駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

『ヴィヨン』

2020年10月30日 | 観劇記/タイトルあ行
 シアター風姿花伝、2020年10月29日19時。

 太宰治『ヴィヨンの妻』をベースに、変容していく女と彼女を取り巻く3人の男たちの姿を、太宰を始め芥川龍之介、谷崎潤一郎らが遺した言葉で構成した朗読集。
 脚本/司田由幸、演出/稲葉賀恵。全1幕。

 きりやん出演に惹かれて出かけてきたのですが、全…ッ然わかりませんでした。私がモチーフとされている『藪の中』だの『刺青』だのを一文たりとも読んでいないからかもしれませんが。
 座って本を読むような朗読ではなく、お芝居に近い舞台で、4人のキャストが何役もやったり地の文を語ったりしていました。が、とにかく舞台で何が語られ演じられ表現されているのか、私にはさっぱりわからなったのでした。おしまい。

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新国立劇場バレエ団『ドン・キホーテ』

2020年10月28日 | 観劇記/タイトルた行
 新国立劇場、2020年10月25日14時。

 原作/M・セルバンテス、音楽/レオン・ミンクス、振付/マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー、改訂振付/アレクセイ・ファジェーチェフ、台本/マリウス・プティパ、美術・衣裳/ヴァチェスラフ・オークネフ。
 この回はキトリ/柴山紗帆、バジル/中家正博、エスパーダ/井澤駿。

 なんとこの演目は十数年ぶりの観劇になってしまったようで、前回のKバレエはこちらこちら、ミラノ・スカラ座で観たときはこちら、レニングラード国立バレエで観たときはこちら
 コロナ禍もあって久々のバレエ観劇となりましたが、単純で楽しい演目でよかったなと思いました。全幕ものだと白のお衣装で踊られることが多いと思う結婚式のグラン・パ・ド・ドゥも、今回のキトリはちょっとピンクがかった若々しい赤と金のチュチュ、バジルは黒と赤のお衣装でバリッとキメて、明るく華やかですがすがしかったです。とてもチャーミングなふたりでしたが、ややおとなしく、やんちゃではっちゃけた下町のカップル、みたいなパワフルさにはやや欠けたかな? でも、全体のバランスも良く、もちろん埋もれることもなく、美しかったです。のびのび踊りまくるエスパーダも良き、でした。
 生オケ(管弦楽/東京フィルハーモニー交響楽団)もよかったです。ダンサーがちょっとバランスを崩したときにもすかさずさりげなくスローダウンして合わせていました。やはりバレエは録音では無理だよね…
 それにしても、特に古典バレエは、ということなのでしょうが、女性の美しさを引き立てるためにこんなにも男性がサポートに徹してくれて、そして最終的にはカップルでの完璧なまでの美しさを見せつけてくれるものってなかなかないな、と改めて感動しました。異性愛至上主義はもちろん良くないことなんだけれど、そこの数が多いことは単なる事実なので、まずここを美しくさせられないとマイノリティやらの多様性にまで手が回らないに決まっている、と思うのです。この舞台での理想と美しさの体現はまだまだ必要とされている現実だと思うので、バレエはさらに輝いてほしいと思いました。まだしばらくは来日公演も難しいでしょうが、またいろいろ観に行こうと思います。

