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World made from WILL 第5話その1  By安綱

2009年06月02日 23時11分58秒 | TRPGリプレイ
何処とも知れぬ場所、総統は独り呟く。
???「哀れな観測者は炎に炙られ魔に堕ちて。
道化の貴族は帝の目に留まり弄ばれ。
無知なるアルケミストが切り裂くは二度と戻らぬ炎の幻。
復讐に囚われた召還師は数多の呪詛で自らを縛り。
狗盗は道を知らず、騎士は魔を知らず。
生贄の戦士は運命に従うのみ。
ああ、後は幻を砕き、宝玉を裏返すのみ。
さあ、第二幕の開演ですわ。
完全に、完璧に、一遍の穢れも無く演じきりましょう
その先にこそ金色の栄光が見えるのですから・・・!」


出会い、別れは人のサガ
それはこの地においても変わらぬものなのか。
ここまで生きてきた仲間を失い、
おのおのの意志は散り、乱れる。
しかし、それでも世界は動いていく。
裏界帝国、東方公国、四魔貴族
それぞれの思惑は衝突し、裏界全てを覆っていく。
人はその流れの中何を選ぶのか。
その意思と行動こそ、語り継がれるサガとなる。

NW2ndキャンペーン 「World made from WILL」
第五話 「サガ」
「あなたは、どちらを選ぶのかしら?」

   (恭介PL「隼人いなくなっちゃいましたからね。」
    雛PL「そうだな、まんとひひ死んじゃったからな。」
    GM「まんとひひ言うなw」)

四季邑隼人という仲間を失った一行は、そのまま西へ向かっていった。
捕らえられた炎の魔物はきょうじゅが調べる事にしたが、
大した情報は得られぬまま2日が経った。

佐倉 恭介が部屋へ帰ってくると、扉の前に美森の姿があった。
恭介「どうしたの、美森ちゃん?」
美森「あ、うん、ちょっとね。・・・中入っていい?」
恭介「うん、どうぞ。」
二人は部屋に入る。
美森「あのさ、恭介、あれからみんな距離ができちゃったよね。前みたいに。」
恭介「そうだね。」
美森「なんで、こうなっちゃったのかな。何が悪かったんだろう?」
原因は、はっきりしている。隼人が・・・いなくなったからだ。
お互いに口には出さない。言うまでも無く二人ともわかっていた。
美森「なんでこんなことになっちゃたんだろ、ねえ・・・」
最後まで言わせずに、恭介は美森を引き寄せ、抱きしめた。
恭介「安心して美森ちゃん、誰も悪くないよ。」
美森「きょう・・・すけ・・・」
恭介「それに、隼人だってまだ死んだと決まったわけじゃないよ。
そんなに簡単に死ぬような奴じゃない。きっと生きているさ。」
美森「そう、だよね。きっと」

しばし言葉無く見つめあう。
やがて美森が口を開く。

美森「そういえば、きょうじゅさんから、いつか襲ってきたバケモノを倒して捕まえたって聞いたんだけど…」
恭介「ああ、倒したよ。もうアイツが襲ってくる事は無いさ。」
美森「でも、捕まえたって、危なくない?」
恭介「大丈夫さ、もうアイツは戦えないから。それに、殺すのも、ちょっとね。」
美森「……そっか。」

(恭介PL「殺すなんてそんなこわいことできませんよー」
穂酒PL「殺そうって言った張本人はどこのどいつですかw」)

