駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇雪組『CITY HUNTER/Fire Fever!』

2021年10月30日 | 観劇記/タイトルさ行
 宝塚大劇場、2021年8月8日11時、15時半、31日13時、18時(新公)。
 東京宝塚劇場、10月21日18時半、29日13時半。

 新宿駅東口の伝言板に書かれた「XYZ」は、裏社会のスイーパー「CITY HUNTER」こと冴羽リョウ(字が出ない…)(彩風咲奈)への依頼のメッセージ。真っ当な方法では解決できない困難な状況に陥った弱き者たちが、最期の望みを懸けて依頼してくるのだ。リョウが依頼を引き受けるのは、美女絡みか、「心が震えたとき」のみ…
 原作/北条司、脚本・演出/齋藤吉正、作曲・編曲/青木朝子、宮崎朝子(SHISHAMO)。85年に「週刊少年ジャンプ」で連載が開始された累計発行部数五千万部を超える人気コミックの舞台化。新生雪組トップコンビのお披露目公演。

 マイ初日雑感はこちら、東京公演初日に寄せた記事はこちら
 だいたいはこちらに書いたとおりで、マイ楽を終えても特に脚本・演出に関しての感想は変わりませんでした。東京では、舞台の設定年代には生まれてもいなかった後輩や、宝塚歌劇初観劇の後輩、そしてフランス実写映画版まで見ている原作大ファンの後輩も同伴しましたが、毎回「こんなんでごめんね、もっとよく出来ている素敵な作品もたくさんあるからね、また誘うから嫌いにならないでね…」と祈るような思いで、あまりの稚拙さに恥ずかしくて震えるような台詞や展開、演出に奥歯を噛みしめて耐えながら観ました。みんな優しくて、喜んでくれてはいましたけどね。寝てなかったし。でも仕事も忙しい中に来ているワケで、時計を見たりと退屈している様子も感じられました。わかるよ、感情移入してドラマに没入する作劇スタイルになっていないもんね、傍観者としてただ眺めるしかない作品だもんね、しかも途中ストーリーがワケわからなくなることもあるだろうし、でもどうせ大団円ハッピーエンドなんでしょってのはわかっているワケだし、だから早く終わらないかなーとは思っちゃうよね。とりあえず原作漫画、というかそのアニメ効果というかは絶大で、みんなちゃんと読んではいなくてもだいたいのキャラと設定は知っていて、みんな「海坊主、完コピでしたね!」とは喜んでくれることだけが私の救いだったかもしれません。そして「え? 海坊主だった人、ショーにもいました??」までがセット(笑)。ありがとうセンアガタ! というか生徒は本当に大奮闘だったと思います。お疲れ様でした、新生雪組お披露目、おめでとうございました。次作に期待しています。