 
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これは私たちの物語~『推し武道』について

2020年10月25日 | 乱読記/書名あ行
 私はテレビアニメ化が決まったか放送が開始されたかの頃に話題になった際に存在を知ったのですが、しばらくは格闘技漫画とかなのかなとか思っていたくらいでした。ファンはみんな略称で話をするので、正式タイトルを知る機会がなかなかなかったからです。その後、お友達にコミックス第1巻だけ試しに借りて読み、アニメは最後の2話ほどが放送に間に合って見ることができたかと思います。そして先日、後輩に最新6巻までまとめて借りられたので、改めて読んでみました。それが平尾アウリ『推しが武道館いってくれたら死ぬ』(徳間書店RYU COMICS)です。
 未履修の方のために作品のあらすじというか設定を簡単に説明しますと、以下1巻カバー表4から転載しますが、「岡山県で活動するマイナー地下アイドル【ChamJam】の内気で人見知りな人気最下位メンバー【舞菜】に、人生すべてを捧げて応援する熱狂的ファンがいる。収入は推しに貢ぐので着るのは高校時代の赤ジャージ、愛しすぎてライブ中に鼻血ブー…伝説の女【えりぴよ】さんは舞菜が日本武道館のステージに立つ日まで、全身全霊かけてドルオタ活動を続ける!」(句読点ほか一部修正)…と、いうようなものです。ドルオタってのはアイドルオタクのことですね。私自身はアイドルはたのきんとか聖子ちゃん、チェッカーズなんかの世代なのかなと思うのですが、あまりハマったことがなく…AKBはドラマ『マジすか学園』が大好きだったので(DVD-BOX持ってます)、あのころのメンツがちょっとわかるくらいです。でも衣装写真集は買ったけど、オタクだから。乃木坂は清楚な美人さんが多いいんですね、くらいのイメージ。そしてK-POPのアイドルとかは全然わかりません。
 でも、この作品のことはわかる。何故ならオタクだから。今回はそんなお話です。
 ところでこの記事タイトルですが、そもそもこれってなんのキャッチコピーでしたっけね…オタクってそういうところありますよね、元ネタがわからなくなるまで変奏させ続け使い続けてしまうという…元ネタに失礼ですね、すみません。思い出したら追記します。

 漫画としては、コマのケイ線が妙に太すぎる回があったり、小声描写でもないのにフキダシが小さいというよりは写植が妙に小さすぎて読みづらいときが多々あったり(これは担当編集者が悪い)、絵も描線がもうちょっと強弱のメリハリがあるか全体にシャープだともう少し映えるんじゃないかな、でもこれは好みの問題もあるかな、というあたりが気になったりして、決してものすごく上手いとかは言えないと思うのですが、アイドルたちがちゃんと描き分けられているし、何よりオタクファンたちの生態描写が的確すぎて胸が苦しいので、素晴らしい作品です。この漫画家さんは実際にドルオタなのかなあ? 実によく描けていますよね。愛もあるし、大人の事情やリアルもある。ジャンルや現場によって用語やノリやローカルルールはそれぞれいろいろ違うんでしょうが、でもファンの精神性ってホント同じだな、と身につまされるやらニヤニヤするやら、わかる!と泣きたくなるやら肩を抱いてあげたくなるやらで、1コマ1コマ、1セリフ1セリフに心が揺さぶられすぎてなかなか読み進められないくらいです。てかもう自分で買い揃えようかな…でも刊行ペースが遅そうなんだよな…
 個人的な疑問としては、そんな舞菜ですが実は当初は「今のこの毎日かわいい女の子に囲まれて笑って過ごせるアイドルという状況ははっきりいって天国…」とか思っている設定だったので、えりぴよに対してガチな恋愛感情があるのかな?と私は当初とてもワクテカしたのですが、その後そのあたりを深く掘る様子がないんですよね…
 同じく眞妃とゆめ莉の関係も、夏未の眞妃への感情も、涼菓と佳那の関係も…ガチじゃないの? そこは描かないの? 私が欲しがりすぎ? というかこの漫画家さん、前作もユリものだったっぽいけどそういうジャンルばかり描いている作家さんなんでしょうか? 読んでみるべき? でも絵がなー…(あっ)
 というわけで、私はけっこうユリ展開を期待して読み始めたところがあるんですけれど、意外にもアイドルとしてまたファンとしてみんなががんばり成長する正統派な流れになっていっていて、そしてそれはまたよくわかるし熱くもあるので、楽しく読んではいるのでした。

