駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

ふらり、ひっそり、ひとり。旅 その8/茨城県

2023年11月29日 | 日記
 茨城から入って栃木、群馬と進む団体ツアーにまたまたひとり参加してきました。美浦トレセンに行ったことがあるし小学校の修学旅行は日光だったし草津や伊香保の温泉にも行ったことがあるので(先日上野村に茸狩りに行ったばかりでしたし)、またまたいずれの県も初めてではありませんでした。行ったことのない県ってなかなか行かないものなのかな、まあ行きやすさの問題もあるかもしれないけど、私の旅先の選び方が偏っているのかな…?
 ともあれツアーは今回も気楽に参加できて、よかったです。こういうツアーの参加者って半分くらいが夫婦で、あとは女性グループとひとり参加…というイメージでしたが、今回はほとんどが女性グループでした。アラフォーくらいに見える3人組とか、アラサーとアラフィフくらいの母娘とかもいて、新鮮…! ひとり参加は私の他は男性ひとりのみ。バスは余裕があり、二席もらえて快適でした。

 東京駅スタートのツアーでしたが、私は上野駅から途中乗車。ときわという新幹線は知らないなあ…などと思いつつ新幹線改札に向かったら表示板に出ていなくて、あわてて駅員さんに確認したらただの特急でした。さらにあわててホームを移動…早めに着いていてよかったです。でも初めての色みの車輌に乗れて、鉄子成分も満たされて嬉しかったです(笑)。
 小一時間乗って、水戸駅で下車。初めての駅でしたが大きいですねえ! 駅の周りも立派で、大きめの、栄えた地方都市なんだなー、としみじみ。
 バスに乗り換えて、まずは昼食会場になるリゾートホテルへ。「ワインと海鮮の宿」となっていて、ワクテカでした。
 ホテルのレストランの、団体用個室みたいなところに押し込められてのランチでしたが(^^;)、あんこう鍋がメインの定食は盛りが良く、大満足でした。グラスワインの白を追加。
 その後はバスで小一時間ほど運ばれて、竜神大吊橋へ。先日の上野村スカイブリッジといい、展望がいいためというのはあるけれど、1旅1橋ってノリなのかな…?
 橋は行って帰ってくるだけでしたが適度に揺れて楽しく(笑)、途中の床にガラスと金網部分があって谷底が眺められました。紅葉はどうも夏が暑すぎたせいか、色づきが良くなかったようですね。でも街者としては山を見るだけでテンションが上がるので、いいのです。なるべく赤や黄色の木々を入れて、工夫して写真を撮るなどしました。
 ここのお土産物屋さんにはあまり心惹かれるものがなく、栗のソフトクリームのみ買い食い。
 そこからさらにバスで半時間ほどで、袋田の滝へ。1旅1滝でもあったのですね…!
 散策路は、空気はいいのですが、行きは下りでよくても帰りの上りが心臓破りで、なかなかでした…やはり今が一番若いのだから、行けるうちにどこでも行っておかないと、すぐに体力的につらくてどこにも行けなくなるな、と体力へっぽこな私は痛感しましたよ…ともあれいくつもある滝はそれぞれ美しく、時代ものの中国ドラマで見るような川と四阿、みたいな景色も眺められて、風もなく寒くもなくて、楽しかったです。
 その後は今宵のお宿の塩原温泉までドライブ。90分ほどのはずが道路がまあまあ混んでいて、とっぷり暮れて予定より遅い到着となりました。が、お宿は綺麗めな、でも馬鹿デカくないリソートホテルふうの作りで、なかなかいい感じでした。お庭の滝を眺められるラウンジに、もうクリスマスツリーが設えられていました。
 お部屋は広めのツインのシングルユース。和室もあるのか旅館ふうだった名残なのか、小上がりもある作りでした。
 ベッドサイドにバスタオルとフェイスタオル、歯ブラシセットが入った籠バッグが用意されていて、これを持って大浴場に行ってね、ということなのね親切!とプチ感動。当然、洗面所には手を拭く用の別のタオルがセットされていて、ポイントアップです。私はお気に入りのフェモネのマシュマロガーゼ&パイルのタオルセットを持参してきているので、ホテルのタオルはヘアドライ用やその他の用途に使いますし、大浴場にいろいろ運び込むためのエコバッグも毎度持参しているのですが、今回はありがたくこの籠を活用させていただきました。
 荷解きしてまずは夕食へ。前回のツアーはとにかく食事が残念だったのであまり期待していませんでしたが、ここのブュッフェは美味しかったなー! 別にあるものは定番なんですけどね…でもちゃんと茨城名物の○○、みたいな案内がしてあって、温かいものはまあまあ温かくて(アツアツではなかった)、何往復もしてしまいました(笑)。あと、フリードリンクの範囲が広くてアルコールありで、こちらもぐびぐびいってしまいました…
 お皿やお盆を下げるのに猫型の配膳ロボットが行き来していて、実家で昔飼っていた犬の名前だったので(笑)思わず激写。癒やされました…
 満腹で部屋に戻り、食休みでまったりしてから、大浴場へ。そんなに混んでなくて、快適な脱衣所でした。
 洗い場も広めで、お隣との間に曇りガラスの板があって、水滴を飛ばす心配がなくて良き作りでした。シャワーもずっと出せるタイプのもので、ロングヘアの洗髪に時間がかかる私には嬉しい仕様。
 しかし…露天風呂が、ぬるかった…! どうせ湧かし直しているんだと思うので、もっと熱めに設定してほしい! お湯は熱いけど外は寒いからいつまでも湯あたりせず浸かっていられる、のが露天風呂のいいところでは!? ぬるくて寒くて入っていられない、というのはどうなんだ…思わずアンケートに書いてしまいました。これは夜遅かったせいではなく、朝風呂でもそうだったので…しょぼん。内湯はしっかり熱くて、温まれました。
 前回の旅行で飲みきれなかったビールなど持ち込んでいましたが、お腹いっぱいで部屋飲みする気にはなれず、そのまま就寝。マットレスの柔らかさがちょうど良くて、爆睡しました。

