【内容(「BOOK」データベースより)】
にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという…。表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。
とり返しのつかない回り道をしてしまった――若くして不幸な結婚を二度経験した野江。一度目は夫に死なれ、二度目の夫は、野江を出戻りの嫁と蔑んでいる。しかし二度も失敗することなどできず、耐え忍ぶ日々を送っていた。そんなある日、山桜をひと枝折ろうと、爪先立って手をのばす野江の頭上から、不意に男の声がした。「手折って進ぜよう」――薄紅いろの山桜の下、たった一度出会ったその男は……「山桜」をはじめ、全11作品を収録した時代小説集。
【著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より】
藤沢/周平
1927‐1997。山形県生れ。山形師範卒業後、結核を発病。上京して五年間の闘病生活をおくる。’71(昭和46)年、「溟い海」でオール読物新人賞を、’73年、「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。時代小説作家として、武家もの、市井ものから、歴史小説、伝記小説まで幅広く活躍。『白き瓶』(吉川英治賞)、『市塵』(芸術選奨文部大臣賞)など、
【読んだ理由】
久しぶりの藤沢作品。
【最も印象に残った一行】
しあわせかと、と鋭く問いかけて来た弥一郎の顔が浮かんで来た。そのひとに、幸せだと答えるしかなかった自分があわれだった。
しあわせかと、と鋭く問いかけて来た弥一郎の顔が浮かんで来た。そのひとに、幸せだと答えるしかなかった自分があわれだった。
もっと別の道があったのに、こうして戻ることの出来ない道を歩いている。自分をあわれむ気持ちが、野枝の胸にあふれて来た。
【コメント】
TVで放映されたものを見て、後から読みました。野枝さんが健気でいいね。
TVで放映されたものを見て、後から読みました。野枝さんが健気でいいね。