 なんせ主人公のえりぴよに古株有名オタくまささんとガチ恋勢の基さん、という配置が素晴らしい。オタクの典型例を抑えていると思うし、いずれの在り方もわかる。えりぴよの周囲からの引かれっぷりとか、めっちゃわかりたくないのにわかる。てか「えり…ぴよ? ぴよって何?」とすら思わなかった自分がもうオタクすぎて笑う。
 アイドル側についても、アウェイな会場でなじみのファンの顔を見つけてほっとするところとか、あるんだろうなわかるよ!ってなりました。初日とか、ここにいるよここで観ているよ、大丈夫だよおもしろいよ綺麗だよ伝われ!って念じながら席についていますもん私。私のことは見てくれなくてもいいけど私のこの応援しているパッションは伝わって支えになっていてくれるといいな、と思いますよ。だからペンラは振れないけど白い服着ていくもん、舞台から観やすいって聞くからね。お茶会とか、ついなじみのファンのテーブルに向けて話しちゃう生徒さんいるじゃないですか。え、いません? おかしいな。とにかくこっちはブンブン頷いてて反応いいからね、頼りにしたくなるのもわかるよ。こっちとしては見てもらえて嬉しいけど、でももっと他にも営業して!ってなる。もう、ホントおんなじ(笑)。
「だっていつが最後の生誕になるかわからないじゃないですか」…刺さる…
「舞菜は生きてることが私へのファンサだから」「舞菜のご両親の出逢いに感謝」…わかる…
 アイドルになりたい!と願って切磋琢磨している女の子たちの間でも、嫉妬とかばかりではなくて、ゆめ莉が眞妃の背中を見てきたことや憧れていること、空音がれおの隣でずっと見てきたことや尊敬していることのまさしく「尊さ」がきちんと描かれているのもいい。
 あーやの性格、生き様もいいよね。妹キャラでロリ枠でセンターとキャラが被っているとされていても、本人はマジでやる気で本当にアイドルでいることが大好きなんだよね。誇りを持っていて、上を目指している。強い。
 優佳ののんきさ、突拍子もなさと、でもやっぱりアイドル好きなところも愛しい。ちなみに獅子座でAB型なところもマジわかるって気がする。 
 クリスマスも大晦日も推しのために空けておくファン、神様よりも運営に祈るファン、わかりみしかない…
「頑張った分報われたいって思っちゃうよ人間だもの/努力が全て報われるわけなんてないのにね/頑張ってもダメだったこと/いっぱいあったし/でもわたし『頑張る』以外のこと分からなくて/わたしが出来ることって頑張れることだけだから」…きっとジェンヌの多くもそう言ってひたすら努力しているはず…そしてそんな綺羅星のごとく居並ぶスターを見ても「こんなにいっぱいいるのにわたしの世界には舞菜だけだ/一番とかじゃなくて舞菜だけなんだよなあ」となるファン…わかる…(ToT)
 本人不在の誕生日会…先日も珠城さんでやりましたが何か?
「基さんご自身が一番自分のオタクの仕方を否定してるんじゃないですか」…自分の応援の仕方が相手に重いんじゃないか、正しくないんじゃないかとか悩むこと、あるよね。でも自分で自分を否定しちゃやっぱりダメだよね。
「あなたのことが好きだからでしょ/オタクってそれだけだから」
「推しがいなければ知らなかったこときっといっぱいあるんですよ」
「こんなに好きで苦しいなら出逢わなければよかった」
「好きって強い呪いだから自分では解けないんですよ」
 …名言集かな? 箴言集なの?? それか聖書???

