駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

2020年総括&2021年宝塚歌劇展望など。

2020年12月29日 | 日記
 今年は大変な一年となりましたが、みなさまお元気でいらっしゃいますか? 無事の年越しをお祈りしています。
 私はといえば、去年までに5年日記を3周くらいして、ちょっともう飽きちゃったかなと思ったところにひょんなことから10年日記を手にしてしまい、どうせなら日々何があったかとかをこまごま記すものではなく、いわゆる「よかった探し」というか、その日あって楽しかったこと嬉しかったことだけをみっつだけ書く、メモ書きみたいな日記にしてみようかな、とゆるりと始めてみたものの、この事態にあれよあれよと書くのが間遠になり、9月にはついにぱったりやめてしまった…といったことがありました。まあそれとは別に、アベノマスクへの怒りとか百合子のフリップ芸への怒りとかを書き連ねた、記録としてのコロナ禍日記はポメラに書きつけ続けてはいるのですけれどね。でもこの「よかった日記」も、せっかくなのでまた年明けから再開してみようかと思っています。
 そんな感じで、私は元気です。

 勤め先は在宅勤務の導入がわりに早く(たまたま、介護や看護に当たっている社員のために試験的に導入しかけていたところだったのでした)、業務も多少の不便はあってもリモートで全然できるものだったため、そういう点では私は恵まれていました。会社貸与のノーパソが配られるのは来年に持ち越しになってしまいましたが、私物のパソコンにミラーソフトを入れて、会社のパソコンと同様の業務ができています。秋に新入社員の配属があったり人事異動や担当業務替えがあったため、引き継ぎその他のコミュニケーションのために多少出社頻度が増えましたが、その時期以外は週に一、二度の出社、あとは在宅勤務で働けています。通勤定期を買うのももうやめてしまいました。ZoomもTeamsも、やっとちょっと慣れてきました…
 初期はあまりの運動不足っぷりに自転車出勤も何回かしましたが、すぐに滝汗の季節が来てやめてしまいました。ウォーキングとラジオ体操を再開しよう、と思いつつ、まだ完全にはできていません。習慣にしちゃわないと駄目ですよねえ…なのでコロナ太りは多少しました。
 この自転車は、震災直後にクレカのポイントか何かでもらった折りたたみ自転車で、ひと頃活用したあとはずっと玄関の置物と化していましたが、今回タイヤに空気を入れ直して、再びちょいちょい使い出しました。緊急事態宣言が出ていた頃は、近所の人気(にんきではなくひとけ、です)のない公園までチャリ散歩してベンチで読書とランチ、なんてこともよくしていましたね。いい息抜きになりました。でもこれも暑くなりすぎるとやめてしまったし、秋にはもはや飽きていました。自炊も久々に再開しましたが、これもわりとすぐ飽きちゃったかな…むしろ近所のごはん屋さんがつぶれちゃったら困るし、と外食の頻度は増えたかもしれません。観劇ついでに日比谷界隈でお友達たちとみんなでワイワイ…というような外食は減りましたが、というかもうほぼできなくなってしまいましたが、ひとりちょいちょい外食はそんなわけで続行していますし、おかげさまで近所の愛好店はみんな元気に営業してくれています。あ、でも贔屓にしていたホルモン焼き屋さんがラーメン屋さんになってしまったんだった、あれはしょんぼりだった…
 ともあれ、そうしたご近所外食とスーパー買い出しとたまの出社以外は、わりとおとなしくステイホームできている方だと思います。ありがたいことです。そうもいかないエッセンシャルワーカーさんその他の方々のためにも、世の感染拡大防止のためにも、なるべくおとなしくおうちに引っ込んでいたいとは思っています。
 でもホント、ぼちぼち旅行は行きたいですよね…去年の誕生日にマカオへ初海外ひとり旅を敢行して以来、今年は上海かウラジオストックにしようかなとか考えていたのですが、この事態で都内ホテルステイにせざるをえませんでした。まあ、楽しかったですけどね…来年は珠城さん卒業どんぴしゃタイミングです。さて、どうしましょうかね…?

 そんなわけで今年のお買い物と言えば、まずはパソコンデスクと椅子ですね。もともと自宅でのパソコン作業はローテーブルにビーズクッション(いつかの誕生日に親友にねだった、人をダメにすると評判のヨギボー…)でやっていましたが、ポメラをつないでブログをアップするくらいしかしていなかったので、そんなに身体に負担を感じませんでした。が、仕事で一日パソコンをいじるとなると、やがて腰が痛くなってきてしまい…いわゆるちゃんとしたパソコンデスクはうちの部屋には大きくて邪魔そうなので、ノーパソが乗るだけの小さなカフェテーブルみたいなのをけっこう探しましたが、ちょうど好みのものに出会えてよかったです。椅子も人間工学がどうとかいうようなすごいのではなくて、ごくシンプルなものにしましたが、今のところ満足しています。そういえば、数年前に家電(いえでん)をやめたときに、自宅のパソコン回線とかケーブルテレビ回線とかWi-Fiとかをひととおり整えておいたのも、在宅勤務には助かりました。通信費として会社から補助がちょっと出ましたが、もっとくれてもいいのよ?とは思っています。
 あとは、ソファを買いました。冬はこたつになるテーブルと座椅子、という暮らしをずっと続けてきましたが、ちょっと前からなんとなく欲しくなって探していて、おうち時間が増えたので「えいっ!」と買ってしまいました。これまた気に入っていて、今やほとんどの時間をそこに棲んでいるので、マットレスがすぐにヘタりそうで今から心配です。手元を照らすスタンドライトも買っちゃったな、そういえば…ここに横になって読む本とか漫画とか、至福です(^o^)。
 それから、リュックも買いました。自転車通勤していた時期には、書類やファイルなどを持ち運ぶために肩が楽と評判だった無印のものを買ったのですが、街歩き用にも流行っているしちょっと欲しいな、とずっと物色していたのでした。でも背負っている人を見ない日はないanelloは絶対ヤダし(人と同じものが嫌いなタイプです)、革が好きなんだけど重そうだし年寄りじみるのもヤダし、ナイロンとかでカジュアルすぎて安っぽいのもヤダし、山歩きみたいじゃないヤツで、大きすぎず小さすぎず、欲しい位置にポケットがあって…と探すと意外にない。何より身体が硬くて肩もアレなので本当に使いこなせるんだろうか、背負うたびにいちいち背中とかつるんじゃなかろうか、だいたいスリとかにも遭いそうだし…とかいろいろ迷っていたところに、いつもは行かないファッションビルでひょいっと出会いました(^o^)。なんか、ウェットスーツと同じ素材なんだそうです。使ってみたらやっぱり両手が空くのはいいし、斜めがけ鞄より肩が痛くならないし、快適ですね。便利さに目覚めました。今は日帰り遠征にもガンガン使っているお気に入りとなりました。
 お供は細身の水筒です。これも今年アタマに買ったかな、去年の暮れだったかな。遠征で、駅構内の店で買うハーフボトルのワインとかが妙に割高なのと養命酒みたいな小さなプラスチックのカップで飲まされるのが嫌で嫌で、コップつき水筒を買って、日帰り遠征などでは家から近所のスーパーで買った安ワインを入れて行って活用していましたが、もう少し容量が少なくてコップもついてなくていいから、なんかひとつ持っているといいかもな…と思って、ごくシンプルなものを買い足しました。これまたとても便利でいいですね! チャリ散歩にハマっていたときは牛乳とか入れて公園でランチしていましたし、観劇や遠征でもペットボトルを買うよりエコなので、ちょいちょい水分補給に活用しています。冬になって熱いものを入れるようになったら本当になかなか冷めなくて、今の魔法瓶(言い方…)って優秀!と驚愕しました。
 あとは…夏くらいに、ステイホームに飽きて、なんか散財したい贅沢したいいい気分になりたい!と思っていたときに、ちょうど探していたくらいのサイズだったんで飛びついて買ってしまったディオールのブックトートですかねハッハッハ! イヤいいんです超気に入っているので高かったけどね! これまた遠征なんかでもガンガン使っています。プログラム、長財布、文庫本、手帳、チケットフォルダーにオペラグラス、防寒用のショールに水筒、扇子、マスクケースとエコバッグ、タオルハンカチ、化粧ポーチとスマホがラクラク入ります。化粧ポーチといえばこのマスク生活ですっかりお化粧しなくなりましたが(眉を描くくらい…)、震災以降、ティッシュや目薬、のど飴などの他にミニ懐中電灯やモバイルバッテリー、充電コード、ホイッスル、メイク落としシートなんかの被災用グッズも入れた「緊急ポーチ」を常に持ち歩くようにしています。ホラ、台風で電車が止まったりしたときとかにも使えるしね! 
 はっ、あと春先にもヴィトンの、これはやや小さめの斜めがけもできるミニトートも買っちゃったんだったな今思い出したわ…白なので夏までしか使わなかったから、忘れていました。でもこれも可愛くてけっこう物が入るので気に入っていて、持ち手に宝塚のツイリーを巻いて愛用しています。決まった好みはあるもののハイブランドのバッグに目がない、というのはおそらく私の生涯の病です。あ、でも終活の一環のつもりで、もう古いかなとか実は気に入っていないんだよねとかでクローゼットに死蔵していたものを、えいやっと売りに行ったらちゃんと売れたりもしたので、別にムダにはしていないつもりではあります。逆に気に入ると、ボロボロになるまで使い倒すタイプです(^^;)。

