A PIECE OF FUTURE

美術・展覧会紹介、雑感などなど。未来のカケラを忘れないために書き記します。

未読日記832 『Coyote No.50』

2014-01-15 23:56:18 | 書物
タイトル:Coyote No.50 ◆ カサヴェテスへの旅
発行人・編集長:新井敏記
アートディレクション:宮古美智代
タイトルデザイン:緒方修一
編集:足立菜穂子
広告営業:堀井隼弥、枝見広子
販売:藤田智康、奥田祐也
プロダクション:中瀬マリ
発行:スイッチ・パブリッシング
発行日:2013.12
形態:159p ; 26cm
内容:
特集 カサヴェテスへの旅
interview ジョン・カサヴェテス、かく語りき
LIFE WITH FILM カサヴェテスの足跡とその時代 1929-1989
An Analysis of Cassavetes' Influence 映画界を刺激し続けたカサヴェテスの“影響”

カサヴェテスと歩んだ俳優たち
● ジーナ・ローランズ 「女優」という運命を生きて
● 受け継がれゆくもの カサヴェテスの3人の子供たち
● シーモア・カッセル 忘れ得ぬ永遠の兄
● ピーター・フォーク ジョンの見ていた夜明け
● ベン・ギャザラ 恋のような映画の時間

映画監督がひも解くフィルモグラフィ
● 三宅唱 / 濱口竜介 / 想田和弘 / 富田克也 / 西川美和 / 鈴木卓爾 / 熊切和嘉 / 入江悠 / 三浦大輔 / 李相日 / 青山真治 / 沖田修一
actor's talk
●寺島進 / 村上淳 / 柄本佑

● アル・ルーバン 不可能を可能にするために
● サム・ショウ・ファミリー 撮影後も続いた友情
● CASSABETES A to Z for Beginners
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池澤夏樹「ザルツブルク 夏」
佐藤秀明「ユーコン 旅人の川」
池田晶紀「水草物語 第3回 丘のある風景」
東京私書箱「悲しき写真 第3回 たおやかな彫刻」
ギターとともに旅に出る
古市憲寿「ノルウェーの丘」

購入日:2014年1月15日
購入店:大垣書店 烏丸三条店
購入理由:
 仕事場で1月14日の日本経済新聞夕刊の文化欄を見たら、カサヴェテスの記事が大きく掲載され、とてもうれしくなった。なぜなら私にとってジョン・カサヴェテスとは、これまで影響を受けた大好きな映画監督のひとりだからである。さっそく帰路に買って帰る。

 もっとも、最近ではジョン・カサヴェテスと言っても知らない人の方が多いかもしれない。カサヴェテスの名前が風化しつつあるこの時代に、カサヴェテス特集を組んだコヨーテはすばらしい。思えば、90年代の雑誌文化で育った私にとって、おもしろいことやものを知るのはたいてい雑誌だった(ネットがそれほど普及していなかったからあたり前だが・・)。一時期、SWITCHは買ってたっけ。青山ブックセンターで本や雑誌を立ち読みする時間は、学校よりも勉強になった。

 話がずれたが、日本でカサヴェテスの名前が大きく取り上げられたのは、1990年2月にSWITCH特別編集号として特集が組まれたときだろう。このカサヴェテス特集号は人気で完売したという。1993年には東京のセゾン系列のミニシアターで主要6作品を上映する「カサヴェテス・コレクション」が開催された。私がカサヴェテスの名前を知ったのはこの時のチラシであった。まだ13歳、中ニである。1人で映画館に行かれるお金があるわけもないが、ヘルベチカの書体で綴られたCASSAVETESの文字、カサヴェテスのモノクロ・ポートレイト写真がかっこよく、子どものくせに見たくてたまらなかった。とりあえず、タイトルだけは暗記した。その後、大学時代にカサヴェテス特集がリバイバルされた際に、ひたすら通い詰め、ビデオやDVDで旧作を見て、打ちのめされた。子どもの頃に感じたカッコいいという直感は外れていなかったわけだ。カサヴェテスと聞くと懐かしいのでつい書いてしまった。そんな恥ずかしさ、みっともなさもカサヴェテス映画を語るときには許されるだろう。また、カサヴェテス映画を見返そう。

memorandum 130 苦しいときには苦しいと言おう。

2014-01-14 23:37:42 | ことば
 生きていることが辛いと、それでも前を向きながら語ること。なんとかしたいと思いながら悲鳴を上げること。そうすれば、相手は、薄い「世間」や「社会」に生きていても、あなたの苦しみを聞いてくれる可能性が高くなります。
鴻上尚史『コミュニケイションのレッスン』大和書房、2013年、216頁。

 ポジティブ・シンキングというのは、ポジティブな生き方をしているからするのではなく、ネガティブな環境や状況、感情に直面しているから、そうせざるをえないのである。少なくとも私の場合はそうである。「あなたができるギリギリのポジティブな言い方や表情で、苦しいと語ること」。私はそれらの言葉に向き合ってきただろうか。

