ON  MY  WAY

60代になっても、迷えるキツネのような男が走ります。スポーツや草花や人の姿にいやされながら、生きている日々を綴ります。

走ることと生き方を重ねる~「それからの僕にはマラソンがあった」(松浦弥太郎著;筑摩書房)を読む~

2020-01-23 20:05:07 | 読む


走ることに何がある?
みんな、走ることに何を求めて走っているのだろう?
自分もささやかながら走ることをしている人間だから、そういうことをときどき思う。

ほかの走る人の考えを知りたくて、市民ランナーとして走る人の書いた本を見つけていろいろと読んできた。
そんな本の中で、最もしっかりしていたのが、「それからの僕にはマラソンがあった」(松浦弥太郎著;筑摩書房)だった。

なぜ走り始めたか、走ることによって何を見つけていったか、自分にどのような変化が起こったのか、限界を感じてから何を求めて走るか…。
そのようなことが、余すことなく正直に書かれている。

だから、同じ走る人として、走るようになってどんな思いを味わってきたのかを、改めて思い起こすことが多かった。

走るようになって起こる自分の変化は、私自身の経験と重なるところがあった。
まず、無心で走っていると、自分を知る時間になるということ。
「走っている時間は、誰とも一緒ではなくて、たったひとりになる時間です。しかもその時間は、走ることに集中する時間ですから、現実のさまざまなことを忘れることができます。
走り出してからしばらくすると無心になることができて、…。」
「走ることによって頭がリフレッシュされ、クールダウンされ大事なものだけが残るのです。走るというきわめてシンプルな時間は余計なものをふるい落とし、どうでもいいことを忘れさせてくれます。」
走っていると、余計なことを考えない。
非常にピュアな感覚になっていたものだった。

そして、走った後のすがすがしい気分を得られるということ。
「とにかく夢中になって走って汗をかいてみたら、そのおかげで気分がすっきりしたのです。しばらく感じていなかったような気持ちよさだったのでした。」
「3キロを走り切れたときの喜びは大きいものでした。1キロを走りきったときよりも、ずっと達成感と充実感がありました。」

また、この本全体を通して、マラソンを通じて、走ることには、人生、生き様との重なりがあるということが書かれているように思う。
例えば、億劫さを乗り越えることによって、自らの力が高まること。
「『走ること』は自分にとって必要不可欠だと頭ではわかっていても、じつは家を出るときには億劫さを感じることがあります」
「億劫な気持ちは厄介ですが、当然のもの。だからこそ、それを振りきるように、自分のやりたいことをやりぬく。意識的にがんばる必要もあるということです。毎日、一歩踏み出すことはできている自分がいれば、ほかのことを億劫に感じる自分に対して、少しは気持ちが強くなるでしょう。『億劫なことくらいいくらでもある』と自分に言い聞かせ、毎日走ることを習慣にしてしまう。それはある種の自分の力になります」

そして、失敗を通して学ぶこと。
著者は、やみくもに走り出して、怪我をしてしまったりもする。
ただ、失敗に対しても逃げずに、むしろそこから学ぼうということを大切にしている。
「失敗の経験は、大きな宝物になります。失敗しない人生なんてつまらないと思います。」
「何回も失敗をするとか、さまざまな障害を乗り越えなければ、自分が思い描いている姿にはなれないだろうと信じているのです。」
「うまく行かないこともあると自覚しながら、その初期衝動を大切にして、次の一歩を踏み出してみることです。当然のことですが、動けば大小の失敗が生じることでしょう。その失敗の轍を踏んでこそ、いろんな道が見えてくるというものです。僕はそれを「走る」ということで、さらに実感したのだと思います。」

走ることによって、人生に対する考え方が強化されるような感覚がある。
失敗もたくさんしてきたが、失敗を恐れていたのでは先に進めない。
自分がしたいという初期衝動を実行に移してみないと、なぜ失敗するのか分からないことも多い。
私の場合、無謀にも大した練習もせずにフルマラソンに初挑戦し、半分しか走れずリタイアしたこともあった。
でも、挑戦してみたかったのだ。
やってみて失敗して失敗し続けてきて、やっとフルマラソンが完走できるようになった。
今まで生きてきた人生でも、結局は、失敗するかもしれないがやってみよう、前に進もう、と思っていろいろやってきた。
ただ、人を巻き込むときには、十分な注意や配慮が必要だったが…。

最後に、著者は、今後も走り続けるための自身のテーマを、「美しく走ること」にしている。
著者にとって、美しさとは普遍的なテーマであり、人生のすべてに通じるものだというのだ。
私は、まだそこまで走ることについての究極的なテーマは見つけていない。
だが、もう少し走り続けながら、こうだと言えるものを見つけたいとも思っている。
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