 さて、趣味の観劇についてですが、公演休止期間はもちろんおとなしくしているしかなかったわけですが(払い戻ししたチケットは40枚ほどになりました)、劇場での公演が再開されたらそれはそれで席を埋めないと…というナゾの使命感と、何より自分自身の楽しみのために、エンタメは不要不急なものではないと言われようとなんだろうと、シュッと行ってシュッと帰ることを心がけつつ、ときには行き先でできる限りの豪遊もしてお金を落とし、遠征も含めて観劇はバッチリ再開させました。お仕事やご家族の都合、あるいは新しい生活様式として、人生の考え方として、まだまだ控えている方も多いかと思いますが、そこは申し訳ありませんとしか言いようがございません。これが私の生き方です。
 観劇回数は、今年は76回でした。去年の147回からほぼ半減、数え始めた2010年からの11年で最少の年となりました。4、5、6月が0回、3、7月が1回、8月が4回ですから、まあそうなりますよね。2月最後の観劇は雪組の『ワンス』、3月唯一の観劇は中止の合間を縫うようにチケットを持っていた外部『アナスタシア』でした。7月にシアタートラムに行ったときにはさすがに心震え、8月1日の『SAPA』梅芸初日遠征から少しずつ、いつもの日常が戻ってきた感じでしたでしょうか。
 なんと年明け1月は現時点で18回の観劇予定があるんですよおかしいなー、普段はあまりしないダブル予定が2日あるせいもあるんですけれど私いつ働くのかなおかしいなー。でも観たいものばかりなんです、これでも3本ほど見送っているのです…元気にシュッと行ってきたいので、いずれの公演も無事の上演をお祈りしています。
 どの業界ももちろんそうだったでしょうが、演劇業界はことに大変な1年だったことでしょう。お金のやりくり、人のやりくり、キャストやスタッフや観客の安全を図ること、そういう困難を押してでも表現したい何かがあること…その情熱に、頭を下げるばかりです。来年もどうぞご安全に。私も粛々と足を運びたいと思います。

 宝塚歌劇に関しては、そんなわけで『はいからさん』取り次ぎ依頼を三度も四度も変更したりなんたりしたようなことはありましたが、おかげさまで今年も全演目が生で観劇できました。電話をかけ続けてもちろんつながらなかったきぃちゃんMSも配信で見られて、ありがたかったです。
 来年の発表含めて、今年もいろいろありましたね。でも私は引き続きファンです。観続けますし、言いたいことは言い続けます。以下、現時点でのごく個人的な意見を縷々綴って、この記事を締めたいと思います。多分ここからも長いです、先に謝っておきます申し訳ございません。来年もどうぞ読みにいらしてください、コメントも大歓迎です。


●花組

 ちょっと遡りますと、私は華ちゃんかひっとんかで言ったらずっとひっとん派で、それは今も昔も単に華ちゃんのお顔立ちがそんなに好みではないというだけの理由が大きかったんですけれど(そして今やひっとんはもう私にはなんでもかんでも可愛く思える)、よもやひっとんが嫁に出るとは思っていなくて、しかしそうか劇団はそんなにも華ちゃんを押しているのだなと思い、しかしトップ娘役に据えたからといって実はそんなに任期は長くはないのかもしれないな、とはなんとなくずっと思っていました。私はのちには彼女のお芝居を買うようになったのですけれど、劇団が彼女に求めているのはそういう部分ではないのかもしれないな、とも感じるようになっていたからです。
 一方でれいちゃんについては、『ルパラ』のフィー役で、ああ劇団って花Pってホントこういうお顔立ちのこういうダンサー男役大っ好きだよねこの路線って必ずあるよねいつか絶対にトップにするんだろうなあ、と思ったことを覚えています。私自身はこういうお顔のスターさんが好みではなくて(そんな話ばっかですみません、ファンの方々ホントすみません)、もうちょっとしてから「この人、意外にお芝居がいいな」となるまではずっと、ほぼ無関心でいたかもしれないくらいです。
 なので、こんな生え抜きの、押せ押せの、花の95期でも筆頭に上げられるようなスターさんが、よもやトップになってこんなにも作品や相手役や2番手スターや後継者に苦労させられる事態になろうとは…という思いが今、一番大きいです。それは生徒のせいではまったくなく、劇団の無策と、あとはもちろんいろいろな巡り合わせが要因かとは思いますが…でもたとえば、比べるのって本当に良くないことだとわかりつつも、同じく花の95期そして主席だったとはいえ、現星組トップスターのまこっちゃんの境遇、状態と比べちゃうとさ…とか、つい考えてしまうのです。
 2番手が上級生、3番手が同期、というのがまったく同じという奇遇もありますが、トップお披露目本公演がかつての別箱主演作の再演、かつそもそも漫画原作ってのと、オリジナル当て書き新作、ってのがまず違ったなと思いますしね。プレお披露目はそれぞれダンス・コンサートと海外ミュージカルで、そこはそれぞれニンに合っていてよかったと思うんですけれど…ここを読んでくださっている方ならご存じのとおり、私は『はいからさん』を作品としてあまり買っていなくて、同じれいちゃん主演の漫画原作ならまだ『花男』の方を評価しています。でももちろんならお披露目は『花男』がよかったとかそういうことではない。れいちゃんにはこういう2.5次元力ももちろんありますが、それはつまりお芝居力に立脚するものだと思っているので、れいちゃんのそういう魅力を生かしたオリジナル新作がベストだったに決まっているだろう、ってことです。なので今はせめて、せめて『アウグストゥス』が名作であることを祈りたいです…!
 歌は弱いが芝居は良くてダンスは絶品、というトップスターに添ってどんな魅力を発揮していくか、どんなトップコンビとして花開いていくか…という時間がどうやら華ちゃんには与えられそうにないのが、かえすがえすも残念です。イヤ世の中的には『はいからさん』でれい華萌えが確立したようなので、それでいいならいいのですが…しかし劇団はそもそもこのあとどういうプランだったのでしょうね? 新公があれば都姫ここちゃんか美羽愛ちゃんを仕上げちゃうつもりだったのかなあ、でもちょっと場数が足りない気がするけどなあ…次のほのかバウのヒロインは誰なんでしたっけ、星空美咲ちゃん? でも題材からしてもちょっと微妙なんでしたっけ…?
 …というのもあって、次期トップ娘役にまどかスライド説が囁かれているのでしょうが、しかしそれでもし本当に雪組初演から25年のメモリアル『エリザ』で揃って卒業、とかになったら、ホントちょっともう目も当てられなくないですかね花組…!? 私は宙『エリザ』でホントもう一生分観たと思ったし、だから月『エリザ』発表にももう!?また!?!?トップ娘役退団作って本当にコレしかないのソレってどうなの劇団!?とキレたものでしたが、たまちゃぴを愛していたのもあって意外に楽しく観ちゃいましたよしかし、もう、もういいだろう! てかれいちゃんは歌の人じゃないんだから、新公でももうやったんだしもういいんだよそれはみりおのビルでも同じこと思ったよ同じことばっかしててどーするよ、とマジのマジで言いたいです。
 しかもこれまた私は個人的にはあまりマイティーに興味がないのですが、しかし近年垢抜けてきたなと感じてはいるし、劇団は起用する気がある、つまりトップに据える気があるんじゃないかなと考えていて、たとえばDSが餞別だとかは全然思っていないのです。そしてあきらは、れいちゃん体制で正2番手に据えられたのが意外なくらいに今までが今までだったし、今も別格スター扱いでよかったんじゃないの?つまりこの2番手って次期トップスターってことではないヤツだよね??ってのがホントにもう据わりが悪く感じられて、でもじゃあれいちゃんからマイティーへのすんなりバトンタッチといくんだろうかと考えると、なんかまだいろいろな準備ができていない気もして、ホントこの先どういう予定なの?と不安しか感じられないのでした。
 ひとこもなんでもできるスターさんだけれど、ホントに花組トップが似合いなのかな?とかつい考えちゃいますしね…でもほのちゃんには期待しています。これまた個人的には好みじゃないタイプの美貌なんだけれど(ホントすんません)、漏れ見えるキャラとかから大物感が伝わるのです。路線としては95期の次は100期かと思いますが、ほのちゃんとおだちん、そして別の意味でかりんたんは逸材だと思っています。あとはらいとやだいやを育てる機会が欲しいよね…
 あーあ、次期トップ娘役が音くりちゃんってことはないのかな-。下級生から上級生へのバトンタッチってなくはないので、それが同期でもええやんとしか思えないのですが。いい仕事すると思うんですけどねー、好きなんだけどなー音くり…上手いだけじゃないよ、ちゃんと可愛いし娘役力もありますよ? 何が足りないというのか…落下傘人事のしんどさを何故学ばないのだ劇団??
 そしてとにかく作品! 作品力ですよ、スターを生かすも殺すもまずは作品なの! 宝塚歌劇はもちろんスターありきかもしれないけれど、でもリピートがいつもよりできるかとかビギナーを誘致しやすいかとかは作品によるのです! 少しも早く良き演出家をもっとたくさん育ててくれ! 来年デビューがすでに発表済みの竹田先生、栗田先生、期待していますからマジで!!