 翌朝は6時半に起床して朝風呂に行き、7時過ぎにまたまた適度に美味しいブュッフェで朝食をたいらげ、8時半出発。
 バスは小一時間ほど走って龍王峡へ。またまた滝です、でも見応えがありました! ここのお土産屋さんではちょこちょこ買い物もしました。
 さらにバスで半時間ほど移動して、日光へ。ここでは3時間半ほどの自由時間となりました。
 ぶらぶら歩いて、まずは日光山輪王寺へ、そして日光東照宮へと出向いたのですが、自由参拝でツアーには入場券がついておらず、券売機は6台ほどありましたが大行列、かつしょっちゅうエラー音がして全然進まず、外国人観光客も多くてもうわやくちゃだったので、一気に並ぶ気がなくなって退散してしまいました。
 お隣の日光二荒山神社をゆっくりお参りし、おみくじなど引き、ぐるっと神橋までお散歩して、日光金谷ホテルベーカリーでクロワッサンと柚子メロンパン、チーズカレーパンを買い、豆乳ゆばラーメンでランチ。なんてことない食堂みたいなお店に入りましたが、ここも周りはほぼ外国人観光客でした。しぇー…
 金谷ホテルのロビーでちょっとまったりさせてもらい、キブトショップも冷やかしてから、さっきは通らなかった参道などをたどってぐるぐるお散歩して、お土産のカステラや羊羹などを買って、集合場所のバス駐車場へ戻りました。ときおりお天気雨が降りましたが、心配していたほど寒くもなく、快適でした。
 バスは栃木から群馬に向かって、途中草木ダムでのトイレ休憩を挟んで、床もみじで有名な宝徳寺へ。夜間ライトアップ開門時間に合わせた、見事な到着となりました。
 これがまたフォトジェニックでよかったです! 素人の腕の、iPhoneのテキトーな撮影でもそれなりに美しく写る床もみじ、素敵でした! お寺も小さいながらいろいろ見どころがあって、半月が綺麗に出ていて、夜の散策も楽しめました。
 そして高崎駅へ。集合時間まで、フードコートでビールと餃子と湯麺の夕食を済ませて、帰りのとき車内では爆睡。上野で途中下車して帰宅しました。



〈旅のお小遣い帖〉

ツアー代金 44,900円
上野駅までの電車賃 167円
ランチのグラスワイン(白) 770円
栗ソフトクリーム 400円
お土産の地ビール 700円
揚げにんにく、柚子味噌などのお土産 1,510円
豆乳ゆばラーメン 1,500円
金谷ホテルベーカリーのパン3個 974円
ニッコーラ 2,484円
苺ソフトクリーム 430円
カステラ、羊羹などのお土産 1,750円
餃子、湯麺などの夕食 1,580円


 この先はまあまあ忙しいので、今年の旅はこれで終わりかな(日帰り観劇遠征とかはありますが…)。思い立ってから2年で8回だと、定年で48都道府県を見事回りきってゴール!…とはいかないので、来年からは年5は旅に出ないとなー、出たいなー、と思っています。


※追記※
インスタに写真日記上げました。







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韓流侃々諤々neo 7『医師ヨハン』

2023年11月23日 | 日記
 2019年SBS、全16話。原題ママ。
 BS12で全16話で見ましたが、向こうは1話70分くらいなので、カットはまあまああったのかもしれません。
 久坂部羊の小説『神の手』が原作だそうで、日本でもドラマ化されたそうですが、私は未読・未見。
 主人公はチソン、ヒロインはイ・セヨンの医療ドラマです。イ・セヨンは子役出身で『チャングム』なんかにも出ていたそうですが、私はお初…かな? 今は『赤い袖先』も萌え萌えで見ています。
 患者を安楽死させたことで服役中の医者…という、なかなかなスタートのドラマでした。あとはまあわりと普通の病院ものにおちついていってしまうところもありましたが…
 チソン演じるチャ・ヨハンが、安楽死/尊厳死させた患者が、カットもあるのかあいまいな描写でしたが連続少女殺人犯みたいな…で、死刑囚だったのかな? でも病気で、ものすごい苦痛があって、回復の見込みはなくて、まあたとえ快癒したとしても死刑が待っているだけなんだけれど…という設定が、なかなか重くて興味深かったです。彼に娘を殺された女性が看護師で、ヨハンを告発し、彼女と連携している検事もしてヨハンを敵視しているのですが、実は彼も癌を患っていて…みたいなターンもあったのに、そういえば後半なんだかフェイドアウトしたような…? 安楽死の法制化を進めようとする引退した大臣とか、苦痛なく死ねる薬を開発している組織とか、そこが結託して広めている新興宗教めいた患者の会とかとか…というエピソードもあったのに、そのあたりも尻すぼみだったような…? 原作小説ではそのあたりがみっちり扱われているのかもしれません。
 苦痛というものに独特の感性を持っていて、病気の診断を下すのが早いヨハンは、患者を治すことはもちろん、患者の苦痛を取り除くこと、QOLを上げることに邁進します。なので病院の効率を上げようとする経営陣とは対立して…みたいなターンもあるのですが、理事長選といい、このあたりもカットもあるのかもしれませんが中途半端でしたね。やはりヨハンとシヨンのロマンスに搾った方が視聴率が取れる、とかだったのかしらん…
 そもそもヨハンは痛みどころか外気温などの刺激をほぼ感じられない病気で、だから苦痛も本当の意味では理解していないんだけれど、だからこそ知りたいと熱望している…というのはおもしろい設定でしたね。暑い寒いを感じないので体温調節もできなくて、あげく突然に倒れたりする。切ってもぶつけても痛みがなく、知らない間に血が出ていたり痣ができていたりする…これは日常生活がけっこう難儀だろうな、というのは想像できます。主に短命である、というのもすごくわかる。だからこそヨハンは、自分も生きたくて、周りも生かしたくて、懸命なのでした。
 シヨンにも植物状態の父親がいて…という設定があり、痛みってなんだろう、命ってなんだろう、人生ってなんだろう、幸せってなんだろう、というようなことを考えさせられるドラマでした。まあ全然説教臭くは作っていなくて、むしろドライにさくさく進んでいってしまうくらいではあるんですけれど…韓ドラなら、もっと深くエグく作ることもできたのでは、とはちょっと思ったかな。でもチソンにほだされて(笑)、楽しく見ました。
 ラストも、治す薬ができたのか?あたりはふわっとさせつつ…でしたが、まあラブラブには終わったのでよしとしましょう。
 生きていれば何かしらの苦痛はある、愛し合う者同士で分かち合い、慈しみ合って生きるしかない…みたいな結論が、美しかったです。








