保健福祉の現場から

感じるままに

生活援助サービスの移行の前提

2016年10月07日 | Weblog
東京新聞「軽度者介護保険サービス 「生活援助」維持の方向」(http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201610/CK2016100702000137.html)。<以下引用>
<厚生労働省は六日、介護保険制度の見直し案のうち、介護の必要度が低い要介護1、2の人向けの訪問介護である「生活援助」サービスの見直しを見送る方向で検討に入った。介護保険サービスから外し自治体の事業へ移行させることを検討しているが、介護現場の負担を考慮した。生活援助は、自宅で生活する高齢者にヘルパーが調理や買い物、掃除などの訪問介護サービスを提供する。現在は、利用料の一割(一定所得のある人は二割)を利用者が負担、残りは介護保険から支出している。軽度の人の利用が多く「ヘルパーを家政婦のように使っている」との指摘もある。厚労省は、生活援助について保険給付から外し自治体の事業に移すことを検討してきた。地域の実情に合ったサービスを提供するとの理由だが、支援体制が整わない自治体によってはサービス縮小も懸念されている。政府は高齢化に合わせて介護保険の財政支出の抑制を進める方針。自治体への事業移行は費用抑制の狙いもある。介護保険は要支援1、2と要介護1から5までの七段階。現在、要介護1より状態が軽い要支援の訪問・通所介護を介護保険の給付対象から外し、二〇一七年度まで三年をかけ自治体の事業に移行させている。これに続き、要介護1、2の人の生活援助サービスを移行させれば、自治体や介護現場に負担がかかるため、移行の実態を見極める必要があると判断した。検討を続ける社会保障審議会介護保険部会でも委員から「時期尚早だ」「家庭に入ってのケアは専門性も必要。(保険外しは)後々重度化や命に関わる」などの声が上がっていた。事業者の報酬引き下げなどで介護費用を抑えることも検討する。財務省は、軽度の人の自己負担増も求めており、年内に結論をまとめる。見直し議論では、福祉用具レンタル支援の自己負担引き上げ、一定所得のある人の自己負担二割の拡大、保険料支払い開始年齢の「四十歳」からの引き下げなども検討している。<介護保険の生活援助> 訪問介護サービスの一つで、掃除や調理、洗濯、買い物などをする。入浴や食事の介助、おむつ交換など利用者に直接触れる「身体介護」と区別した類型。45分以上の生活援助の場合、事業者に支払われる報酬は約2500円で、利用者の負担はその1~2割。「要介護1、2」で訪問介護を利用している人の半数程度は生活援助が中心だ。より軽度の「要支援1、2」の訪問介護は介護保険から切り離され、2015~17年度の間に市区町村事業へ移行することになっている。>

財政制度等審議会財政制度分科会(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/index.html)の資料「社会保障①(総論、医療・介護制度改革)」(http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia281004/01.pdf)p48「軽度者に対する生活援助サービスの在り方」では「移行の前提として、以下の見直しを行い、制度趣旨に沿った適正利用を徹底すべき。 ・ 民間家事代行サービスの利用者との公平性や中重度者への給付の重点化の観点から、保険給付の割合を大幅に引き下げる。 ・ 生活援助により、どのように重度化の防止や自立支援につながるのかをケアプランに明記することを義務付ける。」とあり、まずは「移行の前提」が必要であろう。公的介護保険において「生活援助により、どのように重度化の防止や自立支援につながるのかをケアプランに明記」は当然である。そういえば、全国介護保険・高齢者保健福祉担当者会議(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000108007.html)の資料「介護予防・日常生活支援総合事業の実施状況」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000108005.pdf)が出ていたが、行政側には、地域住民に対する情報公開を徹底し、ともに考え、取り組む姿勢が不可欠と感じる。「介護予防・日常生活支援総合事業」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000074126.html)が進むにしたがって、要支援者に対する業者の介護予防サービスの減少が顕著になるのは間違いないが、「介護予防サービスの大幅減 ⇒ サービス低下」と短絡してはいけない。