駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

ピエール・ルメートル『その女アレックス』(文春文庫)

2015年05月31日 | 乱読記/書名さ行
 おまえが死ぬのを見たい、男はそう言ってアレックスを監禁した。檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…逆転を繰り返す物語、「このミステリーがすごい!」2015年海外編第1位。

 冒頭は、誘拐された女性と、誘拐事件を担当する刑事の話、に見えました。普通のミステリー、犯罪小説だなあといった趣で、どこがそんなにこのミス一位?と思いつつも読み進めていったら…
 二転三転、まあすごいこと。
 最終的にはけっこう凄惨な物語であり、そのわりにはややあっさりした話の締め方だったかなという気もしましたが、ストーリーテリングのスリリングさに酔う、楽しい読書となりました。
 ところでカミーユの妻の誘拐事件に関しては結局のところ詳細が描かれなかったと思うのだけれど、それでいいのかしらん? このあたりがつまびらかになって、これがアレックスの物語だけでなくカミーユの物語でもあったとなるともっとよかったと思うのだけれど。もちろん現状でもその側面はあると思うのだけれど。
 ともあれルイ、アルマンそしてル・グエンとのコンビネーションのストーリーラインもよかったな、素敵でした。
 カミーユを主人公にした作品は他にもいくつかあるそうな。これを機に翻訳されるといいな、楽しみです。

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桜木紫乃『それを愛とは呼ばず』(幻冬社)

2015年05月27日 | 乱読記/書名さ行
 いざわコーポレーション副社長の伊澤亮介は社長である10歳年上の妻・章子が誕生日の夜に不慮の事故に遭い、社内で孤立する。新潟を追われ、逃げるように東京に向かい、北海道のリゾートマンション営業という新たな職を得る。その夜、銀座のグランドキャバレーで白川紗希というホステスと出会うが…

 直木賞受賞作を含め何作か読んだのですが今まであまりぴんとこなくて、好みのラインじゃないのかな?と思っていたところでしたが、これはおもしろく読みました。好きじゃないけど。
 登場人物が全然好きになれなくて、でもわざとそう書いているのもわかってて、話がどうなるのか興味があってそこはおもしろく読んで、結果なるほどそうきたかと思い、そこで描かれていたものはとても文学的でとてもよかったと思いました。好きじゃないけど。
 でもこの作家は変に娯楽的なものを書こうとするよりこういう方がいいんじゃないかな。イヤ今までもどういう売られ方をしてきたのかとかきちんとは把握していないのですが、なんとなく、イメージで。

 唯一好きなキャラクターは章子かな。この人は愛を知っている、愛することを知っている、何が愛と呼ばれるものなのか、何を愛と呼ぶべきなのか知っている人だと私は思いました。
 それに比べると亮介はズルい。自分の章子への感情を愛と呼べないなんて、潔くない男だな、ケッと思いました。
 さらに紗希。もっと不幸な、愛に恵まれない育ち方をしても愛を学んで立派に育つ人間っているものなのになあ…空っぽな美貌を持つこんなキャラクターを造形してしまうんだから作家って怖い。
 全然好きになれない男と全然好きになれない女、でもいるだろうし絡むこともあるだろうし、こうなってしまうこともあるのでしょう。彼らはこれを幸せと呼ぶのかもしれません。私は他人だから余計なお世話かもしれないけれど、でも普通それは幸せとは呼ばれない。法律家が彼女の行為を愛と呼ばないのと同じで。
 人はどうやって愛を学ぶのでしょう、どうやって教えるのでしょう。親の愛がすべてだなんてことはないはずだし、なんとでもなるはずなのに、ごくわずかかもしれないけれど、こういうふうにこぼれ落ちて愛を知らないまま大人になってしまう人間がいる…悲しいことです。その悲しさを描いた、いい小説だと思いました。再三言うけど、好きじゃないけど(^^;)。



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宝塚歌劇花組『カリスタの海に抱かれて/宝塚幻想曲』

2015年05月25日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2015年3月16日マチネ、4月4日マチネ。
 東京宝塚劇場、5月19日ソワレ。