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花全ツ『激情グラミラ』初日雑感

2023年11月20日 | 日記
 宝塚歌劇花組全国ツアー公演『激情/GRAND MIRAGE!』初日の梅田芸術劇場メインホール公演11月17日15時半回を、日帰りで観てきました。幕が上がり、チケットがあるなら私は行くスタンスです、ご容赦ください。
 星組博多座初日同様、開演前に理事長が緞帳前に出てきて挨拶するのに遭遇しました。この日は前日に開演時間の30分の後ろ倒しが発表されたので、そのお詫びと、劇団の今の事態が心配をかけていることへのお詫びがありました。が、全ツはこのあと開幕するし、全国に宝塚歌劇の魅力を伝えるべく出演者たちはがんばってきた、観客には芝居とショーのどちらも楽しんでほしい、といった旨のご挨拶でした。
 ただ、博多座初日ではあった生徒の急死に関しての言及はなく、哀悼表明もありませんでした。今日がたまたま四十九日でしたが、もちろん黙祷もありませんでした。最後に深々と頭を下げる理事長に客席から拍手が湧きましたが、私はそのとまどいにとても拍手する気にはなれず、ただそっと目を閉じて、自分なりに黙祷を捧げました。
 もうなかったことにしつつあるんですか? 次のフェーズに進んでいるんだからもういいだろう、ということなんですか? でも、そういうことではないですよね?
 折しも、劇団が調査を依頼した外部調査チームの「外部」ぶりのヌルさが明らかにされました。ご遺族側はもっとちゃんとした第三者委員会による再調査も求めていましたし、何より、報告書は私も読みましたが遺族側が提出した証拠・証言の不採用が多く、偏りがあることは普通に感じられました。きちんとしましょうよ、ごまかしたり隠したりしてもいいことしひとつもないですよ…
 雪組大劇場公演は12月1日を初日とする旨が発表になり、幕間には宙組の東京公演が大楽まで10日ほど残してとりあえず中止とすることが発表されました。私のチケットはまた3枚ほど飛びましたが、まあそれはいいです。引き続ききちんとした調査を続けて、ご遺族側との話し合いも続け、事実を解明し、果たすべき謝罪と補償をする良き着地点を見つけ、さらに改善計画を明示して、粛々と実行していっていただきたい、と思っています。
 あとは、調査範囲を広げるのはいいんですが、すでにやっていると思いますが現役生へのカウンセリングその他のケアをしっかりやってくださいね? ヒアリングに呼び出したあとは放置、お稽古も劇団レッスンも中止の宙ぶらりん、なんて何もなくても病みますよ。お願いしますよ…?
 そして、来年以降、予科生全員と音校全職員、劇団経営陣や幹部総出で、毎年お墓参りを必ずすべきだと思います。別に学校・劇団行事として公表、公開しなくていいので、やりましょう。小林一三翁のお墓参りより大事なことかもしれません。もちろんご遺族のご意向もあるかもしれませんが、そのころにはこうした弔意が受け入れられている関係改善ができていると信じます。
 それでも失われた命は戻りません。それは、この先ずっと負っていくしかない負債なのだと思います。
 ファンとしても、観劇することで犯罪に加担はしたくない。今、舞台で笑顔を振りまき耀いている現役生たちも、裏では非人間的な長時間労働や問題のある指導、強制に苦しめられているのだ、あるいはもしかしたらより下級生にはそれをやる側になっているかもしれないのだ、などと考えながら舞台を観るのは、つらすぎます。
 けれどここでしか観られないものがあるのも事実なので、単純に観るのをやめる、とは見限れないのです。アップデートと改革と、それでも残せる伝統というものを、真摯に探っていっていただきたいと願っています。

