日本男道記

ある日本男子の生き様

子路第十三の十五

2015年12月15日 | 論語を読む

【漢文】
定公問、一言而可以興邦有諸、孔子對曰、言不可以若是、其幾也、人之言曰、爲君難、爲臣不易、如知爲君之難也、不幾乎一言而興邦乎、曰、一言而可喪邦有 諸、孔子對曰、言不可以若是、其幾也、人之言曰、予無樂乎爲君、唯其言而樂莫予違也、如其善而莫之違也、不亦善乎、如不善而莫之違也、不幾乎一言而喪邦乎。

【書き下し文】
定公(ていこう)問う。一言にして以(もっ)て邦(くに)を興こすべきこと諸(こ)れ有りや。孔子対(こた)えて曰わく、言(げん)は以て是(か)くの若(ごと)くなるべからざるも、其れ幾(ちか)きなり。人の言に曰わく、君(きみ)たること難(かた)し、臣たること易(やす)からずと。如(も)し君たることの難きを知らば、一言にして邦を興こすに幾(ちか)からずや。曰わく、一言にして以て邦を喪(ほろ)ぼすべきこと諸れ有りや。孔子対えて曰わく、言は以て是くの若くなるべからざるも、其れ幾きなり。人の言に曰わく、予(わ)れは君たることを楽しむこと無し。唯だ其の言にして予れに違(たが)うこと莫(な)きを楽しむなりと。如し其れ善にしてこれに違うこと莫(な)くんば、亦(また)善からずや。如し不善にしてこれに違うこと莫くんば、一言にして邦を喪ぼすに幾(ちか)かからずや。

【現代語訳】
定公(ていこう)が尋ねました、
「一言で国を盛んにするような、そんな言葉はあるだろうか?」
孔子は、
「言葉が国を盛んにする事はできませんが、それに近い意味の言葉があります。"君主である事は難しい、家臣である事は簡単ではない。" もしあなたが君主である事の難しさを理解なされるのであれば、この言葉は国を盛んにする事ができると言えます。」
と答えられました。定公は続いて尋ねました、
「一言で国を滅ぼすような、そんな言葉はあるだろうか?」
孔子は、
「言葉が国を滅ぼす事はできませんが、それに近い意味の言葉があります。"私は君主である事を楽しむのではない、人々が私の命令に従う事を楽しむのだ。" あなたの命令が正しければ、人々が命令に従う事も正しいと言えます。しかしあなたの命令が正しくなく、人々がその命令に従うとしたら、この言葉は国を滅ぼす事ができると言えます。」
と答えられました。

【English】
Marquis Ding asked, "Is there any proverb that can develop our country?" Confucius replied, "A proverb cannot develop a country. But there is a proverb almost the same. They say, 'It is difficult to be a monarch. It is not easy to be a vassal.' If you understand difficulty of being a monarch, you can develop your country." Marquis Ding asked, "Is there any proverb that can ruin our country?" Confucius replied, "A proverb cannot ruin a country. But there is a proverb almost the same. They say, 'I do not enjoy being a monarch. I just enjoy that everyone obeys my order.' If your order is right, it is also right that everyone obeys your order. But if your order is not right and everyone obeys your order, your order can ruin your country."
『論語』とは

読んで字の如く「論じ語る」、孔子と弟子達や要人達との間に交された対話録。
『論語』は私たちの生き方の原点を見つめた思索の宝庫であり、人間性を磨く叡智が凝縮した永遠の古典。
読めば読むほど胸に深く沁み込む簡潔な言葉の数々。
『孟子』『大学』『中庸』と併せて儒教における「四書」の一つに数えられる。
全20編(学而第一~堯曰第二十) 構成され、編の名称は各編の最初の二文字を採ったものであり内容上の意味はない。
したがって、学而第一から順に読む必要はなくどこから読んでもかまわない。


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