 地中海で最も美しいとされる島、カリスタ。フランスの統治下にあるこの島に、新任の司令官が降り立った。その男の名は、シャルル・ヴィルヌーブ・ドゥ・リベルタ(明日海りお)。カリスタ島に生まれながらもある事情によってフランスで育ち、時を経て再びこの島に戻ってきたのだった。その日、カリスタでは「アルドの命日」を迎えていた。28年前、フランスの奴隷のように働かされていた島民たちを救おうとアルド(高翔みず希)という男が独立運動を起こし、処刑された日だった。アルドが処刑された日に生を受けたロベルト・ゴルジ(芹香斗亜)はカリスタ島独立を目指すグループのリーダーとなって、フランス軍に抵抗を続けていたが…
 作/大石静、演出/石田昌也、作曲・編曲/手島恭子。

 初見が初日開いてわりとすぐで事前にあまりいろいろな評判を聞いていなかったのと、わりとハードルを下げ気味にして観に行ったためか、意外や私は楽しく観てしまいました。その後も間遠に観ていることもあり、もちろんいろいろ難点があるのは感じつつも、ウン特には悪くないよね!という感想で、早々にこの回数で見納める私です。
 きっとこれ以上観ると粗が目立ってこんな私でもイライラすると思うし。今これ以上この組にかけるお金も時間も情熱も今の私にはないんだな、というのもあります。
 そう、すべては残念ながら愛とか情熱の差だと思います。私が『美しき生涯』についてあんなにあんなに語ったときとの差はそれです。とりあえず今確実に言えることは、大石先生にはもうこれ以上、宝塚歌劇の脚本を依頼する必要はない、ということです。大金を払って(イヤ原稿料がいくらなのかとか相場や座付き作家への給料に比べて高いのかどうかとか知りませんが)ネームバリューを買っているつもりなのかもしれませんが、ももええやろ。私は映像の大石作品はもう少し楽しめてきた記憶があるのですが(もともとは舞台出身の作家ですが、その頃のお仕事を私は知りません)、こと宝塚歌劇に関しては彼女はファンかもしれませんが書いた脚本は素人の域を出ていないのではないかと思います。言いすぎかもしれませんけど。あと単純に古い。なら新人を自前で育成した方がいいですよ劇団さん、ずっとそうしてきたのだから。
 仮にもプロがよくもまああんなに臆面もなく露骨で芸のない説明台詞を書くよ…と絶句させられるのは、もういいです。No Thank You。それだけは劇団に投書しておこうかな…それくらいの情熱と義務感はあるんですよ宝塚歌劇に対して、私はね。迷惑でもね。でも今の花組に対してはわりとライトなファンなのですすみません。
 なので、細かいことを考えずに観られれば、なかなか楽しい点も多い作品だと私は思いました。
 まず、セリ上がってきて振り返ってライト当てられて歌い出す主人公というベタさがとても似合う、みりおカルロの爽やかさがたまりません。とてもわかりやすい。
 今さら歯でも矯正しているのか舌でも痛めたかまさか何かで麻痺が出たとかじゃないでしょうねってくらい口が回ってない(台詞を噛む、というレベルではない)のが心配ではありますが。というか台詞が聞き取れないこと甚だしいのがけっこう問題だと思いますが。でも歌詞だと大丈夫なんですよね。
 歌は朗々としていて安定の歌唱力、聞いていて気持ちがいいです。故郷に帰ってきて嬉しいのね、うんうんわかるわがんばってね、と素直に思える輝きがあります。
 話が進んでくると、えっフランスでどういう育ち方したの?とかどう出世してどう邪魔されると今この歳でこの立場で赴任して来るの?とかそういったもろもろに対して屈託なさすぎないこの人?とか28歳で初めて愛したとか言ってるけど大丈夫この男?とかいろいろいろいろ疑問が沸いて出はするのですが、とりあえず全力でスルーすることにすると、なんとかならないこともないのです。すごいなあみりおのDT力!!!