未読日記831 『考現学入門』

2014-01-13 23:49:44 | 書物
タイトル:考現学入門 (ちくま文庫)
著者:今和次郎
編者:藤森照信
カバー装画:奥田時宏、加藤光子
発行:東京 : 筑摩書房
発行日:2013.5第13刷(1987.1第1刷)
形態:417p ; 15cm
内容:
震災後の東京の町を歩き、バラックのスケッチから始まった〈考現学〉。その創始者・今和次郎は、これを機に柳田民俗学と袂をわかち、新しく都市風俗の観察の学問をはじめた。ここから〈生活学〉〈風俗学〉そして〈路上観察学〉が次々と生まれていった。本書には、「考現学とは何か」をわかりやすく綴ったもの、面白く、資料性も高い調査報告を中心に収録した。編集・解説 藤森照信


ブリキ屋の仕事
路傍採集――1
路傍採集――2
路傍採集――3
焼トタンの家

東京銀座街風俗記録
本所深川貧民窟付近風俗採集
郊外風俗雑景
下宿住み学生持物調べ(Ⅰ)
下宿住み学生持物調べ(Ⅱ)
新家庭の品物調査

井の頭公園春のピクニック
井の頭公園自殺場所分布図
郊外住居工芸

宿屋の室内・食事一切調べ二つ
カケ茶碗多数
洋服の破れる個所
露店大道商人の人寄せ人だかり
女の頭
学生ハイカラ調べ

住居内の交通図
机面の研究
レビュー試験場はさまざまである
物品交換所調べ

考現学とは何か
考現学総論
「考現学」が破門のもと

出典一覧
解説「正しい考現学」藤森照信

購入日:2014年1月13日
購入店:ジュンク堂書店 京都店
購入理由:
 友枝望展レビューテキストのための参考文献として購入。友枝展では、置物の収集・調査・展示をアートフォームを通じて考察するという試みだったが、考現学にも通じるものがあるのではないかと思った。

memorandum 129 人は一人では生きていけません。

2014-01-11 23:23:21 | ことば
 苦しい時に苦しいと言うから人間は生きていけるのです。困った時は困った、助けて欲しい時は助けて欲しいと言えるから人間は精神のバランスが取れるのです。
 ストレスに強い人とは、一人で抱え込む人ではなく、うまく周りの人と話すことで発散できる人なのです。心が悲鳴を上げているのに我慢を続けて、誰にも言わなければ、精神は間違いなく崩壊するでしょう。
(中略)
 苦しい時に苦しいと言うのは、迷惑ではありません。お互いさまです。苦しいと言ったあなたは、次は相手の苦しいという言葉を聞けばいいのです。人間はそうやって助け合って生きるのです。

鴻上尚史『コミュニケイションのレッスン』大和書房、2013年、214-215頁。

人が苦しい時に「迷惑」な時などない。

memorandum 128 「あの人」

2014-01-09 23:08:10 | ことば
恋愛がわたしが編む幻想の総体にすぎぬものではありえないのは、恋愛の糧が、じぶんがある他者の意識の宛て先になっているという事態だからである。わたしが「他者の他者」でありえているということが、「わたし」がたしかな存在として存在するための条件になっているからである。他のだれでもない、このわたしを指さして、「あなたがそばにいないと生きてゆけない」と言ってくれるひとの存在、その存在にじつは「わたし」自身の存在が養われているからである。わたしたちは、不特定のひとに愛されるよりも、「あの人」に愛してもらいたいのである。
鷲田清一『<ひと>の現象学』筑摩書房、2013年、106-107頁。

memorandum 127 存在の世話

2014-01-07 23:30:54 | 書物
「しつけ」の基礎には、まずは家族への信頼と安心というものに浸れていることが前提となる。「手塩にかける」という仕方で、たっぷりと世話を受けた、ことあるごとにじぶんのことをかまってくれたという感覚がなければ、ひとは他者の命令に従おうとしない。信頼と安心の基礎、それが築かれるのは、じぶんがどういう存在であろうとじぶんがここにいるということだけで大事にされた、無条件に肯定されたという経験があってのことである。まわりの人間にことごとくこまやかに応対してもらった、手厚く世話してもらったという体験が、「しつけ」などの前提となる他者への信頼感を根づかせる。そして「存在の世話」とでもいうべきそのような経験が、自尊心の基礎となるものを育む。ここで自尊心とは、プライド(自負心)のことではなく、じぶんを粗末にしない心、かけがえのない自己というものの経験のことである。これがあってはじめて、ひとは他者の思いへの濃やかな想像力を抱きうるようになる。
鷲田清一『<ひと>の現象学』筑摩書房、2013年、83頁。

条件・任期付きの仕事ばかりしていると、ときどき「無条件の肯定」を忘れそうになる。じぶんであれ、他者であれ、ここにいるということを肯定・信頼したい。