1月26日に韓国の「ナヌムの家」から、「日本軍の性奴隷」とされた李玉善(イ・オクスン)さん(90歳)と姜日出(カン・イルチュル)さん(89歳)が、所長の安信権(アン・シンクォン)さんとともに来日した。昨年末、「日本軍性奴隷問題」を解決するとして日韓両政府の間で「合意」された内容について「抗議」し、思いを「訴える」ためである。
メディアは伝えていないが、26日に、衆議院第一議員会館の大会議室で「2016ナヌムの家のハルモニを迎える会」の主催で集会「ナヌムの家のハルモニを迎えて今伝えたいこと」が開催され強い憤りを訴えた。
安所長は、「12月28日にナヌムの家にいる6人のハルモニと一緒にテレビを見ていて突然の日韓合意を知った。個人の人権の問題であり、代理権を渡した事もないのに。ハルモニたちの心がどんなに傷ついているか。」と述べた。翌日にナヌムの家を訪れた外務次官に『私たちは受け入れる事はできない、反対だ』と10人のハルモニの総意として伝えた」と述べた。
李ハルモニは、「1日は24時間しかないのに、1日に40人50人の軍人の相手をさせられた。それを拒めば殴られ、殺された人もいる。あまりに苦痛で山奥で飛び降りたり、水に飛び込んだりして自ら命を絶ちました。慰安所ではない、死刑場だったのです。」また「私は生き残ったからこうして皆さんにも話ができる。でも先に死んだ人たちはどんなに悔しかったでしょうか。みなさん、その気持ちを想像してみてください。それなのに日本政府(安倍政府)は事実を捻じ曲げ、公式な謝罪も賠償もせず、少女像の撤去まで持ち出しています。被害者は闇の中にいろという事でしょうか?安倍首相の直接会って訴えたい」と憤りを述べた。
姜ハルモニは、(兄4人、姉4人の末っ子で16歳の夏に連行された)「庭に柿や栗の木がある慶尚北道の実家から強制的に連れて行かれた。人間なのに連れて行かれた。」また、頭の傷跡を見せて「泣けば殴られ人間扱いをされなかった。」「絶対に戦争をしてはいけない。戦争が起これば傷つくのは国民だ。互いの国を誇らしく思えるように互いにしなければ。侵略してはいけない。正しい国を作っていかなければ」と述べた。「日韓合意」については、「私たちは、日本がかつてやった事を知っています。事実も認めずにどこにこんな謝罪がありますか。これは無効だ」と述べ、そして、怒りに震えて叫んだ。「心の中で涙を流している、悔しくて涙を流している」と。
来日していない「ナヌムの家」の李容洙(イ・ヨンス)ハルモニ(88歳)は、24周年を迎えた1月6日のソウル日本大使館前の「水曜デモ」で、「こんな合意はありえないでしょう。日本の公式謝罪と法的な賠償は私たちが24年間日本大使館前で言ってきた事です。この合意は違う。一方的に政府がしたんだから。日本が真に罪を認め、法的賠償と公式謝罪をさせるために、市民たちを信じて、また力を振り絞らないといけない。私は最後までたたかいます。」と述べていた。
韓国政府に登録された日本軍性奴隷の被害者は238人であるが、2015年に9人が亡くなり、現在46人となってしまった。
メディアは上記の事を一切書かなかった。なぜなのか。それは、真の解決のためにメディアとしての責任を果たす使命感がないという事。過去の戦争加害責任を、日本人として、またメディアとして二重に継承しなければならないという認識が極めて薄くなっているという事にあるだろう。また、メディアの世界で、過去に対する認識について世代間の継承ができていないという状況があるのだろう。この状況はメディアの世界だけの事ではないけれども。