 そしてかのちゃんアリシアがまた私には可愛らしいヒロインに見えました。『エリザベート』エトワールではさんざん叩かれましたが(そしてそれも仕方がないという残念な出来だったと思っていますが)、そもそもはもっときちんと歌えるし芝居ができる娘役さんという印象を持っていたので、安心して観ていられました。普通に可愛かったしまあまあ小さかったし。
 何より脚本に書かれたアリシアに私は好感を持ちました。これは大石先生の古さがいい方に出た例だと思います。おてんばで男勝りで、親が決めた婚約者のことはただの幼なじみ、仲間としてしか見ていない、元気な少女。でも女の子らしいキラキラしたものへの憧れもあって、綺麗なドレスを着てみたいと思っていたり、素敵な青年とワルツを踊ってみたいという思いを素直に口に出したりもする。突然現われたカルロによって彼女の視界は大きく開かれ、それが恋に変わるのに時間はかからない…すごく自然でスムーズだと思いました。
 わがままで勝手だ、と引っかかる向きがあるのもわからなくはない、かな。でも私は、こういう勝気で男勝りなキャラクターって女の子っぽいことは苦手とか嫌いとか、下手すると興味あるくせにない振りをするっていう嫌らしいパターンがほとんどだと思うのに、そうしなかったことに本当に感心し感動したのです。素直に、可愛いヒロインだな、いいな、と思えました。
 カルロの乱入にいきりたつ島の男たちを抑えて、彼の話を聞き、解放を促し、彼を送り届けて、ドレスをもらう約束をして…「あんたの前でだけ、着るよ」なんて、なかなかの殺し文句だと思います。恥ずかしげもなく展開されるフォーリン・ラブ場面に、そうそう、そうこなくっちゃね!と身悶えするのも宝塚観劇の醍醐味のひとつでしょう。イヤこれが贔屓組でやられると気恥ずかしすぎて、やれリアリティがないとか芸がないとか品がないとか騒ぐ自分が目に浮かびますよ? でもホラ申し訳ないけど私は今、この組にそこまで肩入れしていないのでした。だからフラットに観ていられたのだと思います。
 で、ロベルトはキャラぶれしてるんじゃなかろうか、いろいろ背負わせてるわりに書かれなさすぎというかしどころなさすぎというかではなかろうか、とか心配したり、セルジオ(瀬戸かずや)が馬鹿っぽすぎないか、俺たちのあきらに何やらすんねん、でも完全復帰のじゅりあ様とイチャイチャしてるのがめでたいからいいや、とかほだされたり、まよちゃんやっぱ上手いよな、しかし娘役陣の十把ひとからげ感はひどいな、とか憤ったり、アニータ(美穂圭子)様怖すぎるよ、その思いはもはや島の呪いレベルだよ、とか震えているうちに、組替えで来たちなつベルトラム(鳳月杏)がいい仕事して結末を怒涛のハッピーエンドに持っていくので、わあよかったよかった無血革命って素晴らしいおめでとう!と能天気に拍手できてしまったのでした。
 ナポレオン(柚香光)の芝居はアレでいいのかとか、引っかからなくはないんですけれどね。
 初見時はやはり、そうは言ってもロベルトの報われなさすぎ感がかわいそうに思えたり、ロベルトに呪いをかけるかのようにして島を背負わせるアニータってホントひどくないかと憤ったりしたのですが、東京で観たときには同じ台詞でもそこまでの悲壮感や絶望感を感じず、ある種の前向き感を勝手にかもしれませんが感じたので、やはり楽しく見終えました。
 もっと細部に留意して丁寧に繊細に作ってくれたら、よりストレスなく観られただろう…とは思いますが、別に再演されるような演目ではないと思うのでまあ及第点じゃない? もういいや、って感じでしょうか。全ツとかにも持っていかなくていいですからねー。
 というワケで新トップコンビが生まれ綺麗に男役1,2,3体制が組まれた新生花組の未来に、期待しています。ここにあきらまよちなつがいてマイティ以下がいて、いいまとまりを見せていると思います。楽しみ、楽しみ! …難儀な重いファンとしては、脳天気に楽しめる組のひとつくらい持っていたいものです…