「新しい総合事業の移行戦略 地域づくりに向けたロードマップ」(http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/060201/files/2016070100197/sougoujigyou_ro-domappu.pdf)が出ており、ぜひ参考にしたい。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000126549.pdf)p7~p16で介護予防の取り組みによって要介護認定率が低下した事例が紹介されているが、データヘルス(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/hokenjigyou/index.html)は介護分野でも重要である。介護保険部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126734)の「介護保険総合データベースの活用」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000137700.pdf)p4「保険者による地域の実態把握・課題分析のための基盤を整備し、都道府県・市町村の介護保険事業計画の作成、実施及び評価、並びに国民の介護保険事業の運営に関する実情の把握に資するため、①市町村による国に対する介護給付費や要介護認定等に関するデータの提出を法律上位置づけるとともに、②国は、市町村から提供されるデータを集計・分析し、地域包括ケア「見える化」システムを通じて、各都道府県・市町村の地域分析に資するようなデータ(地域差に関するデータを含む。)を提供することとしてはどうか。」「NDBの取組を踏まえ、データベースをより有効活用するために、データの利用目的が公益性の高い場合には、第三者提供を可能にしてはどうか。その場合の、データを提供する対象、データ利用に係る手続き等については、別途、検討の場を設けて検討することとしてはどうか。」「医療と介護のデータを合わせた分析・利活用については、「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」の議論の状況を踏まえつつ、検討していくこととしてはどうか。」とあったが、エビデンスの積み重ねと情報公開徹底が不可欠と感じる。
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医師偏在対策

2016年10月07日 | Weblog
朝日新聞「保険医の条件に「医師不足地域の経験」 偏在解消へ提案」(http://www.asahi.com/articles/ASJB65TR7JB6ULBJ00W.html)。<以下引用>
<地方や一部の診療科で医師が不足している問題について、厚生労働省の分科会で6日、医師不足地域での勤務経験を、公的医療保険による診療ができる保険医として登録するための条件にすることなどを、専門家が提案した。目立った反対意見はなく、厚労省は今後、この提案を盛り込んだ医師偏在対策案を示す。「地方の医師不足を助長しかねない」と導入が来春に延期された専門医制度に関連し、地域医療機能推進機構の尾身茂理事長が提案した。尾身氏はまず、診療科別の偏在などの対策として、将来の人口や主要な病気の変化も考え、都道府県などごとに一定の幅がある各診療科別の専門医の「研修枠」を設けることを提案した。その上で、保険医の登録や保険医療機関の責任者になる条件に、医師不足地域での一定期間の勤務を求めた。具体的な勤務期間として、医師の「不足」地域は1年、「極めて不足」「離島など」は半年と例示し、「地域偏在の解消に最も実効性がある対策の一つ」と訴えた。委員からは「考え方は賛成」などと目立った反対意見はなかったが、実現には「法改正や関係者間のきめ細かい協議が必要と思われる」(尾身氏)。医師不足地域での勤務経験がなくても全額患者負担の自由診療はできるが、国民皆保険の日本では医療費の大部分は保険診療なだけに、論議を呼びそうだ。>

m3「診療科別の「専攻医研修枠」、JCHO尾身氏が提案 保険医登録「2段階制」も、医師不足地域勤務が管理者要件」(https://www.m3.com/news/iryoishin/465551)。<以下引用>