●月組

 思いがけずたまさく卒業の時期が延びましたが、作品に恵まれ組子のバランスも整い、充実の円熟期を迎えていると思います。退団公演は、史実からして目玉が涙で溶けるような悲劇になることは想定内ですし、くーみんのことは信頼しているので、まずは見守っていきたいと思っています。
 未だ発表がありませんが、次期トップスターはれいこでお願いいたします。『IAFA』のリチャードも『ピガール』のシャルルも素晴らしくいい2番手仕事をしました。すでに仕上がっています、95期3人目のトップスターとしてなんら遜色ないと思います。カチャ降臨とかホント申し訳ないけどノーサンキューでお願いいたします。これまたれいこちゃんの燦然と輝く美貌は私の好みからすると美人すぎるのですが(ホント申し訳ありません…)、これまた彼女の芝居心を私は愛しているのです。組替えは、当時はむしろあーさのためのものなのかなとかも感じましたが、2番手がみやちゃんかられいこに替わって珠城さんのトップ生命が伸びた部分が確かにあると思うし(大空さんもこのパターンだったと私は考えています、チエちゃんとかも。相手役が替わったり2番手が替わったりすると、新鮮さが出るのでトップ寿命は延びます)、人見知りっぽいれいこちゃんもやっと学年の近いトップさんとやっと仲良くなれてスターとしての自覚も出てきて、別格のちなつが来てありちゃんも一息つけて(私はこの組の3番手をちなつではなくありちゃんだと考えています)、実にいいバランスの組になったと思っています。
 惜しむらくはさくさくが2作、せめて1作でも残ってくれるとベストだったと思うのですけれど、何故同時退団を選んだんでしょうかね…もったいないよ、イヤさくさくの珠城さんラブは承知ですがしかし。そして死ぬ気で留意しなかったということは劇団にはプランが別にあったということだと思うのですが、依然それは見えませんよね? 次期トップ娘役、どうするつもり?
 『ピガール』ではくらげちゃんよりじゅりちゃんを急に上げてきたかのように見えましたが、『ダル・レーク』ヒロインはまさかのまたくらげちゃん…もう『ラスパ』で見せたじゃんこのコンビ。そりゃくらげは上手いよなんでもできるよ、しかしあまりに地味だしさすがに時機を逸していませんかね? イヤひらめの例もあるから色気が出るのはわかります。でもさくさく就任とのきもくらげの方が…とか言われたけれど私は断然さくさく派だったし、そもそも劇団もそう準備してきたように見えました。そのときなかったんだから当然もうないでしょう。てか他にいないのか!?と言うとなんといないんですけれどねこれがね寂しいことにね…
 でも私はたとえば結愛かれんのカマラが観たかったですよ、別にそれが次期確約とかでなくても。だってその方が新鮮で楽しいじゃん。それくらいのことをやってほしいわ劇団にも。新公ヒロイン経験者は他にも白河りりちゃんなどいますが、詩ちづるを爆上げする暇はなかったんだろうなー…『ピガール』新公は誰のはずだったんでしたっけ? あ、おはねちゃんか。うーん…あと蘭世ちゃんは、せっかく転向したのにどうもしないつもりなのかな??
 あとは、月星バーターってのが歴史的によくあったので、なんなら是非ともくらっちをお願いしたいんですけれど! れいことは雪組時代に『銀二貫』とか組んでるし! くらっちはもったいないですよホントこのあたりでどうにかしてあげましょうよ、そもそもひっとんが行くまでは私はまこっちゃんの相手役で確定だとばかり思っていたんですよ…
 しかし娘役人事は水もので、特にトップ娘役はトップスターとの相性やその意向あってのもの、というのは承知していて、最近ならわかばもしろきみちゃんも、実力的にも立場的にも就任してもおかしくなかったけどそうはならずに退団していったわけで、そんな娘役さんは過去にもたくさんいるわけです。でもなあ…
 あと、これはスターの話ではなくて作品の内容の話で、『ダル湖』についてなんですけどね。私は大空ファンとしてあるまじきことに月全ツのこの作品を生で観ていなくて、スカステでしか知らないのですが(仕事が忙しく遠ざかり気味の時期だったこともあるし、組替えしてきた同期がトップで下級生が2番手の3番手、というのが正直しんどく思えていた頃だったのかもしれません…)、先日も放送があったので予習にと久々に見てみたんですよ。いやアサコの色気ホントすごいね!? そして大空さんの色悪ぺぺルもめっちゃイイね!? これを今のれいこ、そしてありちゃんおだちんがやるのはけっこうハードルが高いかもしれませんね、だからこそ楽しみです。ありちゃんも可愛いだけのお役からそろそろ脱却させてあげたいし、おだちんもとにかく上手いのはわかっているのですがこういう色悪やただの二枚目なんかもいろいろ経験させてあげないと、不憫です。
 しかし私は、なので話をよく覚えておらず、例の「来るんですか、来ないんですか」場面は『エル・アルコン』の「ウィですか、ノンですか」同様、ぶっちゃけレイプやろとずっと不快に思っていたのですよ。でも今見ると、もちろんカマラはハナからラッチマンを愛してはいるのですが、事情はいろいろあるものの結局は承諾して受け入れているようにも見える、ように演出されている気も、しました。だからそれはいい。しかし結局のところ、この時点でラッチマンは何に怒ってこうしたレイプまがいの行動に出ているんでしょうね? 一見、身分差別されたから、に見えるわけですが、実は彼もまた王族の出身で、事情があったとはいえそれを伏せていたのは自分なんだから、ド平民のくせにみたいなことを言われて罵られたからって怒るのはお門違いな気がします。イヤそりゃ身分差別はいけないことなんだけれど、この時代のこの国のこの階層の人々にそんなこと言っても無益でしょう。ここがどうもよくわからないので、通りが良くなるよう、少しセリフなどに手を入れてくれるとより楽しく萌えられそうなんだけどな…と思っています。ラストに関しては、たとえ両想いだろうと身分の問題もなくなろうと、一度ケチがついてしまった関係はそうそう修復できるものではないので…っていうんで、心情的に納得できる気が私はしています。でもこれも、ただヒロインをかわいそうにして悲劇っぽく仕立てて終わらせたかっただけなんだよね、みたいな作為が見えないよう、もう少しだけ丁寧に描いてくれるといいんだけどな、と改良を期待しています。権利関係とかはそりゃあるのかもしれませんが、そもそもまんま再演とかそんな手抜きなんかありえないわけで、良きところはさらに良くしてダメな穴は塞ぐブラッシュアップは絶対にしていただきたい、と切に念じています。