 レヴューロマン、読みは「タカラヅカファンタジア」の作・演出は稲葉太地。
 台湾公演も見越して春夏秋冬をテーマにジャポネスクな作り、若干主要スターを働かせすぎでみんな大変痩せちゃうし怪我してるし倒れちゃうよってことが心配な以外は、とても楽しいショーでした。ドコドン! 癖になりますね!!
 ところで浪の花はどうオチてるの?とか、夜の華場面こそザッツ花組のはずなのにみりおだとやっぱちょっとなあ…とか、アオイハナ楽しいね稲葉くん次は月組でサッカーとかやって!とか、黒影場面はかのちゃんじゃなく城妃美伶を使ってあげればいいのにとか、さくらさくらの黒燕尾は本当に素晴らしいね!とか、わあわあ楽しんでいるうちに終わってしまうショーでした。
 キキちゃんは私はノー興味ですが華もあるし押し出しもいいし立派な二番手ぶりで頼もしい限り。カレーちゃんはスターオーラは素晴らしいしダンスはいいんだから、歌と演技の勉強をさせて上手く育ててくださいお願いします、って感じ。でもあのどこからでも目を引く美貌は本当に素晴らしいんだから、こちらもなんの問題もない三番手っぷりでした。この体制でいくと決めたならこれでいけばいいのです、決めないのが何より悪い。
 そしてちなつはどこにいても目立つなあ! 月だと私はみやちゃんとかゆりちゃんとか珠城さんを見るのに忙しくてシンメの位置とかに置かれてると見られなくてホント困ったので、今とても見やすくていい…というのもありますが、超絶スタイルとダンスの上手さはやはり万人の目を引きますよね。合流前のバウ主演発表には逆風があったかと思いますが、今は組ファンも認めているんゃないかなー。いい方に進むといいなと思っています。
 台湾でヒューヒュー言うのが楽しみです!! まずは梅芸ね。人数減る分、人海戦術作戦はやめて、生徒をバランスよく使ってそれぞれ目立たせてあげつつ、主要メンバーを上手く休ませてあげてほしいです。タカラジェンヌはよく鍛えられたアスリートのような一面もあるけれど、あくまで年若いお嬢さんたちなんですからね。無理させすぎるのは厳禁ですよ。
 ひらによろしくお願い申し上げますです!




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宝塚歌劇雪組『星影の人/ファンシー・ガイ!!』

2015年05月20日 | 観劇記/タイトルは行
 博多座、2015年5月16日ソワレ、17日マチネ。

 幕末の動乱期。京の治安を守るため、尊攘派浪士による不逞行為の取り締まりを使命とする新撰組は、日夜命がけの職務に奮闘していた。ある年の夏、祇園の一角で沖田総司(早霧せいな)は数人の刺客に襲われる。直後、降りかかるにわか雨の中で、沖田は祇園の名妓・玉勇(咲妃みゆ)に思いがけず傘を借りる…
 作/柴田侑宏、演出/中村暁、作曲・編曲/寺田瀧雄、吉田優子。1976年初演、2007年に再演された日本物の名作。