<厚生労働省の「医療従事者の需給に関する検討会」の「医師需給分科会」(座長:片峰茂・長崎大学学長)は10月6日に第8回会議を開催、参考人として出席した地域医療機能推進機構理事長の尾身茂氏は、医師偏在対策として、各都道府県別あるいは2次医療圏ごとに、各診療科別の「専攻医研修枠」を設定することを提案、多くの構成員の支持が得られた。尾身氏は、日本専門医機構の「専門医研修プログラムと地域医療にかかわる新たな検討会」に、公衆衛生の専門家として加わった立場から発言、新専門医制度が混乱したのは、関係者間の綱引きが行われたことが一因であるとした。「今までは各学会が、独自に専門医の養成数を決めていた。学会間のパワーゲームになってしまうと、診療科別の偏在問題は解決しない」と指摘する尾身氏は、「専攻医研修枠」の設定を提案。さらに、医師の地理的遍在対策は、「専門医制度の枠の外」の話であるとして、「最も実効性のある施策の一つが保険医登録の仕組みを変えること」とした。これは、保険医登録を2段階に分け、保険医療機関の管理者になるためには、「医師不足地域への一定期間勤務を要件」とする案であり、「この方法であれば関係者の納得が得られる」(尾身氏)。本分科会は今年末までに、医師偏在対策を議論する予定で、6日の会議では、尾身氏のほか、日本専門医機構理事長の吉村博邦氏、徳島県保健福祉部次長の鎌村好孝氏の計3人の参考人にヒアリング。吉村氏は、新執行部が発足した7月以降の動きを紹介。理事はオールジャパンの体制にし、各基本領域の学会との協同関係にするなど体制を刷新したほか、専門研修プログラム整備指針をはじめ、さまざまな見直しを進め、並行して2017年度の各学会による専門医養成の地域医療への影響を検証するなど、これまでの取り組みを説明した。鎌村氏は、徳島県の人口当たりの医師数は全国3位であるものの、特に公的医療機関の勤務医不足が課題になっており、その対策に取り組んでいる現状を紹介。その一つが、地域医療支援センターの活用だ。同センターは徳島大学に設置、2009年度以降の同県内の初期・専門研修の研修者をデータベース化、地域枠医師の初期臨床研修に関する県内医療機関による協議、地域枠の医学生向けのキャリア面談など、さまざまな取り組みを通じて、医師の地元定着に努めている。6日の会議で問題視された一つが、10月3日に発足した厚労省の「新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会」。「医師需給分科会」の今年5月の中間取りまとめで、「医師の働き方・勤務状況等の実態について、より精度の高い推計を行い、将来、あるべき医療提供体制とそこにおける医師の新しい働き方を示すビジョンを策定した上で、必要な医師数を推計するプロセスが必要」と提案したのが、発足の直接的なきっかけ。日本医師会副会長の今村聡氏は、中間取りまとめで行った医師の需給推計について、塩崎恭久厚労相がビジョン検討会の席上、「無意味な数字」と発言したことに触れ、「何のために、本分科会を開催したのかが分からない」と語気を強めた。日医常任理事の羽鳥裕氏も、「どんな根拠で、ビジョン検討会の構成員を選んだのか」と質し、かかりつけ医や救急医療に従事する医師など、現場で診療に当たっている医師が構成員に不足していることを問題視。「医療従事者の需給に関する検討会」の座長を務める、国立社会保障・人口問題研究所所長の森田朗氏も、ビジョン検討会発足について、厚労省から正式な説明を受けたことはないと明かした。岩手医科大学理事長の小川彰氏は、「医師需給分科会」は今年末までに医師偏在対策をまとめる予定である一方、ビジョン検討会は2017年1~2月の取りまとめの予定であり、両者の整合性を質した。厚労省医政局医事課長の武井貞治氏は、医師需給推計と医師偏在対策は分けて検討し、「医師需給分科会」は医師偏在対策を今年内にまとめ、社会保障審議会医療部会に報告、その後、ビジョン検討会の結論を踏まえ、医師需給推計の議論を進めると説明した。この説明に対し、全国医学部長病院長会議会長の新井一氏は、「医師需給バランスと医師偏在対策はリンクしており、(2019年度に期限が切れる)今の医学部の臨時定員増をどうするかが、最終的な話」と返し、医学部を目指す若手のことも踏まえ、丁寧な議論を求めた。「後期研修にもマッチング」との意見も 尾身氏は、「専攻医研修枠」について、現在の診療科・地域別の医師数に加え、将来の人口動態の変化、疾病構造の変化、モータリゼーションの変化なども踏まえて設定すると説明。「ただし、この数は硬直的なものではなく、目指すべき方向性であり、「現状と乖離がある場合には、時間をかけて修正していくことが現実的」(尾身氏)。