 以下、大劇場新公の感想を。人数が少ないのでモブ芝居がうるさくなりすぎなかったということと、みんなけっこうニンが合っていて非常に上手く扮していて、とてもレベルの高い作品になったと思えたことが印象的でした。
 あがちん、上手い! そしてメイクの感じが好みでした。咲ちゃんはちょっとやりすぎているように私には思えたので。あとはもうちょっと歌にニュアンスが出てくるといいよね…いかにも真ん中向きのパワフルなタイプで、雪組にはちょっと珍しい気もするだけにこのままここでのびのび育っていってほしいと思うのだけれど、それだけにただそのまんまではなくちゃんと上手くなっていってほしいとも思うので。
 初ヒロインのはばまいちゃん、「メロディちゃん」って愛称もあるんだそうですね素敵! 主席で露出していた頃はいかにもバタ臭い容貌でさてどうだろうと思っていたのですが、このところ本公演でもメイクが上手くなって馴染みが良くなりましたよね。そして香という役は普通の娘役芸でこなすにはなかなか難しいかと思うのですが、別に素でやっていたとかいうことではなくてちゃんと演技として成立させていて、とても良かったです。小柄でスタイルが良く、どの男役さんとも映りが良さそうなのも強みですよね。今後にさらに期待できそうです。
 そしてあみちゃんのミックがよかったのよ! ちょっと前はなんかパワーが落ちてるかな?とか心配していたのですが、本公演の豊もなんせ芝居が良かったけれど、新公のチャラさと華、芝居っ気と座持ちが素晴らしすぎました。あと歌ね、ホント素晴らしかったですね! これまた小柄だけれどそれこそ雪組らしいスターさんでもあると思うので、あがあみ時代が今から楽しみです。
 そしてそしてはいちゃん槇村がこれまた上手くて美形で、惚れたよね! ホント新公主演ワンチャンさせたかったけれど、これからも大事にしてくださいお願いします…
 ハッチさんのところをやった一禾くんがまた良くて、海原像として私は本公演より好きでした。解釈の問題かな? あとかりあんジェネラルもすごく良くて、こちらはいつしか主演ワンチャンも願わなくなりましたが意外にいい味のスターさんになってきていて私は嬉しい…! そして同じく豊作の100期、ともかちゃんの冴子がまた良くて! みちるより知的でシャープで、持ち味の差なんだろうけれどやはり役作りとしてとても達者でした。りなくるの麗華も可愛かったよ! あと本公演はいちゃんのクール美形っぷりも戦慄ものだった北尾役の蒼波くんも、美形で震えましたよね…!
 ぶーけちゃんのサリナもクールでカッコよくて痺れました。そして『ほんまほ』で私がガン見していた華澄沙那ちゃんがアルマに大抜擢されていて、これがまたよかったです! 華があって、歌が上手くて。そして私は有栖ちゃんをあまり買っていないので、美樹は台詞が弱くてやはり残念でした。はおりんはさすがしっとり上手かったです。そしてひまりの怪演をどーする夢白ちゃん!?と思っていた陽子が、違う方向性で弾けていて上手かった! さすがでした。そしてこれまたすわっちの怪演が素晴らしすぎた政のところに入った聖海くんが、またものっそい上手くて唸らされました。ここのカップルがMVPか!?
 あみちゃんのところをやった話題の華世京くんは、私にはちょっと台詞が弱く感じられたかな…
 新公の担当は指田先生。セクハラ描写は大きくは変えられていませんでしたが、なんとはなしの配慮は感じられなくもなかったです。劇団には少しも早く人権教育とアップデートを要請したいです。


 ショー オルケスタは作・演出/稲葉太地。
 組ファンか、贔屓がいるかによっても印象は変わるかと思いますが、総じて「まあ悪くはないけど…」みたいな評判だったのではないでしょうか。稲葉作品ってそういうとこ、けっこうある気がします。短調の主題歌とか太鼓ドコドン!とか、ちょっと癖になる感じで好きでしたけどね。でもドン・ジョヴァンニ場面は、せっかくの新2番手スターのセンター場面としてなんかよくある感じで、あーさの見せ方としても目新しさがない気がしてちょっと残念でしたし、何場面も帽子が多用されすぎでスターの顔が見えづらいのも残念でした。ひらめちゃんがあまり素敵なドレスを着ている感じじゃなかったのも…プロローグの鳳凰感もよかったけど、ふたりで銀橋に残る場面からは脱いでくれると信じていましたよ…がっかり。あとデュエダンのお衣装も袖が邪魔でした。娘役の腕は出してナンボだと思うのです。71人ロケットとニューファイヤー場面はよかったかな、そのあとのフィナーレ群舞も素敵でした。
 次の別箱はまた観てみないとなんとも…という感じだし、その次の本公演もこれまたいい方に転べばいいんだけど…とやや不安ではありますが、とりあえず咲ちゃんは真ん中に置いて安心タイプだし、なんでもできるひらめちゃんがきちんと隣に添って、あーさあやなあがちんがいて、ここら我らがソラカズキが加わるというのですから楽しみしかありません。新生雪組、改めてお披露目おめでとうございました。




