保健福祉の現場から

感じるままに

子宮頸がん検診事業に思うこと

2011年02月13日 | Weblog
先ほど、医師会の子宮頸がん予防研修会に行ってきた。「子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/other/101209.html)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou/pdf/110120-1.pdf)によるHPVワクチンばかりでなく、子宮頸がん検診事業が話題になった。平成19年国民生活基礎調査(http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/20-19-1.html)では、「過去1年間にがん検診を受診した者」は「子宮がん検診」21.2%(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/3-8.html)に留まっている。国のがん対策推進基本計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html)や都道府県がん対策推進計画(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/news/2008/plan.html)では「平成23年度末までに受診率50%」の目標値を掲げているが、がん対策推進基本計画中間報告(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_keikaku04.pdf)で「がん検診受診率50%の目標達成は「予断を許さない状況」とされている。しかし、そんな悠長な段階ではないであろう。厚労省資料(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/1888057a89d5776e4925782d00255041/$FILE/20110204_2tenpu2.pdf)p19に出ているように、国際的にみて、我が国の2割台の受診率がいかに低いか、もっと社会的に認識される必要がある。座長のT先生がいっていたが、市町村のがん検診事業では、被用者保険の被保険者本人に案内されていないことも大きい。とにかく、勤務女性に子宮頸がん検診をもっと受けていただかなければならない。厚労省の報告書(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/dl/s0301-4c.pdf)p8では、市区町村におけるがん検診の受診率の算出にあたって、受診率の分母となる「対象者数」は、「市区町村人口-就業者数+農林水産業従事者数」とされ、就業者は市町村ではなく、職場でがん検診を受けることが前提となっているが、これは実態を全く反映していない。がん検診は、労働安全衛生法による事業所定期健診には含まれておらず、義務付けられてもいないからである。また、医療保険者に義務付けられているのは、40歳以上の特定健診(いわゆるメタボ健診)である。例えば、東京都の「職域のがん検診実施状況実態調査」(http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2009/05/60j5r400.htm)によると、子宮がん検診を実施している事業所は約6割に留まっている。この数字はあくまで事業所単位の実施率であって、対象者率や受診率ではない。中小事業所では実施されていないところが少なくないであろう。東京都「平成22年度「健康増進法に基づくがん検診の対象人口率等調査」結果」(http://www.metro.tokyo.jp/INET/CHOUSA/2010/11/60kbq600.htm)(http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/kensui/gan/torikumi/chosa22.html)によると、区市町村が実施するがん検診の対象人口率は、子宮がん検診64.8%に上っているのである。女性特有のがん検診推進事業(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan10/index.html)による子宮がん検診・乳がん検診の無料クーポンが画期的なのは、勤務の有無にかかわらず、対象年齢者全員に無料クーポンが配布されることである。それによって、市町村のがん検診受診者数が大幅に増える(http://www.jcancer.jp/archive/document/kyokaiho1007.pdf)ことになる。しかし、一方で、「がん検診受診者が増えると市町村財政が大変になる」という行政側の声が聞かれる。受診率を伸ばすために、個別通知を積極的にしたいが、予算を組めないという話も聞く。厚労省資料(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/791917b16a2abe09492575ec000b9d2f/$FILE/20090707_3shiryou2~3.pdf)p30の市区町村におけるがん検診の実施状況等調査結果で示されているように、市町村によって様々な制限が加えられているのが実情である。
厚生労働省指針(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin02.pdf)p3では、「前年度受診しなかった者に対しては、積極的に受診勧奨を行うものとする。また、受診機会は、乳がん検診及び子宮がん検診についても、必ず毎年度設けること。」とされ、隔年「受診」であって、隔年「実施」ではないのであるが、厚労省会議資料(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/791917b16a2abe09492575ec000b9d2f/$FILE/20090707_3shiryou2~3.pdf)p35では、「同一人にとって受診機会、勧奨ともに隔年(誕生年、誕生月、居住地区で選定等)」としている市区町村は、子宮がん検診で13.8%、また、「定員を設け先着順」としている市区町村は、子宮がん検診で13.0%に上っている。これらの市区町村の女性には理解されているのであろうか。「市区町村におけるがん検診の費用に関する調査結果」(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/xls/gan_kenshin04.xls)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/xls/gan_kenshin03.xls)もでているが、住民(代表)は自分たちの自治体がどのような取り組みがなされているか、こうした資料を参考にもっと関心を高めてもよいのではないか。市町村がん検診の財源が平成10年度から一般財源化(http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/11/dl/s1120-9c04.pdf)されていることの意義を感じたいところである。果たして、地元マスコミや地方議会では、がん検診がどれほど話題になっているであろうか。さて、国立がん研究センター「がんの統計 '10」(http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/backnumber/2010_jp.html)の「年齢階級別がん罹患率推移」(http://ganjoho.ncc.go.jp/data/public/statistics/backnumber/2010/files/fig17.pdf)では、女性の30~50代(特に乳がん、子宮がん)では、以前に比べてがん罹患率が高くなっている。昨年2月、「市町村がん検診事業の充実強化について」通知(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/gan_kenshin03.pdf)が発出されている。勤務女性も健康増進事業の対象者であるのはいうまでもない。事業所での子宮頸がん検診が推進されるのが第一であるが、事業所で実施されていなければ、市町村がん検診事業に積極的に誘導されるべきではないか。また、一方で、地方交付税措置による受診率(19年国民生活基礎調査で40歳以上男性27.5%、女性22.7%)と報道されている(保健衛生ニュース1月17日号)が、一般財源化による地方財政措置が十分になされなければならない。
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