この提案に対し、聖路加国際病院院長の福井次矢氏は、「国全体および地域別にどの程度専攻医が必要なのかを明確にしないと議論は進まない。ぜひ取り組んでもらいたい」と述べ、臨床研修と同様に、「マッチング制を導入した方がいい」と提案。慶應義塾大学商学部教授の権丈善一氏も支持、「時間をかけて修正していく」とした点について、「どれくらいのタイムスパンか」と質問。尾身氏は、「1、2年でやると混乱を招く。少しずつ調整し、状況をモニターしつつ、皆の納得感を得ながら、数年から10年かけて進める」のが妥当だと回答した。小川氏も「ラジカルな提言だが、基本的に賛成。これくらいのことをやらないと、変わらないだろう」とコメント。保険医登録の二段階制、“徴兵的な制度”? 保険医登録を2段階に分ける仕組みについて、「これは大変、大事な仕組みだと考えている。医師不足地域に勤務することを、医療機関の管理者の要件にすると読める」と質問したのは今村氏。尾身氏は、(1)医師国家試験に合格した人は、保険医登録する、(2)全国の医療圏を、A=医師が充足、B=少し不足、C=極めて不足、S=へき地や離島、などと分け、B~Sの地域に、一定期間(半年や1年など)勤務することを、保険医療機関の管理者の要件とする――などと解説。前東京大学大学院医学系研究科附属医学教育国際研究センター教授の北村聖氏からは、「インドネシアで採用されて、実は失敗したシステム。モチベーションがない人がへき地で勤務し、地域住民が反発した」との意見も上がった。日本精神科病院協会常務理事の平川淳一氏も、“徴兵的な制度”であり、「今の時代に合わない」と異議を唱えた。これに対し、尾身氏は、本提案に当たって、医学生などにヒアリングしたところ、本システムを前もって説明、理解していれば、問題ないとの意見だったと説明。権丈氏も、尾身氏が「医師には、プロフェッショナルフリーダムが認められると同時に、地域のニーズに応える社会的な責務がある」と提起している点にふれ、“徴兵的な制度”には当たらないとした。「地域枠」、地元出身限定案も そのほか、医学部の「地域枠」の在り方も議論になった。(1)「地域枠」の医学生は、臨床研修修了後、大学と同じ都道府県で勤務する割合が、「地域枠」以外の医学生よりも高い、(2)「大学と出身地が同じ都道府県」の医学生は、臨床研修修了後、大学と同じ都道府県で勤務する割合が、「大学と出身地が異なる都道府県」の医学生よりも高い――などのデータがある。「地域枠」の医学生の地元定着率を高めるには、当該大学がある都道府県出身者限定の「地域枠」とすることも一案になり得る。これに対し、慎重な検討を求めたのが、新井氏。「地域枠」のうち、どの程度の割合を都道府県出身者限定とすれば、医師偏在対策になるのかなど、もう少し精査したデータを基に議論しないと、「大学の合意が得られない」と指摘した。>

新たな医療の在り方を踏まえた医師・看護師等の働き方ビジョン検討会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=384675)の資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000138743.pdf)p4「医師の需給推計の結果について(暫定)」では、「2024年頃に需要推計(中位)と供給推計が均衡」「2033年頃に需要推計(上位)と供給推計が均衡」とあるが、p4「供給推計においては、今後の医学部定員については、平成28年度の9,262人が維持されるとして推計。」と注釈がついており、この供給推計に来年4月からの「国際医療福祉大学医学部」(http://narita.iuhw.ac.jp/igakubu/)は勘案されておらず、医師数ではもっと早い時期に需要と供給が均衡するであろう。しかし、医師偏在(診療科、地域)対策が強力に打ち出されなければ、むしろ問題が大きくなるように感じる。医師需給分科会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-isei.html?tid=318654)における医師偏在対策協議に注目である。中間とりまとめ(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000120207_6.pdf)p6「いわゆる地域枠のこれまでの効果について、地元出身者の定着率も含め検証を行い、卒業後の地域定着がより見込まれるような地域枠の在り方について検討する。」とあったが、各都道府県ごとに、これまでの自治医大・地域枠出身医師の義務年限内の勤務先(診療科、地域)と派遣ルールが公表されてもよいかもしれない。
