「死が二人を別つまで」オープニング１ By朱雀

――いつもどおりの朝だと、そう思っていた。
　　　既に全てが始まっていたなんて、思ってもみなかった。
　　　いつだってそうだ。
　　　予兆を予兆だと知るのは、全てが終わってしまってからなのだ。

Opening１　兄妹　　　シーンプレイヤー：石動 周　　　　　３月８日　a.m 08:00


ハンドアウト（ＰＣ１）
　君はオーヴァードだ。しかしそのことを知っている者は少なく、恐らくＵＧＮですら君がオーヴァードであることは知らないだろう。そして君自身も、目下のところＵＧＮにそのことを明かすつもりはない。

　シナリオロイス：妹（庇護／不安）

ＧＭ　ではセッションを開始しよう。まずオープニング１は――周、君からだ。
周　　あいよ。侵蝕値は（ころころ）６上昇で３８。
ＧＭ　では自己紹介からお願いします。
周　　えー、名前は石動 周（いするぎ あまね）１６歳。県立緑高校１年生のオルクス／バロールです。ワークス、カヴァーともに高校生で、コードネームは……一応作ってはあるんだけど、誰に名乗るわけでもないので現時点では無しということにしてあります。
ＧＭ　その辺の設定の解説なんかもよろしく。
周　　えーとですね、２歳下に妹がいるんですが、小さい頃に兄妹２人とも誘拐に遭ったのですよ。で、その時に誘拐犯が「うるせぇ、騒ぐんじゃねぇよ！」とか言って妹を殴ったりしたのが原因で、俺はオーヴァードに覚醒したわけです。
叡輝　「妹に手を出すな！」みたいな？
周　　そうそう。で、その時にオーヴァードの力を使って誘拐犯をやっつけたんですが、なぜかそれが表に出ることはなかったわけです。
ＧＭ　君のシンドロームから考えるに、きっと監禁場所にあった荷物か何かが崩れてきたことによる事故と判断されたんだろうね。
周　　ではそんな感じで。その時はとりあえず事故ということで片付けられたと。そんなわけなのでＵＧＮもこのことは感知していないようです。もし本腰入れて調べられたらバレるかも――という感じですが。
ＧＭ　なるほど。
周　　そんなわけなので、現在俺がオーヴァードであることを知っているのは自分だけ。妹もそのことは知らないというか、覚えていない――と信じています。ちなみに妹の名前も字が違うだけで石動 雨音（いするぎ あまね）と言いまして、その妹に対しての感情が庇護／偏愛というダメなシスコンお兄ちゃんです（笑）
ＧＭ　それはそれとして君ら兄妹ってさ、字面が違うからリプレイ上では判りやすいんだが、セッション中はどうやって判別つけようかって（苦笑）
周　　いやぁ、ちょっとかっこいいからやってみたくなりまして――あ、ちなみにキャラ名にもちゃんと由来があるんですよ。
ＧＭ　どんな？
周　　「動」って字を分割して「重力」と読んでみたり、あと「遍く（あまねく）攻撃する」ことから名前を「あまね」にして、オルクス／バロールですと言い張ってみようかなと。
一同　ああ、そんな由来があったのか。
周　　さあ、覚醒値にボーナスを！
ＧＭ　どこの異能使いだお前は！（一同爆笑）

