『人口減少社会を問う』
1/14 NHKラジオ 内橋克人さんのお話の要約です。
人口減少社会への警鐘
早い時期から”少子高齢化”という言葉が語われてきた。
現実に国の人口そのものが減り始め、地方にとどまらず都市部も含めて、
全国的に急激な人口減少社会がやって来ようとしている。
新年の新聞紙面を見て特に目立ったのだが、
地域社会の現実に直接向き合うような地方紙あるいは地域紙の紙面で、
『人口減少社会を考える』と題されたような連載企画が多く始められている事である。
例えば、
櫛の歯が欠けるように集落の住民が減っていって
ついには、一世帯夫婦二人になってしまった、というような村であるとか、
あるいは、今や住民ゼロになってしまった”消えた集落”の後をルポするといった、
地方の深刻な実態が数々紹介されている。
日本全体の人口は、既に2008年をピークに減少に転じている。
昨日の成人式でも、新成人となった人の数は全国で119万人で、
これは、絶対数でも、総人口に対する新成人の割合でも、過去最低記録となった。
昨年話題となったが、国立社会保障人口問題研究所の将来推計人口によると、
2008年には1億2800万人少々を数えた日本の人口が、
2040年には1億人少々に、更にそれから20年後の2060年には8600万人強、
そして、2100年には5000万人を割り込んでしまうところまで減ってしまう、
という推計結果が出ている。
しかしもっと近い将来の約10年後、
日本は深刻な『2025年問題』に直面すると予測されている。
団塊の世代がついに75歳以上の後期高齢者になってしまって、
現役世代とされる15歳から64歳までの生産年齢人口が、全体の半分少々になってしまう。
つまり、二人に一人が高齢者か子供、そのうちの8割が高齢者で占められるという
いびつな人口構成になるわけである。
”少子高齢化”というけれども、その高齢者の人数も急速に減ってしまう時代となる。
それまで地方の問題として、”過疎化”という言葉が使われてきたが、
今後は大都市でもごく普通に過疎化現象が起こって、
地方も都市も日本全体が
急速な人口減少社会という大きな壁に直面することは避けられない、
という警鐘が鳴らされていのである。
厳しい人口減少社会を招いた背景
このような厳しい人口減少社会を招いた要因や背景については、
この50数年を振り返って、
過去の経済発展のプロセスに立ち戻って検証してみる必要がある。
例えば、高度成長期というと、集団就職が一つの象徴であったが、
この時代は、強烈な磁力で吸い寄せられるように、
若者を中心に人々が労働力として続々都市に移ってきた。
人・物・金の都市集中を進め、
そうすることで国全体として効率を上げることが、
国際競争力を強くする道だと言われてきた。
その結果、東京をはじめ大都市では人口の集積が激しく進む一方、
地方では人口流出・定住人口の減少が勢いを増して行った。
それで、当時盛んに”過密・過疎”という言葉でこの問題が提起されていた。
そうすると今度は、『都市集中は悪いのか』などと”居直り”の論が唱えられるようになり、
逆に『集中と選択を進めることがグローバル化時代への対応だ』
といった主張がなされるようになって来た。
”過密・過疎”を追認する理屈である。
過疎化が進んだ地方は、そこ住むのはやめさせて都市へと移住させていけば、
無駄な社会資本の投下も必要が無くなる、という主張まで出て来た。
ある識者会議では、現代を”グローバル都市間競争の時代”と定義づけ、
自治体破産制度を含めた市場原理を導入した自治体づくりを提唱した。
これが『自治体財政健全化法』として法律化されたもので、
2009年4月に適用されるようになり、その第1号が夕張市であった。
今なお激しい人口流出という傾向に歯止めは掛かっていない
結婚が容易でない若者の増加
都市では、出生率が低くて、
さらに、生まれてくる子供の絶対数そのものが減る時代に入ってしまった。
未来を担う若者の非正規雇用が激増して、
適齢期になっても容易に結婚ができない、という構造はもっと深刻になってくるに違いない。
また厳しい人口減少社会が始まっているにもかかわらず、
依然として”ブラック”と言われるような労働の使い捨て、
貴重な人材資源を消耗させる労働の解体は止まる気配がない。
そのあげく今度は、
労働コストの安い移民労働を受け入れようという主張が声高に唱えられるようになった。
『国民一人一人を大切にする』という国是を!
このまま進むと、
地方も都市も人口減少社会へと向かうのは、もはや避けられない未来図である。
人口減少社会が避けられないというのであれば、
『国民一人一人を大切にしていく』という国是(国の理念)がなければ、
国家百年の計もあり得ないのである。
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