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『ドン・ジュアン』

2021年10月29日 | 観劇記/タイトルた行
 赤坂ACTシアター、2021年10月25日18時。

 雪組版の観劇記はこちら、初演はこちら
 今回は初演キャストからマリアが真彩希帆に、アンダルシアの美女が上野水香に替わっただけ…なのかな? 日和ってプログラムを買わなかったので…すみません。
 内容をいい感じに忘れて劇場に出向いたのですが、入場したら幕はもう上がっていて下手に塔、奥に斜めになった赤い大地…みたいなセットが出ていて、「そうそう、そうだった」と思い出してきてテンションが上がり、前回観劇時よりお席が断然良かったこともあって、実に楽しく観てしまいました。やっぱり好きな作品です、映像化されるそうなので買っちゃおうかなと私にしては珍しく揺らいでいます。
 台詞や演出などもちょいちょい細かく変わっていたようで、ラファエルがマリアに仕事を辞めてもらいたがっている感じなんかはほとんどなくなっていたようですが、それはまあそれでもいいのかな、まあどっちでもいいかな。ただやはり主人公がここまでグレている理由の説明は、何か欲しいなと思いました。母親のエピソードが全カットだったとしても、そもそも父親が母親に冷たくて家庭や結婚、恋愛、女性というものに絶望して育った…とかでもなんでもいいから、何かないと、いくらイケメンだろうとなんだろうと観客は「どうしたオイ(^^;)」ってなっちゃうと思うんですよね。美形でフェロモンもあふれていればどんな女からも総モテ、というのはぶっちゃけ男性作家の幻想で、多くの女性観客からしたら鼻で笑いたくなる設定だと思うのです。それはだいもんや藤ヶ谷くんがいかにカッコよくやってくれようと同じことだと思います。顔や身体だけでも惚れる女もいるけれど(そしてそれはまったく悪いことではないのですが)、すべての女がそんなわけはない。でも今、すべての女がそうだとこの作品では表現されている(マリアは別格の、「おもしれー女」枠の存在なので)。エルヴィラもイサベルもそれこそひとからげです。それには、そんなこたあるかい、と言いたくなってしまうわけです。彼の孤独に惹かれたの、なんてのはあまりにベタベタですが、でもないより断然いい。なんか作ってくださいよ理由を。美形じゃないからぼくちんモテないんだ、みたいな男性作家の僻みを乗っけるんじゃない、と言いたいです。
 その他、総じて感想は前回と同じです。足りないところは変わらず足りていないが、おもしろいところは本当におもしろくて、私は好きだ、ということです。藤ヶ谷くんは芝居歌が上手くなっていて、歩き方も良くなっていて、あいかわらずタカラジェンヌに比べたら脚の長さには不満はあるんだけれどそれは些末なことであり、とても良い座長芝居をやってのけていたと思います。あと、これで初めてミュージカルなるものを観る、というたとえば藤ヶ谷くんファンの若いお嬢さんたちにも、舞台の楽しさというものが伝わる出来なのではないかな、と思いました。
 そしてもちろんきぃちゃんマリアがとにもかくにも素晴らしかったです! まずラファエルと一緒にニコニコ出てくるのがいかにも可愛らしくてこざっぱりしていて、その後はけっこう長く出てこなくて話も進まないのでジレジレさせられるんだけど(話をまったく知らないで観たら「さっさと話を展開させろよ」って私は怒って暴れるくらいの構成の下手さなのではないかとは思う)、あみちゃんの素晴らしさやけっこう多彩なナンバーのおもしろさを楽しんでいると(やはりそもそも楽曲が素晴らしいですよね…!)けっこう保ちました。で、工房の場面にマリアが再度現れて、ノミを打つ音がドン・ジュアンの胸をえぐるとき、私たち観客の胸もまた激しく奮わせられるのでした。きぃちゃんマリアの艶やかさ、華やかさ、輝きには、それほどのパワーがありました。