●雪組

 私の年明け遠征1発目は『fff/シルクロード』の予定です。それまでにきぃちゃんの「謎の女」に関するネタバレツイートが流れてこないといいな、と思っています。
 しかし次期トップスターが咲ちゃんなのは当然として、相手役がひらめちゃんになるとは本当に意外でしたね。あんなに準備万端だったかのちゃんに、いったい何があったというのでしょうか…ぱあっとした華のある娘役さんで、本当に可愛いのになあ。
 トップさんは相手役が2人目ともなると候補の中からある程度なら選べたりするとも聞きますが、逆に最初のお相手はほぼ劇団のお膳立てどおりで否やも何もないとも聞きます。だから咲ちゃんがNGを出した、みたいなことはないんだと思うので、スポンサー都合とかなのでしょうか…そう邪推させるくらい、宙組での次期トップ娘役就任発表は乱暴でした。咲ひらより先に就任しますしね、ホントなんなんだ…
 とはいえひらめちゃんはもちろん娘役スキルの高い素敵なスターさんで、私も好きです。おめでとうございます、新トップコンビ、新トップトリオも楽しみです。でもじゃあただひらめちゃんを『ワンス』に出さないためだけの組替えみたいだったのは何故なんだ、とはつっこんでおこう…
 トップコンビとともに卒業する生徒がけっこうたくさんいたことで、また組替えか、みたいなことを言う人も多くいましたが、私は新生雪組はあーさ2番手でなんの遜色もないと思っていたので、東上付き別箱主演の発表もさもありなん、という感じでした。ヒロインは夢白ちゃんかな? 似合いそうですし、その次の新トップコンビ目指してのびのび行くといいなと思っています。どこが雪やねん、ってなっちゃうけど、別にチギみゆもだいきほもそうだったしね。あとはりさみちるひまりも大事にしていただければ、あやなあがちんあみちゃんと路線も揃っていて、前途も問題ないのではないでしょうか。
 ただ、プレお披露目の『ヴェネチアの紋章』がなあ…これまた私は生には間に合っていなくて、以前スカステで見ただけなのですが、どうにもあまりおもしろくなかった記憶しかないのです。そのとき原作小説も読んだけれど、そもそも宝塚歌劇向きだと思えなかった記憶…不安。
 さらにお披露目本公演が『シティーハンター』、かつ演出家がサイトーという大いなる不安…私は「週刊少年ジャンプ」は『Dr.スランプ』『キャッツ・アイ』『きまぐれオレンジロード』とかの世代の人間で、CHに関しては設定程度のイメージしかないのですが、こういうタイプの少年漫画がはたして宝塚歌劇に本当に向くのか、ははなはだ疑問に感じています。つーかお披露目くらい当て書きオリジナル新作を用意してやれよ劇団、咲ちゃんは雪組生え抜きの御曹司としてここまで大事に大事に育ててきたんじゃないの…ぶっちゃけ咲ちゃんは、三拍子揃った、というよりは特にものすごく何かに秀でているということのない、イヤものすんごいスタイルの良さという武器はあるんだけれどでもまあそれ以外はなんというか全体にやや弱い印象のあるスターさんかなと思うのですが、逆に言えば真ん中の白い役が似合う、なんてこたないクラシカルなメロドラマに綺麗にハマりそうなタイプだと思うので、『炎のボレロ』路線の、そういうタイプの作品を作ってあげればいいんじゃないの?と思うのですけれども、ねえ…
 でも次元も斎藤一もカッコ良かったとは思っているので、一応期待はしています。でもサイトーにはなんの期待ももはやしていないので、雪組ファンはちゃんと釘を刺すお手紙をマジで劇団にしたためてくださいね。どんなにやっておいてもやり過ぎということはないと思います。それくらいあの劇団の首脳部はおっさんのお花畑で脚本ノーチェックで、感覚が現代社会に生きていません。今の世のコンプラもポリコレも人権問題も全然理解していないと思います。それで世界に打って出ようとかちゃんちゃらおかしいワケなんですがね。
 世界的なポリコレとはちょっとレベルが違いますが、清く正しく美しく、がモットーの世界において、また主に女性の観客が鑑賞するものとして、100tハンマーはともかく「もっこり」は完全にNGだと私は考えています。ちなみに私は珠城さんとかゆりかちゃんとかがショーとかであまりに男らしくカッコいいのを見ると、つい股間の膨らみの有無を確かめてしまい、そこが静かに平らかであることに安心して、「そうそうこれはジェンヌだった、彼女たちにペニスはないんだった」と再認識する、ということがわりによくありますすみません。つまり私は男性に関しては股間はある種のチャームポイント(笑)のひとつだと考えているようなのですが、男役は当然ですが男性ではないので、男役にはそういうものを求めていないのだということです。肩とか胸板とかは補正してもいいけど、ソコを盛り上げたりはしなくていいからね、と思っているということです。たとえばとある時代のとある国の貴族の男性たちはペニスカップを着けてアピールした流行りがあったりもしたそうですが、男役はそういうこととは関係がなくていいのだ、ということです。またショーやお芝居でどんなに濃厚な、疑似セックスでしかないダンスや絡みをしようとも、それはあくまでそういうイメージを表現しているのにすぎないのであって、あくまで男役にはペニスはないしだから勃起もしないのです。ファンはそういうことを求めているのではない。私は『ミーマイ』でビルがジャッキーとソファであーだこーだ歌うとき、勃起をクッションで隠し押さえ込もうとするような振りがあるのを心底嫌っています。というか初めて気づいたときにはけっこうショックでした…
 でもなー、世の男って本当にチンコでものを考えている人が多いから、サイトーなんざもうセリフで言わせたくて言わせたくてしょうがないんだろうなー、と心配しかないのですよ…そういうのいいから、求めてないから、大事なのはそこじゃないんだから、とか言うと、全否定された気になるらしいんですよね彼らって。本当に股間しか誇るところがないつもりなのか…そんな彼らが哀れでなりません。今、男性のセルフケア問題なんかも言及されたりしていますが、自分のチンコ以外の部分も愛し認めてやれよ男よ…とホント言いたいですよね。てかなんでただ舞台観るのにこんな心配しなきゃならないんですかね、悲しいです…てか疲れる…


●星組

 『ロクモ』そして『眩耀』と順調なスタートを切ったこっとん新生星組ですが、『エル・アルコン』そして『ロミジュリ』とベタな再演が続くのはちょっと気になります。まこっちゃんはそれこそバリバリの生え抜きの、直系の、真性の、星の王子さまにして星を継ぐ者ですが、だからってトウコやチエちゃんと同じことばっかさせてもしょーがないでしょ? もちろん本人の希望もあったのかもしれませんが、その次はまたいいオリジナル新作当て書き二本立てをお願いしますよ、と念じています。
 ただ、あるとしたら『ノバ・ボサ・ノバ』はちょっと観たいかな、とは思っています。けっこう久々になるし、ソールって歌の役だとも思うので。そしてこの場合の黒塗りは、あくまで概念のものであって、世界的なブラックフェイス問題とはちょっと位相を異にしているのではないかと私は考えているので、そっとやらせてほしいなーとか思っちゃったりするんですよね…
 ところでこんな事態になるまでは、まこっちゃんの任期は意外に短くて、さっさと外部に行って帝劇でも日生でもミュージカルとかバリバリやっちゃうようになっちゃうんじゃないのかしらん、とか密かに考えていたのですが、今はかえってちょっと腰を据える気になったようにも見えてきました。まこっちゃんが早くやめるなら、愛ちゃんはワンチャンあるかなとか思っていたのですが、そうでないなら学年的なこともあっていろいろ厳しいだろうし、満足できたところで卒業…となっても仕方ないのかもしれません。となると『花の業平』の再演ならいいのでは…あの基経は愛ちゃんの念願の役ですよね。本当は同じ組での再演というならこれくらいの時間が経ったものの方がいい気がします。あとは別箱で『うたかたの恋』をやれれば成仏できるのでは…あ、でも『紫子』とかもめっちゃ似合いそうだなー。そしてその間にせおっちがさらに確変できれば、あかちゃんぴーかりんちゃん天飛くんと路線も揃っていますし、安泰なのではないでしょうか。
 でもマメちゃんの卒業発表にはちょっとしょんぼりでした。もったいない…そしてくらっちはかのちゃんが組替えしたときに、なら雪に出戻って咲ちゃんのお相手にどうよ?と期待していたのですが、それもなかったので、今はならば月でれいこのお相手に…と念じています。はるこはいつまでも瑞々しく、小桜ほのかちゃんも手堅くて、娘役陣もいいですよね。
 次の世代は俺たちのルリハナカがいいなー。でも、これはどの組でもそうですが、新公がないと次世代の娘役を育てアピールする場がなくて困りますよね…