 さて、前回の月全ツ『激情』の感想はこちら、花『グラミラ』本公演の感想はこちら
 珠城さんとちゃぴの全ツにまあまあ楽しく通ったというのもありますが、私は『激情』ってかなり好きな演目なんだな、と改めて思いました。
 この演目が嫌い、苦手という方のマイナス意見としては、ホセが情けない、いい男に見えない、とかカルメンが宝塚歌劇のヒロイン役として逸脱気味で嫌、とかがあるのかな、と思いますが、私はそうした要素がむしろわりとツボなんですよね。まっすぐな、あるいは凡庸な男が何かのきっかけで転落していく…とか、狼のような強くて自由な女…とかのモチーフが、好みなのです。作品としても、メリメが全体を語る形になっているところとか(「私のホセ・ナヴァロ」!)、メリメとガルシアが二役であるところとか、アイディアがあって好きです。なのでワクテカで初日を手配しました。ホントはまどかカルメンが観たかったですけれどね…!
 スチールでわかっていましたが軍服のデザインが一新されていて、また吊り物含めたセットのデザインがけっこう変更になっていましたね。でも十字架型の台とか、「ジェラシー」でバックの壁面の模様がバッと変わるところなんかは健在でした。エスカミリオの試合でカルメンが立つ台は牛の角の形なはずだけれど、布を吊って表現されているようでしたがちょっと微妙だったかな…? あとはラストのひまわり畑みたいな黄金の、太陽の中で輝き微笑むカルメン…みたいなのは、本公演だった初演でしかもはやできていませんよね。今回もバックに一面、薔薇の花みたいな模様が描かれているだけでした。
 ホセとカルメンのお衣装も新調になった模様。まあカルメンのお衣装は、いわゆるロマの女の服装でそうそう代わり映えしないのですが…また、街に住む白人たちとロマたちの諍いの歌や、エスカミリオのソロも新しくなっていた気がします。
 が、脚本は基本的にママで、ミザンス含めて演出や振付も大きな変更はなかったかと思います。すでに完成された、クラシカルな古典の域に入りつつある演目なのかな、と思います。
 で、堪能しました。
 なんせ珠城さんホセがザッツ・ホセに思えただけに、ひとこだとどうかな?などとちょっと心配してもいたのですが、冒頭の真面目で不器用そうな青年士官っぷりがよかったし、そもそもアバンで登場する、メリメが語るホセとしての在り方がなんかもうすでに目が暗くて、それがあるからこそメリメもホセに惹かれたのでしょうが、カルメンとこうなることは彼の運命だったんだな、と思えました。
 みょんちゃんのミカエラがわりとさらりとしていたことも、このひとこホセとのバランスとしてよかった気がしました。あまりウェットに、もう婚約者同然の、なんなら嫁同然の幼馴染みで、めっちゃホセを想ってて…とかだと、このホセにはちょっと重い気もしたので。
 そして、何度も言っていますが、申し訳ありませんが私は星空ちゃんの特に顔が苦手なんですが、それはまあオペラで観なければいいのであって、低い声がいいし乱暴な口の利き方もいいし、歌も上手いしホント身体が利いてダンスも上手いので、とてもいいカルメンに見えました。私はとにかくこの役、このキャラが好きなんだなー、と感じ入ってしまいました。これからひとこともっと息が合ってくると、さらに良くなっていくのではないかしらん。ただ、デカいなーとは思いましたけどね…(カルメンではどうだったかチェックし忘れましたが、ショーではヒールが折れたのか?みたいな低い靴をずーっと履いていたので…(><))
 スニーガは今回から副組長のゆりちゃん(カテコでご紹介あり)、髭がヤラしくていい感じでした。あとほってぃーのダンカイレもよかった! あまりタッパはない方だけれど、ボス不在の間の現場をガッチリまとめている男、という大きさがありました。ほってぃーはホント貴重な上級生戦力になってきましたよねえぇ…!
 逆に娘役ちゃんはみんなコンサートに回っているのか、全然いないなという印象でした…いや琴美ちゃんとかみさことか七彩ちゃんとかちょいちょい起用されてはいるんですけどね。あと今回、咲良さきちゃんが可愛いなと発見しました。
 カチャは前回観たので、ホントはあかさんのメリメ/ガルシアが観たかったけどな…そしてあかさんのエスカミリオはなんか妙に脳天気で、この闘牛士、大丈夫…?って気がしましたが、どういう役作りだったんでしょう…
 はなこのレメンダートも、もうちょっと色が出てくるといいなと思いました。
 いやしかしひとこホセは黒いお衣装になってからがさらによかったなー! 「神よ!」もよかったし四重唱もよかった。カルメンにすがりつく感じの情けなさも、そういう愛し方しかできなかったところも…星空ちゃんカルメンがまだ若くて、「とにかくなんかヤなの!」って感じのつっぱらかり方なのも、とても合っていたと思いました。ホセのことはもちろん愛していた、でもそれ以上に自由でいることを愛していた女なんですよね…幼い、若い。でもそれがカルメンなのでした。
 だからラストはホセの幻想でしかないんだけれど、もしかしたらカルメンがそんな笑顔でホセを迎え入れて、ふたりが幸せに結ばれた未来も、どこかの並行世界にはあるのかもしれない…と思えるような、悲しく美しいラストシーンだと思いました。好き!