 やはりミュージカルのヒロインって綺麗で可愛くて美しくて歌が上手くて芝居ができて華がないとね!という、本当ならごくごくあたりまえであるはずのことを、しみじみ痛感させられる瞬間でした。残念ながらそういう女優は現実にはとても少なく、我々ファンはどこかしら目をつぶって、我慢して補完して作品を観ているようなところがままあるからです。でもきぃちゃんにはそんな心配は要らないのです! 今後ありとあらゆる大作ミュージカルのヒロインを端からガンガンやってほしい!! 若い時分でないと似合わない役、というものも残念ながらあるのだし。でもまだアレもコレもまだまだ間に合います。渋いストプレとかはそのあとでいい、20年後くらいでいいからね。はー、楽しみすぎます。オファーがそれこそ薔薇の雨のように彼女のところに降り注いでいるのではないかしらん、てかそうでなきゃ業界ゴロ何してんねんって話です。初日のこの瞬間はまさしく、世間に真彩希帆が見つかってしまった!という瞬間になったのではないかしらん、と想像します。それくらい、飛び抜けていました。
 でももちろん作品から浮きすぎてしまう、ということはない。ショーも引っ張れる元宝塚歌劇団の娘役トップとしてのスターオーラは、上手く調整していたと思います。でもマリアの天然さや不思議ちゃんさ、いわゆる「おもしれー女」感を表現して、実にちょうどよかったです。マリアは他の女たちと違ってドン・ジュアンの顔や身体にすぐさまメロメロになることもなければ、稀代のプレイボーイとして恐れ怯えるおぼこいカマトトぶりを見せることもなく、ただ彫像のための取材として、騎士団長の顔についての話をしたがる、一風変わった女なのでした。ドン・ジュアンからしたら、罰は免れたとはいえ殺した男(しかもその霊につきまとわれている男)についてアレコレ聞かれるわけで、そら不愉快だし不可解だし、なんじゃこの女ってなものです。そんな違和感から始まるとまどいとときめき、恋…ベタですね。でも恋って、物語ってそういうものですから、いいのです。
 騎士団長がドン・ジュアンの相手としてマリアに白羽の矢を立てたのは、彼女が女だてらに自分の彫像なんぞを作ろうとしている、それこそ「おもしれー女」だからなのでしょう。このときまで彼女は、ラファエルとの幼なじみの延長のような恋の経験はあったにしても、あくまで芸術家でした。けれど騎士団長の呪いの輪にドン・ジュアンとともに巻き込まれて、彼女もまたただの恋に生き恋の喜びに酔う女になってしまう。彫像は忘れ去られ、放置されます。でもそれでいいんですよね。恋か仕事か、なんて二択ではなくて両方取るのがいいってのももちろんある一方で、片方だけになったってもちろん全然かまわないのです。当人がそれで幸せならね、それが人生です。人生の一時期です。ラファエルには仕事を辞めてくれと言われたら不満顔をしただろうマリアも、ドン・ジュアンと出会ってからは自分から仕事を忘れる、そういうことは別にあってもいいのです。今や傍目にはマリアはただのそこらの女と変わらなくなり、だから周りの女たちはやっかむわけですが、恋に夢中のドン・ジュアンはそれに気づかない。それでいいのです、恋ってそういうものだからです。
 けれどラファエルが戻ってきて、決闘騒ぎになったときに、恋を得られないとわかりながらも命を賭けられるラファエルを見て、ドン・ジュアンはマリアへの恋以上に、人間や人生を愛することをやっと、知る。だから、自らその証として、死ぬ…