 
●宙組

 『アクアヴィーテ!!』があまりの夢白ちゃん上げ公演だったので、もしかして『アナスタシア』でまどかは先にやめちゃうのかしら…と密かに心配していました。娘役タイトルロールの大作で、こんな晴れ舞台はなかなかないですからね。しかしまさかの夢白ちゃんとかのちゃんの入れ替えで、さらにまどかの専科異動が発表されて、さすがにちょっとザワつきました。トップ娘役が専科に移ったことも、2組のトップを務めたことも過去にはまあまあ例がありますが、こんなふうにトップコンビが解消された例はありませんでした。しかもまかまどは同時就任でしたし、普通に考えれば同時退団まで添うのが自然じゃないですか…まどかは組周りの時点からすでに将来が見えていた100期の期待の星で、宙組初の生え抜きトップ娘役になった逸材です。もちろん専科への異動はそのポテンシャルを買われてのことで、さらにその先の展望があるのだとは思いますが、しかし現状、下級生にどかされたように見えるこの人事は、ゆりかちゃんファンだってかのちゃんファンだってあまり喜ばないのではありますまいか…残念です。私はまどかもかのちゃんも大好きなので、本当に悔しいです。
 あとは、相手役が替わるということはおちつくまでもう少しやるということで、ゆりかちゃんのご卒業はだいぶ先になり、キキちゃんは花組時代から数えたらもう何年2番手やってるの?って感じになっちゃって、それこそファンもお疲れなのではないのかしらん、と心配です。私はこれまたキキちゃんには個人的にあまり萌えがないのですが、それこそ今すぐ真ん中に置いてもなんの遜色もないスターさんだと思っているので、辛抱してもらえればとは思いますが、さすがに飽きられちゃいそうだし、これでトップに就任してもすぐ卒業したりするようじゃ寂しいし、組がガタつくんだよねえ…とどの立ち位置かは謎ですがホント心配しています。
 ずんちゃんは、私は能力をすごく買っていて、過去にマイティーやせおっちとの交換組替え説なんかが噂で流れるたびに「イヤこの人は宙組初の生え抜きトップスターになる人ですから! そんな簡単にいいように利用される筋合いはありませんのよオホホホ」とこれまた謎立ち位置から心の中で唱えてきました。いい感じに上手さも魅せ方も我がものにしてきて、でもまだ待てる気はするので、安心安定の3番手ライフをもうしばらく送ってくれてもいいのかな、と勝手に思っています。
 むしろ心配なのはそらだよね、もっと早くにどこかへ組替えさせてもらえていれば、また違った在り方もあったのではあるまいか…だって宙組でトップになれるとは思えないじゃないですか。いやトップになることがすべてじゃないよ? でも今、上手いだけに便利に使われているだけのようにも見えてしまうのです…
 続く路線はもえこ、こってぃなのでしょうが、宙組はどうにもキャラとしての線が細くてぽやーっとしたいい子ばかりが配属される組なので、なんかもうちょっとがつんと、キタコレ!みたいな初舞台生をもらってこいよP!と毎年思っています。なんかこう、全体的に便利使いされている組なんですよね未だに…
 でもこのスタイリッシュでさらりと素軽く明るい空気感と、とにかく長身でスタイル良き生徒がズラリ揃っていること、美しくパワフルなコーラスを強みとしていることは、宝塚歌劇の未来に続く新スタイルの、まさしく強力な武器になると私は思っているのですよ。一番若い組ではありますが、もっと大事にしていただきたいです…


 戦争や震災の中断も乗り越えた劇団は、今回も雄々しく立ち上がりました。
 けれどせっかくなので、もっと休演日を増やすことや週の公演回数を減らすこと、代わりに必要なら公演期間を長くすることなどの改革もしてもらいたかったなと思っています。生徒やスタッフの健康管理はもちろん、働き方改革は必要だと思うので。
 また、席はまだひとつ空きでの販売でよかったと思います。全席ハケない公演もあったし、隣に友人知人がいればそりゃ人は客席で私語もしますよ感染拡大防止は難しいよ、と思うのです。
 でも、出演人数などを絞り、楽屋やお稽古場などでも密にならないよう留意し、外食も外出もなるべくやめさせて(それで生徒がどんどん痩せているんだと思う…)、とにかく無事に安全に舞台を上演すること、に徹している姿勢はありがたいし、素晴らしいことです。ただ、そうまでしてやっているんだからやはり少しでも良作を…とわがままで贅沢ですが人は願ってしまうものなので、演出家の研鑽や感覚のアップデートを、そしてさらなる新人育成を期待しています。
 ところでそれとはちょっと違うようですが、私は劇団が容姿端麗な女子だけを集めているのはルッキズムとはちょっと違うと考えているし、生徒は未婚の女子に限るという規程(?)も撤廃する必要はないと考えています。
 だって世の中、まだまだ、全然、男女平等じゃありませんよね。選択制夫婦別姓制度すらできないし、同性婚ももっと遠いでしょう。自分で決めた芸名で、自分で選んだ舞台という仕事場で自分の力で輝き働いているスターが、プライベートでは結婚で姓さえ奪われて男性に隷属させられているのだ、と思うと、私なら愛も夢も萌えもロマンもみんな冷めちゃうわ、と思うのです。それでもフェアリーだから…とは、私は思えないと思う。
 生徒の婚姻を容認しても、生徒ははたして結婚するでしょうか? 公表しないとしても絶対に漏れますよね、そしてその生徒の人気は明らかに落ちるのではないかなあ。それを差別だとか偏見だとか言われても、ファン心理ってそういう了見の狭いものだと思うので…だから劇団は生徒の人気が落ちるようなことは許可しない、というだけのことで、それはそういう営利企業だからであって、生徒の人権侵害だとかそういうレベルの話ではないのではないかと私は思うのです。野球の試合をするので野球の能力がある人を選抜しています、というところに、ホームランで点が入るなんて野球のルールはおかしいです、って抗議しても意味あるのかなあ、みたいな…野球ってそういうルールのゲームなんだし、野球がやりたい人、その試合が観たい人が集まっているところなので。ファンがスターをそんなふうに搾取するのを許すのか、と言われるとまた困るのですが…ちゃんと、ものすごく深く、きちんと考えたことがないので、感覚的な話になっていてすみませんが…
 もちろん物語やシステムが間違ったイメージを助長する面ってあるので、それは問題なんだけれど、でも劇団にそうした是正を求めるより、まず求めるべきはもっと一般社会に対して、あるいは法律とかそういうものに対してであるべきだと思うんですよね。世界が本当に男女平等になり基本的人権が完全に保障され誰も誰からも侵害されず、ルッキズムもすべて解消されたあとに、「まだ独身女性ばかり集めて男役偏重の異性愛ロマンばかりやってるの? 古っ! ダサっ!」とか言われて滅びる、のが宝塚歌劇の正しい在り方なんじゃないかと個人的には考えています。でもそんな世の中、多分来ないじゃないですか。だから宝塚歌劇は多分今の形のまま、あっていいんだと私は思うんですよね…
 宝塚歌劇が美人の恋物語ばかりやっているのは、そういう嗜好でありそういうジャンルだからであって、別に現実を写しているわけでも理想を体現しているわけでもないのではないか、と思うのです。一般的なテレビドラマとか映画とかには、若くて綺麗な女性だけでなくもっといろいろな年齢や体型や容貌のいろいろなタイプの女性、というか人間を出すべきだ、その方が自然でリアルだ、ということをもっともっと求めていっていいと思います。現実を写したとされる物語を紡いでいるジャンルだからです。でも、宝塚歌劇はちょっと違うんじゃないかなあ。だからそこにルッキズム批判を持ち込んでも、野球の試合をやっているところにサッカー選手を出場させないのは差別だ、と抗議しているようなものに、私には思えるのです。
 うーん、このあたりの考察はそれこそ来年の課題かもしれません。宿題ができてしまった…
 ともあれ、来年もいろいろ観て読んで食べて楽しんで考えて、人生を豊かにしていきたいです。一緒に遊んでいただけましたら嬉しいです。