 ショーは、ちょこちょこ変わっていてもやはりザッツ・ロマレビで、素敵でした。
 自分が主演で全ツを回っておきながら、下級生主演の二番手役に徹してくれるとは…と思っていたカチャですが、プログラムのショーお衣装でのひとこと同等写りみたいなのを見て「そこは譲ってね?」とか思いましたすみません。が、実際にはいい塩梅で場面のセンターを分散して担当してくれて、ひとこはだいぶ楽になれているのではないでしょうか。結果的に出番が減ろうとも、全国行脚はやはり大変だと思うので、これくらいでいいんだろうと私は思いました。
 ひとこは、プロローグはもちろんれいちゃんポジションで。まどかのターンにカチャが入って、星空ちゃんはふわっと加わってくる感じでしたが、もちろんまどかポジ。というか彼女はまどかのところを全部やったんだから、たいしたものです。しかもカチャのゴールデン・デイズ場面も相手役を務めましたしね…(ふうちゃんのあのブルーのドレス!)
 最初の間奏曲はあかさん、ほってぃー、はなこ、だいや。紫陽花カラーは二色ふたりずつになっていました。
 砂漠はひとこと星空ちゃんで、ひとこフィリップ中尉はれいちゃんがやっていた砂から足を引き抜く歩き方はしていませんでした(細かい)。
 カンツォーネのセンターはカチャになっていました。あかさんの鬘、変わった? 素敵でした。
 シボネーはひとこセンター、あかさんとほってぃー。はなこは星空ちゃんを担いできて、あわちゃんのところはみさこ、七彩ちゃん。花組全員で、いやー胸アツでしたね!
 カチャがオペレッタのソロでつないで、ゴールデン・デイズへ。かりんさんの士官ばっか観てたなー、などと思い出すなど…淑女は揃いの白いドレスになっていて、ややシンプルになっちゃいましたかね。
 そしてロケット。初音夢ちゃんばっか観てたな、と思い出すなど…
 ボレロ・ルージュもカチャからたっぷりやって、あかさんほってぃーに琴美ちゃん七彩ちゃんの組み合わせだったのも良き。そこへひとこと星空ちゃん参入。
「ジュテーム」だった第二の間奏曲は「ラ・ノスタルジー」になって、ここもカチャ、からのはなこだいや。
 デュエダンの歌手はあかさんになって、ひとこと星空ちゃんで綺麗に踊っていました。
 エトワールはみょんちゃん。
 縁がピンクの白い羽根をひとこ、星空ちゃん、カチャで背負って、銀橋はないけど会釈ターンは先にひとみさ、あとにことカチャでした。まあこれは星空ちゃんのポジションからして妥当かな。ラインナップはやや不規則で、センター3人の両脇にあかさんほってぃー、その両脇はもうあおいちゃんゆりちゃんで、その両脇にはなこだいやでした。
 カテコでは新副組長就任のゆりちゃんのご紹介もあり。ご当地出身者紹介は大阪だけでなく関西出身としたので、1/3くらいいましたかね? 舞台奥の下級生たちを見せてあげようと右往左往する前列上級生陣が可愛らしかったです。
 ひとこのご挨拶では、早くみなさまに観せたくてお稽古をがんばってきた…みたいな言葉があり、初日が予定どおり開かないかもしれない、という不安の中でお稽古してきたんだろうな、つらかったろうな、と思わせられました。ちょっと涙ぐみかけ、声が詰まりかけながらも、気丈に明るくご挨拶し続けていて、よかったです。スタオベにも喜んでいたようでした。

 月組東京公演が終わると、花組のもう一方のコンサートが始まるまでは、稼働しているのはしばらくはこの全ツ組だけになります。あまりプレッシャーに感じず、目の前の観客を大事に演じて、そして各地で少しは美味しいものなど食べてリフレッシュしてきてくれるといいな、と思います。
 どうぞ事故なく、心身ともに健康で、元気で、ハッピーでいてください。ファンが贔屓のスターに願うことって、究極そういうことだと思いますよ…
 なので劇団はがんばってください。





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『無駄な抵抗』

2023年11月19日 | 観劇記/タイトルま行
 世田谷パブリックシアター、2023年11月16日19時。

 その駅は半年前から電車が停まらなくなった。どの電車も通過するだけ。住人たちは困惑しながらも、隣の駅まで行くなり、他の交通手段を使うなりして日常生活を送っていた。駅ビルは寂れ、駅前の広場は活気を失った。占い師として活躍していた桜(松雪泰子)は地元に戻ってカウンセラーとして再出発するが、クライアントとして現れたのはかつての同級生の芽衣(池谷のぶえ)で…
 作・演出/前川知大、美術/土岐研一。ソフォクレスの『オイディプス王』をベースに置き、ギリシャ悲劇の大テーマである「運命」とそれに抗おうとする人間の「自由意志」という大きなテーマを描く一作。全1幕。