恭介「元気出して、美森ちゃん。美森ちゃんが元気じゃないと、元気が出ないから。」
美森「うん、ありがとう、恭介。」
そう言って、美森は部屋を出て行った。


火境 穂酒はピアノを弾いていた。子供たちのためにである。
穂酒の周りには何人かの子供達がいて、それを聞いている。
初めは、ただの子守唄だった。しかし、穂酒が演奏しながら色々考えていくうちに、
気が付けばなぜかカレーの唄になっていた。
周りの子供たちは既に寝こけてしまっていたが、穂酒は気付かず演奏を続けていた。
あいにくと、ここには彼に突っ込みを入れてくれる人はいなかったからだ。
(恭介PL「何を演奏するんですか?」
ヨハンPL「シューベルトの『魔王』とか。」
GM「それはいろいろシャレにならないなあ。」)
しかし、その演奏は唐突に終わりを告げた。
マシーンが急に減速したからだ。
穂酒「何が起こった?」
きょうじゅが入ってきた。
きょうじゅ「あら、丁度いいところに。ちょっと来てくださらない?」
穂酒「何があったのだ?」
きょうじゅ「ちょっと捕まえた子がオイタしてるのよ。」
すると、コワントロの子供が何人か走っていくのが見えた。
その耳は青くなっていたり、髪が重力に逆らっていたりしていた。明らかに変である。
穂酒「・・・あれのことか。いったい何をしたのだ?」
きょうじゅに詰め寄る穂酒。
きょうじゅ「あら、ちょっと実験に付き合ってもらっただけですわ。」
穂酒「同意は得たのか?」
きょうじゅ「―――大丈夫、害はありませんわ。…それよりも、問題は。
貴方たちの言う“炎の魔物”の話ですわ。」
穂酒「・・・この話は後でじっくり聞かせてもらおう。
それで、一体何があった?」
きょうじゅ「説明は向こうでしますわ。他の方も呼んでもらって構いませんけど?」
穂酒「いや、とりあえず私が見てみよう。」

(雛「親から貰った身体を?! 人間本来の姿に戻らなきゃダメだ!」
一同「お前が言うな」
雛「いや、第ニ第三の自分を生まないためにも!」)

二人はきょうじゅの実験室の一つへと足を運んだ。
ガラス一枚向こうのベッドの上にあの魔物が寝かされている。
ガラスの向こうにある様々な機器は、なぜか風化したようにぼろぼろになっている。
きょうじゅによれば、原因はわからないが、魔物の体内から特殊な性質のプラーナが
放出されたのだという。
それはマイナスのプラーナとでも言うべきもので、辺りのプラーナと対消滅してしまう性質のものだという。放出はまだ続いているが、そのうち弱まる。しかし同時に魔物そのものも弱ってしまうだろうというのだ。
穂酒「あいつと話せるか?」
きょうじゅ「直接でなければできますわよ。」
穂酒「おい、聞こえるか?」
魔物「ウウ・・・」
穂酒「何故、お前は襲い掛かってきたんだ?」
魔物「アイツヲ、コロセバ・・・トリモドセル・・・
ソウ、イワレタカラ・・・」
穂酒「あいつ? あいつというのは?」
魔物「ソレハ・・・」
炎の魔物が口を開こうとした瞬間、魔物は急に頭を抑えて蹲る。
魔物「ガアッ!! イタイ、イタイ・・・!!」
きょうじゅ「話は終わりですわ。いったん落ち着かせないといけませんわね。」
穂酒「仕方ないか。」
きょうじゅは機器を操作し、魔物を眠らせる。
穂酒「それでだ、あの子供の・・」
そう言い掛けたときにノックの音がした。
美森がきょうじゅを呼びに来たのだ。
美森「きょうじゅさん、子供たちが呼んでますよ。」
きょうじゅ「あらあら、仕方ないですわね。行きましょう。」
美森の居るところでは話せないと穂酒は考え、いったん追求を止めた。
穂酒「大丈夫か、何もされていないか?」
美森「え…? 私は何もされてないよ?」
穂酒「そうか、ならばいい。」

そのころ鬼芥子 雛は、2日前のことを思い返していた。
ちょうど、あの魔物の処遇が決まり、部屋に帰ってきた直後の事である。
雛の腕を覆う鱗はさらに広がり、腕は何かを求め疼いていた。
「くそっ、静まれよ、俺(ひなちゃん)の腕! 落ち着け!」
雛は、一人暗闇の中に立っているかのような錯覚に囚われた。
何者かが自分の内から自分に語りかけてくるような錯覚に。
その声は囁く。
食え、食ってしまえ、と。
あいつが憎いんだろう? ならば食ってしまえ。
常識などに囚われるな。お前はもう人ではないのだ!
お前はもはや一匹の獣、いや、龍だ。龍だ、龍なのだ!!!
「黙れ!!」
そう叫んだ雛は、飾ってあった包帯状の布を掴み、腕に巻きつける。
強く、強く、押さえ込むように。
それは隼人が付けていた《魔滅の帯》の一部。
千切れて落ちていた切れ端の一つを、雛は手に入れていた。
己が能力と共に力を封じ込めるそれは、自分の内なる衝動を押さえ込んでいく。
しばらく時は経ち、雛は落ち着くと一人呟く。
「隼人、生きてるのだろう・・・」