　名前と能力に関連性を持たせるとボーナスが貰えるＴＲＰＧがあるのである。

修治（にこやかに）では基本侵蝕値にボーナスをあげましょう。
周　　い、いらね～！（笑）
ＧＭ（さらににこやかに）では侵蝕率の上昇値にボーナスをあげましょう。
周　　死ぬ！それは死ぬ！すごい勢いで還ってこれなくなる！（一同爆笑）
ＧＭ　――とオチがついたところで、そろそろ本編に入ろう。日時は３月８日 午前８時だ。
周　　場所は家？それとも通学路？
ＧＭ　自宅です。
周　　ではこう、枕もとの目覚まし時計が鳴り始めまして――
　　　ぴぴぴぴ、ぴぴぴぴ、ぴぴ……（目覚ましを止める仕草）と、のっそりと起き上がる。
ＧＭ　で、時計を見ると７時５０分くらいなわけで。
周　　やばいんじゃないの？そんな時間だと――っていうか、そんな時間に目覚ましセットしてるなよ、俺！（一同爆笑）
叡輝　どこまでカツカツなんだ！
ＧＭ　ちなみに家から学校までは歩いて――３０分ほどかな。
周　　走れぇぇい！そして慌てて着替えてシャツの前のボタンを留めつつ部屋から出てきたら、廊下で妹と鉢合わせ――なんていう少女マンガ的展開が！
ＧＭ　そりゃあもう――と言いたいところだが、残念ながら君の妹は寝床の中だ。と言うのも、君の妹である雨音は生まれた頃から心臓が弱く病気がちで、学校を休むこともままあるといった感じなんだな。
周　　ほう。
ＧＭ　でまあ、最近は特に体調が優れないらしくて、１週間ほど前からは血の混じった咳を時たまするようになったと。
周　　それは怖ぇ！
叡輝　死亡フラグが立ってますな。
周　　ろくでもねえ――ではパンをくわえながら愛車のＺＲＸにまたがり……
ＧＭ　バイクは大丈夫なのか？
周　　ああ、高校のすぐ近くにダチの家がありまして、どうしてもやばいときには停めさせてもらう約束を取り付けてます――ということにしておこう！
ＧＭ　わかりました。ではそんな風に君が急いで家を出ようとしたところ、寝床に入ったままの雨音が呼び止めてきます。
周　　ん？
雨音／ＧＭ　「あ……お兄ちゃん、気をつけて行ってきてね。最近、なんだか嫌な事件が続いてるみたいだし……」
周　　えっと、嫌な事件、といいますと？
ＧＭ　うむ、説明しよう――現在君たちの住む飯塚市では、２週間ほど前から変死事件が続いています。警察当局が、同一犯による連続殺人の可能性もある、と発表したことが各種メディアによって報じられています。
周　　ほほう、なるほど。
ＧＭ　現在までに発生している該当事件は３件。
　最初の事件が起こったのが約２週間前の２月２３日で、遺体は市内の山林の、林道から少し外れたところで発見されました。致命傷と見られる傷跡の様子などから、当初は野生の熊によるものだと考えられていたのですが、５日ほど前に同様の遺体が街なかで発見され、さらに２日前には３人目の遺体が市内の河川敷で発見されたため、事件性が一気に増すことになりました。
　現在捜査本部では犯行時刻前後の現場周辺での目撃証言を探しているという話です。
周　　う～ん、メタレベルで考えると犯人が一気に絞られてくるのだが（笑）
ＧＭ　それがＴＲＰＧのすばらしい点ですよ（苦笑）――とまあ、こんな事情があっての先の雨音の発言です。まあここ２、３日恒例の会話ですね。
周　　そんな事情があるわけだが、しかし無理やり寝床から起きてきた妹を心配するあまり、「なんで寝てないんだよ！」と追い立てるように部屋まで送り届けまして。
ＧＭ　ほら、妹としては幼少の時の誘拐事件がやっぱり大きいんで、世間の事件には敏感になってるんですよ。それにやっぱり兄のことが心配なんですね。
周　　なるほど。とはいえ、俺としましてはそんな遠くの世界の事件よりも、いま目の前にいる妹の危機って感じなわけで――で、こう、雨音の肩を抱えて部屋まで行こうとすると、その手に当たる骨の感触があって、「ああ、こんなに痩せてしまって」なんて思ってみたり。
ＧＭ　そうして君はなんだか無性に切ない気持ちに駆られてしまう、と。
周　　そうそう――で、半ば無理やりに雨音を寝床に連れ戻して、ふと腕時計を見ると８時５分。「やっベ――！」
雨音／ＧＭ　「あ……いってらっしゃい！」
周　（バイクのエンジンをスタートさせて）バルルン！ダダダダダ……ヴィィィィン！という音を残して学校に向かったのでありました。
ＧＭ　そして――キュルルル、ガシャーン！
一同　お約束かい！（爆笑）