日本男道記

ある日本男子の生き様

土佐日記(3)二十三日。八木のやすのりといふ人あり。

2024年07月02日 | 土佐日記


【原文】 
①二十三日。八木のやすのりといふ人あり。
②この人、国に必ずしも言ひ使ふ者にもあらざなり。
③これぞ、たたはしきやうにて、馬のはなむけしたる。
④守柄にやあらむ、国人の心の常として、「今は。」とて見えざなるを、
⑤心ある者は、恥ぢずになむ来ける。
⑥これは、ものによりてほむるにしもあらず。
⑦二十四日。講師、馬のはなむけしに出でませり。
⑧ありとある上・下、童まで酔ひしれて、
⑨一文字をだに知らぬ者、しが足は十文字に踏みてぞ遊ぶ。
 
【現代語訳
①二十三日。八木のやすのりという人がいる。
②この人は、国司の役所で必ずしも召し使っている者でもないようである。③〔それなのに〕この人は、いかめしく厳かな様子で、送別の宴をした。
④〔それも〕国司の人柄であろうか、任国の人の心の常としては、「今は〔もう用はない〕。」といって顔を見せないようだが、
⑤道理をわきまえている者は、〔ひと目を〕遠慮せずに来た。
⑥これは、餞別の品をもらったからほめるというわけでもない。
⑦二十四日。国分寺の僧侶が、送別の宴をしにおいでになった。
⑧人はみな〔身分の〕上下を問わず、子どもまで酔っぱらって、
⑨一という文字さえも知らない者が、その足を十という文字に踏んで遊ぶ。



◆『土佐日記』(とさにっき)は、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ。紀貫之が土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を諧謔を交えて綴った内容を持つ。成立時期は未詳だが、承平5年(934年)後半といわれる。古くは『土左日記』と表記され、「とさの日記」と読んだ。 

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