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新類型の行方

2016年10月07日 | Weblog
メディウォッチ「介護療養病棟などの移行先となる「新類型の医療施設」、議論は煮詰まってきている―社保審・療養病床特別部会」(http://www.medwatch.jp/?p=10711)。<以下引用>
<介護療養病床や病院全体で看護配置4対1などを満たせない医療療養病棟について、経過措置期限後の移行先となる新類型の医療施設について、近く具体的な「叩き台」を示してほしい―。5日に開かれた社会保障審議会の「療養病棟のあり方等に関する特別部会」では、遠藤久夫部会長(学習院大学経済学部教授)からこういった指示が出されました。厚生労働省保険局医療介護連携政策課の黒田秀郎課長はこの指示を受け、「検討会で固められた案1-1、案1-2、案2をより精緻化した叩き台を示す」考えを明らかにしました。なお前医療介護連携政策課長で、現保険局総務課の城克文課長はメディ・ウォッチに対して「コアメンバー以外の委員が具体的なコメントを活発に寄せており、議論がかなり煮詰まってきた」とのコメントを寄せています。特別部会では12月上旬にも一定の意見をまとめる予定です。介護療養などの継続を認めるべきか、新たな施設の基本的性格をどう考えるか 介護療養病床や看護配置4対1などを満たせない医療療養病床は、設置根拠が2018年3月で切れます。このため、厚生労働省は「療養病床の在り方等に関する検討会」で議論を行い、医療内包型・医療外付け型の3つの新類型案を整理しました。現在、社会保障審議会の「療養病床の在り方等に関する特別部会」でより具体的な制度設計に関する検討が進められています。この日は、厚労省の黒田医療介護連携政策課長から、議論を整理するために次のような論点が示されました。(1)介護療養病床などの経過措置再延長を行うべきとの指摘もあるが、どう考えるか(2)新たな施設を創設する場合、▼財源を含めた基本的性格▼人員配置▼施設基準▼低所得者への配慮―についてどう考えるか(3)新たな施設を創設する場合、転換に当たっての経過措置をどの程度想定すべきか、またその点の転換支援を含む経過措置をどう考えるか(4)療養病床からの転換以外に、新設も認めるべきか このうち(1)は「現在の介護療養など」に関する論点、(2)-(4)は「新たな施設類型」に関する論点に分けることができます。介護療養などの設置根拠について、再延長を行うべきか (1)の経過措置再延長は鈴木邦彦委員(日本医師会常任理事)や、吉岡充委員(全国抑制廃止研究会理事長)委員らが強く求めているもので、「現行の介護療養に不都合があるのか」という視点に立った意見です。鈴木委員らの意見に理解を示す見解も少なくありません。が、その委員でも「当初の設置期限は2011年度までとされ、その後、2017年度までに延長された。これをさらに延長することは難しいのではない」として、より前向きに「介護療養などのもつ重症患者を受け入れる機能を、新施設類型に発展的に継続していくべきではないか」といった旨を指摘しています(土居丈朗委員:慶應義塾大学経済学部教授や、岩村正彦委員:東京大学大学院法学政治学研究科教授、白川修二委員:健康保険組合連合会副会長ら)。なお土居委員は、「介護療養の入所者などに『追い出される』と思われないように、介護療養から次の施設類型に映るのであるといった積極的な議論を行う必要がある」とも付言しています。この点について黒田医療介護連携政策課長は、「現在の介護療養について設置根拠の延長を求める意見と、新たな施設類型への転換を決め、転換に向けた移行期間を十分にとるべきとの意見が混在しているように感じている。委員の意見を分析した上で考えていきたい」とコメントしています。新施設の基本的性格や低所得者対策は法律に記載すべき事項 (2)の施設基準については、▼施設の基本的性格 ▼低所得者対策―の2点が法律に記載すべき事項に、▼人員配置 ▼施設基準―は政令などの下位法規に記載することになる見込みです。したがって、前者の ▼施設の基本的性格 ▼低所得者対策―の2点については、早急に部会の意見を固める必要があります。例えば「施設の基本的性格」については、病院や診療所のように医療保険から給付がなされる施設とするのか、介護老人保健施設のように介護保険から給付がなされる施設とするのかを早めに決めなければいけません。また「低所得者対策」としては、介護保険の補足給付のような特別の配慮を行うためには法律にその旨の記載が必要となります。