 世田パブ×前川知大では私はこちらこちらなどを観ていて、劇団イキウメならこちらこちらなど。そして『お勢、断行』で大空さんと仲良くしてくださった池谷のぶえヒロイン…!とワクテカでチケットを取りました。まして大好きギリシア悲劇ものです。
 入場したら幕は開いていて、舞台は半円形に客席に張り出し、奥はもう半分の半円形にすり鉢状の階段が作られていて、まさしくギリシアの円形劇場みたいな雰囲気。そこが駅前広場であり、しかし時空を越えてどこででもあるようで、行き交う人々も本当はそこにはいない、コロスのようなものでもあって…という、とてもおもしろい、演劇らしい演劇でした。
 ただ、特にこういう問題では男女に互換性はないので、これは『オイディプス王』ではないだろう、とは思ったかな。父を殺し母と交わり娘たちを産ませてしまったオイディプスと、父に犯され息子を産み彼にホストの客として貢いだ芽衣とは、同列には語りがたい気がする、と私は思いました。ただ、別にそのまんまやりたいわけではなくて、こうした近親相姦モチーフというか家庭内児童虐待とか性加害なんかを扱いたかったのかな、という意味では、納得です。とてもギリシア悲劇的で、そしてとても現代日本的な物語になっていると思いました。怖ろしく、そしてとてもおもしろかったです。
 電車が停まらなくなった駅と、それによって寂れてしまったギリシアふうの駅前広場、というのもシュールなような、ファンタジックなような、何かの暗喩でもありでもリアルでもあるような、おもしろい舞台装置(比喩的な意味でなくて、まさしく)だなと思いました。
 そこに、芽衣の兄(盛隆二)や従兄弟の娘(穂志もえか)や、探偵(安井順平)、警備員(森下創)、カフェ店長(大窪人衛)、ホスト(渡邊圭祐)とその幼馴染み(清水葉月)なんかが集う。現れた大道芸人(浜田信也)が世界を始めるように物語を始める。人々は交錯するような、あるいは全然無関係なような、なエピソードを展開していく。そして…という物語です。
 駅に停まらず行ってしまう列車、というのは神様のことだと思いました。この駅とその界隈に暮らす人々は、神から見捨てられた存在なのです。でも彼らはそのことがまだ上手く受け入れられないでいる。けれどリサは線路に置き石をし、店長は線路のポイントを切り変えて、抵抗の姿勢を見せるわけです。それで列車は脱線事故を起こす。列車には誰も乗っていなくて、脱線したからといって何が起きるわけでもない。でも彼らは自分たちがここにいることを天にこうして訴えたのです。神様の勝手にさせないぞ、神様の都合で運命を押しつけられたり、無視されたり見放されたりしても唯々諾々と受け入れたりしないぞ、という主張です。
 無駄かもしれない。何も変えられないかもしれない。でも、やる。呪いも、予言も、それはそれとして、自分の人生は自分のもので、もう何もできない無力な子供ではないのだから、ちゃんとした大人なのだから、戦う、抗う。流されたりしない、泣き寝入りしない。神様が無視しようとしてもこちらを振り向かせてみせる。自分たちは神様の人形なんかじゃない、意志のある人間なのだ。無駄な抵抗かもしれないが、やってみるのだ…
 そんなお話なのかな、と思いました。
 神話的な、あるいはシュールな、あるいはファンタジックな空気のおかげで、過剰に嫌らしくドロドロすることなく、しかしやはりシビアな事態が明らかにされていって、それでも淡々と立ち向かおうと決意する芽衣と、彼女を支えともに戦おうとする桜のシスターフッドを描いているようでもありました。何故かそんなふうになる物語だと思っていなかったので、なんかものすごく感動的でした。それもまた無駄な抵抗かもしれないけれど、それでも、という意志…
 そして役者がみんな上手いんだ…! 私もイキウメの役者さんはだいぶ覚えてきましたが、本当に変幻自在ですよね…そしてみんな怪しい(笑)。そしてみんな声がいい、まあ役者の基本なのかもしれませんが。
 池谷さんも、すごく味のあるいい声だなあ、と思いました。世話焼きおばちゃんみたいなキャラも上手いけど、こういう役も上手いんだな、女優さんってホントすごいな、としみじみしました。
 初舞台だという穂志さんもとてもよかった。ヴロンスキーが素敵だった渡邊さんもとてもよかった。何度か観た清水さんもとてもよかった。惚れ惚れ…
 兵庫のハコはだいぶ大きいだろうから、それで逆に響くものもあるのではないかしらん、と思いました。良き公演となるよう、お祈りしています。








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『LUPIN』

2023年11月18日 | 観劇記/タイトルや・ら・わ行
 帝国劇場、2023年11月15日18時。

 テンプル騎士団のカテドラルを再建し、施療院を作る計画の会見が開かれている。テンプル騎士団研究会会長ボーマニャン(この日は黒羽麻璃央)や新聞記者など多くの人々が集まっているところへ、デティーグ男爵令嬢クラリス(真彩希帆)が慈善事業への強い思いと、施療院の院長に就く決心を語る。そこへ考古学者マシバン博士がやってきて、カテドラル発掘時に発見された生命の樹メノラーの枝を鑑定するが…
 脚本・歌詞・演出/小池修一郎、音楽/ドーヴ・アチア、共同作曲/ロッド・ジャノワ、音楽監督・編曲/太田健、振付/桜木涼介。モーリス・ルブランの怪盗紳士アルセーヌ・ルパンもののうち『カリオストロ伯爵夫人』と『奇厳城』を原作に、「二次創作」した「派生作品」、というミュージカル・ピカレスク。全二幕。

 初日から「トンチキ」「笑ってはいけない古川雄大」「イケコがかんがえるさいきょうの古川雄大」「イケコの夢をかなえたろか公演」などの評判が聞こえてきていたため、私はわりと暴れる気満々で出かけたのですが…別に、フツーでした(^^;)。トンチキ、というほどの破壊力はなく、いつものイケコ・クオリティだな、と思っただけです。
 これは、しーちゃんにお取り次ぎいただいた、A席だけど一階後方下手ブロックで十分観やすく音も良くてなんの問題もない、というコスパの良さに、おおらかな気分になれたせいもあったかもしれません。ともあれ、ホント楽しく観ました。
 一幕はキャラものとして楽しく観ましたし、二幕はストーリー展開が確かにまんま『カジロワ』なんだけれど(なのであれはやはりボンドだけではキャラものとして弱かったし、なのでより評価が低くなるのですね…)まあイケコの脳ではコレしかないやろ、と思えたので、いいのです。もちろん『アルカンシェル』が心配になりましたし、イケコの脚本家としての力は過去はともかく今やまったくないのがあきらかので(とはいえ私はわりと『眠らない男』は高評価しているんですよね…あんま人気ないし言及されることも今やほぼないですけどね…)、もう海外ミュージカルの輸入翻案演出だけに専念した方がいい、とは考えていますけれどね。お話、物語ることには興味や関心があまりなくて、どう見せるかを工夫する方が得意なんでしょ? だからそれをやればいい、というだけのことだと思うのです。
 エンタメとしてのクオリティは基準点に達していると思いますし、なんせキャストの歌唱力は担保されているわけで、みんなファンも多くチケットは完売ペースなんでしょうから、いいんじゃないでしょうか。ただ、ダブルキャストをひととおり観終えたリピーターが後半のチケットを手放すとかはあるだろうし、昨今のチケット代の高騰ぶりにそもそも買い控えたお客も多いだろうので、無問題とふんぞり返っていていいわけではない、とは考えています。
 ただ、ハシボーの駄作だとか客を馬鹿にしているとか帝劇を軽んじている、とかはないな、と私は思いました。こんな大味なエンタメ、むしろ帝劇にこそ似合いだとと思いますし、帝劇は今までも蓋を開けたらなんだこりゃ?みたいな出来の演目だってたくさんかけてきたわけで、高尚な芸術作品ばかり上演してきたわけでなし、そんな敷居の高いハコじゃねーだろ、と思うので。ただ、この手の企画、座組でどこまでもいけると思うなよ東宝…とは案じています。