 物語は東京リリイベを経てメジャーデビューが見えてきて、何か変わっていってしまうものもあるのかもしれません。どうオチをつけるのか、要するに何を描くのか、がなかなか難しい作品でもあるのかもしれません。でも、もうしばらくはキラキラ輝く日々の描写を読んでいたいかな。続巻が楽しみです。




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『PROMISE』~韓流侃々諤々リターンズ20

2020年10月24日 | 日記
 2005年、チェン・カイコー監督。真田広之、チャン・ドンゴン、セシリア・チャン。

 チャン・ドンゴンが出演しているけど中国映画かな。原題は『無極』。
 将軍と奴隷と美姫、という構図は『MUSA』と同じですね。こちらは奴隷の主人が将軍なところがミソといえばミソで、チャン・ドンゴンがルリルリした瞳で真田広之を見つめるところがなんともツボです。が、私の贔屓は公爵・無歓役のニコラス・ツェーですけどね。顔もキャラも好き(笑)。
 傾城の美貌を持ちつつも真実の愛は得られない呪いをかけられた美女と、負傷した将軍の代わりに彼の鎧をまとって美女を救出した奴隷。美女は自分を救ってくれたのは将軍だと勘違いして、彼を愛すようになる。将軍は誤解を解くことをせず、彼女を愛す。将軍に仕えるばかりの奴隷は、真実を口にしない…というドラマには、確かに萌えがあります。
 しかし神代の物語とはいえ、こういうのは特撮やCGとアニメとではどちらが安価にできるのかしら…改めて見て、ディズニー・アニメっぽいなとちょっと思ったんですよね。なんにせよ、このころはまだ世界にお金があったんだなあ…というのが率直な感想です。

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『男たちの中で』

2020年10月23日 | 観劇記/タイトルあ行
 座・高円寺、2020年10月22日14時。

 父親と息子と敵対企業の、権力を巡るスリリングな応酬。世界を支配しようとする駆け引き、緊張、滑稽、絶望。ネオ・リベラリズムとグローバリズム、確実に広がる貧富の差、政治の変化が引き起こす困難や代償、何が正しくて、何が人間的なことなのか…イギリスの劇詩人が長大な台詞によるトラップで問う。
 原作/エドワード・ボンド、翻訳/堀切克洋、演出・上演台本/佐藤信。全2幕。

 男優6人が銃器製造企業のオーナー父子とその秘書、乗っ取りを企む敵対企業の経営者、それに加担する中小企業の跡取り息子、素性不明な使用人に扮してがっつり戦い合う台詞劇でした。ハイキューやテニプリに出ていたような若手もいれば黒テント、オンシアター自由劇場に第三舞台のベテランまで、熱く厚い陣容でした。
 でも、1幕はおもしろく観たのですが、2幕は失速して感じられたかなー。キャラクターや人間関係が見えてきて、不穏でスリリングでカタストロフに突き進む予感に満ちみちていて、実際に死傷者すら出ないものの事件が起きて終わる1幕に対して、2幕はもう新しいことが起きていない気がしたんですよね。物語として、この関係性でハッピーエンドに好転することなどありえないし、このあと死傷者が出たとしてもそれがより悲劇的だとも思えないわけです、この関係性こそがそもそももう十分悲劇なわけですからね。ても男たちはわかってて楽しそうにやっているんだから、発作だろうと自殺だろうと殺人だろうと死は別にハイライトにはならないんだなー、と思いました。なので後味がいいとか悪いとかではなく、あまり締まりのないラストに見えた気がしました。個人の感想ですが。
 レナード(松田慎也)以外のキャストは前回の上演から一新したそうですが、みなさん達者でさすがでした。年配チームは「ああ、こういうおっさんっている…」って感じが強かったけど若手チームはやや戯画的に感じたのは、私がまだ若手の立場にいるつもりだからでしょうか…ただ、レナードはもっと青二才に見える人がやってもよかったのではなかろうか、とちょっと思いました。少なくともレナードにしてはガタイが良すぎで役のイメージに合っていない気がしました。男同士って大きい、強そうな男に対してもっと違う反応しそうだからさ…
 美術(長尾真莉子)や照明(齋藤茂男)、映像(浜崎将裕)も印象的な舞台でした。


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