この点、複数の委員から具体的な見解も示されました。鈴木邦彦委員は、新たな施設の財源について「介護保険が望ましい」との見解を示すとともに、案1-1の人員配置について「少なくとも機能強化型AまたはBの介護療養並みとすべき」、施設基準について「建て替えなどの大規模修繕までは6.4平方メートル・4人部屋を認める必要がある」と提案しています。また武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)も、鈴木委員と同じく「6.4平方メートル・4人部屋」を認めなければ、新施設類型は画餅に帰してしまうと強調。また人員のうち医師配置について「(例えば案2では)併設医療機関に医師もおり、医師を必置としなくてもよいとも考えられる」との見解も示しました。さらに井上由起子委員(日本社会事業大学専門職大学院教授)は、人員配置について「案1-1の類型では機能強化型A相当、案1-2と案2でも看護・介護合わせて3対1以上」、施設基準について「案1-1と案1-2は医療施設であり6.4平方メートル・4人部屋を認めてもよいが、案2の類型は『住まい』とされており、個室が必要となるのではないか」との考えが示されています。こうした意見も踏まえて、厚労省は次回会合により具体的な「叩き台」を示す見込みです。新施設類型への転換を決めたとしても、2018年4月からの一斉転換は困難 (3)の経過措置は、「介護療養などから新たな施設類型への移行を決定したとしても、2018年4月に全施設が即座に移行できるわけではない。転換決定後に一定の(転換準備などのための)経過措置を設ける必要があるのではないか」との論点です。この点、多くの委員が「十分な経過措置」を求めており、さらに有床診療所や過疎地などの病院(介護療養)については、「特段の配慮」を求めるべきとの指摘が田中滋委員(慶應義塾大学名誉教授)や鈴木邦彦委員、岩村委員らから出されました。特段の配慮として、例えば「人員配置の緩和」なども考えられそうです。新施設類型の新設を認めるか、法律本則に規定するかなども関連する論点 (4)の「新設を認めるべきか」という点について、賛否両論が出ています。賛成派の委員(例えば田中委員)は「医療と住まいの機能を併せ持つ施設は魅力的で、地域包括ケアシステムの中で推進すべき」といった意見を示しており、慎重派の委員は「介護療養からの転換に的を絞らなければ、議論が散漫になってしまう」ことを危惧しています。この点について黒田医療介護連携政策課長は「新たな施設類型を、法律の本則に規定する場合には必然的に『恒久的な制度』と見込まれるため、療養病床からの転換以外の『新設』も認めていく必要があろう。一方、法律の附則などに規定する場合には『経過的な制度』と見込まれるため、新設は認めないという考え方もありうる」との考えを示しています。なお、特別部会の委員からは「検討会でも同じような議論がなされており、特別部会で議論すべき事項をきちんと整理しなければ、議論が進まず、12月上旬の意見とりまとめに間に合わないのではないか」との指摘も出ています。たしかに多くの意見は、過去の検討会や特別部会で出されたものと似ており、議論が進んでいないようにも見えます。しかし、検討会を取り仕切った前医療介護連携政策課長の城保険局総務課長は、「発言するメンバーが、いわゆるコアメンバーだけではなくなってきている。議論は相当煮詰まってきている」とメディ・ウォッチにコメント。12月上旬の意見とりまとめに期待を寄せました。>

医政局長通知「「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」の一部の施行について」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20150331_02.pdf)p7にあるように、地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)に定める事項として、「構想区域における将来の居宅等における医療の必要量」があり、①慢性期入院患者のうち医療区分Ⅰの70%相当数、②慢性期入院受療率の地域差解消による需要、③医療資源投入量175点未満の入院患者、④訪問診療患者推計、⑤介護老人保健施設入所者推計の合計数とすることが示されており、このうち「③医療資源投入量175点未満の入院患者」は療養病床ではなく、療養病床の移行に限定すべきではないであろう。