 というわけでゆんゆん、堂々たる主演、座長、タイトルロール、おめでとうございました、立派でした。
 私はこの人は雰囲気イケメンなだけであって別にハンサムではないのでは、とかヒドいことを思っているのですが、歌も芝居もダンスも上手いし顔がちっちゃくてタッパがあってスタイルがいいので、それは本当に美点、利点だと思っています。変な変装しちゃうのも女装しちゃうのも、似合うしハマるんだからどんどんやればいいですよね。エレクトリカル・ゴンドラも誰にでも許されるものではないと思いますしね(笑)。でも2幕ラストはホントにフライングでもよかったのにな、と『マハーバーラタ戦記』にすら「今回は宙乗りないんだ…」と新作歌舞伎にやや毒されつつある私なんかは思ったのでした。
 実際のルパンものもこんなだし、それは人気が出たからって泥縄で連作していったからで整合性も何もないのは仕方がないし(だからこそ『ルパン三世 カリオストロの城』という傑作「派生作品」も生まれたわけですしね)、その雰囲気に合った主役っぷりで、とてもよかったと思いました。もちろんもっと渋いシリアスな芝居もできることは知っているけれど、それはそれでまた別にやればいいことなので…楽しそうにマントを翻しドレス着て台車乗ってルンルンしているの、ホントいいと思ったのでした。
 きぃちゃんもとてもよかったです。さすがの天使の歌声だし、私はクラリスはしょーもない役だとは感じませんでした。親の借金のカタにいけすかない男と結婚するのなんかイヤだ、私は社会に役立つ仕事がしたい、と言っていた小娘が、パーティーで出会った雰囲気イケメンにコロリと恋をし、それが本気になるなんて、別に自然なことだしよくあることだと思うのです。悪いことでは全然ないとも思いますしね。きぃちゃんはそんなクラリスを、的確なヒロイン力を持って演じ、舞台に出現させていたと思いました。
 私は彼女は芝居は上手いがヒロイン力はそんなにない女優なのでは、と思っていたのですが(星組時代とか、娘役力の足りなさにヒヤヒヤしたものでしたよ…)、今回はホントちょうどいい、さすがだなあと思えたなあ。ドレスもどれも似合っていたし、可愛かったです。
 婦人参政権運動云々が持ち込まれているわりに「純潔」連呼台詞があるのには閉口し、イケコのフェミニズム理解なんて所詮こんなもんなんだからやめときーな、とは思いましたが、まあ役者のせいではありませんしね。てか東宝が止めろ、宝塚歌劇団よりは機能しているプロデューサーがいるんだろうが…そういえばこれだけコード進行がタカラヅカなんだから、キスも宝塚式のエアチューでよかったと思うんですけれど…インティマシー・コーディネイターもちゃんと入れましょうね東宝。業界トップが率先してやってこそ、ですよ…
 イケコの筆力がないので悪役/ライバル役として書き込みが甘いボーマニャンですが(メシアがルシファーに変わっただけかい、とかつっこみたくなりましたよね)、それこそ力尽くでやってみせていて好感しかありませんでした。もうひとりの立石俊樹も観てみたかったです。ハンサムだけどおもろい、って俳優の枠、ありますよね…(^^;)
 主役、ヒロイン、悪役と構造としてしっかり並んだ中で、トリックスターであり裏ヒロインにして裏主役のカリオストロ伯爵夫人(今回のサブタイトルは「カリオストロ伯爵夫人の秘密」)は、ちえちゃんとゆりかちゃんのダブルキャストで、今回は退団後初のゆりかちゃんで観ました。これがまたよかったんですよねえぇ! 要するにイケコの萌えはここにあるんだよな、ということが実によくわかりました(笑)。
 ゆりかちゃんは堂々としたもので、歌もキーが合っていたのかとてもよかったし、男優とも臆せず絡んでいたし、ドレスも華麗に着こなしていたし(背中が開いた赤いドレスは、素敵だったけど95点くらいかな…男役は背中なんて見せることがほぼないと思うので、やはり娘役の背中の美しさに比べたらそこはやや甘かったかもね、という贅沢な見方ですすみません)、舞台映えするし、台詞が女言葉だからか癖の「~だぁ」口調がなく、演技も的確でとてもよかったと思いました。女優デビューとして完璧なのでは!?
 大柄な下男(章平)にかしずかれている婦人、という絵柄もよかったし、正体についてもとても良くて、彼女がアメリカで活躍しているところにルパンとホームズが押しかける続編を考えてるんでしょイケコ?という気がしました(笑)。
 ブログラムでイケコが「両性具有の魔力」云々と語っていましたが、確かにリアル男優がいるところでは黒燕尾で現れても男装に見えるし、といってドレス姿になっても女装に見えるので、その自在さがカリオストロっぽくていいな、と思いました。ちえちゃんだとまたちょっとニュアンスが違ったのかな? それもまたおもしろそうですね。ともあれここにも満足しました。
 ホームズ(小西遼生)さんの贅沢無駄遣いとかガニマール警部(勝矢)のいかにもさとかイジドール(加藤清史郎)のけなげさ、やんちゃっぷりも塩梅がよかったと思いますし、アンサンブルではしーちゃん大活躍で、ホント満足度が高かったのでした。シルクハットにモノクルに蝶ネクタイにマント、というセット(美術/松井るみ)もお洒落でよかったです。
 指揮は御崎恵先生でしたね。楽曲ももちろん素晴らしく、太田先生のアレンジが的確なのはもちろん、結局日本語ミュージカルとして「♪か、いと、うし、しんるぱん!」ってな合いの手コーラスになってしまうところまで愛しく、楽しかったです。いやホント歌えるって素晴らしい、これで歌が下手では目も当てられませんでしたからね…
 というわけで私は楽しめてしまったのでした。怒って暴れてダメ出し八千字とかを書くより断然健全で、よかったです。2月までの長丁場、どうぞご安全に…