一見それまでと変わったように見えないヨハン・アルゼは、しかし気にかけていた美森に声をかける。
ヨハン「よーう、美森ちゅわーん? 恭介がつれなくてさびしいのかーい? どうだい、俺と夜のアバンチュールでも過ごさないかーい?」
美森「・・・はい?」
ヨハン「・・・そうか。」
美森「それよりもヨハンさん、ちょっと・・・」
そう美森は切り出した。
なんでもコワントロの人々が、ずっと塞ぎこんでるのもなんだから、と宴会でもしようかと誘ってきたという。
ヨハン「まあずっとふさぎこんでるよりはいいかもねえ。」
ヨハンがそう答えると、美森はさっそく準備に取り掛かろうとする。
その様子を見てヨハンは言った。
ヨハン「なんだ、けっこう元気じゃないか。」

準備中、料理をどうするかで争うヨハンと穂酒。
カレーVSおでん(穂酒対ヨハン) その構図はやがて口喧嘩と成り果てる。
ヨハン「前から言おうと思っていたが、お前はあざとすぎるんだよ!」
雛「よく言うぜ、お前こそ・・・」
その不毛な争いは、恭介の一言で終わりを告げた。
恭介「あの、第一世界にはカレーもおでんもないんじゃあ?」
二人「盲点だったわ。」
雛「じゃあ俺(ひなちゃん)が作ろう。」
三人「却下!」


そして宴会が始まった。
穂酒は、美森に菓子をどう勧めるかと部屋の隅で悩んでいる間にヨハンがあっさり勧めてしまう。
しばらくしてやっとそれに気付いた穂酒は一言。
穂酒「彼女が笑顔なら、それでいい。」
しかし、そうも言ってられない事態が続けて発生する。
一つは食事だ。食べても食べてもなぜか腹がいっぱいにならない。
周りの人も普段より食べ過ぎているようだ。
次に、きょうじゅに改造されたと思しき人が増えている。
きょうじゅを問い詰めても、そのうち直すといって取り合わない。
そして、最後の問題は、宴も終わりかけのころにやって来た。
バタリと音を立てて扉が開いた。
そこには、いつ抜け出したのか炎の魔物の姿があった。
制止の声も聞かず、よろよろと恭介と美森に寄っていく。
一同が身構える中、魔物は美森に手を伸ばし、言う
魔物「オマエハ・・・誰ダ・・・?」
恭介「答える必要は無いよ、美森ちゃん!」
美森「わ、私は瑞原美森・・・だけど・・・」
答えを聞いて炎の魔物の目が怒りに燃え、弱まってなお燃え盛る二本の爪がまっすぐ伸ばされ、穂酒が魔物を羽交い絞めるように止めようとして炎に巻かれ、美森が何かを言おうとして・・・
瞬間、巨大な叫び声が轟いた。
聞き覚えのある声に硬直する雛。
そして、一行の注意がそれたその瞬間、美森の身体が魔法陣に包まれる。
美森「キョウスケ、助け・・」
恭介「美森ちゃん!?」
駆け寄る暇も無く、美森は姿を消した。
(GM「恭介、抵抗判定を。」
恭介「プラーナ入れて、(ころころ)ファンブル!?」
一同「あちゃー…」)
同時に魔物も駆け寄った穂酒の腕の中で倒れ伏す。
マシーンを止め、慌てて外に出る一行。
そこに居たのは四匹の侵魔。
牛並みの巨体の藍色の犬。
緑色の翼を持つ溶けかけた怪鳥。
赤ん坊の顔の張り付いた肉塊。
そして、金色に近い体の隻眼の魔龍。
紛れも無く、雛に呪いを穿った“魔龍公”ビューネイであった。
その腕には美森を抱え込んでいる。
雛「ヌゥーーーー!!!!」
怒りの声を上げる雛。その心に収めたはずの衝動が蘇る。心に憎悪が満ちていく。
魔龍「全く、このようなことになっておろうとは、“魔炎長”アウナスともあろう者が情けないものよ。回りくどい事をするからじゃ、最初から直接攫えば良いだけの事。たかが人間の小娘一人、いかようにでもできるだろうに。」
恭介「美森ちゃんを傷付けてみろ、容赦しないぞ!」
魔龍「ほう、どうするというのかえ?」
ビューネイの腕が美森を締め付ける。呻く美森。手が出せなくなる恭介。
魔龍「おや、いつぞやのウィザードも一緒か。ほう、なかなかに面白い姿になっているではないか。醜い人から龍に近づき、おまけに裏界の雑多な魔まで混じっておる。よくもここまで混ぜ込んだものよ。人の執念とやらは、ここまで道化を演じれるのかえ、ホホホホホ!!」
雛「力を得るためなら何だってするさ、お前を倒すためにな!」
一瞬雛は3人に目配せをする。
3人は雛が時間を稼ぐ間に美森を救う手立てを考えるが、あまりにしっかりと抱えられており手が出せない。
魔龍「このままこの小娘をくびり殺すのは簡単じゃが、それでは面白くないの。そうじゃ、こうしようではないか。そなたらに7日を与えよう。その間にわらわの元にたどり着いたら、この娘を取り返す権利をやろう。一秒でも過ぎれば…分かっておろうな。せいぜいあがけよ、あわれな虫ケラ共。」
そう言って、ビューネイ達は姿を消した。
後には2匹の魔物の姿が現れる。
ビューネイの部下である“ビューネイの精”である。
精「楽しみましょう、うふふふふ。」
恭介「待て!」
穂酒「落ち着くんだ、まずはこいつらを倒さないといけない!」
恭介「くそっ!」