但し、資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000126219.pdf)p11に示すように、介護療養病床と医療療養病床療養病棟入院基本料2は平成30年3月末までの期限であり、優先度が高い。とにかく、資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000139018.pdf)p6「慢性期の医療・介護ニーズへ対応するためのサービス提供類型(イメージ)」に示す医療内包型と医療外付け型のいずれであっても、ある程度の医療ケアに対応できなければならない。地域医療構想策定ガイドライン(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000080284.html)(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000088511.pdf)p21の図6「慢性期機能及び在宅医療等の医療需要のイメージ図」に「在宅医療等とは、居宅、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、介護老人保健施設、その他医療を受ける者が療養生活を営むことができる場所であって、現在の病院・診療所以外の場所において提供される医療を指し、現在の療養病床以外でも対応可能な患者の受け皿となることも想定。」とあり、在宅医療等の「等」には、新たな類型施設も含まれることを明確に示す必要がある。日本慢性期医療協会「入院患者とターミナルの医療提供状況に関する調査結果」(https://jamcf.jp/pdf/2016/160721terminal.pdf)が出ていたが、「現状の一般病床、療養病床でなければターミナルケアをはじめとする医療的ケアはできない」の認識は変えなければならない。ところで、医療法に基づく医療機能情報提供制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/teikyouseido/index.html)の「一定の情報」(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/10/dl/s1031-6a.pdf)には「療養病床別の看護配置(入院基本料)」があり、それによると、医療療養病床と介護療養病床が併設されている病院が多い。おそらく、今後、医療療養と新たな類型施設の併設が多くなるであろうが、「人員配置の緩和(医師)」として、特定行為に係る看護師の研修制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077077.html)とリンクする方法が考えられるであろう。
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都立広尾病院

2016年10月07日 | Weblog
週刊朝日「広尾病院前院長が核心を激白「移転は舛添さんのレガシーだった」」(https://dot.asahi.com/wa/2016100500222.html)。<以下引用>
<東京都立広尾病院(渋谷区恵比寿)の不可解な移転問題で進展があった。本誌(9月30日号など)の一連のスクープなどにより、国と都の土地売買交渉が凍結されたのだ。問題のキーマンの一人、佐々木勝・前広尾病院長(64)が、闇に包まれていた真相を、180分にわたり激白した。「最近は、防犯ブザーをいつも持ち歩いているんですよ。大変なことが起きているのだと思います……」 佐々木氏は苦笑いしながらこう話した。広尾病院の前院長である佐々木氏は、日本の災害医療の第一人者として知られている。その専門知識を見込まれ、今年4月からは内閣官房参与として安倍晋三首相に災害医療と危機管理について助言する重責も担っている。その佐々木氏が身の危険を感じるというのだから、事は穏やかではない。というのも、先月8日に佐々木氏のもとに一通の脅迫状が届き、そこにはこう書かれていた。〈出る杭は打たれる。出すぎた杭は打たれない。ただ、引き抜かれるのみ…〉 佐々木氏が語る「大変なこと」とはむろん、広尾病院の移転問題のことだ。広尾病院は2023年に、現在の立地から約2キロ離れた青山エリアの国有地「こどもの城」跡地に移転する計画が持ち上がっている。ところが、土地購入費だけで370億円、病院建設費なども含めると900億円前後が必要となる巨大プロジェクトであるにもかかわらず、今年1月に16年度予算案が示されるまで、移転計画は公表されていなかった。都議会でも十分な議論もないまま、3月にはあっさりと予算が成立。