 大山鳴動して鼠が出ないような話で、多くの人間にはほぼ自明なことをこうまでしないと学べなかったドン・ジュアンの哀れさに、改めて涙する作品です。そして女たちは…エルヴィラは、頭を下げて修道院に帰るしかないのではないかしらん。でもきっと修道院は受け入れてくれるでしょう。この時代のこの階層の女たちにとって生きる場所は多くはありません、それはもう仕方がないことなのでした。そしてマリアは、工房に戻るのでしょう。そしてドン・ジュアンの像を作るのかもしれません。この先ラファエル、あるいはまた別の新たな男が彼女の人生に現れるかはまた別の問題で、騎士団長の呪いも解けて以降は彼女はもともとの「芸術家」に戻り、もしかしたら以前よりはいい作品を仕上げるようになるのかもしれません。それは恋の経験のおかげかもしれない、でもそうではないかもしれない。彼女はまた違った形で幸せになるのかもしれない、ならないのかもしれない。ドン・ジュアンはある種勝手に、というか騎士団長にある種導かれて愛に目覚め、そして死んでいったのだけれど、残されたマリアの人生は続くのであり、それはまた別の彼女の物語になるのです。巻き込まれて大迷惑、という見方もあるだろうけれど、生きてさえいればまだもっといいことがあることもありえるので、やはりこれでよかったのだと思います。後追い自殺とか、無意味だからしちゃダメなのよ?
 むしろ引きずるのはドン・カルロの方かもしれません。再演で時代が進んでいることもあり、彼は要するにドン・ジュアンをそういう意味で愛していたのである…とした方がわかりやすいしハマるし深まるのでは?とも感じました。あいかわらず中途半端な「友人枠」だった気がしたので…
 まあでも役者は全員素晴らしかったですよね。いい舞台でした。
 あ、エルヴィラは不満だったかな。歌唱が不安定だったし、演技も演出も、このキャラクターに関して何をどう示したいのか私にはちょっとよくわからなくて、観ていて気に障りました。単なる愚かな女のひとり、であるはずはないと思うのだけれど…普通はマリアになれないので、一般女性を代表するのはむしろ彼女のはずなんだけれど…ここがこう中途半端だと、この男性作家の、ひいてはこの作品世界の女性観はどうなってんねん、までいって不愉快なのです。といってイサベルが女神枠、みたいなこともないわけだしさ…もう次はエルヴィラはあみちゃんがいいなー、上手いぞきっと。
 そして本当に騎士団長ってお役の大きさと、この配役の良さを痛感させられましたよね。彼はまあ、自身とか娘の復讐のために動いている存在ではあるんだけれど、ある種の神でもありますよね。ドン・ジュアンを、つまり人を愛に導いて、去っていく…
 もともとのオペラにはあまりそういう要素を感じたことがないので、やはり上手く現代版になった、おもしろい、興味深いミュージカルだなと思いました。次は主演を変えて、再演され続ける、愛される作品になるといいなと思いました。もちろんタイプは違うけれど、たとえば『モーツァルト!』とかよりおもしろくありません…? あ、これは個人の嗜好による好みの問題か…
 ところでちょうど宝塚歌劇星組御園座公演『王家に捧ぐ歌』の振り分けと主な配役が出たところでもあり、もうこの演目を一生分観た気でいる宙担友と、「どうせならこっちゃんドン・ジュアンとひっとんマリアの『ドン・ジュアン』が観たかった」とちょっと盛り上がりましたよね…ぴードン・カルロのかりんさんラファエル!? ときめきしかなくないですかね!?!? あのすんばらしかった喧嘩騒ぎの最中のソロと決闘の殺陣がかりんさんにできるとは私には思えないんですけどね、なんせぴちょんくんを手に乗せるのが宇宙一似合う男役ですからね…!(煩悩で大混乱)
 てか少なくともこっちゃんで『1789』再演はやるべきですよね、こっちゃんはワタルやチエちゃんとは違うことが出来る大スターなのよ? あと、一度外部に持っていった作品をまた宝塚でやっていくことも大事なことだと思うのですよ。『スカピン』なんかもそうですが。まずはオリジナル・ミュージカルをがんばっていってほしいのだけれど、一方で輸入ミュージカルをどう翻案し根付かせていくか、というのもなかなかの課題だと私は考えているので。ただOGを輩出するだけではなく、ね。
 そうやって、いいミュージカル、舞台、物語が広げられていくと、一ファンとしては嬉しいな、と思うのでした。