ビューネイの精が倒れた後、一行はこれからどうするかを話す。
すぐに救出に行きたかったが、情報が少なすぎるため、まずは裏界帝国首都で情報を集める事になった。
向かおうとすると、急にマシーンの周りを霧が立ち込め、狼と蝙蝠の群れが現れる。そして一人の男が姿を現した。
かつて戦ったエミュレイター、ジルベルトである。
身構える一行に対し、ジルベルトはしかし苦虫を噛み潰したような顔でこう言い放った。
ジルベルト「わが主の命により、しばし協力させてもらう。」
急な話に疑う一行だったものの、詳しく話を聞き、情報は多いほうがいいと判断した一行は、ジルベルトを加えて一路裏界帝国首都「アヴァロン」へと旅立つのであった・・・。

to be continewed middle phase...

余談。

ジルベルトがさっさとマシーンに乗り込んだ後、ヨハンは残っている狼や蝙蝠が気になってそっちの様子を見ていた。
その瞬間。
魔王ゼニーガ「見つけたぞ、ヨハーン!! 今日こそ年貢の納め時だな!!」
地面から腕と手錠が伸び、ヨハンの足を掴む。
ヨハン「とっつあーん、空気読めよ、今とっつあんに構ってる暇無いのによう。」
ゼニーガ「そんな甘言にごまかされんぞ! 貴様は何をたくらんでいる?
ハッ!まさか帝国の宝物庫に忍び込む気か? あそこの鍵一つが盗まれたと聞いている! それもお前の仕業だろう!」
ヨハン「さーて、何のことやら。あーばよー」
ズボンと靴だけ残してトンズラこくヨハン。
その靴が爆発する。
ヨハン「あーばよー!」
そしてマシーンは走り去ってしまう。
ゼニーガ「おのれヨハン! 覚えておれー!!」
遠ざかるマシーンの中でつぶやくヨハン。
ヨハン「まったく、KYっていやだよねえ。」
穂酒「とりあえず、部屋で着替えて来い。」

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