昨夏、大阪市で初めて、16年度から公立中学校で使用する「歴史」「公民」の教科書としてともに「育鵬社」版を採択した。その採択会議の冒頭で市教委が「市民アンケート」の結果報告をし、「育鵬社」版に肯定意見が約7割(779件)、否定的意見が約3割(374件)と報告した。その「市民アンケート」について、大阪の教員らでつくる市民団体「子どもたちに渡すな!あぶない教科書 大阪の会」が、「不正」が行われていたとして、大阪市議会に真相究明を求めて陳情書を提出していたが、2月23日の委員会で審議された。
朝日新聞記事では、「組織的動員で育鵬社版への肯定意見が多数を占めた疑いがある。育鵬社版は公平に採択されたのか」という指摘に、市教委は「アンケートは参考資料。教委の責任で公平に採択した」としている、と書き、市教委の大森不二雄委員長は「アンケートの結果は重視しておらず、採択の決め手ではない」と答弁した、と書き、アンケートは匿名で実施した事から「組織的動員はあったかもしれない、実施方法の改善を検討する」と述べた、と書いている。
朝日新聞は、この記事から読者に何を伝えたいのだろうか?読者には何が伝わるだろうか?素朴に考えれば、「教委の責任で公平に採択された」「重視しておらず、採択の決め手ではない」「実施方法の改善を検討する」という委員長発言から、「アンケートの実施方法」では改善の余地はあるが他の面では問題となる事は一切なかった、という方向へ世論を誘導したいように受け取れる。
なぜならば、市民団体の訴えている「不正」としている内容を明らかにしていないし、市教委の「採択の仕方」について、「朝日新聞」自身が分析・判断したうえでの主張もない。まず、市教委の「アンケート報告」は特定の教科書についてだけで、それも採択の冒頭で史上初めて行った事、また、「アンケート集計」では記載内容について「公正」な姿勢で行うならば感じるはずの奇異感を問題視せず「集計」をしている事などを見ると、市教委ははじめから何が何でも「育鵬社」版を「意図的」に印象づけ採択にもっていく事を目論んでいたものであると判断せざるを得ない。にもかかわらず、その事に一切触れていないからである。
このような記事内容は読者にとって価値はなく、「購読」を継続する事の意味を考えさせられるものであった。
さらに言えば、採択後に大森委員長が突然の史上初の提案をし「決議」された「複数教科書使用」は、「育鵬社」版を強行に採択するための、大森委員長と橋下徹との密談で考えついた「批判」回避のため手法であったといえる。これにより、「歴史」「公民」の教科書費用がこれまでの2倍、次回の教科書改訂まで4年間必要となる事を史上初めて簡単に決めてしまった事も無責任な行為である。「税金」だから彼らの腹は痛まないと考えたからであろう。このような「税金」に対する感覚も一貫性がなく無責任なところも「おおさか維新の会」の体質である。
「メディア」は、ある事実を記事にしないという事は、何の責任も負わない批判も受けない「中立の立場」とかいう事ではなく、「ある事実」を「支持している」「幇助している」という事で、「ある立場」の側に立つという事を理解しているのだろうか。理解していないはずはないですよね?その上で記事にしないという事は、意図的に記事にしないという事になりますね。市民の国民の「知る権利」に応える姿勢ではありませんね。