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宝塚歌劇月組『川霧の橋/Dream Chaser』

2021年10月28日 | 観劇記/タイトルか行
 博多座、2021年10月11日15時(初日)、12日12時、23日16時。

 江戸隅田川の領国に近い茅町に「杉田屋」という大きな大工の棟梁の家があった。棟梁の巳之吉(夢奈瑠音)とお蝶(夏月都)の間には子がいなかったこともあって、子飼いの職人の中から次の棟梁が決められることとなり、幸次郎(月城かなと)、半次(鳳月杏)、清吉(暁千星)の中から幸次郎に白羽の矢が立つ。照れ性で口も悪いが心優しく、職人気質で周囲からの信頼も厚い幸次郎。その後見に着くことになった兄弟弟子の半次は分を弁えるが、我慢ならない清吉は上方へ出る決意を固めて…
 原作/山本周五郎、脚本/柴田侑宏、演出/小柳奈穂子、作曲・編曲/寺田瀧雄、音楽監督・編曲・録音音楽指揮/吉田優子、振付/尾上菊之丞、若央りさ。90年に当時の月組トップコンビ剣幸・こだま愛の退団公演として上演され、好評を博した日本物の待望の初再演。新生月組トップコンビのプレお披露目公演。

 初日雑感はこちら
 初日は2階席前方どセンター、2回目は1階席後方どセンター、マイ楽は3階席上手端から観劇しました。マイ楽はなんと初演主演コンビのウタコさん、ミミさんご観劇で、カテコで少しも早くご紹介したくてたまらないとシッポ振り振りワンコ状態だったれいこちゃんが見られて、「ブラボー!」と言ってくれたウタコさんの声が聞けて、「ブラボーいただきました」と喜ぶれいこちゃんの笑顔が見られて、幕が降りたあとも万雷の拍手で客席に会釈しながら退場してくれるウタミミの姿がちらりとでも見えて、幸せな観劇となりました。
 今、原作のひとつである『柳橋物語』を読み始めているのですが、この作品をああしたか、と唸らされることしきりです。そして舞台の台詞も素晴らしいですが、原作の文章はあたりまえですがさらに素晴らしく、もちろんわからない言葉や知らない言葉、習慣や風物など出てきて勉強になるのも楽しく(文庫の註はとても丁寧です)、こういうことも全部観劇の醍醐味だよなあ、と思ったりします。小柳先生の今回の演出は初演リスペクトで大きな変更はほぼほぼなく、橋の装置が新調されて盆が回って全部出るようになったこともむしろいい方に出るものだったと思います。柴田作品の新演出が任される演出家は固定されてきている気もしますが、怖いけどヨシマサとかにも一度担当させてみるといいと思いますよ、そして勉強してよヨシマサ…と思いました。そうすれば自作のあのあまりにも雑な台詞にも好影響が出ることでしょうよ…ともあれ、今回は小柳先生の確実な、誠実な、しっとり丁寧な演出が生きて、博多座の雰囲気にもハマり、いい公演になったのではないかと思います。私はこのあとライブ配信も見る予定でしたが、千秋楽のつもりでいたら土曜日の回だったのね…別の観劇予定と被ったわ、残念。映像ではどう見えるのか、見てみたかったんだけどなあ…ともあれよりたくさんの人に見ていただき、愛されていく作品に仕上がるといいなと思っています。

 十兵衛先生にも思ったけれど、幸次郎みたいないい男もなかなか造形できないものですよ。そりゃ口下手、というか口にしなくともわかってもらえるつもりでいたこの男が悪い。こういうの、ホント男の悪い癖です、甘えです。
 でも、総じて本当にいい男です。縁談が断られてからの未練がましさとか、でもお光(海乃美月)に他に想い人がいると知ってヘンに逆恨みしたりしないでちゃんと退くところ、でもつきあいは続ける優しさ温かさ、でもそのつきあいも控えたいときっちり言われてしまってからのしょんぼりしつつも潔く弁えるところ、けれど火事のピンチとなれば駆けつけるところとか、ホントたまりません。火事の際も、最後は川に流されちゃったけどそれまではやはり頼りになったし、その後も杉田屋再建に大車輪で働く一方でお光の行方を懸命に捜し回ったことでしょう。そして浮き世の義理で迎えることになった嫁に対しても、お光を想ってときおり視線を宙に浮かばせることはあったにしても、それを悟られぬよう、ちゃんと愛し慈しみ大事にしたんだと思うんですよね。だからおよし(結愛かれん)は何も知らないままに、ただ幸せに、けれど健康に恵まれずに早死にしていったのでしょう。そして清吉が死んだとなって、お光に再会して、つい熱い想いを再び口にしちゃうんだけれど、あとはずっと待つよと優しく、潔く言う。そして毎月15日に橋に行く…今までも、これからも、きっと「ご妾宅」なんざ持つことのない男でしょう。小りん(晴音アキ)に対しても、あくまで社交の場での座持ちのいい頼れる芸妓さん、ってなもんで、その想いに気づくことなぞてんでないのでしょう。だがそこがいい、それでいい、それが幸さんなんですよね。本当に素敵なキャラクターです。
 それからするとヒロインのお光はキャラというよりはその流転のドラマに魅力があるキャラクターで、親を早くに亡くしたわりにはヘンに大人びることなくおぼこく育ったところから、清吉にがつがつアプローチされて舞い上がり、その返事になかば縛られるようにしてのちの変化の波を被り、愛も恨みもやっかみも絶望も後悔も知って、友達の死を見送り、そして橋へ向かう…幸さんとなら、蛍を捕ってとせがんだ、無邪気な子供の頃に帰れる。そしてこれからの人生も共にしていける…見事な一代記です。トップ娘役のとってつけたような銀橋ソロ、なんてものとは全然違う一場面、大曲もあるのも実はなかなかないことで、素晴らしいお役です。
 幸さんの後見ふたりのキャラ立てとその後のいくたても素晴らしい。身分違いとわかっていても止められない思慕と、当てつけで横からさらうような恋のかすめ方と。報われない、という僻みからますます転落していく清吉に引きずられるように堕ちていく半次が、それでも最期まで気遣ったお組(天紫珠李)の、乳母日傘のお嬢様からの転落と昇天も。夜鷹のお甲(麗泉里)や、火事で記憶をなくしたお光を面倒見る家の少女お秋(詩ちづる)まで、もちろんお姉さんチームの含めて、素晴らしい女性キャラクターたちの数々。そして杉田屋ボーイズ(笑)始め、鳶も飛脚も町役も、屋台の主人まで、男性キャラクターたちも多士済々で素晴らしい。
 火事のアバンとお祭りのプロローグという始め方から、半次と清吉の最期を見せないところ、そして「もう、どこへも行くな」と素晴らしいカゲソロまで、構成も完璧だと思いました。
 生徒たちにも勉強になり、また携われて役者冥利に尽きる、名作名上演になったかと思います。観られて本当によかったです。観劇後のお友達たちとのごはん、も戻ってきた博多の街も本当に楽しかったです。またちょいちょい博多座公演がされますよう、祈っています。