 実は初生『星影』観劇でした。初演は映像でも見たことがなく再演も映像でしか見ていず、そしてすごくよかったとかの記憶は特になくて…
 でも、すごーくよかったです。観に行かないという選択肢はない最近の私の生き様ですが(笑)、これは本当に博多まで観に行ってよかったです。
 ちぎちゃんはお芝居の人だと言われることが多いと思うのですが、実は私は今までそんなには感心したことはなかったのですね。『ニジンスキー』とかもおもしろく観たけれど、ちぎちゃんの演技がよかったから、というわけではなかったように感じられましたし。ルパン三世も確かになりきってたけど、それって演技力っていうのとはまた違う気もしましたし。
 でも今回の沖田総司は本当によかったなあ。思うにちぎちゃんは役を自分に近づけてしまうタイプの役者ではなくて、ちゃんと自分が役に近づいていけるタイプの役者さんなんですね。もちろんちゃんと「ちぎちゃんの沖田総司」になっているのだけれど、それでもこの間までルパン三世だったのと同じ人とは思えない、ちゃんとみんなのイメージどおりの沖田総司になってみせていて、素晴らしかったと思いました。
 キラキラしててね、爽やかでね、まっすぐでね、少年のようでね、凜々しくてね、でも陰りも凄みもあってね…「近藤さんがね、近藤さんがね」とか「私はね」っていう口癖が本当に似合う青年美剣士。素敵でした!
 ちぎみゆがトップコンビとして素晴らしいのは、オフのデレぶりラブラブっぷりももちろんですが、お芝居の質が合うというか、ふたりとも演技が達者で相乗効果がある…という点にこそあるのかもしれません。
 ゆうみちゃんの玉勇もとてもよかったです。お化粧もポスターより綺麗になっていて、もっと綺麗になれるかもしれないけれど、十分に祇園の名妓に見えました。色っぽかったし可愛らしかったし、本当に声がよくて嫋々とした雰囲気がたまりませんでした。「私に返して」の絶唱には泣かされましたよ…
 この、古風かもしれないけれどまったく古びていない、むしろ未だに瑞々しく美しい作品を、今のこの雪組で観られてよかったです。というか本当に柴田作品は宝塚歌劇団の財産ですよね。近作がアレでも昔のものは本当に見事で、全ツなど小公演で再演されることが多いけれど、大劇場でも全然上演に耐えると思います。
 京言葉が上品で素晴らしいというのもあるけれど、台詞が本当に美しくて情緒豊かで、芝居の台詞たるものこうでなくてはいけない!と本当に思います。歴史上の人物を扱っていてもただの史実の羅列やつまらない伝記になっていず、ちゃんとキャラクターとエピソードとドラマを描いている。多少ブツ切りに見えようが書かれていない部分があろうが、そんなことより大事なものがこの舞台にはちゃんとあります。若手作家には一言一句研究してもらいたいわー。琴の音、蝉の声、鐘の音などの効果も素晴らしい。雷鳴らしゃいいってもんじゃないんですよ!
 キャラクターが多彩で、特に娘役ちゃんにたくさん出番があったのがまた素晴らしい。個人的にはあんりちゃんの早苗(沙月愛奈)が見たかったですけどね。きゃびいもさすが。舞妓ちゃんたちまでみんな可愛かった! 冷遇されがちな娘役を生かしてこそ、生まれるものもあるのです。
 もちろん男役さんたちもいちいちいい味出していて、よかったです。ちぎみゆあいびきを冷やかすくだりが本当に素晴らしかったなあ! ニヤニヤしたわー!!
 そしてストーリーが何よりいいですよね。沖田総司と言えばほぼ万人が喀血して死ぬ美剣士のイメージを抱くと思うのですが、その死を描かない、というのが素晴らしい。遅かれ早かれ人は死ぬわけで、死よりも生き様が大事なのです。キャラを死なせれば客が泣くとか安易に考えている作家には、人が何に感動するのかを今一度よく考えてもらいたいです。人より死期が近いことを知った彼が何を思いどう生きたか、そこを描くことにこそ眼目を置いた柴田先生の慧眼に震えます。何度も歌われるふたつの主題歌はどちらも歌詞メロディともに素晴らしく、作品のテーマをすべて表しているようでもあります。それでこそだよね主題歌たるもの!「♪生きるときめきを私は知ったのだ」、生のときめき、これですよコレ!!!
 そしてこの青春の輝き、命を燃やして夢を追い星明かりの下に佇む様を、こんなにも美しくキラキラと演じられるのは宝塚歌劇でしかないと思うのです。若かろうがイケメンだろうが男優ではできない、男役でないとできないの。そこに何よりシビれます。よそでもできるじゃん、じゃやっぱり寂しい。それくらい私は宝塚歌劇ファンなのです。若手作家にももっと宝塚歌劇を愛していただきたいです。…まあ繰り言はともかく。
 そんなわけで、各生徒さんに細かく言及するほどには組担でないので申し訳ないのですが、本当にみんなが輝いていて、感心し感動し気持ちよく泣き、心震わせ楽しく観た舞台でした。

