「ウメ子」。
取り出してみると、1999年の出版。
どうやらこどもの話のようだったが、まあ読んでみようと思った。
なぜかというと、著者名が「阿川佐和子」と書いてあったから。
阿川佐和子が書いた本といえば、だいぶ前になるが、「聞く力」という新書がベストセラーになったことを覚えている。
だけど、こんな小説を書いていたことは知らなかった。
あとで調べてみたら、本書は、「ン年前の子ども時代を舞台にした、著者初の長編小説」ということだった。
そうか、津田梅子とは関係なしだったか。
主人公は、幼稚園児のみよちゃん。
その子が通う幼稚園に「ウメ子」という子が転入してきてからのお話。
ウメ子は変わっていて、ふつうの子とちがう。
初めて会った日から、みよはずっとそう思ってきたが、その天真爛漫なウメ子の魅力と行動力に引き込まれながら、やがて二人は友だちになる。
行方不明だったウメ子の父さんの居場所が分かって、二人で家出をして会いに行ったりサーカスを体験したりもする。
みよちゃんと仲がよい兄は、ウメ子とも仲良しになる。
3人で行動したりもするが、こどもらしさはあるものの、ちょっと行動力や思考力が大人っぽ過ぎて、とても3人が幼稚園児だとは思えなかった。
だけど、離れて住むウメ子のお父さんとお母さんを仲直りさせようと考えるのは、こどもらしくて健気で愛らしい。
この話は、著者の原体験も混じっているらしい。
幼稚園時代の話だから4歳ぐらいのこどもの感性が所々にうかがえるのがいい。
一生懸命考えていても、無邪気な思考でしかない様子に、自分の園児時代や小学校時代を思い出した。
この、阿川佐和子氏初の長編小説は、坪田譲治文学賞受賞作品となったとのこと。
ずいぶん前の1999年の作品だったが、その3年後には文庫化されていた
だが、文庫本の表紙は、ちょっと違和感があった。
単行本の時の表紙は、「ジャングルジム」や「ロビンフッド」などウメ子を連想させるものだったけど、文庫本の絵は、「一輪車の女の子を見るこども3人」。
一輪車というと、なんだか昭和ではなく現代という感じがする。
そして、一輪車の女の子がウメ子だとしても、見ているのはみよと兄の2人だけのはずだから、ちょっと合わないかな、と思った。
まあ、それはいいとして、園児の頃を思い出したから、結構楽しくサラッと読めたのだよ。
なお、当ブログ「ON MY WAY」は、次のところに引っ越し作業を終えました。
https://s50foxonmyway.hatenablog.com/
当分の間、ここと同じ記事を載せています。