※※※

 それでいうと、私は今の宝塚歌劇団での事態を鑑みて、ゆりかちゃんの舞台なんか観ていていいのだろうか、とかちらりと考えなかったわけではないのですが、すみません私は全然平気なのでした。なんか脳の違うところで楽しんでしまう、と言いましょうか…
 役、キャラだけ見ているわけではなくて、役者のことももちろん見ているんだけれど、そして舞台姿には人柄が全部出る、とかよく言われますけれど、共演者にはわかっても観客にはそこまで伝わらないのかもしれないし、ホントは意地が悪い人、みたいな性格とか人となりまで感じられるものでもないと思うんですよね…というか私にはホントいつものちょっとのほほんとしたゆりかちゃんが楽しんで演技しているだけのように見えて、それは過去の宙組公演もそう観て楽しんできたわけで、実はすごい悪人かもしれなくて内部ではものすごいいじめやパワハラが…とか言われても、ぶっちゃけピンとこないのでした。
 いや、夜昼なくお稽古している感じとかは漏れ伝わってきていて、労働条件として良くないよね、とかは思っていて、今の公演形態は詰め込みすぎだし乱発で作品のクオリティも低いので(生徒の力量の問題ではなく演出家の能力の限界の問題で)、もっと稽古期間も長く取り上演期間も長く取り休演日を増やし週の公演回数を減らし、もっとゆったりやるようにしようよ、とかはここでもさんざん書いてきました。また、生徒の自主性を尊重するのはいいし、上級生から下級生に教える芸というものも確かにあるだろうけれど、指導が厳しすぎたりいきすぎたものにならないよう監督することは大事だよ、そのために管理者、劇団側のおじさんたちはいるんでしょ? ちゃんとしてね? とは常々思っていました。
 それが最も悪い形で出て今回の事態になってしまい、やっぱり無理があったんじゃん、今、無理やりにでも改革を断行して軌道修正しないとまた続くよ、と私なりに心配していて、外野だけどファンだし会見を見守ったり報告書に目を通したりもしているわけですが、やはりどうにも劇団の対応はあまり上手くないように思えて、それでやきもきもしてはいるのでした。
 ヘアアイロンが当たったのは、単なる事故かもしれないしよくあることなのかもしれません。でもわざとではなくても過失でしょ? 怪我(火傷)させちゃったんでしょ? 「ごめーん!」程度でも当時ちゃんと謝ったんですよね? それと同じことで、今回のことも、別に自分たちのせいではない、と思っていてもいいから、でも人がひとり亡くなったことはショックで残念で悲しくて、かわいそうだな、とは思ったでしょ? だからそれを表明する弔問は、その程度の謝罪は、さっさとやるにこしたことはなかったのではないのかしらん…? その訪問は、まったく公表する必要がなく、ご遺族だけが承知していればいいことで、彼女と関わりのあった新旧トップコンビと新旧組長副組長、新旧組プロデューサー、新旧生徒監、新旧理事長が劇団と組を代表して揃って頭を下げに行っていれば、だいぶ違ったのではないかしらん…?
 当人がただ弱くて勝手に自死した、なんてことはないわけで、なのでやはりそれは全体の罪であって、だから代表して上の者が引き受けるべきものでもあって、その意味ではゆりかちゃんは宙組前トップスターなんだから取るべき責任はあるのでしょう。でも彼女個人にすごく悪意があったのだとか、なんかそういうことはやはり上手く想像できないし、そもそも知り得ようがないし…とか私は思ってしまうのでした。今のお仕事はお仕事として引き受けた以上きっちりやるべきだし、変に動揺して降板するみたいなことになる方が私は嫌だな、そういうことではないのでは、とも考えたのでした。
 というわけで、ホントこの舞台を見ている間は、私は全然この問題のことを考えなかったのでした…
 もちろん、今は観たくない、しばらく新しくチケットを取りたくない、そういう形で加担したくない、みたいに考える人の意見も否定しません。ファンと言っても一枚岩ではないし、それぞれのスタンスがあるし、ファンと言っても所詮外野で、劇団員が楽しく健康的に仕事ができることと、ご遺族の意向が一番大切です。ご遺族の望みは、真実が明かされ、謝罪と補償がされること、そして改善策が講じられること…なので、それを丁寧に進めていってほしいです。一方で興行はノンストップなので(いや宝塚歌劇の公演には止めているものもあるわけですが)、それはそれでやるしかないし、チケットを持っていれば私は行くよね、という…
 亡くなった生徒を悼み、残念に、無念に思う忸怩たる想いと、そうした行為は両立すると私は思うのでした。
 お気に障った方がいらしたら、それは申し訳ございません。
















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