 「-新たな夢へ-」とサブタイトルが追加されたスーパー・ファンタジーは作・演出/中村暁。
 ま、やっぱり、特にライフあたりとか、まるっと新場面をひとつくらい作ってくれてもよかったのでは?とも思いますが、まあそれは次の本公演お披露目オリジナル・ショーでのお楽しみに、ということにしておきましょうかね、という感じでしょうか。よりれいこちゃん仕様のお衣装、歌、ダンス、場面などが用意されることでしょうしね。マイ楽の2階席から観るプロローグ衣装なんかはやっぱり「あ、この人、美貌お化けだけどスタイルお化けではないんだったっけそういえば」とかちょっと思ってしまって残念だったので…でも、なんせ真ん中に置いてまったく危なげないトップスターさんだと思うので、これからもいろいろな期待をしています。バウ組合流も楽しみです。改めて新生月組プレお披露目、おめでとうさございました。
 そうそう、2階席からはフォーメーション後列の生徒も被らずよく見えるので、プロローグから詩ちづるチェックが楽しかったのも印象的でした。アンビエンテもいい位置にいたし、ミロンガはさすがに見ている暇はなかったけど、娘役群舞のボニータに入れたのもすごく嬉しかったです。スタイルいいし、表情の作り方の特徴を覚えてしまったのでわりとすぐ見つけられるようになってしまいました。星組に行ってもがんばるんだよー! 応援してるよー!!
 そしてみちるが加わって、さらに楽しみになりそうです。
 まずは千秋楽まで、無事に、事故なく楽しく元気に、上演されますよう祈っています…!!!





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町田粥『吉祥寺少年歌劇』(祥伝社フィールヤングコミックス全1巻)

2021年10月25日 | 乱読記/書名か行
 吉祥寺少年歌劇は男子のみで構成される伝統の歌劇団。入団へは付属の音楽学校への入学が必須である。81期生の進藤瑞穂は男役に憧れて入団したのに、娘役と判定されてショックを隠せずにいた。主席候補の白井寿に娘役への不満をこぼすと「じゃあ早くやめろ」と冷たく言い放たれてしまい…自らの理想と、思いどおりにならない現実との間で、己のすべてを懸けて夢の舞台を目指す少年たちの青春輪舞曲。