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トートツですが、今年のマイ漫画についてなど。

2020年12月27日 | 日記
 会社がわりと早くに出勤と在宅勤務とを併用にしてくれて、仕事はリモートでけっこうできることがわかったので、なるべく出社したくない、行くにしても最低限の時間だけ会社にいてあとはさっと行ってさっと帰ってきたい…となったので、どうしても書店パトロールの機会が減って、新規のインプット、出会いがあまり持てなかった一年だったかもしれないな、とは思っています。でもマイiPad mini(会社貸与のものですが)のアプリで、電子で漫画を読むようになったりもしたんですけどね。
 ともあれ、以下、今年印象的だった作品について、などなど。版元がかなり偏っているのは、仕様だと思っていただければ幸いです。


●少年漫画…田辺イエロウ『BIRDMEN』(小学館少年サンデーコミックス全16巻)

 今年の初めに完結した作品なので、そして私はそこで一気読みで出会った作品なので、今年の作品と言わせてください。少年漫画として、SFとして、私はめっちゃ高く評価しています。感想はこちら
 次回作の予定はどんななのかなー。才能ある作家さんだと思うし、『結界師』完全版も売れていると聞くし、楽しみです。


●少女漫画…柳井わかな『シンデレラ クロゼット』(集英社マーガレットコミックス既刊4巻)

 去年秋に出会った作品ですが、今年の展開がなかなかになかなかで個人的にはやや意外で、今や別マを毎号楽しみに読んでいる始末です。
 ヒロインの春香は地方から上京して大学生活を始めたものの、お洒落キャンパスライフとはほど遠く、ノーメイクでバイト三昧の日々。でも憧れの先輩と飲みに行くことになり、お洒落指南を泣きついた美女・光が、実は男子で…というようなお話です。ジェンダーレス男子、という表現は私はあまり好きではないのですが、この光はお洒落が大好きな人で、女性の格好の方が自由度が高いし何より自分に似合うから、という意識で女装(という言い方もまたアレですが)をしているだけで、性自認は男性、ないしは男前の女性、性指向はバイというか、本人曰く過去につきあった数は「女2男0.5!」なキャラクターです。ここが新しいよな、と読み始めた作品でした。
 「憧れの先輩」のキャラクターもなかなかにいい「ザッツ・男子」で、さてどうなるのかな、と楽しみに読んできたのですが…ふふふ、続きが楽しみです!
 今、個人的にものすごいマーガレット・ブームが来ていて、別マでは『ふつうな僕らの』『うちの弟どもがすみません』、マーガでは『彼女が可愛すぎて奪えない』『はやくしたいふたり』のコミックスを買い揃えています。というか絵柄といい作風といい、一定以上のクオリティを担保するマーガレット・ブランドってホント偉大…!


●青年漫画…米代恭『往生際の意味を知れ!』(小学館ビッグスピリッツコミックス既刊3巻)

 主人公は29歳の会社員で、7年前に別れた元カノを忘れられないでいる。ところがとある嵐の日に、当の彼女から電話がかかってきて…あとは説明しちゃうのがもったいないので、ゼヒ読んでみてください。
 前作『あげくの果てのカノン』もかなり濃くてエキセントリックでアグレッシブでアヴァンギャルドでこじらせまくり世界をも滅ぼす恋愛?の顛末??を描いたものでしたが、今回も「どーするんだどーなるんだオイ???」なお話で、でも中二としてはいたってわかりやすくもあり、まったくもって目が離せません。まだ始まったばかりとも言える作品なのでどう転ぶかはわかりませんが、とにかく続きを楽しみにしています。でもまだ週スピに手を出すほどではない…(笑)


●女性漫画…よしながふみ『大奥』(白泉社ヤングアニマルコミックス既刊18巻)

 14巻からジェッツコミックスじゃなくなっていた…!(そこかよ)
 ご存じ男女逆転大奥物語。ついに次回で最終回、まで来ました。なので来年の作品とすべきなのかもしれません。けれどこの、最終回ひとつ前の回の出来も素晴らしく、最終回に期待しかないのでここで挙げます。終盤の展開もまたすさまじくおもしろい、というのもポイントのひとつだからです。
 長大な作品って、まず完結することが大事なのはもちろん、最終回が巻き巻きのダメダメ出来だったり尻切れトンボになったりしないこと、綺麗に終わることが大事だと私は考えていて、そのためにも最終回ひとつ前の回ってとても重要で、ここで話はほぼ完結していて最終回は綺麗なシメのエピローグ、くらいなものがベストなんじゃないかなとか考えているんですけれど(最近だと『鬼滅の刃』がそうでした。過去にこのタイプで印象深いのはなんといっても『タッチ』。そして頼む、完結してくれ『ガラスの仮面』…!)、この作品もそれを予感させてくれています。
 始まった当初は単に逆ハーを描きたいだけなのか、結局BLをやりたいだけなのか?とか思っていた自分を殴りたいです…
 未読の方は、完結時にでもゼヒ一気読みをオススメします!


●BL漫画…登田好美『学ランの中までさわって欲しい』(小学館&FLOWERフラワーコミックスアルファ全2巻)

 くわしくはこちら
 今年も祥伝社のコミックスなどけっこう数は読んだのですが、コレだ!という出会いが特になかったので…
 この作品は、目新しいこととかは特にないと思っています。ただただ好みでした。
 ああ、ユリでも何かいい作品に出会いたいなー…


●TL漫画…梨月詩『こんなの、しらない』(小学館モバフラフラワーコミックスアルファ既刊8巻)

 月刊誌で描いていた作家さんでしたが、あまり芽が出なくて、ボーンデジタルでエロに特化した作品を描き始めたら当たった、という例ですね。芽が出てよかったよ…!
 何より作家さん当人が楽しんで描いているのがわかるので、向いていたということなのでしょう。よかよか。個人的にはヒロインに常にカワイイお洋服、もちろん下着を含めて、を着せて描いているのがツボです。たとえ脱がされてしまうものだとしてもね…! つまり、もともとBL指向の人がビジネスとして仕方なく異性愛TLを描いている、とかじゃなくて、作家が明らかに女子が好きで可愛がって楽しんで描いている感じが見て取れるのがいいのです。
 ヒロインの芹夏は会社員、相手役の泰一は六つ歳下の従弟で大学生になったばかり、というカップルが、ただひたすらイチャイチャいたすだけのお話です。ただ、親戚同士であることとか歳の差、社会人と未成年であることなんかを気にしておつきあいを公にはしていなくて、そこがせつなかったりちょっと痺れる背徳感があったりする、という構造です。芹夏に気がある同僚男性が出てきたり、泰一が昔ちょっとつきあった元カノなんかが出てきたりはしますが、特にこじれたり大きな障害になったりすることはなく、とにかくふたりが毎回手を変え品を変えただただやりまくるというストーリーです。なのでストーリーなどないと言えば言えるのですが、そこがいいんだとも言えます。とはいえお話の中で一応時間は経っているようなので、最終的には泰一が成人したあたりでプロポーズ、結婚ハッピーエンドで10巻か12巻程度でまとまってくれると個人的には嬉しいな、と思っています。とにかく楽しく読んでいます。あ、たっくんはメガネです(笑)。
 また、成年コミックなんかと比べて、メジャー版元のTLコードはこういうところにあるんだな、とか、男性向けと女性向けのエロの違い、とか、読んでいてすごくよくわかっていろいろ考えさせられます。AVでは定番でもこういう少女漫画TLでは絶対と言っていいくらい出てこないプレイとかもあって、それって男女の性的ファンタジーの差であり、たとえば実際のセックスでも男性が女性に対してしない方がいいだろうことなんですけれど、そういうのって男性に伝わってないんだろうなー、とかとか、ホントいろいろ考えちゃいます。あと、何をどう描きどう隠せばエロいのか、とかね。深いです。