 ファンタスティック・ショーの作・演出は三木章雄。
 本公演からかなり手を入れてもらっていましたが、私はやっぱり今ひとつ、だったかな…
 プロローグ、ちぎみゆのお衣装が黒になったのは本当によかったです。しかしそもそも娘役ちゃんたちがジャケットを着てるのが私はダメなんだな。パンツスタイルなんだからボディは露出してくれないと男役さんとの差異が出づらくてつまらないと私は思う。あとメイベリン・カラーも嫌だけどお衣装のペラッペラの材質が嫌。ソフト帽がフェルトみたいで色も生地もお衣装と合っていないのも嫌。
 あとこれは舞台とは関係ないことかもしれませんが、ここの手拍子は裏打ちではダメだったのかしら…「♪ファンファンファンファン、ファンシー・ガイ」に合わせるとあのリズムになるのかもしれないけれど、せわしすぎませんかねえ…
 全体にゆうみちゃんの出番が増えたのはよかったんだけれど、そもそも最初からこうしろよって気がするし、でも追加された歌がスタンダードと言えば聞こえはいいものの最近使ったばかりの曲とか、あまりに定番すぎる曲でまったく目新しさがないことも嫌。ミキティ、引き出し増やすことをしなくなったらもうクリエイターじゃないんだよ…?
 中詰めに「エル・クンバンチェロ」を持ってくるのはいいにしても、場面の最初にラテンなみつるが出たあと(このお衣装、博多の人は去年も見てるんだよ? 少しは考えましょうよ…)何故また謎のスーツ姿のストレンジャーを出すんですかね? この場面は何を表しているんですかね? セットはずっと同じなのになんの統一感もストーリー性も流れも感じられないのが嫌。でもここのストレンジャーちぎちゃんは素敵だったなー。決してダンサーではないと思うのだけれど、上手い見せ方を知っている人の踊りで、ちゃんと場が保っていて、すごいと思いました。
 タンゴのみつるとカリ場面は芸風の違いがおもしろすぎました。しかし今回のカリはよかったなあ! バリバリ使ってもらえていたのがよかったというのもあるけれど、あんなに体の軸が綺麗に通った揺るぎのない端正なダンス、久々に見ました。かつにじみ出る色気…美しかった!
 だいもんのソロを担った咲ちゃんもがんばっていてよかったです。スタイルが本当にいいのも目を惹きました。でもこのフィナーレも場面としてはホント謎なんですよね私には…
 まあ黒燕尾が素敵だったからいいか…ザルい感想ですみません(><)。あときんぐ、タメも何もなく瞬きするかのように自然にウィンク飛ばすのやめてください心臓が保たないわいいえもっとやって!(笑)

 お友達のお誕生日祝いついでの遠征旅行で、美味しいものもたくさん食べて呑んで語って、舞台には笑って泣いておもしろくて、幸せでした!






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『嵐が丘』

2015年05月18日 | 観劇記/タイトルあ行
 日生劇場、2015年5月15日ソワレ。

 19世紀、イングランド北部ヨークシャーの荒野に建つ「嵐が丘」という名の屋敷を舞台に、キャサリン(堀北真希)と孤児ヒースクリフ(山本耕史)の激烈な、そして不滅の愛を描き出した壮大な愛の物語 。世界の十大小説のひとつと謳われるなど全世界で読み継がれ、刊行から150年以上の時空を超えていまなお輝き続ける永遠の名作の舞台化。
 原作/エミリー・ブロンテ、脚本・演出/G2。全2幕。

 久々に外部公演を観ました(^^;)。
 G2さんの舞台はいつもセットが素敵ですね。あと不穏な音楽がとても良かったです。
 内容は、ちょっと駆け足に感じました。二幕に入るとかなりたっぷりお芝居をする場面も多くなるのですが、全体にネリー(戸田恵子)が狂言回しのようにあらすじを語っていくだけのような場面も多くて…でもそこに演劇的なギミックが絡んで、ちゃんとキャラクターと物語は立ち上がってくるんですけどね。
 原作を再読したくなりました。新訳とか出てるのかなあ、文庫を愛蔵していますが、違ったもので読みたいな。
 すごい物語ですよねえ。兄妹とか従兄妹同士とか、何組も現れる男女ふたり組のフーガのような、愛と憎悪が絡み合った物語。死なないと結ばれない、死んでも幸せになれたか怪しい、壮絶な愛…
 ミュージカルでもできそうなメンバーががっつりお芝居をしているのも良かったです。
 堀北真希は意外にも声が良くて、舞台女優としてもやっていけそうじゃん、という感じ。イザベラ役のソニンも、強い役が得意なのかと思っていたらなかなかどうして、上手くて素晴らしかったです。

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