 よしながふみ『大奥』もそうでしたが、男女はそもそも非対称なので単に逆転してもいろいろとねじれが出て、それがおもしろい、ということがあります。
 この作品でも、「西の宝塚、東の吉祥寺」ということで、男子だけが出演できて男子が男役も娘役もやる吉祥寺歌劇というものがある、という設定になってはいますが、ファンは宝塚歌劇同様に女性が多いようで、歌舞伎の女形同様に娘役がいじらしいと人気もあるらしいけれどトップスターは男役で、宝塚歌劇同様に男役偏重であるようです。そしてこの作品も少女漫画ですし、主に女性読者が読むものでしょう。
 でも、集まった若者たちが、いろんな夢や理想や希望がありながらも、自分の身体や特徴や個性の壁にぶつかりながらももがき、成長し、何かを得ていく…という青春模様、という意味では変わらない…のかな。匂わせ同性愛みたいなものが特に扱われていない点も好感が持てました。この設定ならBLっぽくすることは全然簡単だと思うんですけれどね。
 逆に明らかに現実の宝塚歌劇と違う設定としては、音校の寮が予科生は6人か8人くらいの大部屋なこと、男役志望の生徒はネクタイ、娘役志望の生徒はリボンタイを選ぶ儀式があること、卒業のときには銀の鈴が贈られること…でしょうか。これらの設定もなかなか上手く生かされていて、なかなかおもしろかったです。
 1話完結のオムニバスで、メインキャラの中から毎回順繰りに視点人物が変わるスタイルですが、一応瑞穂が主人公だと思うので、もっと全体の尺があればそれがより掘り下げられ確立できたんだろうな、とは思います。現状では、擬音の描き文字と描き文字台詞が見分けづらかったり、その視点人物のものではないモノローグが挿入されることがあったりと、漫画としての下手さのために読みづらかったり、読者がキャラに感情移入しづらかったり、この物語、エピソードをどう捉えていいのかととまどわせる部分が多いなと感じました。人気がなくて巻いたのか、そもそもハナから1巻本の予定だったのか…でも最終話は明らかに拙速にすぎた気がして、本当にもったいなかったです。メインの物語は音校時代ということだったのだとしても、劇団に入ってからもいろいろあるはずだし、組替えもトップコンビ結成ももっといろいろあったろうし、何よりコロナで卒業の大千秋楽が無観客配信なんて、我々ファンでも消化しきれていないくらいの頃に描かれたはずで、物語として落ち着けるにはちょっと生々しすぎたし、盛り込みすぎ、駆け足すぎな気がしたのです。
 とにかく全体に、せっかくの設定なんだからもっとねちねち読みかったなー、と思う作品でした。でもおもしろかったです。違う性別を演じてみたい、違う人間になって違う人生の物語を生きてみたい、それができる技能を手に入れたい、発揮したい、そしてそれを人に観てもらって喜ばれたい…という欲望には性差はないんだな、おもしろいなと思いましたし、でも女性が男役を目指すことと男性が娘役を目指すことの苦労その他はけっこう違うんだろうし、女性が娘役で苦労することと男性が男役で苦労することもまた微妙に違うのでしょう。そしてそれぞれ不思議な偏見や思い込みやあるいはこだわり、醍醐味があって、でもそれでかかる魔法がその舞台にはあるのでしょう。それに魅せられて、私たちファンは今日も劇場に通うのでした。

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モーリス・ベジャール・バレエ団『バレエ・フォー・ライフ』

2021年10月22日 | 観劇記/タイトルは行
 東京文化会館、2021年10月17日14時。

 振付/モーリス・ベジャール、音楽/クイーン、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト、衣裳/ジャンニ・ヴェルサーチ。
 1991年にフレディ・マーキュリーが、92年にジョルジュ・ドンがともに45歳で亡くなっている。そのふたりの天才へのオマージュとして、クイーンの曲と、同じく早逝したモーツァルトの曲に振り付けた作品。全1幕。

 映画『ボヘミアン・ラプソディ』くらいしか知識のない私としては、ちょっとよくわからない作品だったかな…という印象です。歌詞を踊っているわけでも、楽曲ができた頃のバンドの歴史を踊っているようでもなかったようなので。その曲で何が表現されているのか、この曲の順番、連なりで何を表現しているのか、上手く感じ取れなくてちょっと退屈してしまいました…
 『Radio Ga Ga』で少年のような役?を踊ったダンサーが素晴らしく見えましたが、これがキャスト表にあるリロイ・モクハトレでしょうか? この場面には他にも何人か出ていたのですが、キャスト表にはこの名前しかなく、自信がありません、すみません。
 最後にビデオを長々と流し、カンパニーと一緒に見守る…というのも、そこに知識や思い出がないとなんだかなあとなってしまうんだなあ、と思ったりしました。「ショー・マスト・ゴー・オン」でカンパニー全員が一歩ずつゆっくり前進しながら暗転…というラストは素敵だなと思いましたが…
 でも、わかる人、刺さる人にはもっと違う見え方がしたのでしょう。残念です、すみません。



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