***

今年もいろいろな出会いがありました。楽しい一年でした。 
今は「100年ドラえもん」で購入した『ドラえもん』全45巻をお正月にちみちみ読むのが楽しみです。もちろん子供の頃にテレビアニメとかは見ていたんですけれど、中学生の頃にクラスメイトに原作コミックスを借りて一気に読んだらめっちゃおもしろくて、大コーフンした記憶があります。素晴らしいSFですよね。これは表紙が布張りで天金加工もしてあってまさに百年保つと言われる豪華版なんですが、どうせならと買っちゃいました。来年2月には全巻収まるピンクのどこでもドア型本棚も届く予定です。インテリアのポイントになるだろうなー!(笑)楽しみすぎます。
 来年も素敵な作品との出会いがたくさんありますように。私は未だフルカラー縦スクロールの漫画が読めない昭和の犬ですが、記号としての絵と構図、コマ割り、台詞を含めたネームで読ませる「漫画」という表現をとにかく愛しています。きっと生涯愛し抜くと思います。みなさまもどうぞ引き続き、良き漫画ライフを!


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庄司紗矢香&ヴィキングル・オラフソン デュオ・リサイタル

2020年12月25日 | 観劇記/クラシック・コンサート
 サントリーホール、2020年12月23日19時。

 プログラムはバッハのヴァイオリン・ソナタ第5番、バルトークのヴァイオリン・ソナタ第1番、プロコフィエフの「5つのメロディ」、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第2番。
 アンコールのラスト以外知らない曲ばかりでしたが、十分に楽しめました。もちろんそういうプログラムだから、というのもあるのですが、曲のタイプがみんな全然違っていてまったく飽きませんでしたし、何よりこの素晴らしいホールでの素晴らしい生の音…というのが沁みまくりました。
 庄司さんは脚を痛めているそうで、珍しく椅子に座っての演奏。オレンジのトップスに白のパンツ、アンクルストラップのある赤いヒールが素敵でした。立つと小柄で、オラフソンが北欧出身らしくめっさ長身なので背が半分くらいしかなくて、すごくキュート。でも演奏はアグレッシブでカッコ良かったです。
 いい舞台納めになりました。メリークリスマス!



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吾峠呼世晴『鬼滅の刃』(集英社ジャンプコミックス全23巻)

2020年12月23日 | 乱読記/書名か行
 時は大正時代。炭を売る心優しき少年・炭治郎の日常は、家族を鬼に皆殺しにされたことで一変する。唯一生き残ったものの、鬼に変貌した妹・禰豆子を元に戻すため、また家族を殺した鬼を討つため、炭治郎と禰豆子は旅立つ…血風剣戟冒険譚。

 最終巻をちゃんと予約して買った後輩が、すぐ全巻貸してくれました。
 話題を耳にし始めたのは、やはり去年でしたかね。テレビアニメの出来がいいんだってね、それで原作漫画も売れてきているんだってね、コミックスの重版部数がすごいんだってね、みたいな…で、今年になってアニメ劇場版も大騒ぎになり、最終巻発売に関してもたいそうなニュースになりましたね。
 以前テレビでやっていた総集編みたいなのを一応録画して見たんですけど、1本目は立ち上がり編みたいな感じで見やすかったのですが、2本目の蜘蛛の話は退屈して途中で再生をやめて録画ごと消してしまいました。でも絵は確かに綺麗だなと感心しましたね。とはいえ私は最近のテレビアニメをほとんど見ていないので(最近見たもので『推し武道』くらいか…?)、クオリティのレベルとかはわからないのですが…
 職場周りの評判としては、「おもしろいけど、そこまで売れるほどでは…」というようなものが多く、そういう意味でも今まで今ひとつ手が伸びなかったのでした。でも、貸してもらえるというなら一応抑えておかなくてはね、という感じで、フラットに読んでみた次第です。

 で、やはり、「おもしろいけど、そこまで売れるほどでは…」と思いました。主人公ががんばり、仲間たちと助け合い、敵と戦う。必殺技とか出ちゃう。泣かせる。笑わせる。キャラの立った登場人物が何人も出てきて、それぞれにドラマがあったりする。…そんな大枠だけで言えば、これまでにも似た作品はたくさんありましたし、もっと出来がよかったものだってたくさんあったと思います。主人公の在り方含めて特に目新しいと感じたところは私はなかったし、画力がむちゃくちゃ高いというわけでもないと感じました。よく残酷な描写が云々と言われることがありますが、そもそもリアルめな絵柄ではないしそんなに上手くもないので、生々しいとか怖いとか教育上良くないというほどのこともないのでは、と思いました。
 ただ、わりに展開がスピーディーでストーリーがさくさく進み、23巻という近年のヒット作では短めの長さできっちり完結したのはよかったんだろうな、と思いました。あとはアニメの出来が良くて原作コミックスに人気が波及したときに大人買いしやすい巻数だったことや、その後のコロナ禍のステイホーム期間にもネット通販など購入が進んだことも大きいのだろうし、今は売れるものがより売れる傾向にあるので、みんなが「そんなに人気なら読んでみるか」となってのこの部数だったんだろうな、とも推測されます。そういう読者は近年の、あるいは歴史的にすでにある似たタイプの作品は履修していないことが多いので、ほぼ初めて出会ったこの作品にすこんとハマったのでしょうね。
 それを揶揄するつもりはもちろんありません。テレビアニメを見ること、コミックスを買うこと、書店に行くこと、週刊漫画誌を買うこと、劇場用アニメを映画館に観に行くこと…をこの作品で初めてしたという人がたくさんいて、もしその一部でも習慣化されるなら、業界としてこんなにありがたいことはありません。何よりそこまで愛し夢中になりハマれる作品に出会えた喜びを人として、オタクとして寿ぎたいです。その作品が冷静に考えたら、長い目で見たら、そんなに傑作でも名作でもないかもよ、なんてことは言うだけ野暮です。
 でも作家さんには、次回作があるのだとしたらまたがんばってみていただきたいです。子孫とか生まれ変わりとかで落とすラストはアリだなとか思っていたのですが、まさかキメツ学園ってこのネタ振りだったの…!?みたいなところには才能を感じたので。ただ、1作で燃え尽きちゃう作家さんってのも意外に多いものですからね…と、嫌みな古参として不吉なことを言っておきます。
 個人的には、マイ萌えキャラが得られなかったのも、この作品がそんなに響かなかった原因かもしれません。私はメガネ参謀タイプとかノンシャラン天才ライバルみたいなキャラが好みなんですが、意外とそういうタイプのキャラがいませんでしたしね…あとは不憫な優等生というのも大好物なので、いっそ村田さんかな、とかなりました(笑)。←「(笑)」とか失礼だな…(笑)
 タイトルになるほど刀剣にものすごく意味があったわけでもないところもなかなかに不思議に感じました。また少し時間が経つと評価もいろいろ変わってくるのかもしれませんが、とりあえず私の感想はそんなところです。萌え萌えで大好きで世紀の傑作だと考えている方々には、申し訳ありませんでした…


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またまた少女漫画時評、というほどのものでもない、けれども。

2020年12月21日 | 日記
 先日また職場で、1巻なのでちょいと読んでみようかな、と手に取った以下の4タイトルが、いずれも8月とか9月に出た本で、今までどんだけ仕事その他いろいろテンパっていて手が回らなかったんだか自分…とちょっとしょんぼりしました。
 でも、たまたまいずれも白泉社花とゆめコミックスだったのですが、なかなかの発見がありましたよ…!