拙速な計画の進め方に、現在は「経緯が不透明だ」などと、地元医師会や病院関係者が猛反発している。事実、8月31日に開かれた第1回の検討委員会の会議では、移転が決定するまでの経緯が不透明だとして議論が紛糾。9月末には開かれる予定だった国有地の売買に必要となる政府の審議会も、本誌の特報などで開催の見通しが立っていない。今では、“第2の移転問題”になっている。「豊洲新市場では『食の安全』をめぐって人々が不安になっていますが、広尾病院の移転計画も『医の安全』に関わる重要な問題。だからこそ私は、自分の知っている事実は、ちゃんと説明しておきたいのです」(佐々木氏) では、佐々木氏の証言をもとに、あらためて移転計画の経緯をたどってみよう。施設の老朽化が問題となっていた広尾病院は、かねてから改修・改築が課題となっていた。14年までは現地建て替え案が有力視されていたが、それに明確な変化が訪れたのは15年1月21日だった。この日、都の病院経営本部長であるA氏が広尾病院を訪れ、佐々木氏に「技術的な問題などから移転しかないでしょう」と語ったのだ。「A氏は、現在のNHK放送センターがある代々木エリアと、国有地である『こどもの城』(15年2月1日閉館)の二つの移転候補先を示しました。都としては、移転案で計画を進めたい意向だった。ですが、病院の移転は、たとえ現在の場所から数キロしか離れていなくても、簡単なことではありません。なによりも、広尾病院に通っている患者が困ってしまうからです」(同) だが、A氏からは、二つの移転先で病院を建設した場合の経営ビジョンの説明もなかった。しかも、会話の中では都議会自民党の幹部の名前をあげて、了承を得る必要があるとも語っていた。「医療を担う当事者である病院側の意見を聞かず、都庁職員が都議の名前を出しながら移転案を迫ってきたのは、おかしいと感じました。『移転すること』だけが先に決まっていたとしか思えません」(同) 移転案に不信感を持った佐々木氏は、6日後の1月27日に、秋山俊行副知事(当時)と面会して直談判をした。秋山氏は、A氏が佐々木氏との会話の中で議員の名前を出したことについて、「議員の名前を出したのはよくない」と陳謝。さらに秋山氏は、広尾病院の医療機能や改修・改築についての調査を実施することを提案。それを受けて佐々木氏は、みずほ情報総研に調査を依頼し、6月末までに二つの報告書を作成した。だが、この二つの調査報告書も、都が推進する移転案をくつがえす材料にはならなかった。佐々木氏は、報告書で示されたデータをもとに、7月13日にA氏の後任の病院経営本部長となるB氏にあらためてプロセスの不備を説明し、「善処する」と言われたが、報告書は黙殺されてしまった。「その後、私に最後の説明があったのは10月21日でした。その時に私に説明をした都の政策企画局長は、『舛添(要一)知事のレガシー(遺産)にするために青山に建てることが決まった』と言いました。そんなことはおかしいと感じましたが、知事の決定には従わざるをえません。それ以降は何も言えなくなりました」(同) そして10月22日には、舛添氏によって青山エリアへの移転の方針が決定されたのである。「誤解してほしくないのは、私は現地建て替え案に固執していたわけではありません。調査の結果、各案を比較検討して、青山エリアへの移転が最適なら、それを受け入れるつもりでした。それが、移転した後の病院経営に必須の患者の需要調査すらされていない。結論に至るまでのプロセスが、おかしいのです」(同) 佐々木氏と都の間で交わされたやり取りについて都に尋ねると、「都庁職員は、職員同士や都議との間で日常的にやり取りを行っており、そのすべてを把握しておりません」(病院経営本部) 佐々木氏はその後、16年3月末に異動となって院長の職を離れ、4月からは東京都保健医療公社の副理事長に就任している。だが、災害医療の第一人者である佐々木氏に、その専門性を生かすような仕事は与えられていないという。自民党東京都連の最高顧問を務める深谷隆司氏は、都庁の実態をこう語った。「小池(百合子)さんは都議会自民党をブラックボックスと言ったけど、本当の敵は都庁内にもいます。ここを変えなきゃダメだ」 15年度に都が広尾病院に補填した額は約27億円。十分な病院経営計画もなく、移転を強行すれば、さらに都民の負担は増えかねない。将来、“負のレガシー”になる前に、移転計画は白紙撤回すべきではないか。(本誌・小泉耕平、亀井洋志、上田耕司、西岡千史)※週刊朝日 2016年10月14日号>
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