●梅ちゃづけ『JKくのいちは全てを捧げたい』

 「くノ一」では…というつっこみはまあやめておくとして、「花とゆめコミックスSpecial」レーベルで出た新書版コミックスですが、作品自体は白泉社のアプリ「マンガPark」で連載配信されているものです。著者初の紙コミックスの模様。最近はこうしたケースが増えてきましたよね。
 内容は、現代日本が舞台で、途絶える寸前の忍びの里から忍びの末裔たちを集めて忍術の継承教育をしている私立高校に通う、猿飛小花をヒロインとする「本格忍者アクションラブコメ」(帯のキャッチより)です。この「本格」はどこにかかるのかな…?(笑)小花は親がいない設定のようで、入学させてくれた「主様」に感謝し憧れていて、強くなりたい役に立ちたい、と思っている少女です。相手役は同じ里出身の幼なじみの優等生、でも学校が嫌いであまり登校していない虎之助、メガネ(大事な情報)。記念式典で主夫妻の替え玉をふたりで務めることになり、「任務中怪しまれたら終わり…/夫婦役を演じるのにスキンシップは不可欠」「スキンシップ…って?/どこまで?」「セックス」となって…という、まあ、TLですね。てかTLってまだ言うのかな…てかスキンシップって令和でも使われている言葉なのか…そもそも和製英語では……
 ついTLと言ったのは、絵柄がいわゆる小集講白のそれじゃないように見えるからです。もしかしてBLとか描いていた作家なのでは…? エロは楽しんで描いている感じがあって好感。ただ結合(オイ)場面2ページだけ妙につまらないのは何故なんだ…つまりなんにせよ、この程度の表現なら全然少女漫画範疇なんだけれど、絵柄のせいでそういうメジャー感がないのでした。でもラブコメとしてやっていることはとてもシンプルで、健やかですらあります。
 おそらくアプリ内で閲覧者数などが多く、それで紙でもコミックスを出してみるか、となったんじゃないかと思われます。でもアプリでタダで、ないしよくわからず結局はうっかり課金しているポイントとかチケットとかで読んでいるユーザーは、わざわざ紙コミックスを買ってまで追わないんじゃないのかなー。そして書店の店頭に「何かおもしろい作品ないかな」とやってくるタイプの読者は、白泉社棚にこの作品を見つけて手を伸ばすだろうか…FCかKCならともかく、という気がしてしまいました。そしてもしうっかり買っても、「…こんなエッチなの…ッ!」って拒否反応示して次巻から買わない、とかになっちゃわないかなあ…つまり、白泉社の「少女漫画」をすべて花とゆめコミックスで出すのはちょっと無理があって、こういうタイプの作品は別のレーベルを立てるかせめてもっと違う装丁で出すとよかったのではなかろうか、とちょっと感じた、という話です。それとも今は花ゆめコミックスもカバー表1のレイアウトを変えたので(あの正方形囲みは特徴的すぎました…)、背を見なければ花ゆめコミックスだとは判別しづらいから、新刊棚に平置きされていればけっこううっかり買われて満足され、ファンがつくのかなあ…
 作品自体は私はフツーに好きです。ベタだけどおもしろい。メガネだし(そこか)。続きも読みたい。でも売れてなくて紙で続きが出なくなっちゃったら寂しいな、私はアプリでは追っかけないだろうからな…という、話でした。
 あ、元が配信だからだろうけど、写植がデカすぎるのが個人的にはやや恥ずかしいです…いや老眼には優しくていいっちゃいいんだけどね、美意識としてね。幼稚に見えるじゃん…


●夢木みつる『この凶愛は天災です』

 こちらは「LaLa」の連載。前作を全10巻で完結させている作家さんなので、ちゃんとした人なのでしょう。でもこの新作はびっくりするくらい凡庸だな!?と感じてしまったのでした。
 悪行を尽くした四柱の悪神・四凶の力が帝によって勾玉に封じられる。その勾玉を赤ん坊の頃にうっかり飲み込んでしまったヒロイン・猫美が、帝の末裔の死によって肉体を復活させた四凶に狙われるようになる。四凶はいずれもタイプの違う美青年の姿で、力を奪うべく彼女の唇を奪おうとする…まあ、ベタベタです。でもベタベタすぎてなんの目新しさもない。四人のタイプ分けもめっちゃベタ。本当はこういうところに作家の個性、ぶっちゃけ性癖がにじみ出ないとこういうのっておもしろくならないと思うんだけど、ホントにコレでいいの?という気しかしません。でもあっさりアニメ化とかゲーム化とかするのかな…虚しいな…イヤすんごい当たってるんだったら単に私の見る目がないってことなので、すみません謝ります。
 ララ作品にしては絵柄に繊細さがないというか描き込みが少なく思えるのも、私はもの足りなく感じるのでした。すごく人気がある作家さんとかだったらホント重ね重ねすみません…


●漫画/烏丸かなつ・原作/兎山もなか『正臣くんに娶られました。』

 このコンビで他社刊で前作があるようですね。こちらはウェブコミックマガジン「Love Jossie」で連載配信中の作品で、やはり調子がいいので紙で出してみましたパターンのようです。
 母親とふたり暮らしのヒロインの知佳は、父親とふたり暮らしの正臣と幼なじみで、母親の帰りを待って正臣の家で三人で夕食を取る暮らしをずっと続けていた。けれど母親が亡くなり、よく知りもしない親戚に引き取られそうになり、「嫁に来る?/居場所がないなら俺と家族になれば?」と言われて「高校生の幼馴染みと交際0日でいきなり入籍!?」(帯キャッチより)…という、「高校生カップルのうぶエロ新婚物語」(カバー表4より)です。
 これまたベタベタのTLです。今どき「嫁」「入籍」という不正確な用語の使い方はよろしくないなと思いますが、逆に相手役男子がコンドームを着ける描写がちゃんとあるのが、今どきっぽくて素晴らしいなと思いました。口を切られた袋を描くだけですませるんじゃなくて、「ゴム着けるとこ見たい?」「え/…いや/…うーん」という会話があり、ヒロインが枕抱えて横たわって待っている間にベッドの端に腰掛けた男子がズボンを脱いで(大事。尻を描くとセクシーじゃないと思う作家が多いのか、男に半脱ぎでさせる作家が多すぎるよ…不精だし不潔だしファスナーとか当たって痛そうでヒヤヒヤする。そっちの方が全然セクシーじゃないんですけど…この作品では「…お尻だー」ってコマもあって、とてもナチュラルでリアルでよかったと思いました)装着しているコマが描かれるのです。手元自体はフキダシで隠してるんだけど、すごくいいことだなと思いました。前段で男子に「当たり前のことだとは思うけど/避妊は必ずするから」と言わせるのも、その前段にそもそもヒロインに「男の子任せはよくないか」とドラッグストアに買いに行かせているのも素晴らしい。時代は確実に前進しているのだな、とちょっと感動しました。
 でもこれも、背に掲載誌名を入れてあるとはいえ、花ゆめレーベルで出して大丈夫なのかしらん…といらぬ心配をついしてしまうのでした。


●池ジュン子『末永くよろしくお願いします』

 こちらはまた「LaLa」連載作品。キャリアがある作家さんのようですが、前2作がいずれも「オネエ」ものなのは何故なんだ…そういう性癖なのでしょうか。今回は、唯一の肉親だった父親を亡くした「残念美少女」輝が、親戚の「ツンデレ書道家」清水さん宅で暮らすことになり…という、これまたベタベタの少女漫画設定のお話です。
 目新しいのはヒロインのキャラクターかな。なんというか…いい感じです(笑)、よければ読んでください。で、ヒロインの方が相手役男子に惚れて押せ押せになる同居ラブコメなわけですが、これまた時代なのが「俺は成人で/輝は未成年だ」(「成人」に「おとな」、「未成年」に「こども」のルビ)という台詞がきちんとあること。ヒロインは「…子供?/私は結婚出来る年齢ですが」と言い返しますが、「屁理屈こねる所が子供なんだよ」と返されます。「7歳差なんて清水さんが/『やーいロリコン』/って後ろ指指される程度の問題です」「かなり痛手だよ」(トゲトゲフキダシ)というギャグめいたやりとりもありますが、ロマンスの単なる障害のための障害ではなく、コンプラとしてポリコレとして、またヤング子女である読者教育のためにも、とても正しいことだと思いました。ちゃんと時代は動いているんだなあ。
 しかし23歳でおじさん扱いされるんだから(イヤ女子高生からしたら確かにそうなんですが)男子もタイヘンですな…犬がいい味を出していて、学校側でもいい広がりの予感をさせて1巻が終わっているので、続きが楽しみです。
 これはとても正統派な白泉社作品、という気がしました。まあ私のこの感覚もだいぶ古いものなのかもしれませんけれどね…


 最近はこんな出会いがありました、というお話でした。


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